最判昭和51年4月14日(いわゆる議員定数不均衡違憲判決)は、公正かつ効果的な代表を選出するために、非人口的要素も考慮できる旨を述べています。すなわち、「行政区画、面積の大小、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況」や「政治における安定」といった要素を考慮できると述べています。
人口密度の疎密や、面積の大小、交通の盛んさといったことが、なぜ「公正かつ効果的な代表」を選出するために考慮されて然るべきなのか、投票価値の不平等を正当化できるのか、よく理解できません。
やさしい解説をお願いします。
http://www.google.com/ (ダミー)
そもそもの前提として、選挙区設定の単位はある程度の自治能力を持った行政区画でないといけません。
でなければ事務的な問題から選挙実施自体が困難になりますし、選挙区制が「地域代表の選出」的側面を少なからず持っている以上、コミュニティ意識のあるまとまりから選出させるのが民意反映においても合理的だからです。
そして行政区画を単位とする以上、完全な整数人口比を実現するのは不可能です。
更に、民意を正確に反映するためには、単に人口比だけ考えればいいわけではありません。
以下、極端な例を挙げてみます。
たとえば、高齢化の進んだ山深い過疎地域で、1:1を実現するために選挙区を広くしたとしましょう。すると立候補者の選挙活動は広域に及んで大変になりますし、投票者としても、情報が入りにくくなったり、投票所に行きにくくなったりします。投票のための情報が行き来しにくく、投票自体も行われにくければ、いくら投票価値を平等にしても意味がありません。
また、住民のほとんどがX党支持のA地域と、住民のほとんどがY党支持のB地域があったとします。従来選挙区がA地域とB地域で分かれており、各1人当選だったとすれば、ほぼ全員の投票が反映されることになります。これをそれぞれ支持者数が拮抗するような選挙区2つに設定し直したとしたらどうでしょうか。
こうなるとそれぞれで半数の投票が死票となり、民意が半分しか反映されないことになります。各選挙区で人口的にA>Bであれば、B地域はまるまる死票を出すことになります。
更に、ある地域であまりに拮抗しすぎて選挙が過熱すれば、不正の温床ともなりかねず、新規参入も難しくなります。
選挙というのは国民の積極的行動を必要とするので、投票意欲の喚起や物理的障害の排除、事務処理の円滑化などが必要であり、そのためには移動のしやすさや選挙区の広さ、コミュニティ意識といったものも考慮しなければならないのです。
1票の価値を同じにするだけでは、その1票を行使させたり、行使された1票から正確な民意を汲み取ることはできないということです。
丁寧なご説明で、非常によく理解できました。どうもありがとうございます。