※ http://q.hatena.ne.jp/1265638929 の続きです。
確率微分方程式について勉強していて「Excelで学ぶ金融市場予測の科学」という本を読みました。
確率微分方程式で株式を予測するのはわかるのですが、
今回のリーマンショックなどが予測できなかったのはなぜでしょうか?
1.予測していたけれど、リーマンショックが起こる確率が低かった
2.負の感情の連鎖による株の暴落が、中心極限定理では表現できない?(リーマンショック自体が局所的な現象で人類の歴史全体を見ると中心極限定理で表せてる?)心理モデルを作るしかない??
上記のようにいろいろ考えてみたのですが、よくわかりません。
教えていただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
「1.予測していたけれど、リーマンショックが起こる確率が低かった」
については、こちらの説明が参考になるかと思います。
金融工学の前提の一つに「独立の仮定が適用できる」というものがある。これは、確率論をうまく使うために必要なものであり、幾分かは緩めることができる。複数の出来事に相関があると考えてシミュレーションをするなどの方法である。しかし、それは通常時に観察される相関であって、経済全体が緊密に関連して状況が変化するような事態には対応できていない。
金融工学では、これをシステミック・リスクと呼ぶが、これについては基本的にお手上げであるとして考慮しない。これは、砂に首を突っ込んで安心するダチョウと同じ論理である。
独立の仮定が十分効いていれば、このような安心も許される。異常な事態が起こるのが、非常に稀になるからである。しかし、経済のすべては弱い相互作用で結ばれている。時にその相互作用が逸脱を拡大する方向に作用する。そのとき、異常に大きな変動が生じ、大問題となる。
このような異常事態が生じたため、サブプライム・ローンでは優良なトランシュまで紙屑となった。大量に投資していた銀行や機関投資家に焦げ付きが生じ、その煽りで何社かが倒産すると、CDSによって損失の連鎖反応が広がった。
CDSが想定するのも、倒産は各社独立であるという仮定である。もしそうであれば、保険の原理で大事には至らなかったはずである。しかし、返済不能が連鎖して一斉に起これば、どんな金融機関でも持たない。
また、「2.負の感情の連鎖による株の暴落が、中心極限定理では表現できない?」に関しては、
以下のページで説明されている内容が分かりやすいかと思います。
金融工学の基礎には多くの仮定があるが、共通した問題として次の3つがある。①独立の仮定、②正規分布の仮定、③価格受容者の仮定。これらは、理論内部の位置を異にし、本来同列のものではないが、多くの破綻の理論上共通の「原因」となっている。
今回の金融危機でいえば、優良なトランシュを切り出すという仕組み債の背後には、各貸付の事故は相互に独立であるという仮定があった。もちろん、これが乱暴な仮定であることは当事者たちもよく分かっていたから、相関係数を調整するといった修正を施しているが、住宅価格の一斉の下落といった共通要因の変化までは組み込んでいなかった。CDSも、もし債務事故が独立であるなら、保険の原理によって、システムの安定化に役立っていたはずである。DBLやLTCMにおいても、経済が順調に推移している限りでは、うまくいっていた。それが急に破綻に向かったのは、金融工学がシステミック・リスクないし市場リスクといって目をつぶっていた要因、つまり①の仮定の崩壊があった。
正規分布の仮定は、正常と異常との比率判断に関係している。株価指数がほぼ正規分布(正確には対数正規分布)にしたがって変動していることはよく知られている。それがファットテール(厚い裾野)をもつこともよく知られている。問題は、ファットテールを誤差とみるか、本質的なものとみるかにある。多くの金融工学は、これを誤差と扱ってきた。確率からいえば、1パーセント以下の事象であり、これを誤差とみるか、そうでないとするかは学問内部の神学論争とみなされやすい。しかし、これはほぼ10年に一度繰り返される、金融工学を起源とする金融事件を理解する鍵なのである。
株価指数が一日に数パーセントも動くことは、正規分布を仮定するなら、数万年に一度と考えてよい。それを無視するのは当然である。しかし、もしこれを切断されたレビ分布と見るなら、数年に一度起こるべきものとなる。生起確率としては、1万倍も異なる評価となる。経済は、数年に一度、通常は切り離されている逸脱増幅機構が働き、大きな経済変動を引き起こす。そうした内部機構を無視した結果がDBL事件であり、LTCM破綻であり、今回の金融危機なのである。
リーマンショックは、入念に計算された詐欺のようなものですので、そのようなものを予測するというのは、難しいのです。
以下のURLの話が参考になるかと思います。
しかし金融工学は乱用され 偽札まがいの債権を仕込んだ証券がばらまかれアメリカ経済は崩壊した。
ご回答ありがとうございます。
後でじっくり読んでみます。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090719.html
NHK特集 マネー資本主義で
↑の回は、金融工学で、噛み砕いて説明していました。
オンデマンドでも、閲覧可能ですから、
御覧頂くと腑に落ちるかもしれません。
ご回答ありがとうございます。
NHK特集は一部見たのですが、オンデマンドでも見れるのですね!
見てみます。
「1.予測していたけれど、リーマンショックが起こる確率が低かった」
については、こちらの説明が参考になるかと思います。
金融工学の前提の一つに「独立の仮定が適用できる」というものがある。これは、確率論をうまく使うために必要なものであり、幾分かは緩めることができる。複数の出来事に相関があると考えてシミュレーションをするなどの方法である。しかし、それは通常時に観察される相関であって、経済全体が緊密に関連して状況が変化するような事態には対応できていない。
金融工学では、これをシステミック・リスクと呼ぶが、これについては基本的にお手上げであるとして考慮しない。これは、砂に首を突っ込んで安心するダチョウと同じ論理である。
独立の仮定が十分効いていれば、このような安心も許される。異常な事態が起こるのが、非常に稀になるからである。しかし、経済のすべては弱い相互作用で結ばれている。時にその相互作用が逸脱を拡大する方向に作用する。そのとき、異常に大きな変動が生じ、大問題となる。
このような異常事態が生じたため、サブプライム・ローンでは優良なトランシュまで紙屑となった。大量に投資していた銀行や機関投資家に焦げ付きが生じ、その煽りで何社かが倒産すると、CDSによって損失の連鎖反応が広がった。
CDSが想定するのも、倒産は各社独立であるという仮定である。もしそうであれば、保険の原理で大事には至らなかったはずである。しかし、返済不能が連鎖して一斉に起これば、どんな金融機関でも持たない。
また、「2.負の感情の連鎖による株の暴落が、中心極限定理では表現できない?」に関しては、
以下のページで説明されている内容が分かりやすいかと思います。
金融工学の基礎には多くの仮定があるが、共通した問題として次の3つがある。①独立の仮定、②正規分布の仮定、③価格受容者の仮定。これらは、理論内部の位置を異にし、本来同列のものではないが、多くの破綻の理論上共通の「原因」となっている。
今回の金融危機でいえば、優良なトランシュを切り出すという仕組み債の背後には、各貸付の事故は相互に独立であるという仮定があった。もちろん、これが乱暴な仮定であることは当事者たちもよく分かっていたから、相関係数を調整するといった修正を施しているが、住宅価格の一斉の下落といった共通要因の変化までは組み込んでいなかった。CDSも、もし債務事故が独立であるなら、保険の原理によって、システムの安定化に役立っていたはずである。DBLやLTCMにおいても、経済が順調に推移している限りでは、うまくいっていた。それが急に破綻に向かったのは、金融工学がシステミック・リスクないし市場リスクといって目をつぶっていた要因、つまり①の仮定の崩壊があった。
正規分布の仮定は、正常と異常との比率判断に関係している。株価指数がほぼ正規分布(正確には対数正規分布)にしたがって変動していることはよく知られている。それがファットテール(厚い裾野)をもつこともよく知られている。問題は、ファットテールを誤差とみるか、本質的なものとみるかにある。多くの金融工学は、これを誤差と扱ってきた。確率からいえば、1パーセント以下の事象であり、これを誤差とみるか、そうでないとするかは学問内部の神学論争とみなされやすい。しかし、これはほぼ10年に一度繰り返される、金融工学を起源とする金融事件を理解する鍵なのである。
株価指数が一日に数パーセントも動くことは、正規分布を仮定するなら、数万年に一度と考えてよい。それを無視するのは当然である。しかし、もしこれを切断されたレビ分布と見るなら、数年に一度起こるべきものとなる。生起確率としては、1万倍も異なる評価となる。経済は、数年に一度、通常は切り離されている逸脱増幅機構が働き、大きな経済変動を引き起こす。そうした内部機構を無視した結果がDBL事件であり、LTCM破綻であり、今回の金融危機なのである。
ご回答ありがとうございます。
よくわかりました。
本当にありがとうございます。
ご回答ありがとうございます。
よくわかりました。
本当にありがとうございます。