慶応大学図書館情報学科の遠藤真氏による調査(インターネット上における有害情報の判定手法とフィルタリング)によると、サイバーパトロール、サイバーシッター、ハザードシールド、サーバータイプフィルタリングシステムといったフィルタリングサービスのフィルタリング成功率は、平均70%前後でした。つまり、フィルタリングサービスは、健全で安全なサイトにアクセスすると4回に1回以上は間違って有害サイトとしてブロックしています。さらに、この調査によれば、フィルタリングが有害サイトにアクセスした時に、正常にブロックされた割合は、23%~55%と非常に低い。つまり、有害サイトにアクセスすると、4回に3回から2回に1回の割合でブロックに失敗し、健全なサイトと判定されます。
財団法人高度映像情報センター フィルタリング・ソフトの構造と性能
http://www.avcc.or.jp/d-sigoto/d-01/05-4/d-01-05-4.html
インターネット有害情報対策セミナー(その1)
「少年と大人にも有害なインターネットの現状と対策」
http://www.iajapan.org/hotline/seminar/20060228.html
講師:悪徳商法マニアックス:Beyond氏 (講演資料 PDF:299KB)
http://www.iajapan.org/hotline/seminar/2006pdf/060228_3.pdf
「フィルタリング」と「有害サイト」@悪徳商法?マニアックス
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20060301#1141151238
i-Filterが「有害サイト」と見なしたもの
悪徳商法?マニアックスhttp://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/、
弁護士ランキングhttp://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/etc/bengosi/、
週刊現代 http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/、
ワニマガジン・ビーズBOOK
http://www.wani.com/corner.php?corner=womens_shop&step=0、
朝生@2ちゃんねるhttp://qa.2ch.net/argue/、
アキバBLOG http://blog.livedoor.jp/geek/、
丸井英弘弁護士http://www.asahi-net.or.jp/~is2h-mri/、
一部の国会議員*1
i-Filterが「非有害サイト」と見なしたもの
消費者金融、オンラインカジノ(ただし「オンラインカジノ」
検索したうち1.8%だけは「有害」扱い)、
週刊ポストhttp://www.ebookjapan.jp/aii/f_url.asp?url=/aii/index_post.asp、Winny、オウム真理教、統一協会、
薬・違法@2ちゃんねるhttp://tmp6.2ch.net/ihou/
有害サイトはブロックされないが、健全で安全なサイトはブロックされる。それがフィルタリングの実態です。
フィルタリングを使っている親は、ブロックされているサイトのURLを知りません。なぜでしょう? フィルタリングはブロックされるべきサイトのリスト(レイティングリスト)を監査していないからです。
なぜレイティングリストを監査しないのでしょうか? どのフィルタリングサービスもレイティングリストを公開していないし、多くの親はそのような手間をかけたくないと思っているからです。
多くの親は、インターネットの情報に接する子どもが好ましくない情報と接したときに、その情報に対してどう感じ、どう判断すべきかについて、子どもと率直に向き合う意欲に欠けています。だから親は、てっとり早く子どもを情報から隔離し、子どもと率直に向き合わずに済むフィルタリングを使わせようとします。
子どものためにフィルタリングが必要だと言う人がいます。しかし本当にフィルタリングを必要としているのは、そう主張している親自身です。子育てに自信が無い親のエゴのために、フィルタリングは存在するのです。好ましくない情報に接したときに、どう受け止め、どう判断すべきか。それを教える行為こそが教育であり育児であり子育てであるのに、その教育の機会をフィルタリングを使う親は放棄しています。そういう意味において、フィルタリングを使わせることは、ある種の無責任な育児放棄という見方もできます。
フィルタリングサービスの業者は、子どもから隔離するべきURLとその具体的な内容のラベリングした情報のリスト、レイティングリストを公開していません。なぜフィルタリング業者はレイティングリストを公開しないのでしょうか?
かつて、インターネット草創期の頃には、レイティングリストを公開していたフィルタリングシステムも存在しました。みんなで情報を寄せ合って、みんなでチェックしてつくるフィルタリングというものもあったのです。フィルタリングの運用には、レイティングリストの公開や、親のラベリング監査が必須だとの議論もありました。
なのになぜ、レイティングリストは公開されなくなったのでしょう? お金のためです。公開すれば、有害サイトとレッテルを貼られたサイト管理者はもちろん、親からも批判が出て、批判があるという事実が広まることによってフィルタリングサービスの信頼が低下し、売上げが落ちるという現実があるからです。
フィルタリングは子どものためではなく、業者の利益のためにあります。レイティングリストを隠し通さないとフィルタリングは普及しません。普及しなければフィルタリング業者は利益が出ません。だから、フィルタリング業者とフィルタリング普及派(日本インターネット協会など)は、とにかく普及率をあげ、売上げを伸ばすことを最優先に考えたのです。
みんなでつくる民主的で開放的なフィルタリングの普及をやめて、レイティングリストを業者だけが独占的につくるようにし、民衆の手による集合知的なレイティングリストを排除し、レイティングリストを非公開にする。そういう方針に戦略を転換したのです。そしてそうなるように政府にもそのように圧力をかけたのです。
「ホワイトリストが良いか、それともブラックリストが良いか」だなんていうどーでもいい議論をしているこの質問やアンケートも、もしかしたら業者の利益をアップさせるための宣伝活動かもしれません。
兎にも角にも、いまのフィルタリングのほとんどは、レイティングリストを第三者が監査訂正することができません。だからフィルタリングの質は悪いままです。質が悪いのにもかかわらず、「こんなフィルタリングはおかしい」という批判は少ないままです。検証ができないからです。
その結果として、フィルタリングの普及率は上がっていき、フィルタリングサービスは売れています。税金を使って国や自治体がフィルタリングを使え使えと宣伝しまくったことも売上げに大きく貢献しています。
アメリカではクリントン政権が公共機関の端末にフィルタリングを装備させることを義務化し、巨額のフィルタリング購入予算を議会に認めさせたため、フィルタリング業者は大もうけしました。そして、法律を議会で作らせるように働いたヒラリー・クリントン議員とビル・クリントン大統領は、フィルタリング業者から多額の政治献金を受け取ったのです。
日本では、アメリカに追随せよと、国民に強制する法律も出来ました。フィルタリング供給会社は天下り会社化しているとも言います。明らかにフィルタリング利権が存在しています。子どもの安全のためではなく、業者の利益のためです。
こんな状況はおかしいとは思いませんか? フィルタリングの“精度”の議論を公開の場で行うべきだとは思いませんか? 閉鎖的で、排他的で、ラベリングを議論することを排除し、密室で作られたフィルタリングサービスを使うことで「安全」が保障されると親たちが思い込いこんでいるのはなぜでしょう? レイティングリストを公開した“誰でもラベリングを監査できる民主的で健全なフィルタリング”を、なぜ親たちは使おうとしないのでしょう? まさにその現実こそがフィルタリングを用いることの有害性です。
そもそも、単一のレイティングによって多様な価値観を持つ親や子どもの情報の取捨選択を制御しようなどという発想自体、どだい無理な話です。ブラックリストにすればよいとか、ホワイトリストが良いなどという議論もナンセンスです。
有害性の判断基準が親の価値観とかけ離れているのに、それを知らずにフィルタリングを子どもに使わせている親はたくさんいます。
たとえば、日本で普及しているあるフィルタリングサービスは、キリスト教原理主義の団体がラベリングに参画していることをみなさんはご存知でしょうか? キリスト教原理主義の団体がラベリングに参画しているため、イエスキリストを神として信仰していないサイト(カルトやまともな仏教サイトを含む)は不品行(ポルノ)なサイトとしてラベリングされているし、人工妊娠中絶を容認するサイト(中絶可能な病院)も有害(ポルノ)としてラベリングされています。大仏はポルノです。反キリスト教的なサイトはなんでもポルノであり有害です。自公政権時代には閣僚のサイトやその閣僚の発言について議論していたサイトもポルノとしてブロックされていたこともありました。こんな調子ですから、使えば使うほど子どもは歪みます。
フィルタリングを使えば安全だと思っている親がいますが、フィルタリングは子どもの安全を保障しません。嘘だと思うなら、フィルタリングサービスの約款を読んでごらんなさい。フィルタリング業者自身、例外なくサービスの約款で「安全を保障しない」と約束しています。どんなフィルタリングも、変化する情報環境には対応できません。事実、フィルタリングの“精度”は悪いのです。
有用なサイトに子どもがアクセスできたかもしれないのに、それがブロックされていたとしても親はブロックされた事実を知る手段がありません。だからそのフィルタリングのレイティングを批判することはできないし、まして是正することもできません。有用な情報にアクセスできず間違いを是正できないフィルタリングは有害です。
メディアの情報は受容文脈によって有害にも有用にもなり得る、というのが今日におけるメディア効果研究の科学的知見です。
子どもが見た情報が直接に子どもに影響を与えるのではなく、子どもが情報を見たあとに子どもの周りにいる人が子どもに対してどんな反応を返すのか、その受容文脈によって子どもへの影響を与えかたは大きく異なる、というのが科学的なメディアコミュニケーションの考え方です。
たとえば、人が殴られる光景を子どもが見たとします。その時、子どもの前で親が「悪い奴をやっつけたね。すっきりした。もっと殴って悪い奴を懲らしめてやればいいのに」と言えば、子どもは殴るという行為を肯定的に受け止めるようになり、「なんてひどいことをするんだろう。殴られた人はとてもかわいそうだね」と殴られた人に共感を示せば、殴るという行為を子どもは否定的に受け止めるようになる、ということが科学的に実証されています。
殴るという暴力的な表現でも、受容文脈によって子どもを暴力的にさせたり、逆に暴力に否定的になったりします。子どもの側にいる親が、どこかの国の大統領のように「悪の枢軸」というレッテルを貼ってみせるか、それとも「あこがれの北朝鮮」を歌って笑いながら話し合うか。「オウム出て行け」と叫ぶだけか、それとも「サリン」を歌って子どもと議論するか。同じ情報でも、子どもの友だちや親がどのような態度をとるかによって、子どもの受け止め方は大きく変ります。
http://www.youtube.com/watch?v=LeOpyWVPMr8
http://www.youtube.com/watch?v=7cxixiIbFgU
情報が与える影響は、一概には言えません。情報が与える影響の複雑さにフィルタリングが対応できません。それはキーワードフィルタリング(言葉狩り)というフィルタリングの主流となっている手法に特にあてはまります。
たとえば、血液病の人にとって、輸血に関する情報は有用です。しかし、輸血を宗教的な罪とするエホバの証人の家庭では、輸血を是とする情報は罪であり有害です。
そのためにホワイトリストやブラックリストがあるじゃないか、と主張する人がいるかもしれません。
たしかに、エホバの証人の親は、「輸血」という言葉をキーワードにフィルタリングを使わせることはできます。しかし、そのようにしてフィルタリングを使えば、エホバの証人にとって極めて有用な“無輸血治療の医療技術に関するサイト”もブロックされてしまいます。無輸血治療の医療の実態を知らない信者は、命を落とすかもしれません。ブラックリストやホワイトリストによるフィルタリングを安易に使うことが子どもを殺してしまうこともあるのです。
フィルタリングとは元来、そのように致命的な欠陥を内包したシステムです。それは宗教的マイノリティが使用するケースに限ったことではなく、あらゆる価値観を持つ人にあてはまる、フィルタリングというアーキテクチャ自体が持つ致命的な欠陥です。
どんな価値観にも対応可能なフィルタリングサービスというものは存在しません。安全という価値観は多様であり、変化するからです。暴力情報を回避することが安全だと考える親がいる一方、暴力がなぜ起きるのかを知ることこそが安全を保障すると考える親もいます。性行為や性犯罪を教えないことが安全だと考える親がいる一方、性感染症や性犯罪の特徴などの危険性を積極的に知らせ考えさせることこそが子どもの危険を少なくさせると考える親もいます。
価値観は多様です。しかし価値観の多様性に完全に対応できるフィルタリングは存在しません。それはブラックリストでもホワイトリストでも同じこと。だから、フィルタリングによって安全を作れるという主張は幻想です。
フィルタリングサービスはいりません。子育てを機械にまかせるべきではありません。育児や教育は人間がやるべきことです。人は人によってしか育たない。
余談ですが、「小学生や中学生などの犯罪の増加」とid:ut-woc氏は書いていますが、どの時点と比較して増加したと言っているのかが不明です。比較対象時点によっては、むしろ少年犯罪は減っているという見方もできます。これは少年“被害”についてもあてはまります。子どもの被害が増えているという人がいるが、比較対象時点によっては、減っているという見方もできます。子どもの犯罪被害は減っています。
少年犯罪は急増しているか
http://kogoroy.tripod.com/hanzai.html
少年犯罪データベース
http://kangaeru.s59.xrea.com/
幼女レイプ被害者数統計
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-youjyoRape.htm
慶応大学図書館情報学科の遠藤真氏による調査(インターネット上における有害情報の判定手法とフィルタリング)によると、サイバーパトロール、サイバーシッター、ハザードシールド、サーバータイプフィルタリングシステムといったフィルタリングサービスのフィルタリング成功率は、平均70%前後でした。つまり、フィルタリングサービスは、健全で安全なサイトにアクセスすると4回に1回以上は間違って有害サイトとしてブロックしています。さらに、この調査によれば、フィルタリングが有害サイトにアクセスした時に、正常にブロックされた割合は、23%~55%と非常に低い。つまり、有害サイトにアクセスすると、4回に3回から2回に1回の割合でブロックに失敗し、健全なサイトと判定されます。
有害サイトはブロックされないが、健全で安全なサイトはブロックされる。それがフィルタリングの実態です。
フィルタリングを使っている親は、ブロックされているサイトのURLを知りません。なぜでしょう? フィルタリングはブロックされるべきサイトのリスト(レイティングリスト)を監査していないからです。
なぜレイティングリストを監査しないのでしょうか? どのフィルタリングサービスもレイティングリストを公開していないし、多くの親はそのような手間をかけたくないと思っているからです。
多くの親は、インターネットの情報に接する子どもが好ましくない情報と接したときに、その情報に対してどう感じ、どう判断すべきかについて、子どもと率直に向き合う意欲に欠けています。だから親は、てっとり早く子どもを情報から隔離し、子どもと率直に向き合わずに済むフィルタリングを使わせようとします。
子どものためにフィルタリングが必要だと言う人がいます。しかし本当にフィルタリングを必要としているのは、そう主張している親自身です。子育てに自信が無い親のエゴのために、フィルタリングは存在するのです。好ましくない情報に接したときに、どう受け止め、どう判断すべきか。それを教える行為こそが教育であり育児であり子育てであるのに、その教育の機会をフィルタリングを使う親は放棄しています。そういう意味において、フィルタリングを使わせることは、ある種の無責任な育児放棄という見方もできます。
フィルタリングサービスの業者は、子どもから隔離するべきURLとその具体的な内容のラベリングした情報のリスト、レイティングリストを公開していません。なぜフィルタリング業者はレイティングリストを公開しないのでしょうか?
かつて、インターネット草創期の頃には、レイティングリストを公開していたフィルタリングシステムも存在しました。みんなで情報を寄せ合って、みんなでチェックしてつくるフィルタリングというものもあったのです。フィルタリングの運用には、レイティングリストの公開や、親のラベリング監査が必須だとの議論もありました。
なのになぜ、レイティングリストは公開されなくなったのでしょう? お金のためです。公開すれば、有害サイトとレッテルを貼られたサイト管理者はもちろん、親からも批判が出て、批判があるという事実が広まることによってフィルタリングサービスの信頼が低下し、売上げが落ちるという現実があるからです。
フィルタリングは子どものためではなく、業者の利益のためにあります。レイティングリストを隠し通さないとフィルタリングは普及しません。普及しなければフィルタリング業者は利益が出ません。だから、フィルタリング業者とフィルタリング普及派(日本インターネット協会など)は、とにかく普及率をあげ、売上げを伸ばすことを最優先に考えたのです。
みんなでつくる民主的で開放的なフィルタリングの普及をやめて、レイティングリストを業者だけが独占的につくるようにし、民衆の手による集合知的なレイティングリストを排除し、レイティングリストを非公開にする。そういう方針に戦略を転換したのです。そしてそうなるように政府にもそのように圧力をかけたのです。
「ホワイトリストが良いか、それともブラックリストが良いか」だなんていうどーでもいい議論をしているこの質問やアンケートも、もしかしたら業者の利益をアップさせるための宣伝活動かもしれません。
兎にも角にも、いまのフィルタリングのほとんどは、レイティングリストを第三者が監査訂正することができません。だからフィルタリングの質は悪いままです。質が悪いのにもかかわらず、「こんなフィルタリングはおかしい」という批判は少ないままです。検証ができないからです。
その結果として、フィルタリングの普及率は上がっていき、フィルタリングサービスは売れています。税金を使って国や自治体がフィルタリングを使え使えと宣伝しまくったことも売上げに大きく貢献しています。
アメリカではクリントン政権が公共機関の端末にフィルタリングを装備させることを義務化し、巨額のフィルタリング購入予算を議会に認めさせたため、フィルタリング業者は大もうけしました。そして、法律を議会で作らせるように働いたヒラリー・クリントン議員とビル・クリントン大統領は、フィルタリング業者から多額の政治献金を受け取ったのです。
日本では、アメリカに追随せよと、国民に強制する法律も出来ました。フィルタリング供給会社は天下り会社化しているとも言います。明らかにフィルタリング利権が存在しています。子どもの安全のためではなく、業者の利益のためです。
こんな状況はおかしいとは思いませんか? フィルタリングの“精度”の議論を公開の場で行うべきだとは思いませんか? 閉鎖的で、排他的で、ラベリングを議論することを排除し、密室で作られたフィルタリングサービスを使うことで「安全」が保障されると親たちが思い込いこんでいるのはなぜでしょう? レイティングリストを公開した“誰でもラベリングを監査できる民主的で健全なフィルタリング”を、なぜ親たちは使おうとしないのでしょう? まさにその現実こそがフィルタリングを用いることの有害性です。
そもそも、単一のレイティングによって多様な価値観を持つ親や子どもの情報の取捨選択を制御しようなどという発想自体、どだい無理な話です。ブラックリストにすればよいとか、ホワイトリストが良いなどという議論もナンセンスです。
有害性の判断基準が親の価値観とかけ離れているのに、それを知らずにフィルタリングを子どもに使わせている親はたくさんいます。
たとえば、日本で普及しているあるフィルタリングサービスは、キリスト教原理主義の団体がラベリングに参画していることをみなさんはご存知でしょうか? キリスト教原理主義の団体がラベリングに参画しているため、イエスキリストを神として信仰していないサイト(カルトやまともな仏教サイトを含む)は不品行(ポルノ)なサイトとしてラベリングされているし、人工妊娠中絶を容認するサイト(中絶可能な病院)も有害(ポルノ)としてラベリングされています。大仏はポルノです。反キリスト教的なサイトはなんでもポルノであり有害です。自公政権時代には閣僚のサイトやその閣僚の発言について議論していたサイトもポルノとしてブロックされていたこともありました。こんな調子ですから、使えば使うほど子どもは歪みます。
フィルタリングを使えば安全だと思っている親がいますが、フィルタリングは子どもの安全を保障しません。嘘だと思うなら、フィルタリングサービスの約款を読んでごらんなさい。フィルタリング業者自身、例外なくサービスの約款で「安全を保障しない」と約束しています。どんなフィルタリングも、変化する情報環境には対応できません。事実、フィルタリングの“精度”は悪いのです。
有用なサイトに子どもがアクセスできたかもしれないのに、それがブロックされていたとしても親はブロックされた事実を知る手段がありません。だからそのフィルタリングのレイティングを批判することはできないし、まして是正することもできません。有用な情報にアクセスできず間違いを是正できないフィルタリングは有害です。
メディアの情報は受容文脈によって有害にも有用にもなり得る、というのが今日におけるメディア効果研究の科学的知見です。
子どもが見た情報が直接に子どもに影響を与えるのではなく、子どもが情報を見たあとに子どもの周りにいる人が子どもに対してどんな反応を返すのか、その受容文脈によって子どもへの影響を与えかたは大きく異なる、というのが科学的なメディアコミュニケーションの考え方です。
たとえば、人が殴られる光景を子どもが見たとします。その時、子どもの前で親が「悪い奴をやっつけたね。すっきりした。もっと殴って悪い奴を懲らしめてやればいいのに」と言えば、子どもは殴るという行為を肯定的に受け止めるようになり、「なんてひどいことをするんだろう。殴られた人はとてもかわいそうだね」と殴られた人に共感を示せば、殴るという行為を子どもは否定的に受け止めるようになる、ということが科学的に実証されています。
殴るという暴力的な表現でも、受容文脈によって子どもを暴力的にさせたり、逆に暴力に否定的になったりします。子どもの側にいる親が、どこかの国の大統領のように「悪の枢軸」というレッテルを貼ってみせるか、それとも「あこがれの北朝鮮」を歌って笑いながら話し合うか。「オウム出て行け」と叫ぶだけか、それとも「サリン」を歌って子どもと議論するか。同じ情報でも、子どもの友だちや親がどのような態度をとるかによって、子どもの受け止め方は大きく変ります。
http://www.youtube.com/watch?v=LeOpyWVPMr8
http://www.youtube.com/watch?v=7cxixiIbFgU
情報が与える影響は、一概には言えません。情報が与える影響の複雑さにフィルタリングが対応できません。それはキーワードフィルタリング(言葉狩り)というフィルタリングの主流となっている手法に特にあてはまります。
たとえば、血液病の人にとって、輸血に関する情報は有用です。しかし、輸血を宗教的な罪とするエホバの証人の家庭では、輸血を是とする情報は罪であり有害です。
そのためにホワイトリストやブラックリストがあるじゃないか、と主張する人がいるかもしれません。
たしかに、エホバの証人の親は、「輸血」という言葉をキーワードにフィルタリングを使わせることはできます。しかし、そのようにしてフィルタリングを使えば、エホバの証人にとって極めて有用な“無輸血治療の医療技術に関するサイト”もブロックされてしまいます。無輸血治療の医療の実態を知らない信者は、命を落とすかもしれません。ブラックリストやホワイトリストによるフィルタリングを安易に使うことが子どもを殺してしまうこともあるのです。
フィルタリングとは元来、そのように致命的な欠陥を内包したシステムです。それは宗教的マイノリティが使用するケースに限ったことではなく、あらゆる価値観を持つ人にあてはまる、フィルタリングというアーキテクチャ自体が持つ致命的な欠陥です。
どんな価値観にも対応可能なフィルタリングサービスというものは存在しません。安全という価値観は多様であり、変化するからです。暴力情報を回避することが安全だと考える親がいる一方、暴力がなぜ起きるのかを知ることこそが安全を保障すると考える親もいます。性行為や性犯罪を教えないことが安全だと考える親がいる一方、性感染症や性犯罪の特徴などの危険性を積極的に知らせ考えさせることこそが子どもの危険を少なくさせると考える親もいます。
価値観は多様です。しかし価値観の多様性に完全に対応できるフィルタリングは存在しません。それはブラックリストでもホワイトリストでも同じこと。だから、フィルタリングによって安全を作れるという主張は幻想です。
フィルタリングサービスはいりません。子育てを機械にまかせるべきではありません。育児や教育は人間がやるべきことです。人は人によってしか育たない。
余談ですが、「小学生や中学生などの犯罪の増加」とid:ut-woc氏は書いていますが、どの時点と比較して増加したと言っているのかが不明です。比較対象時点によっては、むしろ少年犯罪は減っているという見方もできます。これは少年“被害”についてもあてはまります。子どもの被害が増えているという人がいるが、比較対象時点によっては、減っているという見方もできます。子どもの犯罪被害は減っています。