始めにお断りしておきます。アニメ「銀河英雄伝説」のそのシーンは確かに見ているはずなのですが、その後がちょっと憶えていません。
そこで手元にあった小説版よりヒルダのセリフ後をまず引用します。
徳間ノベルズ版 7巻 P169
ラインハルトの瞳の奥で蒼氷色のカーテンが揺れて、剛毅な外皮につつまれた繊弱な魂のごく一部が外気にふれた。「卑劣」という語を「愚劣」におきかえれば、彼もまた、煉獄に幽閉されるべき罪人であった。誰よりも自分自身がその事実を知っていた。
「・・・・・・・奴らが下水のあの汚泥とすれば、マル・アデッタで死んだあの老人はまさに新雪であったな」
黄金の髪をゆらせて言ったのは、彼自身も気づきえない逃避であったのかもしれない。にしても、いつわりを彼は口にしたわけではなかった。
「不死鳥は灰のなかからこそよみかえる。生焼けでは再生をえることはできぬ。あの老人はそのことを知っていたのだ。奴らは処断して天上であの老人にわびさせよう」
ちなみに「マル・アデッタで死んだあの老人」とは、降伏を拒否して座乗艦のリオ・グランデとともに戦死したアレクサンドル・ビュコック大将ですね。
さて、「鋭い眼差し」の心情ですが、自身の「愚劣」な行為の代償、つまりラインハルトにいつまでもつきまとう呪縛-「ヴェスターラントの惨劇」への対応の行き違いがきっかけになって生じた親友・キルヒアイスの死-を思い起こすことになったから、ということで間違いないのではないでしょう。
逆境の続く中で自らの手で往く道を突き進み、長年の宿敵自由惑星同盟を労せず手に入れるところまで来たラインハルト。そこには迷いも惰弱も卑劣さも無かったはず。たった一度を除けば・・・。
ヒルダのセリフの前でロックウェルらを侮蔑する言葉を吐いた彼ですが、自らの招いた愚劣な行為によって一生後悔するようなはめになったことを思い出し、とても苦い気持ちになったのでしょう。ヒルダにはそのことを責めるつもりはなかったとしても。
goldwellさま。丁寧なご回答有難う御座いました。小説ではそんな記述なんですね!眼差しの意味、まさにおっしゃる通りだと私も思います。ヴェスターラントとキルヒアイスの件を瞬時に想起したのだと想像できます。ただ、そうであるならば小説のくだりは少々書きすぎですね。行間を楽しむという意味では、あの眼差しひとつで自身の愚劣さを己で悟っているのだと理解出来ます。そう考えると、あのくだりをアニメで眼差しに変えた機転!?は秀逸ですね!goldwellさまのご説明でなんだか楽しくなりました。途中だった銀英鑑賞を最後まで観ようと思います。有難う御座いました。