「診断」を医師法第17条や厚生労働省の通達でいうところの「医行為」であると解釈したならば、これを医師でない者がすることは違法になるでしょう。
しかし、そもそも「診断」の定義や司法的解釈はどのようになっているものでしょうか。
通常、心理カウンセラーは処方や投薬、通電療法などをしたり診断書を書いたりはしません。
これらは明らかに医業で、医師以外には許されていないからです。
しかし「診断」のみを取り上げて考えるとどうでしょうか。
心理カウンセラーがどのようにカウンセリングしていくとしても、その中で様々な「判断」はしていると思うのです。
そのような「判断」が場合によって「診断」と見なされることがあるかもしれません。
できましたら、回答と併せてその根拠となるような参照すべき情報も教えていただけませんでしょうか。
よろしくお願いいたします。
裁判所の医師法17条の解釈は以下に引用した判例の通りです。
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月24日 最高裁判所刑事判例集9巻7号1093頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/605799E21B5E1B9749256A850030B...
の原審、
大阪高等裁判所 昭和28年5月21日 最高裁判所刑事判例集9巻7号1098頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
医師法(昭和二三年法律第二〇一号)第一七条は、「医師でなければ、医業をなしてはならない」。と規定しているのであつて、右にいわゆる医業をなすとは、反覆継続の意思を以つて医行為に従事することをいうものと解すべきである
(中略)
なお右にいわゆる医行為とは人の疾病の治療を目的とし医学の専門知識を基礎とする経験と技能とを用いて、診断、薬剤の処方又は外科的手術を行うことを内容とするものを指称し、等しく人の疾病の治療を目的とするものであつて、たとえば按摩、鍼、灸等の如き療術は医業類似行為の範疇に属し、あん摩、はり、きゆう、柔道製復等営業法(昭和二二年法律第二一七号)による取締の対象となるが前示医行為とはならないものと解するを相当とする。
東京高等裁判所 平成6年11月15日判決 判例時報1531号143頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D26880992870EED949256CFA0007B...
医師法は、医師について厚生大臣の免許制度をとること及び医師国家試験の目的・内容・受験資格等について詳細な規定を置いたうえ、その一七条において「医師でなければ医業をしてはならない」と定めているところからすれば、同法は、医学の専門的知識、技能を習得して国家試験に合格し厚生大臣の免許を得た医師のみが医業を行うことができるとの基本的立場に立っているものと考えられる。そうすると、同条の医業の内容をなす医行為とは、原判決が説示するように「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と理解するのが正当というべき
東京地方裁判所 平成9年9月17日 判例タイムズ983号286頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
医師法一七条にいう医業とは、医行為を業とすることをいい、医行為とは、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうものと解される。
「診断」の定義というのはわかりやすく述べられているものは見当たりませんでしたが、仰るとおり、処方箋を書いたり、カウンセラーの診断によって入院が決められたりすれば医師法違反とされます。
ちょうどそのような事件を扱った判例もあります。
最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月27日 最高裁判所刑事判例集27巻8号1403頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。
ただし、あまりに厳密に考えすぎると心理カウンセラーという仕事そのものが成り立たなくなりますので、客の話を聞いて「あなたの悩みはこうなんですね」という程度は許されるでしょう。
「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とはいえないでしょうし。
特定の病名だと診断したり、こういう薬を飲みなさい、などとまで言ってしまうと医師法等に触れることになるでしょう。
裁判所の医師法17条の解釈は以下に引用した判例の通りです。
最高裁判所第三小法廷 昭和30年5月24日 最高裁判所刑事判例集9巻7号1093頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/605799E21B5E1B9749256A850030B...
の原審、
大阪高等裁判所 昭和28年5月21日 最高裁判所刑事判例集9巻7号1098頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
医師法(昭和二三年法律第二〇一号)第一七条は、「医師でなければ、医業をなしてはならない」。と規定しているのであつて、右にいわゆる医業をなすとは、反覆継続の意思を以つて医行為に従事することをいうものと解すべきである
(中略)
なお右にいわゆる医行為とは人の疾病の治療を目的とし医学の専門知識を基礎とする経験と技能とを用いて、診断、薬剤の処方又は外科的手術を行うことを内容とするものを指称し、等しく人の疾病の治療を目的とするものであつて、たとえば按摩、鍼、灸等の如き療術は医業類似行為の範疇に属し、あん摩、はり、きゆう、柔道製復等営業法(昭和二二年法律第二一七号)による取締の対象となるが前示医行為とはならないものと解するを相当とする。
東京高等裁判所 平成6年11月15日判決 判例時報1531号143頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D26880992870EED949256CFA0007B...
医師法は、医師について厚生大臣の免許制度をとること及び医師国家試験の目的・内容・受験資格等について詳細な規定を置いたうえ、その一七条において「医師でなければ医業をしてはならない」と定めているところからすれば、同法は、医学の専門的知識、技能を習得して国家試験に合格し厚生大臣の免許を得た医師のみが医業を行うことができるとの基本的立場に立っているものと考えられる。そうすると、同条の医業の内容をなす医行為とは、原判決が説示するように「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と理解するのが正当というべき
東京地方裁判所 平成9年9月17日 判例タイムズ983号286頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
医師法一七条にいう医業とは、医行為を業とすることをいい、医行為とは、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうものと解される。
「診断」の定義というのはわかりやすく述べられているものは見当たりませんでしたが、仰るとおり、処方箋を書いたり、カウンセラーの診断によって入院が決められたりすれば医師法違反とされます。
ちょうどそのような事件を扱った判例もあります。
最高裁判所第一小法廷 昭和48年9月27日 最高裁判所刑事判例集27巻8号1403頁
(最高裁判所のウェブサイトには未掲載)
被告人が断食道場の入寮者に対し、いわゆる断食療法を施行するため入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為は、それらの者の疾病の治療、予防を目的としてした診察方法の一種である問診にあたる。
ただし、あまりに厳密に考えすぎると心理カウンセラーという仕事そのものが成り立たなくなりますので、客の話を聞いて「あなたの悩みはこうなんですね」という程度は許されるでしょう。
「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とはいえないでしょうし。
特定の病名だと診断したり、こういう薬を飲みなさい、などとまで言ってしまうと医師法等に触れることになるでしょう。
回答ありがとうございます。
判例は根拠として最適なものの一つですね。
そうなんです。診断に関して、定義するための定義ではなくて、実際にどうしたら違法でどこまでが適法なのかを探っています。
問診も悩ましいです。教えていただいた判例ですが、問診行為単独で違法としたのではなく、その後に連接した行為とセットで裁いているような印象を受けましたが誤解でしょうか。。?
問診行為単独で違法としたのではなく、その後に連接した行為とセットで裁いているような印象
若干言葉遊びのようですが、「問診行為単独」という読み方が誤解で、「その後に連接した行為」がある診断(入寮の目的、入寮当時の症状、病歴等を尋ねた行為)を「問診」としているのではないでしょうか。
「問診」を行えば医師法違反ですが、「その後に連接した行為」とセットでなければそもそも(医師以外が行えば)違法行為である「問診」に該当しない、ということではないかと思います。
現在、カウンセラーに関しての司法判断でこれは、というのは見つかりませんでした。
しかし、wikipediaの記述にもあるとおり、カウンセラーと医師の業務とは一定の緊張関係にあることは確かです。
臨床心理職の国家資格化に関する議論が旧厚生省や国会で議論されてきたが、心理士団体と医師団体の調整がつかず、何度も資格化が頓挫している。最近では、2005年に立法化直前まで行ったが、日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会、日本精神神経学会などの強い反対により、立法化はストップしてしまった。現在は凍結されている状態だが、事実上頓挫してしまっている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%A8%E5%BA%8A%E5%BF%83%E7%90%8...
臨床心理士のように認知度の高い資格をもつ場合は、当局もある程度大目に見てくれるでしょうが、マイナーな資格や無資格(別に無資格でやること自体は違法ではありませんが)でカウンセラーを営む場合は医学っぽいことは極力言わないように気をつけるなどしないと突然逮捕されることももしかするとあり得るかもしれませんので、ギリギリに挑むようなことはせず、十分に注意した方が賢明でしょう。
丁寧にフォロー頂きありがとうございます。
「問診」と司法解釈についての説明をしてもらい、さらに少しわかってきたとは思います。。
現在、カウンセラーに関しての司法判断でこれは、というのは見つかりませんでした。
しかし、wikipediaの記述にもあるとおり、カウンセラーと医師の業務とは一定の緊張関係にあることは確かです。
お調べ頂きありがとうございます。
数学などの証明と同じで、違法である(解がある)場合よりも、適法である・違法とした判例がない(解なし)ことを確かめる方が難しいのかな、と想像しています。当方、法律や司法に関して素人ですが。。
医療やカウンセリングという分野周辺は、科学的進歩だけでなく社会や倫理規範の変化によっても、司法解釈が変化する可能性があると思いますので、例え現時点で問題ないとしても将来にわたってそれが保証されるとは限らないのでしょう。
今回は現場での運用や判断に役立つような現実的な情報を求めておりましたのでyazuyaさんのご回答は大変役に立つと思っています。
重ね重ねありがとうございます。
薬の処方や、入院を勧めることがなければ(病院に行ったほうがいいよ、ぐらいの表現なら問題ないと思います)占い師みたいなもんだと思ってやったらいいんじゃないでしょうか?
たぶん、来る人もそういった、カウンセリングが役立ちそうな軽い鬱症状や悩みを抱えた人を対象にしないと、重い統合失調症の人が来ても質問主さんも困るでしょう…
回答ありがとうございます。
カウンセラー側が「占い師みたいなもの」と思っていても、クライエントはそう思わないことの方が多いと思いますので、適切ではないと思います。
また、業としてカウンセリングをするのであれば、クライエントが統合失調症であることが疑われる場合、適切に医療機関等を紹介するなどが、業務として求められると思います。その考えと準備があれば、特別に困ることではないのではないでしょうか。
私は保健師をしています。
保健師とは、保健師助産師看護師法で
「保健師とは厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者」
とありますが、こちらの「保健指導」も微妙な感じです。
以前、勤務していた保健センターでは「血圧測定は医療行為か」という議論があり。
センター長である医師は「医療行為なので、健康相談事業では医師の指示のもと行っていることにする」
と言い、保健師は「測定のみで、その数値について高血圧症などの診断をしなければ医療行為にあたらない」
と主張しました。
結局、数年後厚生労働省から「自動血圧計による血圧測定は医行為にあたらない」という発表がありました。
(これは、ヘルパーについての記述になるますが)
保健指導もカウンセリングと似たところがあります。
私は、保健指導をする場合「○○です」と言い切ってしまうのは「診断」にあたると思っています。
言い切ってしまうことで、相談者がその病気だと思い込み、
医療機関受診の機会を逃してしまうことで、『保健衛生上危害を生ずるおそれのある』可能性もあります。
「この症状は、○○や△△という可能性もありますので、きちんと受診したほうが安心ですよ」
と伝え、医師の診断を受けるようにすることは、保健師業務(保健指導)にあたると思っています。
カウンセリングの場合も、診断名(抑うつ状態、統合失調など)を伝えたら医行為かもしれませんが、
そうでなければ、カウンセラー業務なのではないでしょうか?
ましてや、問診をしなければカウンセリングも保健指導業務もできません。
もしかしたら、自分の行為が医行為だったのか否かは裁判になったときに
司法や検事、弁護士などとのやりとりの中で決まっていく、不定なものなのではないかと思います。
明らかに医行為をしている状況があったとしても、それを訴えられることもなく
また、人情に基づいた行為とみなされたら、裁きを受けないのかもしれないなぁと
ある事例で感じました。
(ある団体の看護師が医行為をしていたので、それは違反ではないか?と指摘しましたが
人道的行為であるから問題はない。という団体の対応でした)
きちんとした判例に基づいた話でなく、体験のみですみません
回答ありがとうございます。
判例等の根拠に基づいていなくても、yu1113さんのような現場での経験・体験は貴重な情報です。
保険師の血圧測定や看護師の業務上の行為については、近年過剰とも思える患者保護の動きに伴い、法的なグレーゾーンの解釈を司法で争う事例が増えていると思います。
心理カウンセラーも国家資格としての整備がされていないとは言え、社会から期待されている能力や責任についての問題は共通するのではないでしょうか。
心理カウンセリングでも
などは必須とされるのでしょう。
医学の基本精神に、そもそも患者に対して良いことをしようとする前に「害をなさない」というものがあります。
この「害をなさない」対象は医療を行う側も含まれると思っています。
犠牲的な献身を尊しとはしない、二次被害を起こさないようにする、などは決して単なる自己保身ではないですから。
今回の質問に関しては、こと最終的には司法や社会等の解釈に結論が左右されますので、「自分は正しいと思うからやったのだ。間違っていない」と主張しても仕方ない場面があり得ます。
さて、心理カウンセリングは基本的に、守秘義務(契約)の基にカウンセラーとクライエントだけの密室で行われます。
内容の正当性や妥当性を考える前に、医療以上に業務の透明性を確保することが難しいのです。
業務内容の透明性と倫理的な守秘のバランスが大事になります。
話としては質問から派生した内容になりましたが、延長線上にあると思っており、返信として触れさせていただきました。
心理カウンセリングは、健康な人に対して行うもの。
「病気を治すとか言う目的で行ったら」医療行為とみなされるきけんがあります(というか医療行為)。
健康な人にも有効な内容であれば大丈夫です。
病院で患者に対して、臨床心理士や精神科医が心理カウンセリングをすることはあるのではないでしょうか?
ただしこの場合はもちろん精神科医の指示・監督・責任のもとに行われますし、保健医療の適応内である場合が多いと思いますが。
そしてその場合、今回私が質問しているような、心理カウンセリングが医行為であるか否か、その内容によって判断が変わるのかという問題は生じませんけれども。
回答ありがとうございます。
判例は根拠として最適なものの一つですね。
そうなんです。診断に関して、定義するための定義ではなくて、実際にどうしたら違法でどこまでが適法なのかを探っています。
問診も悩ましいです。教えていただいた判例ですが、問診行為単独で違法としたのではなく、その後に連接した行為とセットで裁いているような印象を受けましたが誤解でしょうか。。?