前回の「イエ・ルポ #029お泊まり」の続編みたいなお話です。
さて、何だかんだで暴力の世界から立ち直った私は、突然生命の尊さに目覚めてしまいました。そんなある日、一羽の小鳥が地面の上でバタバタやっているのを見つけたんです。どうしたんだろうとよく見てみると、片足が折れています。自然治癒は無理そうな状態だったので、とりあえず捕獲。家に連れて行って父に見せると、
「これは野鳥だからケガで保護するにしても許可がいる、まず獣医に連れて行って、治療がてらどう申請したらいいのか聞いてみよう」
とアドバイスをもらいました。で、なんだかんだで半年ほどわが家で飼って、無事放鳥出来るまでにこぎつけました。
両親は、ちょっと前まで人にケガを負わせても屁とも思わなかったような息子がケガをした小鳥を拾ってきたのを見て、それなりに喜んでくれたんでしょうね。よく見過ごさずに拾ってきたと、大絶賛してくれました。
以来私は、捨て犬、病気の猫、羽根を折って飛べなくなっていた鳩など、次から次へと拾ってきては治療するのが恒例になっていきました。気を付けて見ていると、けっこう見つかってしまうんです。見ようとしなければ気が付きませんが、ちょっと注意深く見ていると、そういう人間の助けを必要とする生き物が、実はたくさんいるんです。
父母はそのたびに、よくやった、よく助けた、お手柄だと、心からそれを褒めてくれました。よその家なら普通、そんなに次々と拾ってくれば、いい加減にしなさいと言われてしまうでしょう。でもわが家は、それを手柄と讃えてくれる家だったんです。
父も母も、保護してきた子たちの貰い手探しに奔走してくれました。本当に信頼出来る相手でなければ生き物はお任せできませんから、それは苦労して探してくれていたようです。
時にはどうしても助けきれずに、命を落としてしまう動物も出てきます。そんな時には、父はその動物のなきがらに餌と水と花を供えて、丁寧に弔ってくれました。人間と同じように一晩通夜を行って、それから埋葬です。それはそれは大切にしてくれました。
そして今、私は大人になりました。相変わらず、4匹の野良出身猫達と暮らしています。また昨日、たまたま歩いていた道で猫の事故に遭遇。幸い一命は取り留めましたので、今、動物病院に入院させているところです。かなりひどいケガなので、入院は長期にわたりそうな気配です。おそらく大変な費用がかかるでしょう。でも、懐かしい父や母の、えらいぞ、よく助けた、という声が聞こえてくる気がします。
任せといて。きっと元気に、そして幸せにしてみせるから。今日も帰りに動物病院に寄ってきます。この子は、まだ親父やお袋の所には行かせられない。こっちの世界で、私が責任を持って元気にします。見守っていてください。
前回の「イエ・ルポ #029お泊まり」の続編みたいなお話です。
さて、何だかんだで暴力の世界から立ち直った私は、突然生命の尊さに目覚めてしまいました。そんなある日、一羽の小鳥が地面の上でバタバタやっているのを見つけたんです。どうしたんだろうとよく見てみると、片足が折れています。自然治癒は無理そうな状態だったので、とりあえず捕獲。家に連れて行って父に見せると、
「これは野鳥だからケガで保護するにしても許可がいる、まず獣医に連れて行って、治療がてらどう申請したらいいのか聞いてみよう」
とアドバイスをもらいました。で、なんだかんだで半年ほどわが家で飼って、無事放鳥出来るまでにこぎつけました。
両親は、ちょっと前まで人にケガを負わせても屁とも思わなかったような息子がケガをした小鳥を拾ってきたのを見て、それなりに喜んでくれたんでしょうね。よく見過ごさずに拾ってきたと、大絶賛してくれました。
以来私は、捨て犬、病気の猫、羽根を折って飛べなくなっていた鳩など、次から次へと拾ってきては治療するのが恒例になっていきました。気を付けて見ていると、けっこう見つかってしまうんです。見ようとしなければ気が付きませんが、ちょっと注意深く見ていると、そういう人間の助けを必要とする生き物が、実はたくさんいるんです。
父母はそのたびに、よくやった、よく助けた、お手柄だと、心からそれを褒めてくれました。よその家なら普通、そんなに次々と拾ってくれば、いい加減にしなさいと言われてしまうでしょう。でもわが家は、それを手柄と讃えてくれる家だったんです。
父も母も、保護してきた子たちの貰い手探しに奔走してくれました。本当に信頼出来る相手でなければ生き物はお任せできませんから、それは苦労して探してくれていたようです。
時にはどうしても助けきれずに、命を落としてしまう動物も出てきます。そんな時には、父はその動物のなきがらに餌と水と花を供えて、丁寧に弔ってくれました。人間と同じように一晩通夜を行って、それから埋葬です。それはそれは大切にしてくれました。
そして今、私は大人になりました。相変わらず、4匹の野良出身猫達と暮らしています。また昨日、たまたま歩いていた道で猫の事故に遭遇。幸い一命は取り留めましたので、今、動物病院に入院させているところです。かなりひどいケガなので、入院は長期にわたりそうな気配です。おそらく大変な費用がかかるでしょう。でも、懐かしい父や母の、えらいぞ、よく助けた、という声が聞こえてくる気がします。
任せといて。きっと元気に、そして幸せにしてみせるから。今日も帰りに動物病院に寄ってきます。この子は、まだ親父やお袋の所には行かせられない。こっちの世界で、私が責任を持って元気にします。見守っていてください。