新人推理作家が、ようやく処女出版にこぎつけた。
定価1000円、初版1000部、ついに世に出るのだ。
糟糠の妻を抱きしめ「印税10%!」と叫んで祝杯を挙げた。
ところが、出版当日、編集部に匿名のメールが届いた。
「あの新作は、犯人の名が、ネットで暴露されている」
たしかに「作者+題名+犯人」で検索すると、スッパ抜かれていた。
有力書店に問合わせると、立読み客ばかりで、一冊も売れていない。
編集者は、作家に、心あたりを訊ねた。
「先生の玉稿を、ほかの誰かに見せたんじゃないでしょうね!」
作家は、全身をふるわせて否定した。
「でも、奥さんには筋書きを話したでしょう?」「えっ、まさか」
「奥さんが、友達に自慢して、犯人の名まで教えたんじゃないの?」
作家が妻を問いつめると「同窓生十数人に電話で伝えた」という。
ただし最初の投稿者は特定できなかった。
出版社の“得べかりし”逸失利益はいかほどか?
太宰治生誕100年記念 ~ 超難問シリーズ #026 ~
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19480619
応答忌 ~ 桜桃忌と白百合忌 ~
一度読めば分かるものだし、1000部程度じゃ「ネタバレのせいで買う気失せた」って人もそうそういない気がします。
そもそも、ネタバレなんかどこにでもありますからね。