テーマ:アイドル りょうり
創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
ルールははてなキーワード【人力検索かきつばた杯】を参照してください。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5
締切は1/30(月)の夜を予定しています。
『今日の料理』
――これは何だ?
一朗は目の前に置かれた物体の為す意味に惑い、その意図をようやく察知するのに暫くの間を要した。アイドル状態のまま動かない一朗にじれた妻は口を開いた。
「今日の晩御飯は、健康の為に生野菜サラダよ。」
妻のその言葉に、一朗は絶望したといっていい。
そして行き場のない憤りが一朗を支配する。
この寒空の下、北風に凍えながらも帰宅して、やっと暖かい飯にあり付けると安堵した矢先のことである。何故にこのような野蛮な物を食わねばならぬのか。
健康の為に野菜を食え、それはわかる。
しかし、しかしだ、生で食わねばならぬ理由は何か?
スープでも野菜炒めでもいい、とにかく加熱さえしてくれればいくらでも美味しく食うことは難くない。何故生なのか。
さらに悪いことに、無数にちりばめられた青くさい無数の塊、想像したくもないが、間違えようもない。キュウリである。こんな栄養のない青くさいだけの代物を、何故我慢して食わねばならぬのか。考えただけで涙が滲む。
しかし、食卓の向かいで微笑む愛妻の目は、完食するまで一歩も引かない、その決意が漲っていた。
「こりゃあ、死ぬな」
思わず辞世の句でも詠もうとしたが、ふと、あることを思い出したのは僥倖だった。
冷蔵庫にトマトがあったじゃないか。
そこに考えが至ると、急に生気が戻ってきた。やれる、まだ望みはある。
「トマトも食べていいかな」
「だめよ、それは明日ミネストローネに使うんだから」
「いいじゃないか」
どうして、それを今晩作らないんだ?と言いたくなるが、機会と見れば絶対に逃さないのが本物のいくさ人である。
有無を言わさず、トマトを刻みキュウリへ添える。
これでいい。
トマトの酸味がキュウリの青くささを打ち消し、何とか平らげることができる。
……今夜も無事に終わった。
「御隣、空いてる?」
随分ぼうっとしていたらしい、急に周りの音が降ってきて、僕は少し飛びあがった。
声のした方を見るときに、長い間同じ姿勢だったせいか、首が音を立てて回った。
視界に飛び込んできた目に鮮やかな、真っ赤なワンピースの少女が、ふわりと陽だまりのような笑顔を浮かべる。
「どうぞ。あまり良いところではないけれど。」
ちょっとぶっきらぼうに言ってみる。
彼女はやっぱり暖かい微笑みを顔に灯して、ふわっと音がしそうに柔らかい動きで横に座った。
「有難う。素敵なところだと思うわ。」
銀色でできた、小さな部屋。
真っ赤な彼女と、白の僕。
暗い壁はほんのちょっとだけ、此方に光を返してくる。
他の人たちは皆壁に寄りかかって、喋っていたり、呆けていたり。
ちょっと狭い、そんなところ。
「ああ、此処はもう、御空は見えないのね。」
「残念ながら。あの滝を超えた者には、もう御空は見られないんだって。」
「そんなこと、ちびっこも言っていたわ。人に追いやられて、あまりお喋り出来なかったけれど。」
「僕らは、旅をしなければいけないからね。仕方ないよ、決まったことだもの。」
たわいもないお喋りが、楽しかった。
彼女はとても綺麗な顔立ちで、じっと見られると少し照れくさかった。
僕が笑いかけると彼女は、鼻の頭を赤くしてそっぽを向いた。
短い時間。
けれど、少しずつ暖かくなっていく部屋の中で。
僕らは幸せだった。
「ねえ、ねえ」
「ん?」
「あのふたりお似合いだと思わない?」
「そうかな……」
「そうよ、真っ赤な彼女と真っ白い彼氏。これからずっと仲良くできたらいいのに」
「僕たちよりもかい?」
「ええ、私たちよりも」
そういって笑う彼女の鼻の頭にはケチャップが付いていた。
そんな私はロールキャベツにケチャップをかけているところです。
御部屋の中に満たされた御水は、ゆっくりと赤に染まっていって。
青年はおたまを御部屋に入れて、かき回します。
少年と少女は、しっかりと手をつないで、おたまの中に飛び込みます。
「今事務所出た。今日はあったかいもの食べたいなぁ。」
彼女からのメールを確認して、青年はエプロンのポケットに携帯をしまう。
メタルブルーのそれは、光を失いつつ淡い桃色の布地に吸い込まれていった。
ふっと息を短く吐くと、青年はまたおたまを手に取り、鍋に向かう。
鍋の中には、温かい赤色の、ミネストローネ。
湯気まで赤く染まりそうに真っ赤なスープを、青年はクツクツと煮込んでいた。
気分ものってきたので、鼻歌なんかを歌ってみる。
愛情、否、恋愛感情なのだろうか。
何にせよ、彼女への想いであるそれを、たっぷりと料理に注いでいる。
青年は、普通に良く居る好青年で、大手会社の広報部で働いている。
この若さなので、まだまだ慣れていないが、そこそこの給料は貰えている。
料理は母があまり料理上手でなかったため、小さい頃からよく手伝っていた。
中学にあがる頃には、自分で弁当を作ったりもした。
一人暮らしを始めてからは、料理が趣味のようなものだったので、毎日楽しくキッチンに立っている。
大学では、そこそこのキャンパスライフとやらを楽しみ、友人とカラオケに行ったり、食事をしたりと、人との関係にもさほど問題はない。
そんな、そこらへんにありふれている一般人だ。
そして彼は今、同居している女性の為に、料理しているところだったりするわけだ。
青年はスープを覗き込み、時計を確認した。
味見をしようと、小皿を棚から取り出す。
小皿に転がり込んだ赤いスープは、まだ熱そうに湯気をあげている。
溜息混じりにふー、と湯気をなびかせて、少しずつ冷ます。
舌に流し込んだミネストローネは、丁度良い酸味と塩味で、胡椒の香りが優しく後を追うように鼻をかすめていった。
完成したスープを青年は、幸せそうな表情で、二つの皿に均等になるように分ける。
「ただいま~!御飯できてる?」
「御帰り。ミネストローネ、冷めないうちに飲みな。」
「有難う、じゃ、いただきます!」
「今日A誌の取材受けたらさ、カメラマンさんが…って、また玉葱入ってる!」
(ああ、俺、幸せだな。)
またもや大成功だ。これが玉葱のようで玉葱ではないとは
さすがの彼女の気付いていないだろう。
そう、青年も気付いていない。いや、青年が買ってきたお店で売っていた人も、そのお店へ卸した業者も、業者に売りつけた生産者も、その生産者へ苗を売った農協の職員も誰一人だ。
その玉葱のようで玉葱ではなかった代物は、すでに他の家庭でも多く食されている。今日に始まったことではない。
ずっと前から、計画は進んでいるのだった。
そして、今日もまた一人。玉葱嫌いでありつつも、暖かいスープ、作ってくれた人への愛情。そういったものを、感じ取り、口に運んだ。
世界のどこかで大きな口が、下弦の月のようにほくそ笑んでいた。
う~ん、1作目と2作目、もう少し繋がっている感じが出せれば良かったかなぁ。
彼女の嫌いな玉葱と、青年が好きなトマト。
白い男の子と、赤い女の子。
でも、これはこれで良いのかもしれないな。
そして玉葱じゃないんですかこれ!?
まさかの展開にびっくりしました。
「お邪魔しま~す」
俺は彼女の部屋に入った。
彼女は、いつも俺を迎えに出ては来てくれない。
ほかの人に見つかったら大変だからだ。
表札も人目につかないところに飾ってある。
彼女は、アイドルだ。
俺は、ただのファンに過ぎない。
その俺がなぜ彼女の家に出入りしているのか。
俺は、犯罪者である。
盗みを働いていた。
その時偶然この家に入り込んでしまったのである。
運の悪いことに、その日は家に彼女はいた。
あれから、俺達は交際している。
成り行きは伏せておく。
書いたりなんかすれば、俺はすぐに鬼ごっこ状態になるのは分かり切っているから。
とてもいい匂いがする。
暗い廊下を慎重に歩いていくと、沢山の料理が並んでいた。
「今日は腕によりをかけたんだから!」
彼女の声が聞こえる気がした。
今日は、彼女の葬式。
料理は、彼女の得意だったものばかりだ。
なぜ葬式wwww
彼女が得意だったのは、手の込んだ料理ばかりだった。
さすがの俺も作るのには手間がかかった。
特に豚バラの煮込み。
中華風かと思いきや実は見た目は和風でありながら、実は洋風の味付けがなされている。
こんなもののレシピをどこで見つけたかというとそれは彼女のレシピノートから見つけた。
これがあるから、彼女の手料理を全て……、そう全て俺は食することができるのだ。
後何品あるだろう。まだまだだ。今日だけでは食べきれない。
明日も、明後日も食べ続けることになるだろう。
彼女の分と俺の分。常に二人分ずつ。
明るい食卓が目に浮かぶようだ。
それは、彼らの長年の日常だった。
平日は、彼女がまるでお母さんのように料理をする。
それは栄養のバランスがよく考えられた、
生活のための料理である。
休日は、彼がちょっと時間をかけて凝った男の料理をする。
それはまるで、趣味や道楽の様な料理であり、
彼なりの愛情表現でもあった。
同棲を始めて数年、ちょっと難しい時期だと人は言う。
そんなある日、彼はちょっと気になるレシピを見つけた。
それは、“Idle Cooking: Recipe for Easy Jumbalaya (Jambalaya)”
(「アイドル料理:簡単ジャンバラヤのレシピ」)というものだ。
下記原文参照:
http://theidlelife.com/idle-cooking-recipe-for-easy-jumbalaya/
Idle Cooking (アイドル料理)の真髄とは、
要は調理器に材料を詰め込んで、六時間半、
只「何もせずに(idle)」料理が出来上がるのを待つというものだ。
或る日曜日、休日ならではの朝食と昼食を兼ねた様な
軽いフルーツで目覚めた彼は、「アイドル料理」を始めた。
ふと、昨日の夜のちょっとした言い合いを思い出す。
キッチンの窓から柔らかい春の陽光が差しこむ。
もうすぐ夏。
彼女は今年で28歳。
商社に勤める彼は、今年の秋からの海外駐在を言い渡されたところだ。
先輩達のキャリアを考えると、仕事上では大きなチャンス。
自分はまだ若く、未熟で、何よりも世界で自分を試してみたいと思う。
しかし、長年尽くしてくれたつもりの彼女は、
どうやら最近は結婚とやらに焦ってきている。
それが彼らの昨日の晩のすれ違いの原因。
彼は無心に、全ての材料を調理器に詰め込み始めた。
彼女はまだベッドで静かに寝息をたてている。
頬にはまだ少し、乾いた涙の跡が残っている。
彼は無心に、全ての荷物をトランクに詰め込み始めた。
六時間半後、スロークッキングのアイドル料理は出来上がっていることだろう。
二年後、君は待っていてくれるだろうか。
ジャンバラヤを食べるとついつい、彼女を思い出す。
あれから何年たっただろう。
結局彼女とは数年間連絡を取らなかった。
目の前の皿には、綺麗にトッピングがなされたジャンバラヤが。
彼はスプーンでそれを運び、ゆっくりと咀嚼した。
噛めば噛むほど味が染み出てくる。
どうやらここのジャンバラヤ、見た目を取り繕っているような適当な品物ではなく丁寧な下ごしらえから始まりゆっくりと時間をかけて創られたもののようだ。
あれからもう数十年。
鍋に残ったジャンバラヤを二人で食べたことを思い出す。
スプーンを持つ手が震える。米やら具が入れ歯に挟まった。
それでも彼は食べ続けた。あの味を思い出しながら。
「いや、この処理は30msのタスクに割り付けないと周期が守れないよ?」
「しかし……、30msタスクは処理が多すぎて処理時間がパンクしてしまいます。優先度の低い処理はアイドルに割り付けておかないと」
「じゃあ、もっと遅い周期のタスクを作ってそっちに移すしかないか。とにかくアイドルに色々処理を置くのはダメだよ。実行するかどうかも特定できなくなるし、だいたいアイドルも処理で既にいっぱいでしょ?」
「わかりました。100msとかのタスクを追加して処理の割付を見直してみます」
呼び出し音♪
「はいもしもし?春日です。今、NRのソフトのレビュー中なんですが……わかりました今すぐ行きます。はいすみません」
「ゴメン来生君、ちょっと不具合あったみたいで試験場に行って来る。レビューの続きはまた明日でもいいかな?」
「わかりました」
試験場へ
「どうしたの?」
「あ、春日さん、これなんですけど……この処理の時の信号波形がおかしいでしょう?ほら、時々不規則になる」
「ああこれ、さっき似たような話を来生君としてたんだけど、多分、処理をアイドルに置いているんじゃないかな、だから伝送とかで割り込み処理が増えると遅れるんだと思う。ソフト屋さんに確認してみる」
呼び出し音♪
「はい春日です。何でしょう?え?通産奉行賞の表彰式のスピーチ原稿?……いやまだです。ええ、空いた時間にやろうと思って……すみません」
呼び出し音♪
「え?何?RSの見積もり?こないだやったばっかりでしょう。え?コストダウン提案?いやちょっと待ってくださいよ、前回提示の額は300台規模で発注するから単価抑えてって話だったじゃないですか。それを100台発注したところで、残り200台についてまた見積もれとかコストダウンとか、意味わかんないんですけど!?……ええ……ああ、まあ今週中って急に言われて、はいそうですかってわけにはいかないですしね。わかりました、今回は前回の実績ベースでダウンはせずに、はい、わかりました」
呼び出し音♪
「あ、NSRの配線図ね、ごめんまだ上がってないんだ。うん、わかってる。ちょっといま立て込んでてさ、明日中には出図しておく予定。出図するときに連絡します。申し訳ない」
やっと机に戻って来る。
「もしもし春日です。検見川さんいらっしゃいますか?……ああ検見川さん?今試験中のNRなんだけど、処理の割付について確認したくて。うん、そうそう、弁閉鎖信号が不規則に動くんですけど、これってアイドルに置いたりしてません?ああやっぱりそうか~、そりゃダメですよ。定時性が保証されないと制御的にまずいでしょう。ええ、え?前から同じ?いやいや昔のことはどうでもいいですよ、今回のは少なくともダメです。え?仕様書の改定……、えぇ~、あ~、はい、わかりましたすぐ書いて送りますから。じゃよろしくお願いしますね」
呼び出し音♪
「あ、楠田さん、ごぶさたしてます。ホッケンハイムはどうでした?ええ、ええ、ああそうなんですか、やっとRCVも動きだすんですね。やるぞやるぞと言われてアイドル状態が早や半年ですもんね。再来週に提案会?朝霞で?またえらい急ですね。ええ、資料作るのがちょっと大変かな。まあなんとかしますが……はい、わかりました。」
呼び出し音♪
「はい春日です。え?部品が実装できない?サイズが違う?部品表は?C33のコンデンサはEMVE160ADA100MD55Gになってるけど……。え?それ部品表古くない?改定03じゃなくて02?いまMailで最新版送るから、国府津さん悪いけど他の部品もチェックしてくれる?」
呼び出し音♪
「はい春日です。はい、ええ、通産奉行賞……いや、ですから、それどころじ……いえ、とにかくもう少し待っていただけませんか?すみません」
呼び出し音♪
「あ、来生君。あー今朝の?はい、100msと500ms作って割付見直しした。はい、アイドルには処理残ってない、OKOK。そうそうアイドルに置いといたって何時処理されるかわかんないしね。今後は他のも見直さないとマズいんじゃないかな?じゃあまた。ありがとうございました」
結局、終日こんな調子で「空いた時間にやろう」と予定していた作業がまったく手につかず、うんざりした気分で家路へつくのであった。
「ただいま~」
「おかえり、今日はラタトュユにしてみたけど、どうよ?」
「うおーすっげーうまそう!さすが恭一!」
――起業なんて夢みたいなこと言ってないで、いっそ料理人になっちゃえばいいのに。そしたら父親の会社も継がずに済むんじゃないの?
と、口に出しかけたが、とりあえず目の前にある幸せの享受に専念しようと考え直した春日優子であった。
「それで考えてくれた?」
「ああ、婿養子の件か。そんなことよりラタトュイユ喰え!」
「そんなことより婿になれ!」
しばし無言での食事が続く。
「で、どうすんの? 会社継ぐの? 婿に来るの?」
「今答えださないといけないことか?」
「そうよ、何時までも待ってられないわ! 恭一の心が知りたい」
「そうだな、いい機会だ。じっくり話をしようと思う。実はそう思ってこのラタトーユを作ったんだ」
恭一の目が目の前のラタトチュに注がれた。
つられて優子もラタトィユを見つめる。
「この、ラトtィユはな……そもそも」
恭一の口から語られたこと、それはまずはラタテユユツという料理の起源であった。
そして、その話が徐々に恭一と優子の二人の関係へとシフトしていく。あくまで自然に。いつのまにか、優子は自身がラタロリユの一部になったような気さえしてしまった。
まだまだ長い。ラトリググの話は尽きない。
……いや、あの、最後の一文をいきなり無視して進めないで欲しいような気がするような……(^^;
『きみはアイドル』
きみはアイドル。ぼくのアイドル。
もうすぐ授業が終わる。きみに会える時間が来る。
放課後直前のこの時間、ぼくはもう気が気じゃない。
きみのことで頭がいっぱいだ。
先生の言葉もクラスメイトの視線ももうまったく気にならない。
ぼくたちの世界にはぼくときみだけ。
ふたりだけの世界はもうすぐそこだ。
はやく会いたいよ。会いたくて会いたくて震えるよ。
今日はきみとどうやって時間を過ごそう。
きみといっしょに食べるため専用のパン、知ってるだろ?
あれは付き合いたてのカップルが食べるものだと思わない?
ぼくたちみたいな関係なら、1種類のパンだけじゃ足りないよね。
いっしょに料理をするのが、最近はとても楽しいよね。
(ちなみにちょい足しだって料理だよね。)
きみのイニシャルってなんの意味なんだろう。
LOVEかな。LUNCHかな。LIBERTYかな。
それともぼくの服のサイズかな。
それならLじゃなくてLLなんだけどな。
そのときチャイムが鳴った。
6時間めが終わった。
今日もチャイムの瞬間に駆け出す。
帰宅部の特権と友達の少なさをフルに生かして。
いつもの青いコンビニへと駆け出す。
今日もレジのところにいるはずのきみに、
少しでも、少しでも早く会いたくて。
今日も空は青いよ。
暗い屋内でずっと待っていなきゃならないきみを、
外へ連れ出すのは世界中でぼくだけさ。
いっしょに逃げよう。
ほら。空を飛ぶ鶏さえ、いま一瞬きみに見えたよ。
きみのことを考えすぎなのかな。
きっとそうだね。
ああ!
ほんとうは放課後だけじゃなくって毎朝、毎昼、毎晩、毎深夜、
きみに会いたいさ。
昼休みも丑三つ時も会いにいけたらいいのに。
あなたに会いたくて会いたくて眠れぬ夜にあなたのぬくもりを思い出すのは
きみだけじゃない。ぼくだって同じ気持ちさ。
でもそうするわけにはいかないのさ。
ぼくはもちろんきみのためなら何だってするけど、
でも世間の目とぼくのお財布が許さない。
だからせめて、1日1度の放課後ぐらいは
ぼくはベストのぼくでいられるように日々努力している。
昼食だって味を薄めにしてる。
ぼくを待つきみのことを考えれば、それくらい苦でもなんでもないのさ。
いま、きみに会いたくて走っているよ。
会いにいけるアイドルってきみのことだね。
会いたかったー会いたかったー会いたかったーいえす!!
きみへの想いだけがぼくの体を前へ前へと運ぶよ。
朝は孤独で、寒くて、コートのポッケに手を突っ込んで通学するぼくだけど、
駆け抜ける帰りの道にはそんなことするものか。
コートどころか、制服のブレザーすら暑くていらないぐらいだ。
きみのおかげさ。
きみがあたためてくれたらきっと、
この今年最強の寒波だってシベリアへ帰るだろうし、
平均気温が氷点下43度の火星にも人類が移住できるようになる。
被災地の仮設住宅からは雪がとけて、
春一番が吹かなくたって春はやってくるだろう。
それもぜんぶきみがあたためてくれるからだよ。
罪なやつだね☆
でも、きみのためならぼくは世界中敵にだって回そう。
今日はきみをどんなふうに料理しようかな。
心配しなくていいよ。少しもこわいことじゃない。
ぼくはぼくが知らないきみを知りたいだけだ。
もふもふのバンズもいいけれど、
白いご飯がおいしいのだって実はぼくは知っている。
それともいっしょにレタスにのせて和風ドレッシングをかけようか。
おねがいランキングできみのこと放送された回があったね。
録画して毎日見ているよ。ちょい足しってイイよね。
ごまドレッシングもプレミアムロールケーキもぜんぶ試したよ。
でもそれじゃ飽き足らないよ。今日はどうしよう。
ううん。いや。でも、やっぱりありのままのきみがいい。
だって今日はぼく、家までもちそうにないのさ。
ああ、いますぐきみの白いヴェイルを破いてしまいたい。
きみに噛み跡を残したい。
きみのジュースを残らずすすりたい。
きみの衣をぼくのものにしたい。
もう絶え絶えの息。
揺れる二重あご。
それでもほとばしる唾液。
溢れ出るきみへの想い。
さあお店の前に着いた。
レジの前にはいつものようにきみがいる。
このコンビニが自動ドアじゃなくて本当によかった。
ドアを開ける風に乗って、きみのにおいが漂うよ。
久しぶりに会うきみは、
今日もぼくに優しく微笑みかけてくれる。
ガラスの向こうのきみにすぐ触れられないのがもどかしい。
早くきみに触れたい。
耐えられない。
レジまでのたった数歩が永遠みたいだ。
学校を出るとき握りしめていた小銭が、
いまこそ役に立つよ。
税込128円。
釣り銭なし。
それをレジに叩き付ける。
ぼくはきみへの愛を大声で叫ぶよ。
届け、この想い!
「Lチキひとつください!!」
「それでは、エントリーNOと名前から」
試験官の目が光る。となりにいるのは演出家だろうか。
「73番、榎本いちごです!」
「特技はここに書いてあるとおり、歌と踊りかな」
「はい、それと小説を書くのが得意です!」
目の前の面々はあからさまに顔をしかめた。
取り繕うように試験官が促す。
「ええっと、じゃあ、何か歌いながら躍ってくれるかな」
「はい、じゃあ……」
♪
あたし、さん、にい、いちご
なんたってちょっと天然
たまにしょぱいけど すっぱさも持ち合わせてる
伸びきったつま先で トーキックしちゃお
なんたって女王ですから
間奏の間もいちごは踊り続ける。
ほうと感嘆の声を上げるものもいれば、ぶつぶつと隣と話すものもいる。
思いのほか好感触だ。
このまま気持ちよく続きを歌おうというその時、いちごの携帯が鳴り響いた。
「はっ、すいません」
「君、携帯くらい切っておきなさいよ」
そんな注意には目もくれず。
「これは、かきつばた杯の召集メールだわ!
お題は……『L』『チキン』か……」
「ちょっと、君?」
「『L』……『L』は何の『L』?
リップじゃないし、そもそもわたしそんなに身長高くないし
身長低い男子って好みじゃないし……」
「おい、聴いてるのか? 今は大事なオーディション中じゃないか?」
「そうだわ! おもいついた、『L』と『チキン』。そう向かうところはひとつよ」
「もういい、失格だ。次の人呼んで」
かきつばた作家とアイドルの両立は難しい。
あらためて知るいちごであった。
チャラチャラチャー! チャラーチャラララー!
DJキャプテンバーガーのアナウンス「は~い! 今日も美味しいおりょうりタイム『おりょうりアイドル シー!ハー!ファイン!』が始まりますよ~」
私の名前はおりょうりアイドル ファイン!
毎回私のりょうりの腕とちょぴりの魔法を組み合わせて素敵なご馳走をみんなに届けるの!
今日の収録は生放送な上にプロデューサーの意向で追加アイドルが登場するから緊張しちゃう。
でもりょうりアイドルだけが使える不思議な魔法で今日も絶対成功させちゃうから。
DJキャプテンバーガーのアナウンス「さ~て、今日からはファインちゃんだけじゃなく新しい仲間ヒョコちゃんも登場だ! ファインちゃん、ヒョコちゃんどうぞ~」
オープンキッチンを模したセットの左袖から中学生くらいの長身の女の子ファインちゃんと小学生低学年くらいのヒョコちゃんが小走りで登場する。最近、小学生向けのおりょうりアイドルにファインちゃんの高身長はアンバランスなのではないか、という批判があることは公然の秘密だ。
「初めまして、ヒョコです! 今日はご挨拶の代わりに得意料理の卵焼きを作ってきました!」
ヒョコちゃん、卵焼きのタッパーをファインちゃんに続けてスタッフに差し出す。 ファインちゃんは可愛らしいカメラを意識した動作で口に卵焼きをほうばる。食い意地のはった他のメンバーも早速口に放り込む。
若干の苦味・・・焦げてる?
「ええっと、美味しいね、ありがとうヒョコちゃん! でもこのお料理スタジアムでファインと一緒に料理するともっと美味しい料理が作れるようになるよ! がんばろうー」
【最近トウがたち過ぎっていう声があるのは分かってるけど、まさかまさか、プロデューサーのやつ、私を降ろしてこの子と世代交代させようってんじゃないでしょうね。だとしたら・・・】
ファインちゃんは料理を使ったちょっぴりの魔法が使えます。食べた相手に影響を与えることができるその魔法は"りょうりアイドル"だけに使える現代の奇跡です。
????【ふふふ、冒頭二行目でお題の「りょうり」と「アイドル」をさばいたからな。これで後はヤリタイホウダイだぜ。"かきつばた"のお題を徹底的に捻るのは手間が掛かる割りには見返りが少なかったからやめたかったんだよな】
「(変なの)ところで、ヒョコちゃん、今日の料理は何かな?」
「うん、今日は私も初めてのお料理スタジアムだから、定番料理のビーフストロガノフを作りましょうなの」
【げっ、ビーフストロガノフって私作ったこと無いよう! そもそもビーフはいいとしてストロガノフってなんなのよ! 酢がトロットロなGUN ofなわけはないし スパイみたいな名前なんで料理についてんのよ!】
ファインちゃん、キッチンセットの下からビーフストロガノフの材料を取り出す。しかし初見のためじゃがいもの種類が分からない。
「ヒョコちゃん! このじゃがいも、名前なんだか知ってる?」
【ふふふ、これなら野菜の名前分かんなくってもなんとかなるわね。私って天才】
「え~と、きゅうり? 」
【いやいやいや、さすがにねーだろ、キュウリは。っていうかジャガイモの種類聞いてんのに「きゅうり」って答えはどうなのよ】
冷静な顔のファインちゃん、気を取り直してジャガイモを顔の横に持ち上げる。画面が自分の顔のアップになることを狙った意図的な演出だ。ただ最近そのアザトい演出も某掲示板で叩かれる原因になっているので多用はできない。
「これわね~、じゃーん なんと・・・」
そのモッタイブッタ動作と引きに引いたセリフの間にカメラ横にカンペが出される。
「メークィーンなのだ。ビーフストロガノフにはメークィーンが一番! なの。覚えておいてね」
【決めた! 今日の魔法は「私の言うことを聞く」にしよう。この子に自分の口から「私じゃだめです。やっぱり、りょうりアイドルはファインちゃんじゃなきゃ!」って言わせれば・・・】
ファインちゃんの魔法は料理の仕込みそれも包丁を使うことで発揮される。彼女が包丁を使って作った料理を口にした人に影響を及ぼすことができるのだ。
????【それにしても、最近グラン娘のかきつばた多いよなあ。S響にばっかBAとらせんのも癪だし、参加はしたいけどめんどいなあ。あ、また参加してるよ。今度は何色のS響だ? いつもいつも滑り込みで入ってくるから対策立てんの大変なんだよなあ】
数秒間、ファインちゃんとヒョコちゃんの視線が絡み合う。ヒョコちゃんの目は純粋で真っ直ぐにファインを見つめてくる。大丈夫、心配ないよ、という風に。
「じゃあ次は私得意の包丁裁きで、このメークィーンに飾り包丁を入れるよ!」
「あっ」とヒョコちゃんの声。
構わずファインちゃん、包丁でジャガイモに切れ込みを入れる。ジャガイモ一つ切るのに1分少々かかるので、料理全体の作業量を考えると明らかに配分はおかしいのだが、その辺は突っ込みが入ることはない。批判サイトなどを除いては。
「ヒョコちゃんにはまだ、包丁は早いかも。来週からでいいからね! 見てよこの御星様型のジャガイモ」
「・・・・シュポテト」
ヒョコちゃんがボソボソとつぶやく。
メインカメラの横にカンペが出される。
(そのジャガイモはマッシュポテトに使うものです)
【ええっ なんでよ! ビーフストロガノフってカレーみたいなもんじゃないの? なんでマッシュポテトなの? 分かったドイツの食べ物だからでしょ(注:ロシアです)ていうかキュウリって言ったヒョコがなんでジャガイモはマッシュにするって知ってんのよ! これじゃ私の魔法も効果無くなるじゃない】
スタッフのとまどったような視線がいつも以上にファインちゃんに集まる。ファインちゃんもその視線の集まりに驚いてしまう。一人冷静に見えるヒョコちゃんにもう一度目で問いただす。
【ねえ、何か変じゃない?】と。
ヒョコちゃん、冷静な声でファインちゃんに伝えます。
「ごめんなさい。その"魔法"、なんですけど、私も使えちゃったりしちゃうんです。
実は最初に差し上げた卵焼き、あれに『心の中で思ったことが【】書きで表示される』っていう魔法を掛けといたんです。
おねえ様と早く打ち解けようと思ってのことだったんですけど、それがまさかこんなことになるなんて。」
ファイン【え"】
ALPINIX【え"】
チャラチャラチャー! チャラーチャラララー!
チャラララららーらー ちゃららららー
ちゃらららりーらー ちゃらりらりー
美味しい 上手い 旨い 巧い
味のしないポテチ SSフェスティバル
まだまだあるよ 難しいお題 まだ広がるよ目新しいストーリ
ドキドキとかワクワクとかなんかいろいろ期待感みたいなのを表現する
オノパトペが待っているの か き つ ば た
何かな ブラックかな ジョークかな?
アイデアシャワーで面白さキラリ
お題 考えるの 面倒だったり(勘弁)
お題 拡げたい 魔法の構想⇒執筆⇒推敲 スタート
いつもいつも 大変ですけどご参加感謝します かきつばた フェスティバル
ちゃんちゃかちゃん!!
【料理会】
ハイ、みなさん。こんにちわ。ワ・タ・ク・シ、レポーターのタケでございます。本日は、ホテルプリンセスに来ております。こちらで、何が開かれているかというと、こちらです。ハイ、この立て看板のように、アイドル集団IKN…フォーティー…えーとツーの料理会に来ているんです。
そうです。いま超売れっ子のアイドルであるIKNの料理を食べられるというイベントなのです。しかも、その料理がおいしいと評判です。
こちらは、新しいアイドルのカタチとして、握手会ではなく、料理会を行っているわけですねぇ。アイドルの料理を、ファンがいっしょに食べるというこのイベント、参加するだけで100倍を超える倍率と言われています。
さて、こちらがその会場です。もう、ファンの方が並んでいますね。ちょっとお話を聞いてみましょう。
こんにちはー。「ども」どちらからいらし「北海道」遠くからきたんですね「ええ」楽しみですか?料理会「はぁ。楽しみですね。」楽しんでください。
えーと、こちらはだれのファンですか?「サユちゃんで」そうですか。今日の料理会の担当は誰だと思います?「うーん、わかんないなぁ」そうですよね、いつも秘密ですですものねぇ。
こちらの方は、だれのファンですか?「ヨコちゃんでし」ヨコちゃんですか。卒業されちゃったんですよね。「ええ、名残惜しいんで来てます」そうですか。
ハイ、では会場に一足先に入ります。こちらが会場ですね。ステージと、その横が料理の並ぶ場所ですね。立食パーティーの形です。このテーブルに、 料理が並べられるわけです。まだ何もありません。ステージで歌って踊った後、こちらに並ぶと。
IKN主催者の春本さんに聞いてみましょう。
春本さん、もうIKNの料理会は7回目ですよね。「ええ、順調に」毎回盛況ですね。「はい、おかげさまで。抽選になってしまっていますが。できるだけ、ファンの方にこたえたいと思っております」今回の担当は、どなたなんですか。私だけに教えてくださいよ。「ヒミツです。これが、IKNの売りですからね。」ええー、そうですか。「最後までいてくださいね」
春本さんでした。さて、そろそろイベントが始まりそうですね。
ハイ、ステージはヒット曲メドレーです。次は、最後の曲、グッバイ・エンジェルですね。この歌の後、今日の料理の担当が発表されるんですね。
曲が終わりました。ステージにメンバーが、並んでます。
「本日の料理担当は!」会場が静まりました。
「サカキ・ユミ!」
お客さんが沸いています。今日は、グッバイ・エンジェルのセンターのユミちゃんが、料理担当ですね。メンバーがユミちゃんを囲みます。あ、担いで運び出しました。ステージの脇のテーブルに運んでいきます。お客さんもざわざわし始めました。
ユミちゃんが、テーブルの中央に横たわりました。メンバーが、周りに付け合せを盛り付けています。さあ、いよいよ、本日のメインです。料理会が始まります。
「レディスアンドジェントルメン。準備はいいかな?本日のメインエベント、料理会。開始!」
ハイ、見てください。ファンの方々が、手に手にフォークを持って、テーブルに駆けていきますねぇ。本日の参加者は500人とのことですから、結構急がないと、ありつけないかもしれません。先頭のファンが、ユミちゃんに取りついたようです。
あっという間に、人で埋まってしまいました。もう、テーブルもユミちゃんも見えません。
「みんな、もう食べ終わったかな?ただ、一つだけ守ってくれよな。ユミは持ち帰らないでくれ。それだけはお約束だ。」
春本さん、ちょっと不気味なIKNええと「フォーティーワン」ハイハイ。フォーティーワンのイベントですけど「ええ、アイドルと一体化するにはどうするかって、考えたんですよ。で、まあ、究極の接触ですか?摂食といいますか、これ以上のイベントはないだろうと。」まあ、そうかもしれません が。でもねぇ
「ですから、特殊な食用素材で作った、アイドルアンドロイドなわけですよ。ね?ほら、テーブルには全然なにも残ってないでしょ。全部食べられる。 ファンとアイドルが一体化する。これは、ファンとしては究極の出来事ですよ。ね、ね。彼らの目を見てみたまえ、すばらしい、すば」
ハイ、ホテルプリンセスで行われた、イケニエフォーティーツー、いえ、本日卒業者が出たのでフォーティーワンの料理会の報告でした。ワタクシ、タケがお送りしました。スタジオへお返しします。
「ということで、大盛況で行われたIKNフォーティ ええとワンですか
当然というか、なんというか賛否両論巻き起こってますが……」
「あたしゃあね、認めないよあんなのは、元アイドル、いえ元祖アイドルのあたしゃあね」
「カネコさんのご意見もごもっともだと思います」
「婆さんは古いんだよな」
「なに! この若造! あたしゃあね、あんたが生まれる前からね、グラビアやら
なんやらやってきたんだよこんこんちくしょう」
「春本さんの仕掛けは素晴らしい、うれりゃあいいってそりゃ」
「なんでもこの先にもいろいろ仕掛けがあるとかないとか」
「そうそう、17人目の卒業生はアイスクリームにするだとか」
「31だけに?」
「31だけに……」
「そ、そんなオチで……せっかく書いてくれたタケに誤れ!」
「もとい謝れ!」
ごめんなさい。
思わぬところで金を手にした俺はパソコンの前に座ると、とある専用サイトにカタカタとメッセージを打ち込んだ。
「これでよし。あとはいつものように奴らの反応を待つだけだ」
傍らに置いた酒をグイッと飲み干すと、俺は前回のミッションの失敗を思い返していた。
『前回は俺の指示が曖昧だったこともあり、少々消化不良の結果に終わってしまった。
だが、今回は俺も一味違う。奴らもきっと俺の期待に答えてくれるに違いない!』
しばらくすると、早速一通のミッションコンプリートの連絡が届く。
「やけに早いな・・・」
返事をかえすか迷ったが、何もここで焦ることはない。
期限は5日後だ。俺は痕跡を残さないように他の奴らからの連絡も待つことにした。
翌日。夕方頃、1通のメールが届く。前回のミッションで成功した奴からの連絡だった。
「なるほど、今回もそう来たか」
俺はニヤリと笑うと、他の奴らからの連絡を待った。
夜になって、昨日一番乗りで連絡してきた奴から連絡が届く。
どうやら俺の指示を読み落としていたらしい。
「大事なミッションで指示を読み違えるとは。他の奴らも命取りにならねばいいが・・・」
俺はそう呟くと、引き続き、他の奴らの連絡を待った。
2日目。夕方頃、前回のミッションで成功した奴からまた連絡あり。
奴は今回も確実にミッションをこなしてきた。だが他の奴から連絡はまだない。
「今回も出だしが悪いな・・・」
俺は前回の失敗をまた思い返していた。
3日目。昼頃になって新たなメンバーから連絡あり。
「見たことのないハンドルネームだな・・・新入りか。
果たして俺のミッションに耐えられるかな」
俺は意味深に笑うと、引き続き、他の奴らからの連絡を待った。
・・・夕方頃、最近この世界で見かけるようになった奴から連絡あり。
「どうやらコイツも俺の指示を満たしているようだな。
それにしても奴からの連絡はまだか・・・」
俺は、女の身でありながらこれまでこの世界で数々の賞金をゲットし、女王と呼ばれる奴からの連絡がまだないことが少し気になりはじめていた。仲間内ではアイドルとして見ている奴もいるらしいが、そのスタイルはいつも斬新で、きっと今回のミッションでも俺の期待をいい意味で裏切ってくれるに違いない。そんなことを考えはじめていた頃、夜になってまた一人ミッションコンプリートの連絡あり。どうやら他の奴等とは一味違うようだが、俺は女王からの連絡を待ち望んでいた。
4日目。夜になって女王からミッションコンプリートの連絡あり。
「ここで主役登場か、登場するタイミングを押さえてやがる。
そういえば何だこのメール・・・チッ、タイムリミット一日前だぞ」
早朝からタイムリミットの確認のメールが入っていた。ミッションを成功に導くためにはこんなミスが命取りになる。
「期限を仕切りなおすか返事待つ」俺は苛立ちを押さえながら返事をかえした。
最終期限5日目。
この世界で名の通った奴らから立て続けにミッションコンプリートの連絡が届く。
「あとは昨日連絡して奴だけか・・・」
タイムリミットまで時間がない。もう諦めかけたとき、最後に一通のミッションコンプリートの連絡が届く。
「何とか間に合ったようだな」
俺は胸をなでおろすと、俺自身の最後の仕事に手をつけはじめた。
「今回の報酬だがこんなもんか・・・皆まな板の鯉の心境だろうが俺のさじ加減を恨むなよ」
【人力検索かきつばた杯】 テーマ:アイドル りょうり 創作文章.. - 人力検索はてな
俺は報酬を送信し、仕事終わりの一杯を一気に飲み干すと、頭の中は既に次のミッションへ切り替わっていた。
・・・こうして第18回 かきつばた杯は、終焉を迎えるのであった。
(終わり)
「はっ! 遅れた 遅れた 遅刻しちゃう~」
飛び込んで来たのは、女子高生には見えなくもないようなそんなことは全然ないような。
黄色いバックが生える結構線の細めのおじさん? だ。
「まだ開いてますか~?」
「第10回答者のオチをひっくり返す勇気があるなら書き溜めた作品があるならどうぞ~」
「じゃあ、お邪魔して」いそいそ。
こうして、第18回かきつばた杯はまだまだ続くのであった。
to be continued!
スーパードクトルG
「ここかなクランケがいるというのは」
黒いコートを羽織った大柄な男が1軒の豪邸の前で立ち止まった。
そくざに中から一人の男が出てくる。老齢の執事のようだ。
「お待ちしておりました、ささ、中へ」
「その前に確認したいことがある」
「ええ、伺っております、報酬は2000億円、キャッシュで」
執事が差し出した一枚の写真には部屋中の壁という壁が札束で埋め尽くされた写真。
それが、何枚も。
「用意できているのならいい」
執事に連れられて、二人は2階へ向かった。
「お嬢様!!」
「あっ 爺や」振り向いた少女はあどけなさの残る顔を二人に向けた。
可愛らしい顔をしているが、熱があるのか全体的に赤みをおびておりどことなく
はれぼったい。
「だめですよ、そんな、インターネットなんて! 寝ててくださいまし」
「いいのよ、もう残された時間は少ないの。だから最後まで……」
「ネットアイドルにこだわるのは勝手だがな、その前に治療だけは受けてもらう」
そういいながらもGは、トランクを開け診療道具を広げ始めた。
「この人は……」
「なんでも凄腕のお医者さんで……」
「大丈夫だ、この薬を飲めば、あとは安静にしていることだ」
それだけ言うと、Gは部屋を後にしようと歩き出した。
「では、報酬の件ですが」執事の問いかけを無視するようにGはつぶやく。
「そうだな、キミのやっているネットラジヲ、それに私のリクエストを一曲かけて
もらおうか……」
「ええ、喜んで! で、その曲は……」
「ええとあのほら、なんだっけスイスイスーダラいうやつ?」
「スーダラ節ですか?」
「それで頼む、じゃあ」
屋敷を後にしたGは、思った。
2000億円ってあんなにあったら持って帰れないじゃない。
アイドル抜けてたので加筆しました。
2012/01/26 23:28:15「ちょっと、あなた! 一郎にそんなもの食べさせて!」
2012/01/29 22:00:53「お義母さん?」
突然割り込んだ姑(おしゅうとめさん)の姿におびえる妻。
マザコン気味の一朗にとっては優しい母親でも、嫁に対しては、やかんの熱湯をかけたり障子のサンの誇りを見せ付けてはうじうじといびるアクドイ姑である。
「まあまあ、このサラダも中々いけるよ」
取り繕うとする一朗は即座に一喝されて、黙らされる。
「人間っていうのはね! 生野菜なんて本質的に食べたくないという生き物なのよ!」
姑の言うことはいちいちもっともだ。
「だから、ドレッシングとかいろいろ味をつけて無理やり食べているの」
「お義母さん、じゃあ一体どうしたらいいんですか?」
嫁の問いかけににやりと笑った姑は、ひとつの鉢植えを取り出した。
それには見事なトマトが実づいている。
「そ、それは……!」嫁の目が見開かれる。
今夜も無事に終わりそうにない……。