私は基本的にライトノベル読みなので、あなたの趣味とは根本的に合わないかもしれません。それでもよければ語らせていただきます。
もしかしたらライトノベルを既に多く読まれているかもしれず、それだと非常に恥ずかしい思いをするのですが、とりあえずそうではないという前提で話を進めます。
ライトノベルを読まない方にはライトノベルの全てが目新しいといえるのではないか、という逃げ道を最初に用意しておきます。すみません。
また、かなりの長文ですのでご注意ください。「いや、ライトノベルはちょっと…」と思われたらスルーしてくださって結構です。
まず『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。これは主人公である少女と、転校生の奇妙な少女との交流、そしてその凄惨な結末を描いたものです。作者が女性であるためか、少女たちの心理描写は鮮やか、かつ生々しいものとなっています。冒頭から衝撃的な結末を予告し、それに向かって一気に書き切った小説。設定にわずかに突飛な部分はあるものの、ライトノベル的な超常要素は皆無です。一冊完結です(ライトノベルにはシリーズ物が多いのです)。
『ALL YOU NEED IS KILL』は「初めてのライトノベル」として断然オススメいたします。謎の生物と人類の大戦争が起こっているという近未来が舞台であり、そういった部分は非常にライトノベル的です。主人公はふとしたことから戦場の数日間を何度もタイムループすることになり、同じ一日を何度も繰り返すことで、そのあいだに兵士としての経験を積み重ねていきます。また「戦場の牝犬」と呼ばれる戦闘の天才と出会い、彼女と魅かれあいます。そして、何百回目かのタイムループの後、ついに円環から抜け出すことになるのですが……。何度も何度も「やり直し」を重ねたからこそ、たった一つだけの結末の切なさと、その余韻を残すことに成功している作品です。こちらも一冊で完結しています。
『きみとぼくの壊れた世界』はライトノベル的なミステリで、饒舌な文体や個性的なキャラクターが特徴的な作品です。メタ的な視点を意識して書かれており、「ミステリの入門書」「セカイ系と呼ばれることへの回答」などといったテーマが織り込まれています。そのため、途中ではミステリの解説に終始するなど、退屈な部分があるかもしれません。しかし要所要所での圧倒的な急展開は、退屈を吹き飛ばすに十分な衝撃を与えてくれると思います。読み込むほどに細部まで作者の意識が行き届いた作品だということがわかる傑作です。一冊で完結しています。
以上の三つは、実のところかなり前に読んだものなので、「最近読んだ」という条件には当てはまっていません。申し訳ありません。最近読んだもので面白かったものは、それでも数ヶ月前に読んだものですが、以下の三つでしょうか。
『“文学少女”と死にたがりの道化』は、元・覆面女子高生作家の主人公(男)と、(比喩ではなく)本をムシャムシャと食べてしまうヒロインのコンビが事件を解決する、ミステリ風学園サスペンスとでも言えばいいのでしょうか。作中には太宰治の『人間失格』が登場し、事件の根幹に関わっています。そういった意味で、非常にライトノベルらしくないと言えるでしょう。途中まではダークな雰囲気が立ち込め、しかしそれもクライマックスにおけるヒロインの活躍で一気に吹き飛んでしまうでしょう。彼女が振るう熱弁は、本好きなら一読の価値アリです。akira-aさんはもちろん『人間失格』を読んでおられるでしょうし(実は私は読んでいないのですが)、是非とも読んでいただきたいですね。続き物ですが、一冊だけでも完結しているので、単体だけ読んでも大丈夫です。明日あたりに2巻が出るのでとても楽しみなのです。
『狼と香辛料』『狼と香辛料〈2〉』はライトノベルでは珍しい「経済」を扱った作品で、主人公の若い行商人と狼の化身であるヒロインの二人が共に旅をする話です。このヒロインが非常に魅力的で、花魁言葉(に似た変な口調)を操りながら老獪な知恵をめぐらせ、主人公や他の商人たちを手玉にとるのです。それでいて食い意地が張っており、蜂蜜漬けの桃を美味しそうに頬張る彼女の姿を想像するだけで微笑ましく思えます。これほどキャラクターに惚れ込める作品はなかなかないと思います。いわゆるキャラクター小説を許容できるなら是非とも。これは2巻まで出ていて、以下続刊というやつです。
『学校の階段』『学校の階段2』は類まれなる青春小説です。なにせ主人公が所属するのが「階段部」であり、彼が情熱を燃やすのが「階段レース」なのですから。これは学校中の階段や廊下を走って回り、そのタイムを競うというもの。当然ながら通行人の迷惑になって顰蹙を買い、また生徒会からは目を付けられているのですが、「階段部」の部員たちは彼らなりの信念を持って階段を走り続けます。はじめは階段レースに否定的だった主人公も、やがてその面白さにのめりこむようになり、そして階段レースをやめさせようとする生徒会役員や教師たちと対決することになるのです。これぞ熱血、これぞ青春。こちらも2巻まで出ていて、以下続刊です。
次に挙げるのは、ある程度ライトノベルに慣れていないと危険な作品です。ライトノベル読みが相手でも大多数の支持は得られないでしょう。そういう代物ですので、あくまで参考程度に思ってください。
『ユメ視る猫とカノジョの行方』は能力バトル的な要素を含む青春小説です。漫画の『寄生獣』をご存知なら、あの作品から説教臭い部分を引いて、恋愛要素を詰め込んだような小説だと考えてください。ある日、謎の精神体が飼い猫と融合し、猫が美少女に変身してしまいます。しかも精神体の一部が主人公とも融合しているので、二人は一心同体、精神を共有する関係となります。と聞くとよくある萌え系ストーリーに思われるかもしれませんが、主人公が妙に達観した、悪く言えば斜に構えすぎた性格であるため、絶妙にシリアスな空気を漂わせた作品になっています。また、ヒロインのクールな性格も作者の得意とするところであり、なんの感情もないような顔をして「私と恋愛をしてみないか」と誘うところなどは本当に最高ですね。今年に入ってから読んだライトノベルで一番気に入っている作品です。まだ一巻しか出ていないのですが、二巻が出るのはいつになるやら…。
『ぼくと魔女式アポカリプス』はライトノベル的な要素をこれでもかと詰め込んだ作品です。これを読めばライトノベルを大好きになるかあるいは大嫌いになるか、二つに一つだろうというくらいに「濃ゆい」です。主人公は「日常」に飽きつつも「普通」に固執する高校生で、校舎裏に呼び出されて眼鏡っ子から告白されたかと思ったらいきなり死亡し、甦ったと思ったら美少女に変身できるようになっていて、眼鏡っ子は実は魔女で、天使がやってきて、そして他の魔法使いたちとバトルロイヤルをすることになって、妹が涎を飲ませてきて、幼馴染がドロップキックをかましてと、それっぽい要素がてんこ盛りです。そしてクライマックスでは急転直下の鬱展開に突入。これぞライトノベルの持つ最大の武器である「何でもあり」を体現した作品でしょう。これも一巻までしか出ていませんが、二巻はいつ出るんでしょうか…。
以上です。
本当に長文になってしまいました。すみません。
一冊でもビビッとくる作品があればいいのですが。
私は基本的にライトノベル読みなので、あなたの趣味とは根本的に合わないかもしれません。それでもよければ語らせていただきます。
もしかしたらライトノベルを既に多く読まれているかもしれず、それだと非常に恥ずかしい思いをするのですが、とりあえずそうではないという前提で話を進めます。
ライトノベルを読まない方にはライトノベルの全てが目新しいといえるのではないか、という逃げ道を最初に用意しておきます。すみません。
また、かなりの長文ですのでご注意ください。「いや、ライトノベルはちょっと…」と思われたらスルーしてくださって結構です。
まず『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。これは主人公である少女と、転校生の奇妙な少女との交流、そしてその凄惨な結末を描いたものです。作者が女性であるためか、少女たちの心理描写は鮮やか、かつ生々しいものとなっています。冒頭から衝撃的な結末を予告し、それに向かって一気に書き切った小説。設定にわずかに突飛な部分はあるものの、ライトノベル的な超常要素は皆無です。一冊完結です(ライトノベルにはシリーズ物が多いのです)。
『ALL YOU NEED IS KILL』は「初めてのライトノベル」として断然オススメいたします。謎の生物と人類の大戦争が起こっているという近未来が舞台であり、そういった部分は非常にライトノベル的です。主人公はふとしたことから戦場の数日間を何度もタイムループすることになり、同じ一日を何度も繰り返すことで、そのあいだに兵士としての経験を積み重ねていきます。また「戦場の牝犬」と呼ばれる戦闘の天才と出会い、彼女と魅かれあいます。そして、何百回目かのタイムループの後、ついに円環から抜け出すことになるのですが……。何度も何度も「やり直し」を重ねたからこそ、たった一つだけの結末の切なさと、その余韻を残すことに成功している作品です。こちらも一冊で完結しています。
『きみとぼくの壊れた世界』はライトノベル的なミステリで、饒舌な文体や個性的なキャラクターが特徴的な作品です。メタ的な視点を意識して書かれており、「ミステリの入門書」「セカイ系と呼ばれることへの回答」などといったテーマが織り込まれています。そのため、途中ではミステリの解説に終始するなど、退屈な部分があるかもしれません。しかし要所要所での圧倒的な急展開は、退屈を吹き飛ばすに十分な衝撃を与えてくれると思います。読み込むほどに細部まで作者の意識が行き届いた作品だということがわかる傑作です。一冊で完結しています。
以上の三つは、実のところかなり前に読んだものなので、「最近読んだ」という条件には当てはまっていません。申し訳ありません。最近読んだもので面白かったものは、それでも数ヶ月前に読んだものですが、以下の三つでしょうか。
『“文学少女”と死にたがりの道化』は、元・覆面女子高生作家の主人公(男)と、(比喩ではなく)本をムシャムシャと食べてしまうヒロインのコンビが事件を解決する、ミステリ風学園サスペンスとでも言えばいいのでしょうか。作中には太宰治の『人間失格』が登場し、事件の根幹に関わっています。そういった意味で、非常にライトノベルらしくないと言えるでしょう。途中まではダークな雰囲気が立ち込め、しかしそれもクライマックスにおけるヒロインの活躍で一気に吹き飛んでしまうでしょう。彼女が振るう熱弁は、本好きなら一読の価値アリです。akira-aさんはもちろん『人間失格』を読んでおられるでしょうし(実は私は読んでいないのですが)、是非とも読んでいただきたいですね。続き物ですが、一冊だけでも完結しているので、単体だけ読んでも大丈夫です。明日あたりに2巻が出るのでとても楽しみなのです。
『狼と香辛料』『狼と香辛料〈2〉』はライトノベルでは珍しい「経済」を扱った作品で、主人公の若い行商人と狼の化身であるヒロインの二人が共に旅をする話です。このヒロインが非常に魅力的で、花魁言葉(に似た変な口調)を操りながら老獪な知恵をめぐらせ、主人公や他の商人たちを手玉にとるのです。それでいて食い意地が張っており、蜂蜜漬けの桃を美味しそうに頬張る彼女の姿を想像するだけで微笑ましく思えます。これほどキャラクターに惚れ込める作品はなかなかないと思います。いわゆるキャラクター小説を許容できるなら是非とも。これは2巻まで出ていて、以下続刊というやつです。
『学校の階段』『学校の階段2』は類まれなる青春小説です。なにせ主人公が所属するのが「階段部」であり、彼が情熱を燃やすのが「階段レース」なのですから。これは学校中の階段や廊下を走って回り、そのタイムを競うというもの。当然ながら通行人の迷惑になって顰蹙を買い、また生徒会からは目を付けられているのですが、「階段部」の部員たちは彼らなりの信念を持って階段を走り続けます。はじめは階段レースに否定的だった主人公も、やがてその面白さにのめりこむようになり、そして階段レースをやめさせようとする生徒会役員や教師たちと対決することになるのです。これぞ熱血、これぞ青春。こちらも2巻まで出ていて、以下続刊です。
次に挙げるのは、ある程度ライトノベルに慣れていないと危険な作品です。ライトノベル読みが相手でも大多数の支持は得られないでしょう。そういう代物ですので、あくまで参考程度に思ってください。
『ユメ視る猫とカノジョの行方』は能力バトル的な要素を含む青春小説です。漫画の『寄生獣』をご存知なら、あの作品から説教臭い部分を引いて、恋愛要素を詰め込んだような小説だと考えてください。ある日、謎の精神体が飼い猫と融合し、猫が美少女に変身してしまいます。しかも精神体の一部が主人公とも融合しているので、二人は一心同体、精神を共有する関係となります。と聞くとよくある萌え系ストーリーに思われるかもしれませんが、主人公が妙に達観した、悪く言えば斜に構えすぎた性格であるため、絶妙にシリアスな空気を漂わせた作品になっています。また、ヒロインのクールな性格も作者の得意とするところであり、なんの感情もないような顔をして「私と恋愛をしてみないか」と誘うところなどは本当に最高ですね。今年に入ってから読んだライトノベルで一番気に入っている作品です。まだ一巻しか出ていないのですが、二巻が出るのはいつになるやら…。
『ぼくと魔女式アポカリプス』はライトノベル的な要素をこれでもかと詰め込んだ作品です。これを読めばライトノベルを大好きになるかあるいは大嫌いになるか、二つに一つだろうというくらいに「濃ゆい」です。主人公は「日常」に飽きつつも「普通」に固執する高校生で、校舎裏に呼び出されて眼鏡っ子から告白されたかと思ったらいきなり死亡し、甦ったと思ったら美少女に変身できるようになっていて、眼鏡っ子は実は魔女で、天使がやってきて、そして他の魔法使いたちとバトルロイヤルをすることになって、妹が涎を飲ませてきて、幼馴染がドロップキックをかましてと、それっぽい要素がてんこ盛りです。そしてクライマックスでは急転直下の鬱展開に突入。これぞライトノベルの持つ最大の武器である「何でもあり」を体現した作品でしょう。これも一巻までしか出ていませんが、二巻はいつ出るんでしょうか…。
以上です。
本当に長文になってしまいました。すみません。
一冊でもビビッとくる作品があればいいのですが。