早くユーズド感を出したいジーパンなどは、洗って干すことを繰り返します。一般には洗うことがユーズド感を出すと思われていますが、実は干すことによる退色も欠かせない要素です。
繊維製品には紫外線による退色のしにくさを表す耐光堅牢度というのがあり、JISでは1級から8級までの基準を定めています(8級が最も堅牢)。インディゴ染料は4級ほどの堅牢度がありますが(家庭用のカーテンなどに必要とされる最低限の堅牢度に相当)、デニム生地になると一般に堅牢度は3級未満で、染めてからブリーチアウトした物などはさらに退色しやすくなります。これは普通は欠点となりますが、ユーズド感を出したいデニム製品には、この退色しやすい性質がかえって都合がいいのです。
紫外線による退色は、ジュースの染み抜きなどにも使えます。たとえばトマトジュースのシミなどは、色素のリコピンが紫外線に弱いので、水洗いした後に日に晒しておくと消えます。
逆に、人間のお肌のシミにはリコピンがメラニンの生成を抑える働きをするので、トマトジュースが適しています。リコピンをめぐるシミのお話、面白いですね。おっと余談でした。
太陽の光の紫外線は、さらに高度な脱色にも用いられています。たとえば越後の「雪晒し」です。これは新潟県で織られている上等な麻織物に用いられる方法で、麻には自然な色が付いていますが、それを雪の上で晒すと真っ白になるのです。雪面に反物を広げて日光に1週間から10日間晒すことによって行われますが、この脱色の科学的な仕組みは次のように説明することができます。
1.雪原に水蒸気が発生する。
2.地表2~3mの低層の空気と水蒸気は日光の照射と雪面の反射によって暖められ上昇する。すなわち温度が上がり気圧が下がる。
3.高温低圧の水蒸気に紫外線が作用すると水の分子が酸素と水素に分解され、さらに酸素がオゾンの形に変化しやすくなる。このオゾンの酸化作用が繊維を漂白する。
雪晒しはこれから染色される反物に対してだけでなく、着古して黄ばみや汚れがついた布にも行われていたそうです。雪晒しは色物にも使える酸素系漂白剤と同じで、色止めされている染料には影響しにくいんですね。
雪を利用した繊維の漂白は、和紙を作る際の楮(こうぞ)などの漂白にも用いられてきたそうですし、雪がない地方でも、たとえば沖縄・八重山に伝わる「海晒し」(海面すれすれに発生するオゾンを利用して布を漂白する)などの伝統的な方法があります。これらはみな太陽光に含まれる紫外線を利用した漂白です。
ところでオゾンで思い出しましたが、はるか上空のオゾン層も、紫外線の力で作られているんでしたね。オゾン層のことをごく簡単に説明すると、
・成層圏中で酸素分子が波長242nm以下の紫外線を吸収して光解離し、その酸素原子と酸素分子が結びついたのがオゾン。
・このオゾンが波長320nm以下の紫外線を吸収する性質を持ち、地上の生命はそれによって守られている。
ということになります。
最近は紫外線の害が強く言われるようになりましたが、その紫外線から地上を守るオゾン層もまた紫外線によって作られていることを考えると、やはり日の光はその全てが尊くすばらしい大宇宙の恵みなんですね。
なお、コロラド大学ボールダー校大気宇宙物理研究所のMichael Mills博士は、全面核戦争などによらずとも、限定的な地域紛争の多発が、より大規模なオゾン層の破壊をもたらすと述べています。人類の歴史よりも昔から地球に与えられていた太陽の恵みを、愚かな政治の過ちで台無しにしない世界を願いましょう。
早くユーズド感を出したいジーパンなどは、洗って干すことを繰り返します。一般には洗うことがユーズド感を出すと思われていますが、実は干すことによる退色も欠かせない要素です。
繊維製品には紫外線による退色のしにくさを表す耐光堅牢度というのがあり、JISでは1級から8級までの基準を定めています(8級が最も堅牢)。インディゴ染料は4級ほどの堅牢度がありますが(家庭用のカーテンなどに必要とされる最低限の堅牢度に相当)、デニム生地になると一般に堅牢度は3級未満で、染めてからブリーチアウトした物などはさらに退色しやすくなります。これは普通は欠点となりますが、ユーズド感を出したいデニム製品には、この退色しやすい性質がかえって都合がいいのです。
紫外線による退色は、ジュースの染み抜きなどにも使えます。たとえばトマトジュースのシミなどは、色素のリコピンが紫外線に弱いので、水洗いした後に日に晒しておくと消えます。
逆に、人間のお肌のシミにはリコピンがメラニンの生成を抑える働きをするので、トマトジュースが適しています。リコピンをめぐるシミのお話、面白いですね。おっと余談でした。
太陽の光の紫外線は、さらに高度な脱色にも用いられています。たとえば越後の「雪晒し」です。これは新潟県で織られている上等な麻織物に用いられる方法で、麻には自然な色が付いていますが、それを雪の上で晒すと真っ白になるのです。雪面に反物を広げて日光に1週間から10日間晒すことによって行われますが、この脱色の科学的な仕組みは次のように説明することができます。
1.雪原に水蒸気が発生する。
2.地表2~3mの低層の空気と水蒸気は日光の照射と雪面の反射によって暖められ上昇する。すなわち温度が上がり気圧が下がる。
3.高温低圧の水蒸気に紫外線が作用すると水の分子が酸素と水素に分解され、さらに酸素がオゾンの形に変化しやすくなる。このオゾンの酸化作用が繊維を漂白する。
雪晒しはこれから染色される反物に対してだけでなく、着古して黄ばみや汚れがついた布にも行われていたそうです。雪晒しは色物にも使える酸素系漂白剤と同じで、色止めされている染料には影響しにくいんですね。
雪を利用した繊維の漂白は、和紙を作る際の楮(こうぞ)などの漂白にも用いられてきたそうですし、雪がない地方でも、たとえば沖縄・八重山に伝わる「海晒し」(海面すれすれに発生するオゾンを利用して布を漂白する)などの伝統的な方法があります。これらはみな太陽光に含まれる紫外線を利用した漂白です。
ところでオゾンで思い出しましたが、はるか上空のオゾン層も、紫外線の力で作られているんでしたね。オゾン層のことをごく簡単に説明すると、
・成層圏中で酸素分子が波長242nm以下の紫外線を吸収して光解離し、その酸素原子と酸素分子が結びついたのがオゾン。
・このオゾンが波長320nm以下の紫外線を吸収する性質を持ち、地上の生命はそれによって守られている。
ということになります。
最近は紫外線の害が強く言われるようになりましたが、その紫外線から地上を守るオゾン層もまた紫外線によって作られていることを考えると、やはり日の光はその全てが尊くすばらしい大宇宙の恵みなんですね。
なお、コロラド大学ボールダー校大気宇宙物理研究所のMichael Mills博士は、全面核戦争などによらずとも、限定的な地域紛争の多発が、より大規模なオゾン層の破壊をもたらすと述べています。人類の歴史よりも昔から地球に与えられていた太陽の恵みを、愚かな政治の過ちで台無しにしない世界を願いましょう。