アガサ・クリスティの長編『アクロイド殺し(原題:The Murder of Roger Ackroyd)』を巡って、当時のミステリ関係者が繰り広げたと言われる論争についての資料を探しています。当時の関係者がアクロイドについて言及した文章、あるいは論争の経緯について記した論文などあれば、教えていただけると幸いです。資料は日本語に訳されている必要は無く、英文でも構いません。

よろしくお願い致します。

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  • 登録:2010/06/11 14:13:15
  • 終了:2010/06/18 14:15:02

ベストアンサー

id:meefla No.4

meefla回答回数981ベストアンサー獲得回数4582010/06/18 00:42:13

ポイント10pt

フェア派であったドロシー・L・セイヤーズの『アクロイド殺し』に関する記述は、1928年に彼女が編集したアンソロジー『探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集』(Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror) にありました。

原文は Google Books で Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror - P34 の脚注1にあります。

これは、アンソロジーの序文としてセイヤーズが書いた長文の解説ですが、「クリスティなどの作家はワトソン形式を取っている」という文への注釈として『アクロイド殺し』に触れています。

お読みいただければおわかりになるように、ヴァン・ダインが本名の W. H. Wright で書いた1927年の『推理小説論』への、名指しの反論です。


セイヤーズ/探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集 経由で、この論文が「探偵小説論」 として、セイヤーズの『顔のない男』(創元推理文庫)に収録されている事を知り、未読でしたので近くの本屋で確認しました。

「探偵小説論」の方では、原文ではページごとになっている脚注が最後にまとめてあり、該当部分は374ページの注34です。

また、ハワード・ヘイクラフト の The Art of the Mystery Story にも収録されています。

ただし、このページによれば、同じ The Art of the Mystery Story の訳本でも、研究社出版の『推理小説の詩学』(1976) の方にはリストアップされていないので、この版には収録されていないのかもしれません。

成甲書房版の方には、『推理小説の美学』(1974) と『ミステリの美学』(2003) の両方で、「犯罪オムニバス」として収録されているようです。

(研究社出版の方には「犯罪オムニバス第2集・第3集序」はありますが、該当部分は第1集の序文です)


さて、該当部分を読んでみると、これがヘイクラフトの『娯楽としての殺人』における記述、

Other readers and critics rallied as ardently to Mrs. Christie's defense, chanting the dictum: "It is the reader's business to suspect every one."

の引用元になっている可能性が高いと思われます。

セイヤーズの表現は、

It is, after all, the reader's job to keep his wits about him, and, like the perfect detective, to suspect everbody.

単語は job と business、every one と everbody で微妙に違っていますが、文の構造は全く同じであり、最後をイタリックで強調している所も一緒です。

(単語使いは『探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集』が "The Omnibus of Crime" というタイトルでアメリカ版になった時に編集されたのかもしれません。ハリーポッターのように)


ヴァン・ダインの『推理小説論』(原文 The Great Detective Stories)の方も、『探偵小説傑作集』(1927) というアンソロジーの序文であった事を考えると、「フェア・アンフェア論争」の発端は、英米のアンソロジー序文対決だったようです。


以上、ご参考になれば幸いです。

その他の回答(3件)

id:koriki_kozou No.1

小力子象回答回数78ベストアンサー獲得回数22010/06/11 15:14:34

ポイント27pt

The Times Literary Supplement's review of June 10, 1926, began with "This is a well-written detective story of which the only criticism might perhaps be that there are too many curious incidents not really connected with the crime which have to be elucidated before the true criminal can be discovered". The review then gave a brief synopsis before concluding with "It is all very puzzling, but the great Hercule Poirot, a retired Belgian detective, solves the mystery. It may safely be asserted that very few readers will do so."

id:jamais_vu

素早い回答どうもありがとうございます!

1926年の6月ですから、まさに英米で出版された直前・直後といった頃の記事ですね。

論争そのものの資料ということにはならなそうですが、参考にさせていただきます。

2010/06/12 00:08:10
id:meefla No.2

meefla回答回数981ベストアンサー獲得回数4582010/06/14 13:33:05

ポイント27pt

しばらくウォッチしていましたが、なかなか本題への回答がつかないようですので。


Wikipedia 日本語版の アクロイド殺し にある「フェア・アンフェア論争」についての資料をお探しのものと推察します。

Wikipedia 英語版の The Murder of Roger Ackroyd を読んでも、Literary significance and reception の部分には直接的な言及がないようです。

(ここにリストされている当時の新聞レビューを当たる、という手段はあるかもしれません)

また、Google で検索してもこれと言ったまとめや一次資料はヒットしませんでした。

はたして論争たる論争があったのかさえ疑問に思ったくらいです。


一次資料ではありませんが、ハワード・ヘイクラフト の「娯楽としての殺人 (Murder for Pleasure)」での記述は、日本でも有名だと思われます。

原文は、

Christie, Agatha (Vol. 12) - Howard Haycraft: Contemporary Literary Criticism

とか

Google Books の The Agatha Christie Companion - P18 の下の方から読めます。


もう一つ、Wikipedia に「アンフェア派の筆頭であったヴァン・ダイン」という記述があり、これを裏付けるものとして、

The gentle art of murder: the detective fiction of Agatha Christie - P6 に、Van Dine の名前があがっています。

ただ、ヴァン・ダインが、一体いつどんな発言をしたのか、については調べきれませんでした。


未読ですので内容は不明ですが、書評 アクロイド殺し(アクロイド殺害事件) によると、

フェア・アンフェア論争を具体的に読みたい方は、「夜明けの睡魔」p204以下を参照のこと

だそうですので、もしまだ未読でしたら入手されると良いかもしれません。


以上、ご参考になれば幸いです。

id:jamais_vu

丁寧なご回答、ありがとうございます。

ヘイクラフト『娯楽としての殺人』、原文がネット上で読めたのですね。知りませんでした。教えてくださり、ありがとうございます(一応、邦訳版も持っております)。


お礼と言っては何ですが、いくつか僕の方から持ち合わせている知識を。

ただ、ヴァン・ダインが、一体いつどんな発言をしたのか、については調べきれませんでした。

ヴァン・ダインの『アクロイド』への言及として有名なのは、1927年の『推理小説論』(創元推理文庫 『ウィンター殺人事件』 収録)における批判です。ただ、それ以外の場所で彼がどういう発言をしていたのかについて、資料は知りません。また、彼に対する反論も、僕の知っている範囲では、ドロシー・L・セイヤーズが「作者と読者の間ではフェアプレイが成立しているのだから問題ない」という旨の発言をしていた”らしい”という話があるくらいで、具体的なことはよく分かりません。

ちなみに、

フェア・アンフェア論争を具体的に読みたい方は、「夜明けの睡魔」p204以下を参照のこと

『夜明けの睡魔』は既読ですが、やはり当時の論争の資料を発掘できるほどの記述はなかったと思います。


個人的には、当時は謎解きに主眼を置いた探偵小説のルールを整備しようという動きが頂点に達していた時期なので、論争自体はあったと考えるのが自然かと思いますが、その具体的な姿が見える資料がほとんど出てこないというのは歯痒いものがあります。

2010/06/16 13:10:20
id:meefla No.3

meefla回答回数981ベストアンサー獲得回数4582010/06/16 22:33:44

ポイント26pt

どうやら既知の情報であまりお役には立てなかったようですので、

ドロシー・L・セイヤーズが「作者と読者の間ではフェアプレイが成立しているのだから問題ない」という旨の発言をしていた”らしい”という話

を調べてみましたが、こちらも明確な情報は得られませんでした。

本来ならコメント欄レベルですが、コメント欄が開いていないので、再度回答で失礼します。


セイヤーズと『アクロイド殺し』で検索すると、いくつかヒットします。

murder of roger ackroyd « Brian Jay Jones

This is the book — only her seventh — that made Agatha Christie famous, and which very nearly got her kicked out of the British mystery writers’ Detection Club on charges that she had violated the rules of fair play. Only the dissenting vote of Dorothy L. Sayers (who allegedly said “Fair! And fooled you!”) kept Christie in the organization.

もう一つ、The Murder of Roger Ackroyd by Agatha Christie Summary によれば、

The controversy nearly got Christie kicked out of the Detection Club for violating the rules on "fair play" with the reader. Only the tie-breaker vote of president Dorothy Sayers kept Christie in the club.

二つを要約すると、フェアプレイの誓いを破った事でクリスティを ディテクションクラブ から除名するかどうかの投票が賛否同票になって、会長であったセイヤーズの鶴の一声、「フェアよ! だまされたあなたたちが悪い!」で除名されなかった、というものです。

よくできたお話ですが、裏を取ってみると、少なくとも『アクロイド殺し』の出版直後のエピソードではないようです。


そもそも、ディテクションクラブの発足年自体がはっきりしていないようですが、

  1. Detection Club によれば、1929年 (推測)
  2. Wikipedia の Detection Club によれば、1930年
  3. Mysteries: Rules of the Genre (PDF) によれば、1930年
  4. ノックスの十戒 (1928) の元になったのが、ディテクションクラブの入会時の誓い (The Detection Club Oath) だとすれば1928年には存在していた?

ですので、どこをどう考えても『アクロイド殺し』(1926)よりも後の事です。

また、初代会長はチェスタートンであり (1930-1936)、セイヤーズが会長だったのは1949年から1957年です。

(ちなみにセイヤーズの次の会長がクリスティ)

ディテクションクラブの The Scoop and Behind the Screen に収録されている "Something is Missing" (1930) をクリスティが書いている事からも、クリスティが発足時からのメンバーであることは明らかですから、「入会時の誓いを破った本を書いた」事でどうこう言われた、というのは考えにくいと思われます。


私も歯痒いので、時間が許す限り調べてみます。

コメント欄をオープンにしていただけると嬉しいです。ご一考ください。

id:jamais_vu

これは面白い話をありがとうございます!

ディテクションクラブの The Scoop and Behind the Screen に収録されている "Something is Missing" (1930) をクリスティが書いている事からも、クリスティが発足時からのメンバーであることは明らかですから、「入会時の誓いを破った本を書いた」事でどうこう言われた、というのは考えにくいと思われます。

ディテクションクラブは本格ミステリ作家の集まりですし、後年、レクリエーションの一環としてお遊びのノリで企画されたものという可能性もありそうですね。そもそも入会時の誓い自体が、「お遊び」みたいなものですし。実際、セイヤーズの適当な仕切りとかにはその匂いがぷんぷんするような……w

それから、コメント欄はオープンにさせて戴きました。ご指摘、ありがとうございます。もし間接的にでも有益な情報などあれば、引き続き書き込んでくだされば幸いです。

よろしくお願い致します。

2010/06/17 01:00:15
id:meefla No.4

meefla回答回数981ベストアンサー獲得回数4582010/06/18 00:42:13ここでベストアンサー

ポイント10pt

フェア派であったドロシー・L・セイヤーズの『アクロイド殺し』に関する記述は、1928年に彼女が編集したアンソロジー『探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集』(Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror) にありました。

原文は Google Books で Great Short Stories of Detection, Mystery and Horror - P34 の脚注1にあります。

これは、アンソロジーの序文としてセイヤーズが書いた長文の解説ですが、「クリスティなどの作家はワトソン形式を取っている」という文への注釈として『アクロイド殺し』に触れています。

お読みいただければおわかりになるように、ヴァン・ダインが本名の W. H. Wright で書いた1927年の『推理小説論』への、名指しの反論です。


セイヤーズ/探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集 経由で、この論文が「探偵小説論」 として、セイヤーズの『顔のない男』(創元推理文庫)に収録されている事を知り、未読でしたので近くの本屋で確認しました。

「探偵小説論」の方では、原文ではページごとになっている脚注が最後にまとめてあり、該当部分は374ページの注34です。

また、ハワード・ヘイクラフト の The Art of the Mystery Story にも収録されています。

ただし、このページによれば、同じ The Art of the Mystery Story の訳本でも、研究社出版の『推理小説の詩学』(1976) の方にはリストアップされていないので、この版には収録されていないのかもしれません。

成甲書房版の方には、『推理小説の美学』(1974) と『ミステリの美学』(2003) の両方で、「犯罪オムニバス」として収録されているようです。

(研究社出版の方には「犯罪オムニバス第2集・第3集序」はありますが、該当部分は第1集の序文です)


さて、該当部分を読んでみると、これがヘイクラフトの『娯楽としての殺人』における記述、

Other readers and critics rallied as ardently to Mrs. Christie's defense, chanting the dictum: "It is the reader's business to suspect every one."

の引用元になっている可能性が高いと思われます。

セイヤーズの表現は、

It is, after all, the reader's job to keep his wits about him, and, like the perfect detective, to suspect everbody.

単語は job と business、every one と everbody で微妙に違っていますが、文の構造は全く同じであり、最後をイタリックで強調している所も一緒です。

(単語使いは『探偵・ミステリ・恐怖小説傑作集』が "The Omnibus of Crime" というタイトルでアメリカ版になった時に編集されたのかもしれません。ハリーポッターのように)


ヴァン・ダインの『推理小説論』(原文 The Great Detective Stories)の方も、『探偵小説傑作集』(1927) というアンソロジーの序文であった事を考えると、「フェア・アンフェア論争」の発端は、英米のアンソロジー序文対決だったようです。


以上、ご参考になれば幸いです。

  • id:meefla
    コメント欄のオープン、ありがとうございます。
    中間報告ですが、ドロシー・L・セイヤーズの言及を見つけました。
    回答回数も増やしていただけたので、今夜にでも再回答させていただきます。
    念の為にヴァン・ダインの方も探してみます。
  • id:jamais_vu
    id:meeflaさま

    少々私事が忙しい状況で、回答を開くのが遅れてしまい申し訳ありませんでした。
    数日内に、改めてまたしっかりした形でのコメント(と評価)をさせていただきます。

    今回は本当にありがとうございました。
  • id:jamais_vu
    id:meeflaさま

    コメント遅れてしまい申し訳ありません。

    セイヤーズのコメントは僕の方でも色々と探してみましたが、他に特にめぼしいものは見つかりませんでした。
    meeflaさんの挙げてくださったものに尽きているのかもしれませんね。

    一応、都立図書館のレファレンスにも調査を依頼してみましたので、そちらで役に立つ回答があれば
    ここのコメント欄でまた報告させていただきます。

    今回はご回答、本当にありがとうございました。
  • id:meefla
    いるか賞とポイントのご送付、ありがとうございます。

    > meeflaさんの挙げてくださったものに尽きているのかもしれませんね。

    文献として残っているものは少ないでしょうね。
    図書館レベルでの調査で何かわかると良いのですが。

    個人的には、非常に興味深いご質問でした。
    ディテクションクラブで寄り道をしてなければ、とも思いますが
    ベストは尽くしたつもりです。
    また何かありましたら、よろしくお願いします。

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