クリスマス企画の第3日目です。
ルール等、詳しくは http://q.hatena.ne.jp/1197051779 を参照ください。
企画に応募された9名は、全員、参加者Aとして参加いただけます。
また応募しなかった方々も、参加者Bとしてなら、
だれでも、いつでも参加できます
参加者Aには、ビンゴカードを1枚ずつWeb上に配りました。
http://www.nurs.or.jp/~lionfan/kikaku_2007_christmas/index.html
今回のキーワードは「餅つき」です。
それでは「キーワード+あなたの好きな言葉1つ」で
短い小説をつくり、この質問に答える形で応募してください。
締め切りは12/18(火) 23:59までです。
キーワードを明示することも忘れずに。
あと簡単に言及できるよう、小説にタイトルも付けてください。
小説の行数に制限はありません。
それではご健闘を祈ります。よいクリスマスを。
「喫茶店」 キーワード:餅つき 赤
「さて、何にする?」
私は、喫茶店に入り、向かいに座った由美に聞いた。
「私、お抹茶にするわ。この、『餅つき』ってのがいいわ。」
私は、思わずメニューをのぞき込んだ。たしかに、『餅つき』と書いてある。
「安倍川餅でもついてくるのかな。ちょっと変わってるね。」と、私は少しいやな予感を感じながら、メニューを戻した。
ウェイトレスに餅付きの抹茶とコーヒーをたのみ、水を飲んでいると、奥の方からゴロゴロという大きな音が聞こえてきた。と、思うまもなく、私たちのテーブルの横には、臼と威勢のよさそうなオニイサンが数人現れ、ペッタンペッタンと餅つきを始めた。ご丁寧に「縁起の良い餅つき唄」付きである。
私は、メニューを天井に投げつけ、叫んだ。
「実験中止!システム02から11まで停止。全子プロセスはkill。一旦シャットダウンしろ。」
喫茶店は形を失い、白一面になった。
私はヘルメットを脱ぎながら、ブースを覗き込んでいるユミに拳を振り上げた。ユミはガラス越しにアッカンベーをしている。私は耳元のマイクに向かって、
「また、変な単語にチャレンジして。このシステムは、まだ細かい日本語対応になってないんだから、学習がすむまでは遊ぶな。」と言った。
「あら、ヴァーチャルな世界には、次々といろんな単語を覚えてもらわないとね。状況に応じて世界を正確に構築していただかないと、役に立ちませんことよ。ホホホ。」とイヤホンからユミの声が聞こえる。
ここは、小説に書かれた状況を、仮想空間で経験できるアミューズメント施設の開発部なのだ。詳細なシナリオへの対応状況を調べる実験をしているが、毎度ユミのいたずらでこうして中止になる。まあ、バグの検出にもなるから良いんだが。
と、実験ブースに警告音が響く。「実験コードエラー、システムを停止します。」見る間に、開発部の部屋の明かりが消え、天井が壁が消えていく。あたりは灰色一色になった。
私は、ヘルメットを脱ぎながら、頭を振っていた。どうも最近頭の痛いのが抜けない。それに、どこまでが仮想空間なのか、わからなくなってきている。ここは、どうなんだろう。床は固いが、仮想空間では感触も再現されてしまうし・・・・・
「原因不明のエラー。全システムを停止します。」
また、エラーだ。壁が赤くなって行く。今度は私の色も単色になっていく。
消えていく指先を見ながら、私は、ふと不安になった。
「元に戻れるんだろうか。」
そうして、世界は赤で塗りつぶされた。
=======
もう一本書きました。
が、キーワードは同じですぅ。
「大工のかんざし」 キーワード:餅つき + ○ (後で)
「てぇへんだ、親分。てぇへんだぁ。」
朝靄の晴れないうちから、手先の松吉が駆け込んできた。
「おうおう、朝早くから騒々しい。お前のてぇへんは、いつだってこれっぽっちも大変じゃねぇじゃねぇか。」
と、奥から三太親分の声が飛んでくる。ここは、江戸は深川の岡っ引き、三太親分の家である。
「大方、この時分に駆け込んでくりぁ、朝ごはんでも頂けるって思ってのことだろう。とりあえず、こっちへ上がんな。おーい、こいつにも一膳出してやってくれ。」と、奥のおかみさんの方へ声をかける。
松吉は、座敷に上がりながら、
「いや、親分。今度と言う今度はほんとうにてぇへんなんで。あ、こりゃどうも。うまそうだねぇ。いただきやす。」
と出てきたご飯に飛びついた。
三太親分は箸を止めて、
「てぇへんってのは、食うことよりもてぇへんじゃねぇのかねぇ。」と、あきれながら松吉に言う。
「そうそう、忘れるところだった。永代橋で土左衛門が上がったんで。」と、松吉はご飯粒を畳の上に撒き散らしながら、慌てて言った。
そうか、と言うが早いか、親分は十手を握り表へ出て行く。松吉は、もう一口二口かきこんで、親分の後を追いかけて行った。
永代橋の下の河原には、すでに人だかりが出来ていた。三太親分が割って入ろうとすると、どよめきが起こった。松吉が追いついてきて、
「ちょいと開けてくんな」と言いながら人ごみを分けて入ってきた。
戸板の上には、男が上半身を起こして座っていた。三太親分は松吉をどやしつけた。
「誰が土左衛門だってぇ?勘違いにも程がある。その目で見てから物を言え。」
へいへい、と生返事をしながら、松吉は戸板の上の男に尋ねる。
「おめぇ、名はなんてぇんだい?」しかし、男はうつろな目をして、首を傾げるばかり。その右手にかんざしが握られているのを見て、松吉が手に取ろうとすると、男は松吉を振り払った。
「何しやがんでぃ」と松吉が腕をまくろうとするのを親分が制し、
「番所へ行って、話を聞こう。」と男の顔を観察しながら言った。
番所で、男に茶を出しながらいろいろ尋ねるが、男は首を振るばかり。右手に持ったかんざしを握り締めたままだった。
「親分、こいつ名前も思い出しやがらねぇ。どうします?」
「頭をどこかでぶつけたんじゃねぇか。それより、この風体の行方知れずがいねぇか、調べて来い。」と、松吉を送り出す。
ほどなく、表がざわついて、番所の戸が開いた。そこには、髪を振り乱した女が立っていた。女は駆け込んでくると、「お前さん、どこいってたんだよ。」と、男の肩を抱き問いかけた。しかし、やはり男は首を振るばかりだった。
女に話を聞くと、男は隣町の大工で名を長介と言い、自分は女房のお玉と言う。昨日の夜から行方が知れなかったそう。近所の長屋の普請が終わったばかりだったから心配だったと。
「しかし、何にも覚えてないらしい。この様子じゃぁ、お前さんの顔も思い出せねぇみたいだな。」
ふと、長介の手のかんざしを見て、親分はお玉に聞いた。
「このかんざしは、お前さんのかい?」
お玉は、力なく首を横に振った。親分は、手を顎にやり思案していたが、ふと思い立ったように番所を出て行った。
しばらくして松吉が、
「親分、わかった。長介だそうだ。でぇくの。」と言いながら飛び込んできた。
番所に親分が無く、お玉と長介が座っているのを見て、松吉はたたらを踏んだ。その後ろから、親分が入ってきて、松吉にぶつかった。親分は、金槌を手にしている。
「お、親分堪忍してくんなせぇ、そんなもんであっしをぶったら、骨が折れちまいまさぁ。」と松吉が横っ飛びに避ける。
「早とちりするな。これは、この長介の物だ。」と、親分はお玉に向かって言った。
「自分の大工道具を握れば、何か思い出すかも知れねえと思ってな。」親分が言っている脇から、小さい手がすっと伸びて、金槌を長介に差し出した。
「おとうちゃん、これ握って。思い出しておくれよ。庄平だよ。おとうちゃん。」と、その子供は長介に向かって訴えた。
「さっき、思い立って長屋のほうへ出向いたら、この庄平が留守番をしていてな。大工道具を持って、一緒にきてくれたわけだ。」と、親分は、お玉と長介に向かって言った。
「どうだ、長介。何か思い出したか。」
長介は、やはり首を横に振るばかり。それを見て庄平が叫んだ。
「おとうちゃん、思い出しておくれよ。餅つき名人のおとうちゃんに戻っておくれよ。」
三太親分は、何かを得たように立ち上がった。長介と庄平の手を取り、番所を出て行った。あわてて松吉が後を追う。
親分は、半町ばかり先の火除地に向かっていた。松吉が追いついた頃には、親分はそこの人だかりに声をかけていた。
「すまねぇが、こいつにもやらしてもらえねぇか。腕は立つはずだ。」と、振り返り、
「松吉、手伝ってやってくれ。」
松吉はうなづくと、広場の奥にいる屈強な男に得物を借り、長介が持てるように手伝った。
すると、さっきまでうつろだった長介の目に輝きが戻ってきた。長介はそのまま広場の中央に進み、手に持った得物を大きく振りかぶった。
「よっ。」
大きな声を上げて、長介は臼に杵を振り下ろした。その杵の下で、気持ちよく白い餅がつぶれた。
「よ。」
「はっ。」
周りから歓声が上がる。長介の杵さばきは見事であった。
「餅つき名人、長介とうちゃん。」庄平の呼びかけに、長介はさらに杵を高く振りかぶった。
松吉が、三太親分のそばに寄る。
「ここで餅つきをやってるなんざ、よくごぞんじで。」
「なに、さっきこの近くを通ったとき、掛け声が聞こえたからな。それより、あのかんざしは、妙だな。にあわねぇ。」
親分の視線の先には、長介の髪に刺さったかんざしが大きく踊っていた。
お玉がやってくると、長介はすっかり人に戻っていた。庄平を肩に担ぎ、お玉に言った。
「お玉、すまねぇな、心配かけちまった。庄坊もありがとな、思い出させてくれて。」
長介は、庄平を降ろし、三太親分に頭を下げた。
「親分さん、ありがとうごぜぇやす。おかげですっかり思い出せやした。」
「なに、こちとらお役目よ。で、長介。そのかんざしが気になるんだがなぁ。」
長介は、髪に手をやり、かんざしをはずした。
「へえ、あの晩、銭がへぇったんで、こいつが長い間欲しがってたかんざしを仲見世まで買いにいったんで。首尾よく買えたところ、急いで帰ろうとして吾妻橋を渡ろうと・・・」
「あの晩は、結構な雪だったなぁ。」と、親分。
「へい。その雪で足を滑らせたんで。幸い、落ちたところが河原で。」
「そうか、そこで頭をちょいと打って、ふらふらと川沿いに下っていったんだな。いよいよ永代橋の下でのびちまったと。」
「それで、土左衛門・・・」
という松吉をにらみつけ、親分は言った。
「とまれ、無事で、頭も戻ったことで。よかった、よかった。」
長介親子は深々と親分にお辞儀をした。長介は、手の中のかんざしをあらため、お玉の後ろに回った。そして、かんざしをそっと挿してやった。冬の日差しに、かんざしの赤い七宝焼きが光っていた。
何度もお辞儀を繰り返し帰っていく長介一家を見送りながら、松吉が親分に尋ねた。
「なんで、餅つきをさせると、思い出すと思ったんで?でぇく道具じゃ思い出せなかったじゃねぇですか。」
「なぁに、古くから言うだろ、昔取った杵柄、ってな。」
<江戸の町、深川は12月25日の風景と思ってくだせぇ。>
キーワードは:餅つき + 赤
takejin様、力作、ありがとうございます。
タイトル:サンタへの餅つき?(キーワード:餅つき/イヴの夜)
「あのさ、サンタってスウェーデンから来るって本当?」
クリスマス前のある日、息子が突然聞いてきた。
「スウェーデンだったかは覚えてないけど……外国から来るのは確かよ」
「じゃあさじゃあさ、サンタに『日本の文化』とか教えてあげるっていうのはどう?」
「『日本の文化』?」
「そう。せっかく日本に来てくれるんだから、日本の文化も知って欲しいなぁって思って」
なぜそのような話になったのかは分からないけれど。
息子が、何かに対して熱意を持っていることは確かなこと。
「そうね。じゃあ、何がいいか考えてみましょう」
私は息子の考えに協力することにした。
「日本の文化といっても、色々あるわよね。まずは、どういったものにするか、大まかに決めたらどうかしら?」
「うーん。せっかくなら、食べ物を食べさせてあげたいな」
「食べ物?」
「そだ! お母さん、おせち料理なんてどうかな?」
「おせち料理ね……」
この季節なら、おせち料理の具材も店頭に並ぶ頃。
「ここに準備しておけば、きっとサンタも喜んで……」
息子がそう言いかけて、ふと考え出した。
「でも、サンタって空から来るんだよな……。だとしたら、オレの部屋に直接来るから……ああ、この部屋じゃダメだ!」
一瞬、息子の部屋に置けばいいかな。とも思ったけれと、あの部屋じゃ、おせち料理を並べる場所がない。
しかし、そうすると息子の部屋か、庭でしか『日本の文化』を伝えることが出来ない。
そして、食べ物を。となると……。
「そうだ! イヴの夜に、庭で餅つきをしましょ!」
「餅つき?」
「そうそう。近所のみんなも誘えば、きっと楽しいと思うわ! よし、決定!!」
「ちょっとお母さん……」
息子ことを忘れて、私はイヴの夜に『餅つき大会』を開くことにした。
そして、イヴの夜。
テレビからはジングルベルの音が流れ、ラジオからはクリスマスソングが流れる中。
我が家からは餅つきの音が流れていた。
近所の人を誘ったところ、三連休最終日ということもあって、たくさんの人が集まってくれた。
餅つき大会は盛大に盛り上がった。
「あぁ~、楽しかった!」
「ねぇ、お母さん。主目的忘れてない?」
「主目的?」
「サンタに日本文化を伝えるってヤツ」
息子に言われて、私はしばし考えた。
「えーっと……大丈夫よ。忘れてないわよ」
「でも、もち米は全部使っちゃったよね?」
「それはその……」
「オマケに、お餅は全部食べちゃったよね?」
「……………………」
息子の冷たい視線を浴びながら、私はただ乾いた笑いをするのだった。
====
最初は「餅つきの準備を庭でしておいて、朝起きたら餅が作られていた」というきれいな締めにしようと考えていたのですが。
どこからどうして、こんな結末になってしまったのやら(^-^;
kumaimizuki様、ありがとうございます。
サンタに餅つきを「教える」という発想はすごいと思いました。
「喫茶店」 キーワード:餅つき 赤
「さて、何にする?」
私は、喫茶店に入り、向かいに座った由美に聞いた。
「私、お抹茶にするわ。この、『餅つき』ってのがいいわ。」
私は、思わずメニューをのぞき込んだ。たしかに、『餅つき』と書いてある。
「安倍川餅でもついてくるのかな。ちょっと変わってるね。」と、私は少しいやな予感を感じながら、メニューを戻した。
ウェイトレスに餅付きの抹茶とコーヒーをたのみ、水を飲んでいると、奥の方からゴロゴロという大きな音が聞こえてきた。と、思うまもなく、私たちのテーブルの横には、臼と威勢のよさそうなオニイサンが数人現れ、ペッタンペッタンと餅つきを始めた。ご丁寧に「縁起の良い餅つき唄」付きである。
私は、メニューを天井に投げつけ、叫んだ。
「実験中止!システム02から11まで停止。全子プロセスはkill。一旦シャットダウンしろ。」
喫茶店は形を失い、白一面になった。
私はヘルメットを脱ぎながら、ブースを覗き込んでいるユミに拳を振り上げた。ユミはガラス越しにアッカンベーをしている。私は耳元のマイクに向かって、
「また、変な単語にチャレンジして。このシステムは、まだ細かい日本語対応になってないんだから、学習がすむまでは遊ぶな。」と言った。
「あら、ヴァーチャルな世界には、次々といろんな単語を覚えてもらわないとね。状況に応じて世界を正確に構築していただかないと、役に立ちませんことよ。ホホホ。」とイヤホンからユミの声が聞こえる。
ここは、小説に書かれた状況を、仮想空間で経験できるアミューズメント施設の開発部なのだ。詳細なシナリオへの対応状況を調べる実験をしているが、毎度ユミのいたずらでこうして中止になる。まあ、バグの検出にもなるから良いんだが。
と、実験ブースに警告音が響く。「実験コードエラー、システムを停止します。」見る間に、開発部の部屋の明かりが消え、天井が壁が消えていく。あたりは灰色一色になった。
私は、ヘルメットを脱ぎながら、頭を振っていた。どうも最近頭の痛いのが抜けない。それに、どこまでが仮想空間なのか、わからなくなってきている。ここは、どうなんだろう。床は固いが、仮想空間では感触も再現されてしまうし・・・・・
「原因不明のエラー。全システムを停止します。」
また、エラーだ。壁が赤くなって行く。今度は私の色も単色になっていく。
消えていく指先を見ながら、私は、ふと不安になった。
「元に戻れるんだろうか。」
そうして、世界は赤で塗りつぶされた。
=======
もう一本書きました。
が、キーワードは同じですぅ。
takejin様、ありがとうございました。楽しいですね!!
『対話篇』(餅つき、帰省)
実家の近くを散歩していると、ご近所さんでもある中学時代の後輩に出会った。
「あれ? 先輩じゃないすか! いつこっちに帰ってきたんすか?」
「昨日。久しぶりだな、元気か?」
「はい!」
世間話が始まる。
「そういえば先輩も参加しますよね? 町内会の餅つき。」
「あぁ。一応断ったけど無理だった。親に言われてさ。やっぱり毎年男手が足りないみたいだな。これさえなければ喜んで帰省するんだけどな…。」
苦笑。
「しかし珍しいよな、いまだに地域をあげて餅つきなんて。」
「そうっすねー、でも息子さんも珍しい体験ができていいんじゃないすか?」
「息子といえば、この前面白いこと言ってたんだよ。絵本で餅つきの場面を読んで、『おもちがかわいそう』って言い出したんだ。」
「へぇー、何でですか?」
「餅ってさ、キネで何回も力一杯つかれるだろ? それが『痛そうでかわいそう』なんだと。」
「なるほどー! 面白い発想っすね!」
「『なんでおもちはいじめられてるの?』とも言ってたな。いかにも現代っ子らしい発想じゃないか?」
「というと?」
「ほら、最近ってニュースとか見てても、イジメの絡んだ事件ばっかりやってるだろ。幼稚園でもイジメ防止の教育をしてるらしいんだ。だから、それだけイジメってものが身近というか、何かと結びつきやすいんじゃないかな。」
「なるほど。」
間。
「…俺、最近イジメ問題が深刻化してるのって、餅つきの風習が廃れてるからだと思うんっすよね。」
「は? いきなり何だ?」
「いや、力一杯餅をつくことは、ストレス解消というか、新年一年分の負のエネルギーを全部餅にぶつけることになるんじゃないかなー、と。」
「それで?」
「で、みんなの負のエネルギーが全部餅に移るでしょ。それからその餅をみんなで分け合って、ワイワイ食べるじゃないすか。ほら、よく、何かを克服する時に『敵を食らう』って言いますよね。餅を食らうことで、自分の負のエネルギー、つまり意地悪な心を克服するっていう精神文化的役目とか…ありませんかね?」
「つまり、一年分の負のエネルギーを一日ですべて消費する効果があるってわけだな? それでイジメもなくなると?」
「はい。」
「ふぅむ。」
沈黙。
「…あ、俺そろそろ戻りますわ。晩メシあるんで。」
「お、そうか。じゃあまたな。」
「はい、餅つきの時に。」
「…あぁ、」
観念したような笑み。
「餅つきの時にな。」
himeichigo様、深そうな小説ありがとうございます。了解です。
キーワード:餅つき + 指輪
タイトル:ロマンチック・ライスケーキ
「たまには、ロマンチックなイベントとかないのかしらぁ」
12月24日の夜、加奈子はテレビを見ながらつぶやいた。
隣には恋人が座っている。もう付き合い始めて5年が過ぎているから、恋人というより家族のように近しい相手だ。
「ロマンチックって・・・なんだよ」
彼は困ったように笑った。その困ったような笑みが彼の生真面目な性格を表しているようで、加奈子は大好きなのだ。だからつい、困らせようとしてしまう。
「そうねぇ、クリスマスくらい、豪華なディナーとか?」
「ただの食い意地じゃないか」
鼻で笑われて、少しムキになった。
「そんなんじゃないわよ。そう・・・ディナーの前にシャンパンを飲むの。そのグラスの底には指輪が沈んでるって訳。ロマンチックじゃない?」
「あ、そういえば来週、実家で餅つきするけど加奈子も来る?」
恋人はあっさり違う話題に乗り換えた。そう加奈子は思った。
だから深く考えもせず、ため息をついてから頷いた。
「もう・・・。お餅?行く行く。久しぶりに小母さんにも会いたいし」
そして翌週、加奈子は恋人の実家を訪れた。
庭先に臼と杵を用意して、恋人の家族も勢ぞろいして、立派な餅つきが行われた。
あまりの量に加奈子が驚くと、恋人はケロリと「来年の正月分は全部つくからな」と答えた。
その正月分の餅をとりわけると、残りはその場でアンコやキナコをまぶしたり、しょうゆで食べることになった。
まさにつきたての餅ということで、加奈子は喜んで餅をとりわけて丸めていった。恋人の実家には既に何度も訪問していて、今更「お母様」とかしこまるわけでもなく、気楽なものだ。
「加奈子」
キナコ餅を頬張っていると、恋人が隣に寄り添ってきた。手には、加奈子と同じようにキナコ餅ののった皿を持っている。
「これ、加奈子にあげるよ」
「もう食べないの?」
「ああ」
「じゃあ、遠慮なく」
空になった自分の皿と恋人の皿を交換した。
「いただきますっ」
大きな口をあけると、突然恋人が大声をあげた。
「あっ!」
「な、なに?」
「あ、あんまり、思い切り噛むと危ないかも。一応、本物だから」
「本物って・・・つきたてだもん、まだ柔らかいよ」
それにそもそも、餅を噛んで危ないことがあるものか。
恋人の不思議な発言に加奈子は首をかしげた。
「いや・・・その、加奈子、この前、言ってただろう?」
「なにが?」
「たまにはロマンチックなことがしたいって」
「ああ、うん。クリスマスにディナーって話ね。それが?」
そんな他愛ない冗談をまだ覚えていたのかと、律儀な恋人を見上げる。妙に真剣な顔をしていた。
「やっぱりシャンパンじゃないと駄目だったかな」
「シャンパンって・・・」
加奈子は手元のキナコ餅を見た。何の変哲もない餅に見えた。
しかし、ただの餅ではないらしい。
確かに加奈子は、クリスマスイブに呟いた。
――グラスの底には指輪が沈んでるって訳。
思い出すと、餅ののった皿が妙に重たく感じられた。
「・・・もしかして・・・入ってる、の?」
再び恋人を見上げると、困ったように笑っていた。加奈子の大好きな微笑み方だった。
本当に生真面目で、馬鹿馬鹿しいくらい律儀なんだから、と加奈子は嬉しいような泣きたいような気持ちになった。
「そんなの、食べられないじゃないの・・・もう」
金貨入りのケーキみたいな話ですね!!
ありがとうございました。楽しみました。
さて、すみません。どうしてもNHK 1chの00:10-、見たい番組があり、
家にテレビがないので、マンガ喫茶で見てきます。ので、オープン等が遅れます。
タイトル「世にも幸運な男」使用キーワード(餅つき/紙袋)
D菜とB美のいる教室に、F吉がやって来た。
F吉「いやあ、昨日はすごくラッキーな日だったよ。
朝は寝坊して、絶対に落とせない講義に間に合わなかったんだけど、
それが教授の都合で休講になっていて、大遅刻は免れたんだ。
その後、街に遊びに行ったら十万円入りの財布が入った紙袋を拾って、
交番に届けに行ったらそこに落とし主の男性が居て、ひどく感謝されて
お礼に一割の一万円を貰ったんだ。
それから家に帰って、前に付き合いで買ったサマージャンボ宝くじが
あったのを偶然思い出して、新聞を見たら、五等の五万円が大当たり!
あまりの幸運の連続で、開いた口が塞がらない状態だったよ。」
D菜「F吉・・・開いた口が塞がらないって、呆れ返ってものが言えないという意味よ。」
F吉「ええ、そうだっけ?意味は知ってたはずなのに、つい間違っちゃったよ」
B美はため息をつきながら言った。
B美「F吉って知識はあるのに、些細なミスが多いわね。この人の親戚かしら?」
D菜「まったく、そのとおりね。」
F吉「そんな・・・D菜まで、ひどいよ・・・」
B美「間違いは間違いだし、ちゃんと訂正したほうがいいわ。
もちろん正しくはキーワードの餅つきに関係するあの言葉だけど、
F吉の間違えたセリフにかけて、「開いた口にぼた餅」のほうにして置くわね。」
(参考)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BC%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%A...
棚から牡丹餅 努力することなしに予期しない幸運がまいこんでくること。
「たなぼた」と省略することもある。「開いた口に牡丹餅」ともいう。
書くネタに困った時はギャグを入れて誤魔化すべし(byF吉)
FLOW_GAMA様、ありがとうございました。
F吉、財布を届けるなんてえらい!!
takejin様、ありがとうございました。楽しいですね!!