円地文子と三島由紀夫の関連について調べています。


 先日古本市で購入した本に、昭和四十六年(1971)当時の新潮日本文学月報が挟まっていました。8頁無綴のごく薄い冊子ですが、中に竹西寛子の談話として、円地文子が「ある雑誌の三島由紀夫追悼特集」に寄せた一文が引かれています。

「三島氏が切腹し血まみれになっていると報じられたとき、私は死に損なってくれればいいと残酷なことを真面目に思った」「生き恥をさらしても、もう一度、自分の言葉を信じ直して、書くことが生きることとつながる生活をつづける三島さんを見たかった」「深い挫折感が、三島氏のような優れた資質の文学者に貴重な贈り物をしないと誰が予言出来ようか」

 深い理解に基づく、それでいて空恐ろしいほど酷烈な物言いに感じられ、ついてはその元になった記事を読んでみたいと思いました。この文章が掲載されている雑誌について、お心当たりの方居られましたらお教え下さい。

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id:nofrills No.2

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コメント欄にある「円地文子だけは絶賛」ですが、『三島由紀夫全集―決定版 (33)』に、三島が『現代の文学20 円地文子集』に寄せた「解説」が入っているそうですので、これを図書館などでお探しになってみてはいかがかと思います。

http://books.livedoor.com/item4106425734.html

# 『円地文子集』(河出新社)そのものは昭和39年の出版と中途半端に古いので、図書館にはないかもしれませんが、もしあるようでしたらそちらでも読めると思います。

http://www.vill.yamanakako.yamanashi.jp/bungaku/mishima/mokuro/c...


また、円地文子の文章ですが、私もこの文章は読んだ記憶があります。「生き恥をさらしても……見たかった」には心底衝撃を受けました。おそらく出典は、コメント欄でnewmemoさんがお書きの『新潮』ではないかと思いますが、私はこの『新潮』ではないどこかで読んだのだと思います(おそらく新潮社が出していた三島関係の没後何年の特集か、『ユリイカ』かなにか)。それが何か思い出せたらコメント欄に追記しにあがります。


また、検索してみたところ、

群像 16-2号 特集-三島由紀夫死と芸術

特集 三島由紀夫死と芸術-山本健吉 円地文子 高橋和巳 他座談会・瀬戸内晴美・阿川弘之・河野多恵子・森茉莉他

発行 昭46/02

http://search.newgenji.co.jp/sgenji/D1/?000104168457/

がありますので、ご興味がおありでしたら、こちらも当たられてみてはいかがでしょうか。


※下記URLも同じ『群像』についてのものです。

http://www.kosho.or.jp/list/637/01249387.html

  • id:boojum
     追記。自前でちまちまと検索してみたところ、「三島由紀夫は、女性作家などあまり認めていないが、円地文子だけは絶讃していた」という記述を見かけました。この辺りについても、根拠になる文献をご存じの方は併せてお知らせ下さると助かります。
  • id:newmemo
    国会図書館のデータベースで調べただけで現物は見ていないです。
    雑誌『新潮』 第68巻第3号 
    「三島由紀夫追悼特集」号です。
    円地文子による「響き」と題する一文が収録されています。
    26~29ページ

    http://www.kosho.or.jp/servlet/top
    書名欄に「新潮 第68巻第3号」で検索しますと3冊ヒットします。
    2月号のようです。
  • id:newmemo
    現物を入手しました。

    『新潮』第68巻第3号(1971年2月特大号)に収録されています。
    談話の原文を読んでいませんので、質問文の抜粋が一部なのか前後にも文章が繋がっているのか分からないのですが、文章の一部だけを抜粋したのと全文を通して読んだのとでは印象が違ってきました。たとえば「真面目に思った」の後に次の文章が続いています。

    >>
    三島氏が切腹し血まみれになっていると報じられたとき、私は死に損なってくれればいいと残酷なことを真面目に思った。そう思いながら一方の心では、彼はきっと、みっともなく死に損いなどはしないで綺麗に死ぬに違いないと考えてもいた。
    <<

    三島は『女坂』に対する高評価をしていたようです。出典元は分からないです。
    http://sizcol.u-shizuoka-ken.ac.jp/library/suisen.html
    >>
    7.円地文子 『女坂』 角川文庫、その他各種の全集

    三島由紀夫も永遠に残る作品と絶賛したが、そういう名作の類が読者の感動を誘う好例である。
    <<
    http://asu-g.net/tech/mailmaga/057/tosyo_516.pdf
    >>
    三島由紀夫は「永遠に残る名作」と絶賛しました。
    <<
  • id:boojum
     や、奇遇かな私も現物入手して読んでる所でした。お教え頂いたURLから即日茨城のとらや書店さんにお願いしまして、それが丁度今朝届いた所…。お揃いですね(?)


     竹西寛子の談話は、上掲した通りの形で抜き書きになっていたもので。ちなみに、そちらの後は「(円地文子の)人間に対するこうした愛情表現の深い勇気を、誰がありふれていると言えようか」と続いていきます。

     まだ読み終えた訳ではないのですが、三島自裁のおよそ3ヶ月後に刷られた雑誌の中で、矢張り誰もが三島の死をある種必然的な…来るべくして来たもの、という文脈から捉えているのが何かしら意味深いように感じています。
     作家の夭折が悲劇でない筈のないのは無論ですが、かく言う私も、遺作『豊饒の海』の鮮烈さと相まって、三島は死によって生涯を完成させた人…といったような印象があり。だからこそ、尚「死に損なって欲しかった」と明言する円地文子に、暗がりから蛇が出たような驚きを覚えたのでした。

     それにしても、「生き恥」という言葉は…。当の三島にとれば他の何よりも忌まわしい、生身を一寸試しにされるような苦痛を伴う言葉であったのではないかと想像してしまいます。それでもそれを敢えて突き付けるのが、矢張り「愛情」なのでしょうか。
     何というか、こう。女は怖いですね。
  • id:boojum
     余談になりますが、件の『女坂』はつい先日全集本で読み終えた所でして…下腹にぐっと来るような重量級の名篇でした。出世頭の夫へ誠心仕えてきた妻が、他ならぬその夫に「妾を探してこい」と命じられる所から始まり…全編を通して平明な文章の、反面描写においては平明の気振りさえ一切見あたらない、女主人公の抉るような葛藤を縷々として綴る作品で。
     面白い、なんてあっけらかんと括れる代物ではないのですが、しかしまあ大変面白う御座いました。三島も褒めたと知れば何とはなし嬉しくなりますね。

     併録の『朱を奪うもの』『花散里』『なまみこ物語』どれも力のある長編で、特に『花散里』は『女坂』と甲乙付けがたい出来映え、これだけでも相当読み応えのある作家だと思うのですが…。どうも出版の方では70年代の全集刊行を最後にぷっつりと動静が絶え、後はもっぱら『源氏』の訳者として認知されているようです。何とも惜しい。
     向田邦子の文庫復刊なども喜ばれる時勢ですし、没後20余年、これから再評価されるべき方かもしれません。
  • id:boojum
     向田邦子、と書いてふっと思い出したのですが、随筆集『女の人差し指』に印象深い記述がありました。『新潮』の方でも、森茉莉が「銅鑼のような哄笑」としてその笑い方に触れていましたが…。


    ――
     友人に料亭の女あるじがいる。
     その人が客の一人である某大作家の魚の食べっぷりを絶賛したことがあった。
    「食べ方が実に男らしいのよ。ブリなんかでも、パクッパクッと三口ぐらいで食べてしまうのよ」
     ブリは高価な魚である。惜しみ惜しみ食べる私たちとは雲泥の差だなと思いながら、そのかたの、ひ弱な体つきや美文調の文体と、三口で豪快に食べるブリが、どうしても一緒にならなかった。
     そのかたは笑い方も、ハッハッハと豪快そのものであるという。
     なんだか無理をしておいでのような気がした。
     男は、どんなしぐさをしても、男なのだ。身をほじくり返し、魚を丁寧に食べようと、ウフフと笑おうと、男に生まれついたのなら男じゃないか。
     男に生まれているのに、更にわざわざ、男らしく振る舞わなくてもいいのになあ、と思っていた。
     その方が市ヶ谷で、女には絶対に出来ない、極めて男らしい亡くなり方をしたとき、私は、豪快に召し上がったらしい魚のこと、笑い方のことが頭に浮かんだ。
    ――

     これを読んだ時にも、私が漠然と思い描いていた三島像が少しく揺らいだ事を覚えています。根っからの「少女」であり続けたような森茉莉が、三島の自刃をまさに三島が思い描いたままの…「美しく若い死体」として受け止め、純粋な感動と歓びで迎えている事と、一つの対照をなすのではないでしょうか。
  • id:boojum
    (あ。そう云えば、三島は晩年ボディビルに没頭していた筈なので、向田さんのこの挿話は比較的古い時点のものかもしれません。いえ些末な事ですが。)

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