被疑者に殺意があれば「強盗殺人罪」、殺意がなければ「強盗致死罪」
上記の罪に適用される刑法の条文は、双方とも刑法第240条です。
(強盗致死傷)
第240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
強盗殺人罪と強盗致死罪の違いについては、以下のサイトを参照して下さい。
強盗罪(2)
23回目の今回は、強盗致死傷罪など、裁判員制度の対象となる罪について説明します。
裁判員制度の対象となるものは、強盗致死傷罪と強盗強姦罪、強盗強姦致死罪の3つです。いずれも、強盗犯人(未遂も含む)であることが成立の条件となるため、強姦の後に強盗の意思を生じて強盗したような場合には、強姦の時点では強盗犯人ではないので、強盗強姦罪は成立しません(この場合、強姦剤と強盗罪が成立します)。
強盗致死傷罪は、(1)被害者を殺害して財物を奪取する場合(強盗殺人)、(2)被害者を傷害して財物を奪取する場合(強盗傷人)、(3)被害者を殺害する意思はなかったが、暴行によって被害者が死亡してしまった場合(強盗致死)、(4)被害者を傷害する意思はなかったが、暴行によって被害者を負傷させてしまった場合(強盗致傷)の4つの類型に分類することができます。
殺意のある場合とない場合で、同じ罪が成立するのは違和感があるかもしれません。判例も、以前は強盗殺人について、殺人罪と強盗致死罪が成立するとしていましたが、現在では、強盗致死罪のみが成立し、殺意の有無は量刑の判断材料とされるにとどまっています。
なお、上の例では説明をわかりやすくするために、強盗の被害者と死傷の被害者を同一人物として説明しましたが、強盗の被害者以外の者が死傷の被害者であっても、それが強盗の機会に発生したものであれば、強盗致死傷罪が成立する場合があります。たとえば、ひったくりの被害者の悲鳴を聞いて駆けつけた警備員を逮捕を免れるためにナイフで刺して殺害したような場合でも、強盗殺人罪が成立します。
過去の判例では、金品奪取の際に、被害者の傍らに寝ていた子供を殺害した事例で、強盗殺人罪の成立を認めています。
(以下略)
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