【人力検索かきつばた杯】


かきつばた杯を開催します。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

〆切は
5/5(土)23時~ 自動終了期限前(質問者の都合により前後します)

お題:
「ミラクル博士」「無敵のトライアングル」
 の何れか(あるいは両方)から連想したストーリー

注意事項:
 ポイントは本質問への投稿分を対象とします。予告への投稿分は対象外。
 本人に限り、転載を許可します。

回答の条件
  • 1人3回まで
  • 登録:
  • 終了:2012/05/06 07:05:07
※ 有料アンケート・ポイント付き質問機能は2023年2月28日に終了しました。

ベストアンサー

id:meefla No.9

回答回数997ベストアンサー獲得回数472

ポイント50pt

ユニット


   東京:午前6時00分

 新宿の夜明けは美しい。
 私は地下鉄の入口を目指して、ふらつきながら歩いた。駅までは遠くないはずだが、「百年の孤独」をしこたまぶち込んだ体にはワンブロックでも無限の彼方のように思えた。
 ようやくたどり着いた駅への階段を降りる所で、私は私とすれ違った。
 女だ。
 ユニットがシンクロした。
『長谷川三奈。23才。独身。趣味はジグソーパズル。仕事で徹夜明け……』
 目の前にいる私の情報とともに、一つのフレーズが流れこんできた。
『無敵のトライアングル』
 聞いた事のないフレーズだった。一体何の事だろう。ま、いっか。
 私はよろよろと改札口に向かった。

 酔っぱらいの私とすれ違った後、明治通りを歩きながら、私は『無敵のトライアングル』について考えていた。新宿ほどの大都市になれば自分とすれ違うのは珍しい事ではないし、全ての記憶が同期するわけではない事も承知している。しかし、妙に気になるフレーズだった。
 ユニットでネットを検索してみた。ヒットなし。
『頭が動いてないわね。やっぱ完徹はきついわ』
 マンションの入り口で思わずあくびが出た。フレーズの件は他の私に任せて、早く寝よう。


   ニューオーリンズ:午後4時10分

 フィリップスのエスプレッソコーヒーメーカーにコーヒー豆を入れ、スイッチをオンにする。程なくして香り高いカプチーノができあがった。私はカップを手にしてリビングに行き、ソファに腰を下ろすと、『無敵のトライアングル』について思いを巡らした。
 『トライアングル』って何だ?楽器だろうか?いや違う。三角形?これも思い当たらない。日本の酒のブランド名?イギリスのホラー映画?
 私はカプチーノをすすって一息入れた。
 ユニットの流してくる無数の情報に一々こだわっていては身がもたないが、何か大事な情報だという気がしていた。かなり古い記憶。子供の頃に大切にしていた外国のコインのような。
 ネットラジオの曲がレインボーからカーペンターズに変わった。
♫Good-bye Joe, he gotta go, me oh my oh
 さて、夕食は何を食べよう。久しぶりにガンポ・ショップでも行ってみようか。


   ロンドン:午後10時20分

 バランタインのグラスをなめながら、私は過去の記憶をまさぐった。最初の職場。ケンブリッジでの大学時代。パブリック・スクールの学友たち。『無敵のトライアングル』に関連する記憶はなかった。
 ふと私は、ユニットを埋め込んだ頃を思い出した。
 それは簡単な手術だった。麻酔から覚めた時、全世界が変わっていた。インターネットと接続された私に、無数の情報が流れこんできたのだ。
 UNIT は、Universal Neuro-electric Internet Transmitter の略だ。人間の脳に中継器を埋め込んで、インターネットとの直接接続を可能にする機械。個々の人間の知識量は飛躍的に増大する。コンピューター端末を使わずに、頭の中で考えるだけで、望むネット上の情報を入手できるわけだ。
 ただし、副作用が一つあった。ユニットを装着してしばらくすると、人間から「自我」というものがなくなってくる。同じユニットを装着した他人と経験や記憶も共有されるため、次第に彼我の境界線がぼやけていき、最終的には一人の「私」に収束するのだ。
 現時点で、地球の各所に散らばっている「私」の数は、12万6591人。それぞれは独自の社会生活をしているが、生体で言えば細胞の一つであり、全体で「私」を形成している。文字通り単一の「ユニット」なのだ。そしてそれは、ある科学者の研究から生まれた……。
 私は思わず声に出して言った。
「エルンスト・ヴンダー」
 私は満足して、バランタインを飲み干した。『無敵のトライアングル』の謎が解けたのだ。


   ケルン:午後11時30分

 ケルン大学病院の緩和ケア病棟で、私は死にかけていた。これほど科学が進んでも、膵臓癌だけは治せない。
 私はユニットを発明した頃を思い出していた。はるか昔の記憶だ。研究の将来に疑念を抱く同僚に向かって、私はこう力説したものだ。
『人間とインターネット、そしてユニット。この3つが合体すれば、無限の可能性が開けるのだ。まさに無敵』
 同僚は問い返した。
『いくら「無敵のトライアングル」でも、死には勝てないだろう?』
 私は追憶の中の同僚に向かって言った。
「私は死ぬ。だが私は死なないのだよ」
 このドクトル・エルンスト・ヴンダーの心臓が止まる時、ユニットは最後の仕事をする。エルンスト・ヴンダーの全ての記憶と知識をメモリーから開放して、ネットにアップロードするのだ。私は「私」の集合的無意識となる。エルンスト・ヴンダーは存在し続けるだろう。ユングの言う「老賢者」として。
 私は眠りについた。二度と目覚める事のない、安らかな眠りに。


   東京:午前6時40分

 地下鉄のなかで眠りこけていた私は、下車駅を乗り過ごし、気付いたら荻窪駅だった。そのまま折り返して東高円寺まで戻る。新宿から家まで30分以上かかっていた。
 キッチンで酔い覚ましの水を飲もうとした時、ユニットが情報を送ってきた。
『エルンスト・ヴンダー死す』
 私は軽いめまいを覚えた。酒のせいなのか、転送されてきた情報量が膨大だったせいかはわからない。
 めまいが治まった時、ビジョンが見えた。エピソード5のオビワン・ケノービのような表情で、エルンスト・ヴンダーが私に微笑みかけていた。
 私はつぶやいた。
「おなかが空いたな」
 無性にジャンバラヤが食べたくなった。


(了)

他4件のコメントを見る
id:meefla

ベストアンサーありがとうございます。
講評へのご返事、兼ライナーノーツとして少々。

お気付きかもしれませんが、そもそもの発想元は前回「アラカルト」のお題でした。
「1人称小説・2人称小説・3人称小説」以外の小説、って奴です。
諸事情で話が転がらずエントリーは断念しましたが、どうしても書いてみたい題材だったので今回の作品になりました。
ですので、お題の消化度、特にトライアングルについては弱いと自覚してます。

情報の線引きについては、プッシュ型とプル型とかフィルタリングとか、いろいろ考えたんですが、基本線はフォロワーが12万人いるツイッター、みたいな感じです。
で、ユニット持ち同士が近距離で接近すると、DS のすれ違い通信みたいに、濃密なやり取りができてしまう、という設定でした。
酔っぱらいと徹夜明けだったので、フィルターが甘かった、とか。
ここいら辺を書き込んでいくとショートストーリーじゃなく短編小説になっちゃうんですよね。
エピローグの無い時点で、おおむね2000字でしたし。

確かにエピローグは、もう一練りですね。
朝6時で夜明け云々なので4月の上旬くらい、とするとアメリカもイギリスもドイツもサマータイムに入っていて、てな具合で、どうでもいい細部にこだわっていたもんで(^^;

これまた蛇足ですが、ドイツ語でミラクルは Wunder なので、ドクトル・ヴンダーになってます。
ヴンダーという苗字は実在してまして、例えばインゴルフ・ヴンダー(Ingolf Wunder)なんてピアニストもいるようです。

力作ぞろいの回だったので、ベストアンサーがいただけて素直に嬉しいです。
また機会がありましたら、よろしくお願いします。

2012/05/06 12:19:06
id:gm91

>DS のすれ違い通信みたいに、濃密なやり取りができてしまう、という設定
なるほど。

2012/05/06 19:43:54

その他の回答12件)

id:ryou01 No.1

回答回数134ベストアンサー獲得回数5

ポイント15pt

テーマ:「ミラクル博士」「無敵のトライアングル」の両方

ミ・ラク・ル博士の陰謀

「できたぁぁぁぁぁ!!」
ミ・ラク・ル博士の絶叫に近い声で僕は目覚めた。
僕はフラット。ミ・ラク・ル博士の助手だ。
現在朝4時。夏の浜辺でかわいいお姉さんと遊ぶ夢を見ていた僕としては大迷惑だ。少々不機嫌になりながらも僕は聞いた。
「いったい何ができたって言うんですか。まだ朝の4時ですよ。」
「いや、今は朝4時2分だよ、フラット君。」
「そーいうのを屁理屈っていうんですよ。で、なんですか。」
「そうだよ!たった今、大発明をしたんだよ!!」
「はぁ、またですか。」
博士は大発明と言っては変なものを作る。
この前なんか、「じゃんけんをしたら必ずあいこになる機械」をつくった。どうせ作るなら絶対勝つようにすればいいのに。
「これが僕の今世紀最大の発明だ!」
タッタカタッタタッタカタッタッタアアアアン♪
どこかで聞いたことのあるBGMが流れてくるが無視。
「無敵のトライアングル~~。」
無敵のトライアングル!?実に変な名前だ。
「これを頭に乗せるとだれもが恐れて逃げていくんだよ。」
何とも信じがたい話だ。
「本当ですか。」
「本当だとも。疑うのなら君が実際に試してみるといい。」
どうしようか迷ったが、これを機に博士がまともな発明をしてくれるなら、と、試してみることにした。

僕は無敵のトライアングルを頭に乗せて、外を歩いてみた。
するとどうしたことだろうか。周りにいる人は全員逃げていき、
子供は泣きだし、子供の親も顔をひきつらせて逃げていくじゃないか。
「ははは、いい気味だ!」
すると後ろからどたどたと大きな足音が近づいてきた。
「ふーん。この俺に近づいてくるやつがいるとはね。」
そう思って振り返ると何と!!
うしろから近付いてきたのは「POLICE」と書かれた盾を持った機動隊だった。
「あの、何か事件でもあったんですか?」
僕はそう聞こうとした。だけどできなかった。なぜなら機動隊は、僕の手に手錠をかけ、縄で縛り、パトカーの中に詰め込んだからだ。
「お、おい!離せ!僕が何をしたっていうんだ!やめろ!!」
それによく考えたら、僕は頭に無敵のトライアングルを乗せているはずだ。なのに、なぜか警察は恐れずに近づいてくる。
「離せ…。離せぇぇぇぇぇ!!!!!!」

僕は取調室に連れて行かれた。
「僕は何もしていない。なのに…なぜ…。」
「お前自分でやっといて今更なんだ。」
「…は?」
「顔を見てみろ、ほら。」
警察から鏡を渡され、僕は言われるままに自分の顔を見てみた。
しかし、そこに僕の顔はなかった。つまり、首から上が消えていたのだ。これが無敵のトライアングルの効果だった。
XR線という放射線の一種を顔にのみ当てることで顔の分子の色を透明にしたのだ。警察が平気で近づいてきたのは、XR線の効果をなくす防護マスクを付けていたからだった。
首から上が見えないのだ。子供が泣きだし、親が顔をひきつらせて逃げたのもうなずける。


そして僕は、何の言い訳もできずに留置所へ入れられた。


そのころ、ミ・ラク・ル博士の研究所。
「ふふふ。やっとフラットも捕まったか。あいつは結構しぶとかったな。だがこれで99人目。あと1人。あと1人で私の計画も最終段階となる。さて、次の助手募集の張り紙を出しておかなければ。まあ、3食と無料の宿泊所付き。これで時給1000円なのだから食いつかないはずがない。さあ、次はどんな道具で地獄に陥れようか。ふはははははは、はははははは!!!!!」

―END―

id:gm91

早いですね!
ありがとうございます。中辛にて承りました。
※辛さ指定はコチラにコメントいただいてもOKです。
(作品中に書かなければOK)

講評は締め切り後に実施しますのでしばらくご猶予ください。
早めに指摘事項が聞きたい場合は予告編に投稿いただければ予告締め切り時点で講評つけます。(早く書けた人の特典)

2012/04/30 15:55:33
id:gm91

講評です。
基本のストーリーとしてはまあまあだと思います。
今回は採点の対象外なのですが、キーワード(博士とかトライアングル)については、何か取って付けた感があるので、必然性があるストーリーにできればなお良かったですね。

あなたがネタを思いつた時「面白い」と感じた要素が色々あるはずです。
それを読み手にどう伝えたら良いか?をもっと意識すると面白い話になると思います。
個人的には、博士の陰謀の動機とかが示してあると話にのめりこみやすいのではないかと思いました。
逆に、時給がどうとかは余計かな、と感じました。

あと、枝葉の話。
XR線と言う架空のギミックを投入するのは良いのですが、説明の所に違和感があります。
具体的には、
1)眼球が透明になると自分も何も見えないのでは?
 →透明にするのは首から下にするとか。
2)「XR線の効果は、顔の分子を透明にすること。」
 →であれば「機動隊がXR線の効果をなくす防護マスク~」ってのは辻褄が合わない。

こういうのって、「どうでもいいやんか」と思うかもしれませんけど、もしそうならいっそ説明なんか書かない方が良い。
解らない事は適当に書かずに、いい機会だと思ってちょっと調べてみるか、間に合わないならバッサリ斬り捨てるかどちらかにした方が良いと思います。
中途半端に変な説明を入れると話が途端に安っぽくなると思うんで。

2012/05/06 08:19:47
id:grankoyama No.2

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント30pt

ミラクル博士の素敵な日常のトライアングルは無敵だった

 博士の研究対象は一見して異常だ。
粉モンに命をかけているといっても過言ではない。

「博士~、今日の実験は?」
「それは、良い質問だ。今日は、CH3COOHのお好み焼きにもたらす、ふんわり度の
 おさらいだよ」
 博士は、そういうと、研究室――半ば調理室でもあるのだが――の中でキャベツを刻み始めた。
言っておくと、この博士、キャベツを刻む作業は、頑として他人に譲らない。
どうあっても、博士一人で幾らでも刻むのだ。

 過去にこんなエピソードがあった。
「これ、うちで使っていたものなんですけど」
学生が取り出したのはフードプロセッサーだ。使ってたと言う割には意外と綺麗で
傍目には新品同然に思える。
「いやあ、うちのお袋、凝った料理とかあんまりしないんで。良かったらキャベツ
刻むのにでも使って貰おうと思って持ってきました」
 博士激怒。
2時間半に渡り、包丁によって刻まれたキャベツと、機械処理されたキャベツの
お好み焼きにもたらす差、つまりはフードプロセッサーの功罪を延々と語り最後の
最後になって
「そんなもん使って美味しいお好み焼が作れるのなら、最初から使っているよ。
でもダメなんだ。やっぱり包丁でないと。それに幅や長さ、すべてそのキャベツの
固さ、葉の厚さ、鮮度、品種、様々を考慮して調整してやらなくてはならない。
たかがキャベツの加工というなかれ。そこには数多の研究が既に行われ、現代の
科学では、熟練の職人には敵わない分野であるということを私が証明済みなのだよ」
そう語る博士の目にはうっすらと涙が光っていた。


 そんな博士の注ぐ愛情の60%ほどは『お好み焼き』。
30%ほどが、『タコ焼』へ。
残りが『ネギ焼』。

 粉モン博士とも異名をとる彼だが、実はこの3品以外にはまったく興味が無い。

 こんなエピソードもあった。
「博士~、卒論のテーマをもんじゃ焼にしようと思うんです。
もんじゃ焼の土手におけるソースの浸透率などを……」
 その学生は、最後まで言い終えることなく、博士のバックドロップの餌食になった。
博士は、ヘソで投げるので、ダメージが絶大なのだ。
さらに博士はバックドロップで意識を失った学生に対して三角締めでとどめを刺すほどの、無茶っぷりだった。

 そう、博士は学生時代にはプロレス研究会に所属しており、軽量ながらも筋肉質で
ヘビー級とも渡り合える稀有な学生レスラーだったのだ。
 そして、その三角締めは、加減を間違えれば対戦相手を死に追いやるほどの、
恐ろしいほどの切れ味として、半ば封印されていた技であったらしい。
バックドロップはまだしも、三角締めまでもが繰り出された理由は、未だに明らかに
されていないが、どうやら博士は粉モンでも、自身の興味を惹く3品以外は、
毛嫌いしているか嫌悪しているか憎悪しているのだろうと、学生、研究生の間で
噂され、以降それらの話題はタブーとなった。

 そんな博士でも、朝マックに行けばホットケーキのバリューセットを頼んだりする。
どうやら、ホットケーキは研究対象でもなく、憎悪の対象でもないらしい。

 ある朝、数人の学生とマックブレックファーストをしていた時のことだ。
徹夜明けの朝だった。
「博士はいっつも、ホットケーキには、シロップもバターもつけませんよね?
なんかのポリシーがあるんですか?」
博士曰く、
「お好み焼きにソース、マヨネーズ、マスタード、青海苔、花かつお、これらを
欠かしたことはありません。例え研究時にでもです」
「いや、それは知ってます。ホットケーキです」
「お好み焼にはルールがあります。私の決めたルールです。これは何人たりとも
破ることはできません」
「はあ」
「ホットケーキにはまだルールを制定していません。ところで、これらはやっぱり
ホットケーキに塗るものなのですか?」
博士は、シロップと、バターを指差して学生に聞く。
「はあ、だからついてるんだと思うんですが」
「では試してみましょう」
そういって、博士は、ホットケーキにシロップとバターを塗りだした。
そのまま一口食べ、そして、満面の笑みを浮かべた。
「これ、美味しいですね!」



 そんな博士が晩年に取り組んでいた課題はもっぱら、
「そう、最強の粉モンを作るんですよ。お好み焼と、タコ焼とネギ焼の
完全なる融合です」
 一説に寄れば、博士が最後の研究を始めてから、一線を退くまでの15年間は
粉モン以外を口にしなかったとも言われている。
 結局、志半ばにして、研究室を後にする博士であったが、その顔は晴れ晴れとしたものだった。
「博士、最強の粉モンを作ることはできませんでしたね」
「最強の粉モン?」博士は不思議そうに学生に尋ねた。
「えっ? お好み焼と、タコ焼とネギ焼の完全なる融合を目指して、研究してたんじゃぁ……?」
「ああ、ミラクル焼ですか。それならとっくに完成していますよ」
「そうなんですか? でも論文とか……」
「論文にはしていません。それは、この中にある、それで十分です」
博士は、胸に手をあて誇らしげだ。
「ミラクル焼は、博士のこころの中にあるってことですね。
なんだかロマンチックですね」
「心じゃありませんよ。さっきも食べましたからね。ミラクル焼。
まだ、胃袋の中に残っているはずです」
「か、完成してたんですか~」
「そりゃあもう、とっくに。この十年、ミラクル焼しか食べてませんよ」
 とどのつまりは何をしてたんだか、さっぱりわからない博士であった。

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id:gm91

お任せ、ダメ出し、いいとこ探しにて承りました。

2012/05/05 16:11:59
id:gm91

う~ん、オチがまだちょっと中途半端かな…。もう一声!って感じです。
せっかくの加筆ですが、ホットケーキの件がうまく活きなかったのでちょっともったいない気がしますね。
無理に落とさずに、おバカテイストを磨く方に専念した方が良かったかも知れません。
あと、研究室の学生は「博士」とは呼ばないかな。「教授」「先生」あたりか。

「なんだかロマンチックですね」
「心じゃありませんよ。さっきも食べましたからね。ミラクル焼。」

こういうの好きです。

2012/05/06 08:21:06
id:grankoyama No.3

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント50pt

 僕は、これからおこさねばならない。
たった一人の博士として、偉大なる奇跡を。



『これで、歴史の授業も終わりです』
電子音声が告げた。
『基礎課程は終了し、明日からは実践科目の学習へと移行します』
ほんの入り口に立ったばかり。
長い長い道のりの、それでも到達した第一歩。
ほんの3年で詰め込まれた僕の知識は、それでも博士号クラスに到達しているらしい。
だけど、まだ、やっと第一段階を終えたばかり。



『お目覚めください。非常事態が発生しました。
緊急時対応マニュアル、パターン251-A項目により、あなたの知性を必要としています』
無粋なコンピュータの音声で現実を認識させられた。
当時の僕はまだ、たったの5歳。それでも、僕が選ばれた。

 5年間過ごした地球。物心付いたときには既に、人類は終焉を迎えようとしていた。
太陽に起こった異変。そのあおりを受けた地球上での異常気象。
滅亡までのカウントダウンとともに僕は短い人生を過ごしていた。
だけど、人間もただ、運命に振り回されるばかりではなかった。

――箱舟プロジェクト。
優れた遺伝子を持つ限られた人達を、宇宙へと解き放つ。
何隻もの宇宙船が建造されていた。
自給自足を目指し、太陽光を受けながら少しでも長く生存することを目指すタイプの
船。
あるいは、太陽系を飛び出し、新たなる生活環境に適した星に辿り着くまで、延々と
その旅を続けるもの。
僕が乗せられたのは、後者の船だったんだろう。

すべて、コンピュータの学習用ソフトから得た知識だ。
当時の僕は、大人たちが悲しみ、慌てふためいているのをぼんやりと意識していた
だけで、何が起こっているかを理解できていなかった。



『長い長い旅でした。出来る限りは自動での運行を目指していました。
なんらかのトラブルが発生しない限りは、オペレータを必要としないシステムで
あったはずなのです。
また、技術者は不測の事態に備えて、十分な人数を確保していたつもりです』
大丈夫のはず、大丈夫なつもり。
計画に携わった大人たちを攻めても仕方ないだろう。
ましてや、事実を語るコンピュータは、現実に起こった出来事を報告しているだけで、
何も悪くないはずだ。
それでも僕は、文句のひとつも言いたくなった。
「なんで、僕なんだよ……」

 入念に検討された計画だとは言い難い。何故なら、掛けられる時間に限りがあったから。
どれだけ慎重に進めても、全ての問題をクリアすることは出来ないだろう。
だって、それだけ長い時間を旅してきたのだから。
 目覚めた僕は5歳でも、生まれてからは何百年という月日が流れていたらしい。
その間、僕は冷凍睡眠の状態で、新しい居住地を目指して旅していた。
 高機能なコンピュータが制御する、当時の最新技術を駆使して作られた外宇宙航行船。最初の頃は、順調で、技術者が定期点検のために何ヶ月かに一回ずつ交代で、冷凍睡眠から目覚めて、確認作業を終えたら再び眠りに付くという予定通りのサイクルが繰り広げられていたらしい。

 しかし、そう順調な旅は続かなかった。
次第に、技術者の作業は増え、トラブルが起き、解決してはまたトラブル。
あるものは、トラブルと向き合っている最中に、病に倒れ。
またあるものは、トラブルに備え、孤独な監視を何十年と続けた後、老化によって。
徐々に、技術者は少なくなっていった。
それと同時に、備蓄していた食糧も減少していく。
そして、ついに最後の技術者の命が失われた。
幸い、その技術者はシステムを正常な状態にしてから亡くなったのだが、次のトラブル
に対処できる人材はもういないらしい。

 そこで、目覚めさせられたのが僕だった。
たったの3年で、プロフェッサー、博士号クラスの知識を詰め込まれ、その後もひたすら宇宙船の異常に備えた演習。
 次のトラブルを乗り切るための最後の砦。
遺伝子のパターンやCT画像などの情報を元に、適正者として選ばれてしまった僕。



『対象惑星の大気は、地球の組成とほぼ変わらず、適応可能です。
植物状の物体も観測されているため、自活できる可能性があります。
問題は、正常に着陸できるかどうかです。
推進器のいくつかが正常に動作しないため、自動計算での着陸起動の割り出しが不可能です』
 まさに、想定外の出来事なのだろう。目の前に新たな安住の地を見つけながらも
そこに到達できないでいる。
たしかにコンピュータには難しいだろう。
 正常に動かない推進器のことも考慮に入れ、着陸起動を計算し、さらに途中で何らかのアクシデントが発生した場合に即座に対応する。
 たった、それだけのことだ。
 僕が学んできたこと。10年分の人生のうち半分を占める努力の日々。
その全てを出し切れば、不可能ではないはずだ。

 最後のチェックを終えて、着陸シーケンスを起動する。
 これから、僕はおこさねばならない。
たった一人の博士として、偉大なる奇跡を。

id:gm91

お任せ、ダメ出し、いいとこ探しにて承りました。

2012/05/05 16:12:07
id:gm91

文章、ストーリー共に秀逸だと思います。
ずいぶん悩んだんですが、BAは#9に譲りました。
WでBAつけたいくらいですが、ポイントは同点ってことでご了承ください。

ダメ出し:
「奇跡」が少し軽そうな感じがしてしまうので、もっと「そんな無茶な」感が出ると緊迫感が増すのではないかと。
あと、何か気の利いたタイトルとか在ると良かったかも。

よいところ:
ここが良い!と挙げ難いですが、強いて言えば
文章としての「遊び」に頼らずに読ませるストーリー/設定でしょうか。
今後も期待しております。

2012/05/06 08:21:52
id:hokuraku No.4

回答回数533ベストアンサー獲得回数98

ポイント20pt

【three quarters】

「ひーぃちゃん♪」
忘れようもないその声が、僕をまどろみから呼び戻す。
もう二度と聴くことは無いと思っていたその音色に、目の前の霧がさっと晴れた。
あまりのことに戸惑った顔をしてたのだろう。夕日を背にして、少し心配そうな顔をする。

あの子と初めて会ったのは、社会科の先生がテストを返すのにもたついた所為でいつもの電車に乗り遅れたときだった。
次の電車は45分後。
容赦ない夏の日差しと、遠慮ない蝉のラブ・ソングが、屋根のないプラット・ホームを彩っていた、そんな午後のこと。
45分と二駅分の、短い恋だった。

一回ならば偶然。
三回ならば必然。
でも二回ならば、人はそれを奇跡と呼ぶ。

多くは望まない。必然でなくてもいい。
でも、いまはこの奇跡を、手放したくない。
45分と二駅分に、少し足りないこの時間だけは。


----
#あえて解説なしで。

他4件のコメントを見る
id:hokuraku

どうもです。
今回は
1)なんだよー、みんなハカセばっかりじゃんよー。
2)最近みんな長いよー、読む気しないよー。
に対するアンチテーゼとして書いてみました。長い文章読みたくなくなったのは老化したせいですね、自分。

2012/05/07 12:56:43
id:gm91

>2)最近みんな長いよー、読む気しないよー。
お始祖さまにそう言われると耳が痛いっす

2012/05/07 22:59:44
id:minoru-0413 No.5

回答回数179ベストアンサー獲得回数23

ポイント40pt

「ミラクル博士」「無敵のトライアングル」

『お兄さんのニゲラ』

お兄さんは体が弱かったです。
いつもレースの綺麗なカーテンを閉めて、少し暗い部屋で寝ていました。
ときどき起きてもベッドからは出ずに、御本ばかり読んでいました。
窓の外を眺めるのは何時も雨の日か夜になってからでした。
太陽は好きじゃないのかなと私は思いました。
お兄さんは淋しそうな顔で言いました。
「嫌いなんじゃないんだよ。本当は御日様の下で沢山遊びたい。」
お兄さんは虹を見た事がなかったそうです。
私が遊びに行っても、御兄さんは寝ている事が多かったです。
静かに寝ているお兄さんはとっても優しそうな顔をしていました。
綺麗な御顔をしているお兄さんは、とても素敵でした。
お兄さんの腕はとても白くて、細くて優しいです。
私の髪をくるくると巻いて遊ぶのが好きでした。
優しく頭を撫でてくれると、とても嬉しかったです。
お兄さんは怖いお母さんと二人で小さな緑のお家に住んでいました。
お母さんは御医者様に払うお金が高いと、お兄さんをよく叱っていました。
御飯をあまり食べられないお兄さんに残さず食べなさいと言うのです。
お兄さんは辛そうな顔をして食べていました。
熱を出したお兄さんに何で治らないのと怒りました。
お兄さんは赤い顔を枕に隠してしまいました。
お母さんがお部屋を出てもお兄さんは顔を見せてくれませんでした。
泣いていたのだと、あとになって気付きました。

「お嬢さん、今日はどうしたのですか?」
「お兄さんのお熱が下がらないの。元気になるおまじないしたいの。」
数ヶ月前に近くに越してきたのは、博士だった。
物知りで、優しくて、まるで自分の孫のようにマリーを可愛がってくれた。
マリーはお兄さんの次に、博士が好きになった。
お兄さんが三日前から熱を出し、ずっと寝ていたのが心配で、マリーは今日も博士の家を訪れた。
博士は何でも知っている、きっとお兄さんを元気にする魔法だって知ってるかもしれない。
「おや、彼はまた熱を出したのですか。それは大変だ。」
博士は机の上で手を組み、少し困った顔をした。
マリーは椅子の上で足をぶらぶら動かす。
お兄さんが大変だから、急いで元気にしなくちゃいけない。
そのことばかり考えてしまって、心の中が忙しい。
「お兄さんは外に出た事がないのでしたよね。」
博士は暫くすると立ち上がり、戸棚から小さな箱を取り出した。
埃を被って灰色斑の箱から出した何かを、博士はマリーに渡した。
マリーには何なのか分からなかったので、博士は優しく言った。
「これは彼にとって素晴らしいプレゼントになるでしょう。」
マリーはお父さんから貰ったハンカチでそれを包んで、ポケットにしまった。

「まだお熱下がらないの?」
大きな青い目を涙でキラキラさせて、少女は僕の顔を覗き込んだ。
あと少しなんだ。御免ね。
少女の頭を撫でようと腕を伸ばす。
また少し細くなってしまったことに気付いて、ちょっと怖くなった。
少女は僕の手を握ると、涙を堪えて言った。
「今日はプレゼント持ってきたの。ちょっと待っててね。」
少女はポケットから何かを取り出して、準備を始めたようだ。
少しわくわくした。
細く開いた窓から差し込む日の光が眩しかった。
白い線が床を走り、少女の手元で弾けた。
「あそこ見て!」
壁に、リボンが映っている。
綺麗な、カラフルなリボンが揺れている。
三角形のプレゼントから、長く細い光が垂れていた。
「これ、虹なの。綺麗でしょ?」
このリボンが…?
本当だ。凄く綺麗だね。
涙が出そうだった。
「元気になったら、私と一緒にお花畑に行こうって約束したよね。雨上がりに、虹も見ようって。」
そう、約束したね。
いつか、行きたい。
少女の笑顔を見て、頑張らなきゃと思った。

「お兄さん、今日も虹が出てるね。」

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id:gm91

講評でござんす。
文章は丁寧で読みやすいです。
ストーリーとしては、叙情的で佳い作品に仕上がっていると思います。

大人向け、ということで少し苦めの事を言いますと、悪い意味で「普通」です。
誤解を恐れずに言えば、ちょっと作為的と言うか、他の人でも書けそうとでも言うか。
うまく表現できなくてゴメンですが、氏の持つ独特のオーラが足りない感じがします。

適切かどうかわからんが、例えを出すと
http://www.youtube.com/watch?v=FPIjBSxw3zw&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=JWcbHfqvEX4

http://www.youtube.com/watch?v=SNk9x5oN3_A&feature=related
みたいになっちゃってびっくりと言うか。もちろんどちらも好きですけどね。(^^;

ただまあ氏の表現したいものを他人が規定するのもおかしな話で、
あくまで私個人の感想、というレベルでご理解いただければ、と思います。
どちらも紛れもなくあなたの作品なのですから。


毎回モヤっとした事ばかりでは申し訳ないので、細かい点をいくつか。

1)プリズムで虹を見せるくだり、ちょっとあっさりしすぎているのでもう少しじっくり描写しても良いように思います。
あと、ラストの1行。これはつながりが悪い感じがします。
いっそ無い方がすっきり締まるようにも感じましたが、何か含みがあるのであればもう少し書いた方が良かったかも。

2)タイトルは花言葉つながりと解釈しましたが、本文に絡みがないのでちょっと違和感が残ります。
安直にキーワードだけ登場させるのも興ざめですけど、もう一ひねりあると生きてくるのかな、と思いますね。

3)「マリーは椅子の上~心の中が忙しい。」
このあたり、上手い表現だと思います。ぐっと来ました。

2012/05/06 08:29:04
id:minoru-0413

有難う御座います。
今回は「ミラクル」と「無敵」に振り回されてしまったので、絵本のような世界観を目指すという形で逃げた結果です。
今読みなおして改めて普通だなと思いましたw
ニゲラはお花畑に咲いていた花というつもりでしたがもっとちゃんと書きたかったなと思うところです。
弥演琉ワールド全開でも良いんですけど、ゆらゆらしたお話も好きなので。
珍しいものが書けたなぁと開き直ったところです←

2012/05/06 14:00:48
id:maya70828 No.6

回答回数1364ベストアンサー獲得回数139

ポイント20pt

ミラクル博士
題「ミラクル博士参上」

寂れた裏通りで大勢の猫集団が一匹を取り囲む。
「なめんなよ!」
「あわわわわーっ」
ぼくは猫のノーマル。飼い主が亡くなって以来、ずっと孤独な野良猫暮らしだ。
今日は、運悪く不良猫集団の縄張りで餌をとってしまったらしい。
不良猫達の様相は、リーゼント風にセットした髪や「俺、やんちゃしてまっせ!」みたいな目つきの顔で今時流行らない暴走族そのものだ。
思わず笑ってしまいそうになる。
不良猫集団の一匹がぼくに問い詰める。
「大人しくそのニボシを渡しな。」

――必死こいてせびるものはたった一匹のニボシかよ。どんだけ頭悪いんだよ。しかも変な格好だし。

「やっ(・・・笑・・・)、やだよ。」
というぼくの返答に対してお約束通りの言葉が返ってきた。
「あー、あー、今ちょっと笑った?、笑ったー?」
ぼくは笑いを必死に堪えながら言った。
「いっ・・・、いえっ。」
不良猫が研いだ爪を素早くスイングし、さらに威嚇する。
「どうやら痛い目に遭いたいようだなー。」
その猫が尻尾を逆立てて、笑いと恐怖に入り混じったぼくに襲いかかろうとした瞬間、ぼくの目の前に何かが立ち塞がった。
「やめたまえ。」
そこには、七三分けの髪で牛乳瓶の底のような目をし、それでいてどことなく紳士的な出で立ちの猫の姿があった。
ぼくは、そのあやしい様相の猫に驚きを隠せなかった。

――うわー、また変なのでてきたー

不良猫が謎の猫を「なめんてのかー」というような顔でなめ回すように睨みつける。
「あーん、博士ちゃぁーんよー。」
博士と呼ばれるその猫はどうやら彼らと顔見知りらしい。
それに応戦するように博士が言う。
「ここで会ったが百年目、貴様らにはとっておきをお見舞いしてやる!」
不良猫は嘲笑いながら言った。
「ほぉー、どうんすんの。」
博士が目をカッ!と見開いて
「こうだ!ブツブツブツ・・・」
と何やら独り言をいいだした。

不良猫全員の恥ずかしいエピソードや知られたくない過去・・・など
その内容は実にバカバカしいものだった。たが確実に不良猫達の弱点をつくものだった。

不良猫達は赤面しながら
「おっ、覚えてろ」
と言って去っていった。
ぼくは、ポカンと口を開けていたが、すぐさま気を取り直し礼を言った。
「あっ、ありがとう。」
博士は満面の笑みでぼくに言った。
「私の名は、ミラクル。君の名は?」

――えっー、博士じゃないの。

「ノーマルですけど・・・」
「えっーと、ミラクルと博士、どっちで呼べばいいんですか?」
博士(ミラクル)は少し考えながら言った。
「うーん、そうだね・・・ミラクルと博士でミラクル博士でOKさ!」
あとで冷静になってみて分かったことだが、この町の情報を知り尽くしていることが博士という呼ばれ名の由来のようだ。
これが「ミラクル博士」との出会いだった・・・

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id:gm91

>こういう具体例を考えるのは実際難しい・・・
だからこそ、ですよ。
言うなれば、これこそ「おもしろおかしく書くコツ」かな、と思いました。

>本来ネコはメガネなんかしていない
ここもポイント。
猫がリーゼントとか七三とかいう話であれば、「ああこれはファンタジーなのだな」と読者は思うわけです。そこにメガネだけ非現実的だと考えてしまうところに問題があるように思います。あなたの作品世界の中で猫が長靴を履こうが蝶ネクタイしようが構わないのです。ただし書き手の目線というか基準がブレてはいけない。

>「紳士風な出で立ち」の方が良かったかも
ここも、日本語の使い方の話ではなくて、「紳士的」「紳士風」という表現が曖昧なのだと思うのです。要はまじめくさった奇妙な格好をした猫、という表現をしたいのだと推測しましたが、そうであれば「~的」「~風」で逃げずに、ちょっとだけ具体的に書くと、話のおかしみが増すと思います。

2012/05/06 19:59:48
id:maya70828

ミラクル博士
題「ミラクル博士参上」

寂れた裏通りで大勢の猫集団が一匹を取り囲む。
「なめんなよ!」
「あわわわわーっ」
ぼくは猫のノーマル。飼い主が亡くなって以来、ずっと孤独な野良猫暮らしだ。
今日は、運悪く不良猫集団の縄張りで餌をとってしまったらしい。
不良猫達の様相は、リーゼント風にセットした髪や「俺、やんちゃしてまっせ!」みたいな目つきの顔で今時流行らない暴走族そのものだ。
思わず笑ってしまいそうになる。
不良猫集団の一匹がぼくに問い詰める。
「大人しくそのニボシを渡しな。」

――必死こいてせびるものはたった一匹のニボシかよ。どんだけ頭悪いんだよ。しかも変な格好だし。

「やっ(・・・笑・・・)、やだよ。」
というぼくの返答に対してお約束通りの言葉が返ってきた。
「あー、あー、今ちょっと笑った?、笑ったー?」
ぼくは笑いを必死に堪えながら言った。
「いっ・・・、いえっ。」
不良猫が研いだ爪を素早くスイングし、さらに威嚇する。
「どうやら痛い目に遭いたいようだなー。」
その猫が尻尾を逆立てて、笑いと恐怖に入り混じったぼくに襲いかかろうとした瞬間、目の前に何かが立ち塞がった。
「やめたまえ。」
そこには、七三分けの髪で牛乳瓶の底のようなメガネをし、「やぁ、諸君。見たまえ。」と胸を張らんばかりの整えられた毛並みをした出で立ちの猫の姿があった。
ぼくは、そのあやしい様相の猫に驚きを隠せなかった。

――うわー、また変なのでてきたー

不良猫が謎の猫を「なめんてのかー」というような顔でなめ回すように睨みつける。
「あーん、博士ちゃぁーんよー。」
博士と呼ばれるその猫はどうやら彼らと顔見知りらしい。
それに応戦するように博士が言う。
「ここで会ったが百年目、貴様らにはとっておきをお見舞いしてやる!」
不良猫は嘲笑いながら言った。
「ほぉー、どうんすんの。」
博士が目をカッ!と見開いて
「こうだ!ブツブツブツ・・・」
と何やら独り言をいいだした。

実は君、猫背で交際相手の彼女に「猫背を直して!」とせがまれ密かに隠れて猫背矯正マシーン「にゃんこもシャキーン!ひみちゅ★養成ギブス」を使っている。
また君は、知り合いの猫から猫の手も借りたいと言われた時、肩たたきの手の部分を使って撫で回した結果、「何、こいつ。天然バカ?」という冷たい目で見られた。

――えーっ、猫なのに猫背指摘されたの?しかもマシーンの名前、巨人の星の筋力養成ギブスのパクリっぽい。
――えーっ、それって完全に「孫の手」だよね。「手」だけしかフレーズ合ってないじゃん。

不良猫達は赤面しながら
「おっ、覚えてろ」
と言って去っていった。
ぼくは、ポカンと口を開けていたが、すぐさま気を取り直し礼を言った。
「あっ、ありがとう。」
博士は満面の笑みでぼくに言った。
「私の名は、ミラクル。君の名は?」
「ノーマルですけど・・・」
「えーっと、ミラクルと博士、どっちで呼べばいいんですか?」
博士(ミラクル)は少し考えながら言った。
「うーん、そうだね・・・ミラクルと博士でミラクル博士でOKさ!」
あとで冷静になってみて分かったことだが、この町の情報を知り尽くしていることが博士という呼ばれ名の由来のようだ。
これが「ミラクル博士」との出会いだった・・・

2012/05/08 21:23:23
id:ibuki81 No.7

回答回数125ベストアンサー獲得回数11

ポイント20pt

「無敵のトライアングル」


体育館いっぱいに、力強い演奏が鳴り響く。
指揮をしている先生も、その音の大きさに少し後ずさりしたのがわかった。

私は、両手で銀色のトライアングルを握りしめ、用意されている、ブルーシートの上のパイプ椅子で構成された客席で今年度最後となる演奏会のリハーサルを見ていた。
最後の演奏会だから、3年生は皆演奏に出ている。
それでも、ステージの上に並んでいる先輩達はちんまりと見えた。
この曲に必要な人数は、最低15人。先輩はちょうど15人しかいない。
私たちが所属しているこの吹奏楽部は、昨年できたばかりだ。つまり、私たちが入学してきたときにちょうどできたわけだから、私たち2年生は全員、1年生からの入部だ。
でも先輩は、1年生の時にできたわけだから、人数が少ないのは当然である。
しかし、先輩の学年の総人数は135人。もともと1年から部活に入っていた人は全体の7割というから、約95人になる。吹奏楽部……略して「吹部」(すいぶ)と呼ばれている部活に所属している人の中で、他の部活から入ってきた人はいない。
つまり、残りの40人の中から15人入ったというわけだから、十分だろう。……これでも。

最後に、ピッコロと呼ばれる、フルートより小さな、高い音が出る楽器のひと吹きで演奏が終わった。
私たち後輩が、皆立ち上がって拍手をする。無論、私も例外ではなかった。
先輩の演奏の後には拍手をする、というのが吹部の決まりというかお約束というか……まぁ、先輩に、「なんでさっき拍手しなかったの?」と呼び出されて小言を言われるよりはいいだろう。
この吹部は、運動部並みに上下関係が厳しい。先輩に気が強い人が多いからな。

拍手がやみ、皆がぞろぞろと座り始めた時、突然ステージの方で大きな音がした。
楽器が落ちたのか……?
私が顔をあげると、皆の視線が一点に集まっていた。
ティンパ二という、大きな太古を並べたような形をしている楽器が倒れている。
一人の先輩が下敷きになっていた。
ピッコロを担当している人だ。
体育館全体が大騒ぎとなり、見学に来ていた何人かの保護者の方のうちの一人が、救急車を呼んでくれた。

次の日、その先輩が左手に包帯を巻いて部活に来た。どうやら、左手の指と手首をねんざしただけで済んだらしい。
周りの先輩が、「よかったね」なんて声をかけている。何て無神経なんだろう、と思った。
明日が本番なのに。最後の演奏会に出られないなんて。

ここから問題になったのが、足りなくなった1人をどうするか、という事だった。
私たち2年生から出すのは当然なのだろうが、先輩は皆、不服そうな顔をしていた。
最後は3年生皆で締めくくりたかった。その気持ちはよくわかる。
1人だけを出すのはなんだからといって、2年生の中から3人選ぶことにした。しかし、最大の問題は、『ピッコロのパートをどうするか』という事だった。
昨日の事故で、先輩のピッコロは破損し、修理に出している。新しいものを買うにしても、届くまでには少なくとも1日は必要だし、ギリギリ届いたとしても練習はできないから、これも難しい。第一、2年生の中でピッコロを弾ける人などいないのだ。
それから、学校にある楽器はピッコロの変わりにできるほど高音を出せるものがない。2,3年生共に楽器を持っている人はいない、という話があがった。
そして、何人かの友人が私の方を向いた。それに気づいた先生が、「あ」と声をあげた。
先輩も次々と私に顔を向けてくる。正直、かなり怖かった。

「佐藤さん、トライアングル持ってたよね?」

はい……と答えるしかなかった。
私は昔から手先が不器用で、楽器を弾くなど到底無理だ、と思っていた。
しかし、オーケストラに憧れていた私を見た母が買ってくれたこのトライアングルだけは、誰よりも上手く音を響かせる事が出来る自信があった。
吹奏楽にトライアングル……なんて言うのは非常識だと思われがちだが、実際に演奏の中に取り入れている学校はいくつもある。

本番当日、演奏の中に、このトライアングルの音色はきれいに溶け込んでいた。
ピッコロに劣らない高音と優雅にたなびく余韻は、代用品としては十分だった。
最後の締めくくり。チーンというトライアングル特有の音で演奏は終わった。会場には幾つかの笑いが起こったが、それよりも拍手の音の方が大きかった。

演奏終了後に、控室代わりの音楽室で友達と話していた。

「このトライアングル、無敵じゃない?あんなにたとえようのないピッコロの変わりが出来ちゃうなんて。」

「確かに。まあちょっと無理やりな感じもあったけどね。」

7月末の夏の演奏会。
私たちの学校にもう一つ、思い出の写真が飾られた。

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id:gm91

>「1年生から2年生に進級する時」
納得。「1年生」が続いたのでちょっと混乱しました。

>他の楽器でやった方が自然
無茶を上手く繋げられるとすごい傑作になりますけどね。(^^;

2012/05/06 20:04:36
id:ibuki81

そうですね……頑張ってみます!!
また何かあれば、その時はよろしくお願いします!!!

2012/05/06 20:47:12
id:fhtdd No.8

回答回数174ベストアンサー獲得回数4

ポイント10pt

「ミラクル博士の発明」
ある日研究所にミラクルという博士がいた
ミラクル博士はいつも研究で忙しい。
そんな時ミラクル博士は何かが頭に浮かんだ
「あっ!」
それを聞いた助手は
「どうしたんですか?博士?」
「すごい物が浮かんだんだ!」

「無敵のトライアングルと言うのが浮かび上がった!!」
「それはなんですか?」
「それはまだ教えない」
と言った博士は
楽器屋に行き普通のトライアングルを
買いに行きました
「普通のトライアングル買ってどうするんですか?」
「無敵のトライアングルは鳴らせば天空まで響き神が舞い降りてくる
と言う言い伝えだ」
「ああ!あの伝説の楽器ですか!
でもそれって作れるんですか?」
「作れん」
「えっ?」
「だが努力に努力を重ねれば多分出来るかも」
「そうですか!じゃあ作りましょう!」
そう言って数時間が経過した
「出来たかもな」
博士は早速ならしたが
天空には響かなかった
「だめか」
そのまた数時間後
「おおっ!?」
「すごいぞ!トライアングルが虹色に輝いている!!」
博士はトライアングルを鳴らした
すると
すごい迫力で響いて
天空へと
その音は
旅立っていきます
すると
天から輝く物体が現れた
「私はトライアングルの神だ」
「マジかよお!!」
「お前の望みは何だ」
と神が言った
「え?
あ!じゃあ私をもっと有名な博士にしてくれ!!」
「その望みかなえてやろう」
そう言いながら神は去った
数日後
新聞には
大きく
「ミラクルが無敵のトライアングル
開発!!!」
と載せられ
博士はノーベル賞を見事受賞したのであった

終わり

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id:fhtdd

次回はもっと努力します

2012/05/06 11:30:22
id:gm91

向上心こそが上達の秘訣と心得ます。
がんばってください!

2012/05/06 20:06:37
id:meefla No.9

回答回数997ベストアンサー獲得回数472ここでベストアンサー

ポイント50pt

ユニット


   東京:午前6時00分

 新宿の夜明けは美しい。
 私は地下鉄の入口を目指して、ふらつきながら歩いた。駅までは遠くないはずだが、「百年の孤独」をしこたまぶち込んだ体にはワンブロックでも無限の彼方のように思えた。
 ようやくたどり着いた駅への階段を降りる所で、私は私とすれ違った。
 女だ。
 ユニットがシンクロした。
『長谷川三奈。23才。独身。趣味はジグソーパズル。仕事で徹夜明け……』
 目の前にいる私の情報とともに、一つのフレーズが流れこんできた。
『無敵のトライアングル』
 聞いた事のないフレーズだった。一体何の事だろう。ま、いっか。
 私はよろよろと改札口に向かった。

 酔っぱらいの私とすれ違った後、明治通りを歩きながら、私は『無敵のトライアングル』について考えていた。新宿ほどの大都市になれば自分とすれ違うのは珍しい事ではないし、全ての記憶が同期するわけではない事も承知している。しかし、妙に気になるフレーズだった。
 ユニットでネットを検索してみた。ヒットなし。
『頭が動いてないわね。やっぱ完徹はきついわ』
 マンションの入り口で思わずあくびが出た。フレーズの件は他の私に任せて、早く寝よう。


   ニューオーリンズ:午後4時10分

 フィリップスのエスプレッソコーヒーメーカーにコーヒー豆を入れ、スイッチをオンにする。程なくして香り高いカプチーノができあがった。私はカップを手にしてリビングに行き、ソファに腰を下ろすと、『無敵のトライアングル』について思いを巡らした。
 『トライアングル』って何だ?楽器だろうか?いや違う。三角形?これも思い当たらない。日本の酒のブランド名?イギリスのホラー映画?
 私はカプチーノをすすって一息入れた。
 ユニットの流してくる無数の情報に一々こだわっていては身がもたないが、何か大事な情報だという気がしていた。かなり古い記憶。子供の頃に大切にしていた外国のコインのような。
 ネットラジオの曲がレインボーからカーペンターズに変わった。
♫Good-bye Joe, he gotta go, me oh my oh
 さて、夕食は何を食べよう。久しぶりにガンポ・ショップでも行ってみようか。


   ロンドン:午後10時20分

 バランタインのグラスをなめながら、私は過去の記憶をまさぐった。最初の職場。ケンブリッジでの大学時代。パブリック・スクールの学友たち。『無敵のトライアングル』に関連する記憶はなかった。
 ふと私は、ユニットを埋め込んだ頃を思い出した。
 それは簡単な手術だった。麻酔から覚めた時、全世界が変わっていた。インターネットと接続された私に、無数の情報が流れこんできたのだ。
 UNIT は、Universal Neuro-electric Internet Transmitter の略だ。人間の脳に中継器を埋め込んで、インターネットとの直接接続を可能にする機械。個々の人間の知識量は飛躍的に増大する。コンピューター端末を使わずに、頭の中で考えるだけで、望むネット上の情報を入手できるわけだ。
 ただし、副作用が一つあった。ユニットを装着してしばらくすると、人間から「自我」というものがなくなってくる。同じユニットを装着した他人と経験や記憶も共有されるため、次第に彼我の境界線がぼやけていき、最終的には一人の「私」に収束するのだ。
 現時点で、地球の各所に散らばっている「私」の数は、12万6591人。それぞれは独自の社会生活をしているが、生体で言えば細胞の一つであり、全体で「私」を形成している。文字通り単一の「ユニット」なのだ。そしてそれは、ある科学者の研究から生まれた……。
 私は思わず声に出して言った。
「エルンスト・ヴンダー」
 私は満足して、バランタインを飲み干した。『無敵のトライアングル』の謎が解けたのだ。


   ケルン:午後11時30分

 ケルン大学病院の緩和ケア病棟で、私は死にかけていた。これほど科学が進んでも、膵臓癌だけは治せない。
 私はユニットを発明した頃を思い出していた。はるか昔の記憶だ。研究の将来に疑念を抱く同僚に向かって、私はこう力説したものだ。
『人間とインターネット、そしてユニット。この3つが合体すれば、無限の可能性が開けるのだ。まさに無敵』
 同僚は問い返した。
『いくら「無敵のトライアングル」でも、死には勝てないだろう?』
 私は追憶の中の同僚に向かって言った。
「私は死ぬ。だが私は死なないのだよ」
 このドクトル・エルンスト・ヴンダーの心臓が止まる時、ユニットは最後の仕事をする。エルンスト・ヴンダーの全ての記憶と知識をメモリーから開放して、ネットにアップロードするのだ。私は「私」の集合的無意識となる。エルンスト・ヴンダーは存在し続けるだろう。ユングの言う「老賢者」として。
 私は眠りについた。二度と目覚める事のない、安らかな眠りに。


   東京:午前6時40分

 地下鉄のなかで眠りこけていた私は、下車駅を乗り過ごし、気付いたら荻窪駅だった。そのまま折り返して東高円寺まで戻る。新宿から家まで30分以上かかっていた。
 キッチンで酔い覚ましの水を飲もうとした時、ユニットが情報を送ってきた。
『エルンスト・ヴンダー死す』
 私は軽いめまいを覚えた。酒のせいなのか、転送されてきた情報量が膨大だったせいかはわからない。
 めまいが治まった時、ビジョンが見えた。エピソード5のオビワン・ケノービのような表情で、エルンスト・ヴンダーが私に微笑みかけていた。
 私はつぶやいた。
「おなかが空いたな」
 無性にジャンバラヤが食べたくなった。


(了)

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id:meefla

ベストアンサーありがとうございます。
講評へのご返事、兼ライナーノーツとして少々。

お気付きかもしれませんが、そもそもの発想元は前回「アラカルト」のお題でした。
「1人称小説・2人称小説・3人称小説」以外の小説、って奴です。
諸事情で話が転がらずエントリーは断念しましたが、どうしても書いてみたい題材だったので今回の作品になりました。
ですので、お題の消化度、特にトライアングルについては弱いと自覚してます。

情報の線引きについては、プッシュ型とプル型とかフィルタリングとか、いろいろ考えたんですが、基本線はフォロワーが12万人いるツイッター、みたいな感じです。
で、ユニット持ち同士が近距離で接近すると、DS のすれ違い通信みたいに、濃密なやり取りができてしまう、という設定でした。
酔っぱらいと徹夜明けだったので、フィルターが甘かった、とか。
ここいら辺を書き込んでいくとショートストーリーじゃなく短編小説になっちゃうんですよね。
エピローグの無い時点で、おおむね2000字でしたし。

確かにエピローグは、もう一練りですね。
朝6時で夜明け云々なので4月の上旬くらい、とするとアメリカもイギリスもドイツもサマータイムに入っていて、てな具合で、どうでもいい細部にこだわっていたもんで(^^;

これまた蛇足ですが、ドイツ語でミラクルは Wunder なので、ドクトル・ヴンダーになってます。
ヴンダーという苗字は実在してまして、例えばインゴルフ・ヴンダー(Ingolf Wunder)なんてピアニストもいるようです。

力作ぞろいの回だったので、ベストアンサーがいただけて素直に嬉しいです。
また機会がありましたら、よろしくお願いします。

2012/05/06 12:19:06
id:gm91

>DS のすれ違い通信みたいに、濃密なやり取りができてしまう、という設定
なるほど。

2012/05/06 19:43:54
id:sasuke8 No.10

回答回数12ベストアンサー獲得回数2

ポイント30pt

『無敵トライアングル銀城の伝説』


無敵トライアングル銀城の伝説を知らないものは、少なくともこの弓浜小学校区にはいない。
曰く、トライアングルだけが友達だった。
曰く、27個のトライアングルを同時に扱えるのは銀城だけ。
曰く、5歳までトライングルのみで育てられた。
曰く、トライアングル狩猟の大会で3メートルのヒグマを狩って優勝。
曰く、狙撃されたが体に装着していたトライアングルで弾いた。
と銀城の伝説がいくつあるのかもよくわからない。銀城は無敵のトライアングラーとして弓浜小学校に6年間君臨し、その後どこかの私立中学に入学したらしいが、そのあとのことは誰も知らない……知らないってのに。
「銀城はどこだァ!」
今日も銀城について聞きにくる奴がいる。こいつらは、トライアングラーなら銀城の居場所を知っていると短絡的に思い込んで、わざわざトライアングル部の部室までおしかけてくるのだ。しかも、なぜか喧嘩腰なので、話をちゃんと聞いてくれない。
今日の訪問者は赤川。5年7組のカスタネッター。重爆カスタネッツ赤川。両手両足両膝両肘に装着したカスタネットが、赤川が動く度にカタカタ鳴ってうるさい。原色の赤と青のツートンカラーの異常なジャケットの中にもカスタネットが仕込まれているらしく、ひたすらにうるさい。
他に誰もいないのでしょうがなく僕が答える。
「知らないって言ってるだろ」
「知らないわけあるか。お前、トライアングラーだろ!?」
ほらね。こいつら、バカなんだ。
「あのな。トライアングラー同士の繋がりなんてないし、銀城なんてたしか5年も前の卒業生だろ? 知ってるわけないだろ」
「本当か? 庇ってるんじゃないのか?」
僕は赤川の言うことを無視して宿題の続きをやる。漢字の書き取り10ページ。この単純作業に意味あるの?とか思わないよう集中しなければこんな無意味な作業はできないくらい僕は賢い。なので無駄なことはなるべくしない。無駄無駄無駄なんだ。トライアングラーだって、受験に有利じゃなければ絶対ならないし近づきたくもないのだ。
「銀城はどこだァ!」
とかくこの世には無駄なものが多い。
本日二人目の訪問者の俊敏タンバリン木村は、高速で反復横跳びをしながら入ってきた。正気を疑う。しっかりタンバリンは鳴らすのでパンパンシャラシャラうるさい。
「うるさい!」
とりあえず叫んでみたが、音は止まない。楽器使いにとって音を止めることは敗北を意味するからだ。くだらないが、そうなっているので仕方がない。無視無視、集中集中。
カパン!というおかしな音がするので顔を上げると、案の定赤川のカスタネットを木村がタンバリンで受け止めた音だった。
「ここ、部室だぞ!」という僕の声は、やかましいカスタネットとタンバリンに遮られる。
「「銀城に会うのは俺だッ」」
狭いトライアングル部室で二人の楽闘が始まる。

「やめろって!」叫びながら、僕は机ごと移動する。巻き込まれてたまるか。
赤川が、カスタネットの蛇を展開して部屋中がカタカタという音で埋まる。蛇は無数に連なったカスタネットで、赤川の手の指揮棒の動きに合わせて、音を鳴らしながら赤川の周りを回転している。蛇は部室の棚やら机をがりがり削りながらも回転を緩めない。棚からトライアングルがいくつか落ちる。初見ではビビってしまう大技だが、木村は冷静に反復横跳びしながら赤川の手を見ていた。蛇が回転を十分に高めた頃合いで、赤川の手が木村に向かって振り下ろされる。その瞬間にタンバリンが木村の手を離れた。赤川は意に介さずに蛇をタンバリンにぶつける。ちょうど赤川と木村の中央でタンバリンは蛇に食い破られる……その瞬間にタンバリンが弾けた! タンバリンの周りの鈴が小手裏剣のように散開し、赤川を襲う。
我慢できたのはそこまでだった。
僕は腰の左右につけられたホルスターからトライアングルを抜く。机を蹴って、二人の間に飛び込み、両手のトライアングルダガーでタンバリン手裏剣を弾き落とす。
「そこまでだ」
無駄なんだ。試験以外の楽闘なんて。喧嘩とスレスレで内申書にだってよくない。でも……。
「それ以上、ここを荒らすなら僕が相手になる」
両手のトライアングルで、赤川と木村の喉元を狙う。十分な距離があっても、僕の威嚇は届いたようで、二人が動きを止めた。しかし音は止まない。僕も両腕を振動させ、手の甲にとりつけたビーターにより一定のリズムでトライアングルを鳴らす。狭い部屋にタンバリンとカスタネットとトライアングル、そして僕たちの心臓の鼓動が響く。
こんな無駄なものが、どうしてこんなにも楽しくて、僕を熱くさせるのか。
楽器を持って相手と向かい合う緊張感や、鍛え上げた技をぶつけ合うときの興奮はなにものにも代えがたい。そして戦いの中で奏でられる、世界で唯一の音楽。僕はこの、お互いの楽器がぶつかり合って作られる新しい音楽が好きだ。
僕は無駄でしかないこの楽闘に憑りつかれてしまっている。

「何、笑ってんだ」
知らずにやけてしまっていたようだ。しかし、そういう赤川の顔も、木村の顔にも笑みが浮かんでいる。この頭の悪いやつらと僕は同類なのだ。僕は戦闘用の笑みをうかべて言う。
「問答無用だ。かかってこ」
「白井、いる?」
三人目の来訪者に部室のドアが開けられて、僕らは瞬時に動きを止めた。
顔を覗かせたのは5年2組の並原で、白井は僕だ。並原の後ろには黒いギターケースが見えて、さらにその後ろには退屈そうな女の子も見える。
「な、なに?」僕は両手を後ろに回しながら、答える。
「あれ、今取り込み中?」
「いや、別に」
無言で赤川を見るが赤川は視線をそらし、木村は下を向いている。
「……何もないけど」
「そっか。じゃあさ、今からマックいかね? 井路小の女子もくるんだけど……ま、ぶっちゃけ数合わせなんだわ。ははは。ごめん。でも白井彼女いなかったよな? いくだろ?」
「え、えっと、塾……あるから」
「まじかよー。休んじゃえよ」
「そういうわけには……」
その後しどろもどろの言い訳をくりかえし、なんとか並原は帰っていった。僕はほっとため息をつく。そして情けなさに泣きたくなる。
女の子たちとは話したい。しかし、並原たちと一緒に行くということは、ギターとかドラムとかヴァイオリンなんかと一緒に並べられるわけで、それは僕にとって地獄に等しい。
楽器には格差がある。先生はそんなものはないというけれど、現実に現れるそれは、僕らの心をいとも簡単に切り裂いてしまう。
いつの間にか音が止んでいた。楽闘は終わった。
「じゃ、帰るわ……」力なく赤川が言い、「俺も」と木村も続く。赤川はなるべくゆっくりとカスタネットを鳴らさないように部室を出ていき、木村もふつうに歩いて帰っていった。
部屋に僕だけが残った。さっきの赤川のカスタネット蛇のせいで部屋に散らばったトライアングルを片付けていく。そして、最後のひとつ、一際大きいトライアングルをぎゅっと握りしめる。そのトライアングルには名前が彫られている。
「無敵トライアングル・銀城」と。

無敵トライアングル銀城の伝説のひとつにこうある。
曰く、銀城は不細工なのに超可愛くて優しい彼女がいる。
僕らが、銀城に憧れるのは、おそらくこの一点だ。マイナー楽器使いで不細工なのに銀城はもてた。伝説によると、恋のトライアングルをいくつも作っていたらしい。
僕らがヒエラルキーの底辺から抜け出す方法を、銀城なら知っているのかもしれない。並原の彼女なんてパグみたいなもんだから、銀城の彼女の半分のパワーの彼女がいれば、僕らは何の憂いもなく楽闘に打ち込めるはずなんだ。何か一つ、人に負けないカードを持ってさえいれば……。僕らの考えは間違っている。でもルールがそうなっている限り、子供の僕はルールに則って戦うしかないんだ。

僕は伝説の男が使っていたトライアングルを棚にもどした。そして、また机に戻り、漢字の書き取りを再開する。
今日も僕は待つ。音のないトライアングル部室で、無敵トライアングル銀城が、5年ぶりに忘れ物を取りに来たりするような奇跡を。

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id:gm91

素直に面白いです。笑いました。
文章も結構書きなれてる感じで私が特にあれこれいう事はないです。
って訳にもいきませんので、細かいところばかりで恐縮ですが気づいた点を述べます。

1)「楽闘」という設定は面白いと思います。もう少し説明が欲しいかも。
部室でバトルする3人の描写もバカバカしくて素敵です。

2)「楽器には格差がある~」このくだりの表現が秀逸です。
ただ、このパートに突入する並原登場のくだりが、すこし唐突な感じがします。
突然横槍が入った感を演出しようという意図だと察しますので、「かかってこ」「白井、いる?」よりも前の部分でもっと盛上げておいて、バシャっと水をかける感じで動きを止める、そういう風に描写できるとメリハリがつくかな、と。

2012/05/06 08:34:41
id:sasuke8

講評ありがとうございます。
面白いと言ってもらえるとほっとします。こういう話は、自分ではすべってるかどうかよくわからなくなります。

>1)
「楽闘」を説明できるほど、詳細まで詰められてなかったのが実際のところです。この設定をちゃんと考えて、奥行きを感じさせられればもっと良かったかもしれませんね。

>2)
ここは読み返すと仰る通りですね。指摘されたような演出がしたかったのですが、いろいろ足りてなかったようです。

2012/05/06 18:37:14
id:yarukimedesu No.11

回答回数284ベストアンサー獲得回数48

ポイント25pt

ミラクル博士の無敵のトライアングル人類殲滅作戦。



 人間性に問題があって、非モテ街道42年の天才科学者。

 私が職場に持ちこんでしまった同人誌。

 凸と凹、とは表現できない歪なそれらが、ごりっと合わさった時に。

 人類は、緩やかな滅びの道を辿ることとなる。

 この地球に何が起きたのか???



 未来来雄42歳。自分の名前に使命感を感じて、タイムマシーンの研究にその身を捧げ、その実用化に一番近づいた…という地球一の天才と呼ばれる彼。名前と偉業を讃えて「ミラクル博士」と呼ばれている。そのミラクル博士が、私の雇用主。そんな私は、少しオタクな、青春を取り戻そうともしない32歳の寂しい女性事務員。ミラクル博士の研究所に勤めてるのは私だけ。

 ミラクル博士は、人間性に致命的な欠陥があって、いや、もう既に100回死んでも足りてないくらいの人間性欠陥人間で、彼の偉業と、資産を目当てに、女の人が集まってこない訳でもないのだけど…30歳になる前に起きた3度の失恋が、彼を恋愛に絶望させた。リア充死ね。世の中の全ての女性が、彼の敵となった。なのに私が事務員をできているのは、「女性を感じないから」らしい。それはそれでムカつく。「女の子はみんな~」とか言う女性芸能人は死ね、と思うけど、死んだ方が良いのは、男にもいる。

 そんな歪んだ腐れ博士が、さらに歪んで腐れ腐れ博士になろうとは…想像だにしなかった。私が職場に持ちこんでしまった同人誌。それが、スタートボタンになってしまった。


 ある日。


「きゃ!やだ!それ読んじゃったのですか!」

「帆伊豆君。何かね。このマンガは…けしからん。」

「申し訳ない!ついメロンブックスで買ったのをお昼休みに読もうとか思って…。」

「だが、素晴らしい。この男はカウンセラーかね?」

「いえ、お医者さんです。」

「なるほど。そして、診療に来る中学生。」

「ええ。」

「彼は、バイセクシャルな家庭教師に性的悪戯を受けているのだね。」

「ええ。」

「…無敵のトライアングルここに極まらり。」

(噛んだ!)


 その日から、彼は、タイムマシンの研究を全て凍結させ、と言っても、スポンサードの関係から、表向きは難航してることにして、彼のもう一つの研究テーマである「業子力学」の研究に没頭していった。業子力学とは、因果関係を量子力学的に、業子、カルマトロンを扱う分野らしい。私は、詳しくないから、入出金とか、経費の打ち込みをしていた。

 そして、彼が同人誌を読んでから、丁度、801日目に、彼の研究「無敵のトライアングル」が完成する。性格が歪んだミラクル博士曰く…


「私がこれから時空間に放出するカルママシンは、時間を飛び越え、そして、私の障壁となった、あの腐れど腐れど低脳性的人間の3人の人生に干渉する。後は、言わずもがな、1人は、中学生に、1人は、精神科医に、1人は、家庭教師…という人生を歩むことになるのだ。後は、言わずもがな。ふふふ。サイン、コサイン、タンジェント…。」


 博士は愉快になると、三角比を口ずさむ。精神科医じゃあないのだけどな?居酒屋でこんな訳の分からない話をするミラクル博士は、やはり、性格が破綻しているのだと思う。次の日はお休みだったから、興味本位に、件の三人を訪ねてみると…なるほど、愉快なガチホモライフが送られていた。相手のことを出し抜きつつ、抜きつ、抜かれつ、楽しい生活。

 これだけのことが出来るなら、ミラクル博士は、自分が好きだった3人。最初の人か、はたまた、結果論的に1番好きだった女性との関係をカルママシンで作り変えれば良かったのに…と思った。面白いから、そのことは、ミラクル博士には言わないけど。でも、憎しみというのは、不可逆性なんだと思う。一度、憎しみで焼けた脳、歪んだ心は、同じようには戻らない。そもそも、ミラクル博士は性格を矯正させるつもりもなくて、どんどんと、取り返しがつかないくらいに、性格が捻じれ曲がっていく。

 私も面白いから、珠玉の同人誌を、これ見よがしに、博士の机とか、色んな所に挟んでおいた。そしたら、ミラクル博士は、どんどんと狂ちゃって、1回に1億くらいのカルママシンを過去に向かって、どばどばと放出させて、私達が住む現代は、ガチホモだらけになっているみたい。大学生、肉屋、米屋、商店街、担当教官、マンガ家、アシスタント…無敵のトライアングルが、どんどんと形成される。三角形の頂点が新たな頂点となり、どんどんと、トライアングルが広がって行く。地球表面が、男性人口の頂点数のポリゴン面になる日は近い。

 今はまだ、人口増加が緩やかになっている…と世間は喜んでいる。だけど、近いうちに、増加が減少に変わり、そして、最終的には、全人類が一瞬にして消えるのじゃないか?と、想像する。私は私で、市井にリアルホモが増えて、それは、それで、楽しんでいる。充実してます。


 心が歪んでしまえば、知識も、革新的な技術も、科学も、正しく使われない…そういうことかなぁ。そういえば、「sin・cos・tan」をアナグラムさせたら面白い言葉が出てきそう。sとnの使いどころに悩んだけど、「san」にしたら…敬称をつけちゃった。あ、いや、sが一個余るのか。


参考文献

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id:gm91

ちょっと展開が難しいですけど、面白かったですよ。
ただ、なぜ2ではなくて「トライアングル」が形成されるのか、が作中に示されると良いかなと思いました。
全年齢対象スレスレ感が漂っていますが、とりあえずセーフ。(^^;

2012/05/06 08:34:34
id:yarukimedesu

 …実を言うと、投稿した後に、恥ずかしさがこみ上げて来てました。次回があるなら、猛省しておきます。

2012/05/06 13:00:47
id:grankoyama No.12

回答回数560ベストアンサー獲得回数170

ポイント30pt

 ドアを開けると、すぐさま心地良い空気に安らぎを覚えた。
店内を漂う珈琲の香りが鼻腔を満たす。
弘志が、この店に通いだした大きな理由はマスターこだわりの珈琲の味。
それに、マスターの人柄と立地条件もろもろが重なってすっかり常連となった。
「いらっしゃい、ハカセさん」
 この店のマスターは弘志のことをハカセと呼ぶ。一応博士号を取った身分なので、あながち間違いではないが、すでに研究職からは退いている弘志からすると少し座りが悪い。そもそもが、弘志という名前の漢字をマスターが『博士』と勘違いしたことから、そのような愛称が付けられてしまったのだが、今更訂正する気にもなれず、甘んじて受け入れている。

「ブレンドのホットと、カツサンドをお願いします」
それだけ言うと、弘志は店内の奥にある特等席、お気に入りの椅子に腰を下ろした。
マスターこだわりの珈琲はもちろん、軽食の味も悪くない。
もともと音楽をやっていたマスターがジャズ喫茶を目指して作った喫茶店であることを以前聞いていたが、結局ありきたりの喫茶店として、その珈琲の旨さで客を集めている。
店内にかかっているのは、なんてことのない流行の曲の有線放送。
 マスターは若い頃吹奏楽をやっていて、それで一時期ジャズにのめり込んだらしい。
が、以前にマスターから聞いたところ、
「いやあ、サックスとかウッドベースとかね、そんなのをやりたくて吹奏楽始めたんだよ、でも、なんだか、トライアングルをやることになって。もちろん他の楽器もかけもちでやったけどね。シンバルとかいろいろね。でも思い出として残っているのはトライアングルのことばっかりで……。そんな僕がジャズ喫茶やるのもどうかと思って結局こんな店になっちゃって……」
そんな他愛も無い話を意味も無く思い出した。

――そろそろだろうな……
陰鬱な気分は、意識せずとも弘志の意識を寡占する。
週一回課せられたノルマ。
それが嫌で、食事がてらに、わざわざ珈琲を飲みにきたのだが、それで心が晴れるということも無い。
 そんな弘志の心を知ってか知らずか、マスターはいつもどおりの表情でグラスを磨いていた。


 とある楽器店。店内に居る一人の異様な人物。
どこからどう見ても、悪の組織の幹部。白髪に片メガネ。ご丁寧に黒マントまで羽織っている。
見ようによっては天本英世に似たその顔つきは死神博士を思い出させる。
万引きのような軽犯罪とは無縁、それでいて、どす黒いオーラを放つその人物の周囲には近寄り難い雰囲気で溢れていた。
事実、ほどほどに賑わった店内でもその黒マントの周りはあからさまに避けられているように誰も近寄ろうとしない。
「これにするか……」
黒マントの老人が、おもむろに、そこに置いてあったトライアングルを拾い上げた。

 近年、技術も進歩し、怪人を作るのに、改造手術などというまどろっこしい手段をとる悪の組織はほとんど無いといっても過言ではない。
既に時代は平成、21世紀なのだ。
週一で現れ、軽くいなされる怪人ぐらいは、いとも簡単に作り出すことができる。
黒マントの老人は、懐からカプセルを取り出すとその蓋を開けた。
中身はナノマシン入りの粉末で満たされている。
それをそっと、トライアングルに振り掛ける。一丁上がり。



 突然響いてきた何かが崩れ落ちる音。
「きゃあ」
「な、なんだ~」
 ふいに、店外が騒がしくなる。弘志はそれを敏感に察知して、重い腰を上げようとしたその時、
「今日も、出動かい? 大変だネェ。いいよ代金は。その代わり、街をよろしく頼む」
気心の知れたマスターの心遣いがありがたかった。

「ド、ド、ド、トライ~!! アングァル~!!!!」
弘志が通りに出てみると、トライアングルをモチーフにした怪人が縦横無尽に暴れまわっていた。
モチーフといっても野球仮面のように、体は人間そのまま、頭部やコスチュームが野球という系統ではなく、いわばスプリングマンのような、か細いトライアングルを胴体とし、そこに、細い手足――おそらくバチ、トライアングルビーターなのだろう――が生えている。貧相な怪人だ。
とても強そうには思えない。が、原材料は金属。生身で闘ってダメージを負わせられる公算は低い。
それでも、弘志はお決まりのごとく、始めは体ひとつで立ち向かっていく。
「貴様っ! なんか名前は良く知らないが、最近もっぱら、世界征服を企んでいる組織か結社か、まあ、なんかそんな感じのところの、怪人だな!
これ以上街を破壊し、人々を脅かすのは俺が許さない!! とおっ!」
ざっくりと状況を説明しつつ、『とおっ!』の掛け声とともに跳躍をした弘志であったが所詮生身の体。
対して高さも飛距離も出ぬまま、とりあえず怪人のだいぶと手前で着地し、何事も無かったかのように怪人の元へ駆け込んでいく。
パンチ! キック! 手刀!
攻撃を繰り出す弘志であったが、当然金属製の怪人には効かない。
弘志の手足は真っ赤になった。下手をすれば、骨折ものである。骨折り損のくたびれ儲けとはこのことであるが、それでもセオリーを無視することはできない。
痛む手足に鞭打って、一通りの攻防を繰り広げた後、怪人から距離を取る。
いざ、変身の時だ!

 説明しよう。弘志の皮膚には特殊な発電装置が組み込まれており、塩分を多く含んだ水分をその発電の燃料とする。つまり、汗を多くかけばそれだけ電力が多く生産、蓄積されその電力を持ってコンバットスーツの転送エネルギーをまかなうのだ。
 とはいえ、季節は春先。暑い日もあれば寒い日もある。今日は曇りで中々肌寒い。
それほどまでに汗をかかなかった。転送エネルギーが足りない。
かといって、素手でまたひと暴れするのもしんどい話だ。
――いっそ、サウナにでも……
そんな思いもよぎったが、付近にサウナは見当たらない。
仕方なく、弘志は先ほどまでいた喫茶店で、ホット珈琲のおかわりをすることにした。
身も心も温まるとはこのこと。
立て続けに3杯の珈琲を飲み、ほどほどに体の温まった弘志は、ようやく重い腰を上げかけたその時、
「いいよ代金は。その代わり、街をよろしく頼む」
マスターの暖かい心遣い。身も心も懐も暖かい。



いざ、変身の時だ。
いやいやながらにコンバットスーツを転送する。
コンバットスーツは脱サラして買ったものだ。まだローンがだいぶと残っているので出来れば身に付けたくないのだが、そうも言ってられない。
いつもそうだ。闘うたびに傷が付く。オートバックスに行って傷隠しを買おうとした弘志であったが、合う色が無く、いつも高い修理代金を払って新品同然の見た目を維持しているのだ。
ほんとに、いやだ。コンバットスーツを着ること自体はやぶさかではない。
でも、それを来て闘って、埃まみれになったり、特に傷が付くのが嫌。
シルバー系なら、傷も目立たなかったのに……と今更後悔しても遅い。
ギャバン、シャリバン、シャイダーと銀、赤、青が使われて、残った色の中で、
それなりに格好が付いたのは、弘志の選んだブラックメタリックだけだったのだ。
傷が目立つことこの上ない。所詮メッキだから。すぐに塗装がはげてしまう。
そんなことを考えながらも、コンバットスーツの転送が完了する。
思い出したかのように、
「黒装!!」と叫ぶ弘志。
本来ならば、コンバットスーツ転送前に叫ぶべきなのだが、いつもタイミングを逸してしまう。
まあ、細かいことは気にすまい。

「地元刑事(無資格、無認可、無免許)、ミラクルセイバー!!」
雄たけびにも似た名乗りとともに背後で大爆発。
人気の無い荒野でやればよかったのだが、このような密集地区ではかなりの家屋に被害が出たようだ。幸い怪我人は居なかった。いたかも知れないけど居なかったと信じることにした。
ちなみに、ミラクルセイバーは仮称。毎週変わります。
いまだに正式名称を決めきれず、手探り状態で特撮ヒーローやっているのだから。
先週は、『グラムサー』だったっけ。
その前なんか『レンジャーひとり』。ゴレンジャーと劇団ひとりにインスパイアされたらしいです。

 で、ひととおり、これもひととおりの、攻撃しては返されて、返されては反撃。
そんな流れで怪人トライアングルと闘う弘志、もといミラクルセイバー。
一段落するか、そろそろ時間だよってところで、必殺技。
その前フリとして、取って置きの武器を取り出す。
コレも仮名。
いわば、光る剣なのだが、ビームサーベルでもレーザーブレードでもライトセーバーでもない名称を求められ、手詰まりの状態。
「…………」
剣を繰り出しながら、小声でなにやら呟くミラクルセイバー。
いいネーミングがさっぱり浮かばず、聞こえないようにライトブレードとかビームソードとかありがちな名前を、恥ずかしがりながら、言っているのです。
で、剣を出したら、とどめの一撃。
「シャリバーン、クラッーッシュ!」
ええ、まずいですよ。パクッたら。でも、ギャバンより、シャリバン派の弘志は、3~4回に一回は思わず叫んでしまうのだ。『シャリバンクラッシュ』と。
間違っても『ギャバンダイナミックとは言わない』。
今回であれば、『ミラクルセイバークラッシュ』と迷った挙句、語呂が悪いので、自分の中で葛藤した挙句、気持ちよく敵を倒したらそれでいいやという信念の元、
『シャリバンクラッシュ』を選択したのだろう。弘志を攻めることはできない。
彼は、悩み多き人なのだ。

なんだかんだ言いながらも、繰り出された必殺技『シャリバンクラッシュ』。
コンバットスーツ購入時には、オプションとして付いているものだとてっきり思っていたのに、別売だった光る剣。それもべらぼうに高価。結局これもローンで支払い中というその価格が示すとおり名前は未定でも威力は絶大。
通常であれば、敵の怪人を粉砕してハッピーエンド。そんな武器である。
しかしながら、今回のお題は、『無敵のトライアングル』。
怪人トライアングルはシャリバンクラッシュを受けてもびくともしません。
さすが、『無敵のトライアングル仮面』。

かくして、世界、いや地元の運命は!?



~fin~

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id:gm91

お任せ、ダメ出し、いいとこ探しにて承りました。

2012/05/05 16:12:02
id:gm91

これも面白かったですけど、まだまだ遠慮が見え隠れしてる気がしますね。
前置きがちょっと長い感じがするので、バトルのところにもっと注力されると良かったかなと思います。

で、ご注文の件。
・「コンバットスーツは脱サラして買ったものだ~」という設定は面白いです。
・コンバットスーツの効用が具体的に描写されると良いですね。
 あと傷が付いて凹む描写があると笑えそう。
・名前が毎週変わる、は説明すると萎えるので、誰かにツッコませると良いのでは。シャリバンクラッシュも。
・個人的にはもっと長くて良いですよ。面白ければ、ですけどね! 請う続編。

2012/05/06 08:35:34
id:takejin No.13

回答回数1543ベストアンサー獲得回数203

ポイント45pt

「くそっ、はずれねぇ。」
足首が挟まってる。
「この石を外せば、大丈夫。」
取れねぇ。全然とれねぇ。
「何でだよ。」
だけどなぁ、ここでくたばるわけにいかねぇんだよ。
「これを、届けないと…」

 あ、三毛ネコ。落ちるよお前、待てって。
「あ」

「おおーい、ヒロォ」
崖の上から、かすかに声が聞こえる。
「こっちだぁ」
ボクは声を上げる。
「大丈夫かよ。」
「ネコいるか、そこ」
「なんだよそれ」
さっきネコ。大丈夫だったかな
「ネコが、落ちそうだったから、引っ張り上げたんだよ」
ふなぁお。
「このネコかよ、てか、ヒロ大丈夫かよ。」
いて、足首が変だ。
「大丈夫、大丈夫。生きてるし、声も出るし、腹も減ってる。」
立てないけど。
「ほんとかよ、誰か呼んでくるからまってろよ」

あ、ボール。窓空いてる。出ちゃうよ。ほらっ。
「あ」

「おおーい、ヒロォ」
呼ぶ声に見上げる空。
「ここだよ」
持ってるサッカーボールを投げ落とす。
「枝に乗ってたのかぁ」
「大丈夫。ボールもな」
友が見上げる。
「お前、ミラクルだよな。」
「?」
「崖の時も、教室の窓もさ。」
俺は、枝から飛び降りる。
「ま、まあな。不死身っていうのかな」
ち、着地で足首をひねったかな。立てねぇ。
「おおい、みんな、こいつ生きてるよ。ミラクルだぜ。」
ま、4階から落ちて無傷って奇跡的かもな。

 
「おおーい、ヒロォ」
かすかに耳元に声が聞こえる。
「おれは、大丈夫だ」
足首取られてるけどな。
「ミスタ・アダチ。聞こえるか。こちらコントロールセンター」
「聞こえる。こちらアダチ。」
さっきの声は?
「データを受信した。事故が発生したようだが、状況報告はできるか?」「大丈夫かぁ、ヒロ」
なんでカザマの声も聞こえる?
「資料採取後、帰還時にエッジより落下、脚部を損傷。そのまま脚部が挟まれています。」
「動けるか」
「動けません。」
「了解した。こちらのデータとも一致する。」
さっきの声は?
「事故の報道を見て、君の友人が来てる。聞こえるか、あの声」「おおーい」
「はい、聞こえます」
「状況を把握したから、こちらに来てもらう。」
あいつ、何やってんだ。
「おい、ミラクル。大丈夫か」
「またそれかよ。俺はミラクルでもなんでもないって」
「いやいや、落ちても死なないミラクルだって。」

「ねぇ、あなたのあだ名って、ミラクルっていうんですって?」
「誰から聞いたんだ、それ」
「あなたのお友達の、えーと、カザマさんかな。」
「どこで、そんな話」
「この間、電話で。あの人面白いわね。」
「このままだと、本名よりあだ名のほうが有名になっちゃいそうだ。」
「あら、でも、すごいわね。落ちても死なないって。」
「そんなことないさ。今度落ちたら。三度目の正直っていうからなぁ。」
「そんなことないわよ。今度も大丈夫。それに、今度はもうないわよ。」

「ミスタ・アダチ。いや、ミスタ・ミラクル。聞きましたよ。ニックネーム。」
また、あいつが広めてるのか。
「なあ、カザマ。今考えてたんだけどさ。」
「なんだよ、ヒロ」
「三度目の正直って奴さ。」

「ミスタ・アダチ。状況を。次の噴火まで、短くて15分、長くても30分。それまでに、火口から脱出する必要がある。」
火口壁まで、あと50mあるな。
「移動手段は?」
「火口壁の向こうにジェットヘリが到着する。7分後だ。上昇気流でそれ以上は近づけない。」
「わかった。」
この足首じゃ、無理かな。まず動かないからなぁ。
「おい、ミラクル。また足首だけけがしてんじゃないだろうな。」
「いや、体は無傷だ。今度はな。」
だから、三度目の正直だって。年貢の納め時なんだろうよ。
「サンプルは持ってるのか?」
「ああ、持ってる無事だ。」
そうだ、これを届けなくちゃ。
…よし、決めた。
「今から行くぞ。」
「おい、大丈夫なのか?」
「ああ、お前の言うとおり、ミラクルだからな。」

「こちらヘリ。火口壁へ到着。」
「アダチ調査員を確認できるか」
「火口壁のヘリに、アダチ調査員を確認。」
「了解。収容できそうか?」
「今、確保した。収容完了。ただちに帰投する。」
「了解。」

「ミスタ・ミラクル。帰還おめでとう。」
「ありがとう、何とか帰れた。」
「また、ミラクルだな。ヒロ。」
「ああ、まただ。カザマ。三度目の正直って、こういうことかな。」
「係官、すみませんが、アダチ調査員の負傷の治療を」
「おや、ミスタアダチは負傷していないはずでは?」
「いえ、右足の足首が脱臼しているようです。処置を行います。」

俺は、また死にそこなったらしいな。
「ね、今度も大丈夫だったでしょ?」
「ああ、抜けなかった足首をひねって、捻じ曲げたときは、さすがに痛かったけどなぁ。」
「それも、今までのけがで、脱臼しやすくなってたらしいじゃないの。」
「けがの功名か。ま、三度目の正直にならなくてよかったよ。」
妻は、サンプルを持って、俺の目を見ながらこういった。
「このサンプルのほうが大事だったんでしょ?ネコやボールと一緒で。」
「ま、まあな。お前の研究が途絶えると困るだろ。」
妻は微笑んで言った。
「二度あることは三度あるって言うじゃない。ね。ミラクル・ヒロシさん。」

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id:gm91

合点だ!

2012/05/05 23:35:07
id:gm91

ヒロシをうまく料理された感じです。
今回の応募作で、私が事前に意図していたイメージに一番近い作品。
お題を自然に捌きつつ、自分の土俵に持っていく。そういう感じ。

場面転換がちょっとわかりにくい感じなので、もうひと工夫あると良いかも。

2012/05/06 08:36:41
  • id:gm91
    補足事項:(ポイントに興味のない方は読み飛ばしてOK)
    1)ポイントは均等配分にはしません。加点/減点要素両方の積算で+が出れば基本点に乗せます。
    2)講評は希望者のみ。投稿後にご希望の辛さ(辛口/中辛/甘口)を「コメント欄に」お願いします。
    3)創作文章として面白いかどうか、で採点します。あと文章としての完成度。
      内容が一定の基準(開催者判断)を満たさないと判断したものは基本点もカットします。
    4)質問者連想元ネタとの一致やアレンジ方法は、原則として採点対象外です。お好みで。
    5)キーワードをタイトルや本文に使う縛りは無し。
      関連性が読めない作品は適宜伺いますので、作品へ無理に織り込む必要はありません。

    補足の補足:
    5)については、例えば極端な話
    「お前は宇宙の無敵ロボ」でも良いですし、
    トライアングル→楽器→「ベルリラ」 とかでもOK。
    後者の場合は私からどういう連想なのか一応伺います。(ルールに適合しているか判定するため)
    「何でもアリ」にしたいわけではなくて、キーワードのイメージや語感から得た作者のインスピレーションを優先して欲しいという思いです。

    ※当然ながら今回限りのローカル基準なので、そこんとこヨロシク
  • id:ryou01
    講評「中辛」でお願いします!
    途中話がとんで分かりにくくなってしまったかも...。
  • id:gm91
    補足の補足2:
    2)はポイントと関係ありませんね。次回から気をつけます。
    5)について、キーワードを全乗せするか否かはポイントの多寡に影響しません。
  • id:hokuraku
    ものすごく久しぶりの投稿なので、極甘で。←へたれ
  • id:gm91
    博士です。はかせと読む必要はなかとです。博士です。
  • id:takejin
    連休だと、難しいかもです。家族サービス中。
  • id:gm91
    まあ事故だけはないようにお気をつけて。
  • id:maya70828
    思い切って講評は中辛でお願いします。
    たぶん言われるであろうことを言っておくと
    おもしろく書こうとして表現しきれていない、自分だけがおもしろいと思って書いている文章のようにみえる。
    と予想します。
    頭では分かっているんですが、実際書くとうまく書けません。
    何かネタや話を膨らませたり、おもしろおかしく書くコツなんかをご教授頂けないでしょうか?
  • id:gm91
    読む前ですが一言。
    お互いアマチュアですので、「自分だけがおもしろいと思って書いている」ならばそれでOKですよ。少なくとも私は。

    私が常々思うのは、「ただ書いただけ」「ポイントください」みたいな落書きにコメントするのが苦痛なだけです。書き手の熱意は読めばわかりますし、わからなければ聞きます。

    もちろん開催者にウケないとポイントは渋くならざるを得ませんけど、それ以上のことはありません。誰しも回答する権利があるのですから。その点は誤解されたくないです。
  • id:gm91
    >何かネタや話を膨らませたり、おもしろおかしく書くコツ

    そんなもん私が聞きたいですよ。女王陛下にでも聞いてくださいな。

    私が日頃努力しているのは
    ・トイレに行く
    ・風呂に入る
    ・布団に入る、目が覚めてもがんばってもう一度寝る
    ・旅に出る
    くらいですね。
  • id:ibuki81
    講評は、「中辛」でお願いします。
    できれば前よりもちょっとだけ厳しめな感じで。

    急いで作ったのでおかしいところは結構あると思いますが……((え
    ご指摘のほどよろしくお願いします。
  • id:fhtdd
    講評は
    甘口でお願いします
  • id:takejin
    たくさん本を読んで、たくさん自分で書いて、他人に読んで評してもらう。
    コツなんてない。
  • id:sasuke8
    講評は辛口でお願いします。
  • id:gm91
    各位 
    力作ありがとうございました。
    ロスタイムに入っておりますが、甲乙決め難いので結論は明朝までご猶予ください。すみません。
    ※BAは必ず決めます。
  • id:takejin
    誤字脱字の件で、偉そうなこと言った割には、全然推敲してない。
  • id:gm91
    お待たせしました。meeflaさんBAおめでとうございます。
    今回BAは結構悩みました。
    講評は粗々書いてあるのですが、編集中につきしばらくご猶予ください。

    また予算オーバーだなあ…がんばってポイント貯めないと…
  • id:sokyo
    おっはよー!

    あれ、だれか、私のこと呼んだ?
  • id:minoru-0413
    minoru-0413 2012/05/06 14:09:49
    お兄さんは青い御花が好きでした。
    私はよく青い御花を摘んでお兄さんのお部屋に飾ってあげました。
    お兄さんは枕元に御花を並べて眠っていました。
    幸せそうな御顔をして、ときどき寝言を言ったりしました。
    「マリー、今日も来てくれたんだね。」
    起きていたのかと思って顔を覗き込んでも、御兄さんは目を閉じていました。
    少しがっかりしたけれど、私の夢を見てくれているのは嬉しいと思いました。
    今日も御庭で御花摘みをしてから遊びに行きます。
    お兄さんにプレゼントするんです。
    夢でも会えるように。
  • id:gm91
    お二人にはこれを進ぜよう。
    http://r.tabelog.com/yamaguchi/A3502/A350201/35000352/dtlphotolst/P9973987/
  • id:maya70828
    >GM91さん
    >何かネタや話を膨らませたり、おもしろおかしく書くコツ
    教えてくださってありがとうございます。

    ところで「ミラクル博士」、「無敵のトライアングル」の元ネタって何だったんですか?


  • id:gm91
    元ネタ……
    http://d.hatena.ne.jp/gm91/20120429/1335664162
  • id:maya70828
    ありがとうございます。
  • id:takejin
    推敲の結果、こうなりました。
    2時間PCの前に座れればよかったんだけどねぇ。


    『三回目への軌跡』


    厚い雲が切れた。遠くに、稜線と白い噴煙が見える。あの山だ。
    「ドクタ。到着は8分後。」
    パイロットが、私に告げる。私はもう少しで「急いで」と言いそうになった。
    今でも最大限急いているはず。余計なことを言わないでおこう。
    「こちら、測候所のカザマ。状況は?」
    ヘッドセットから聞きなれた声が聞こえる。
    「こちら、フジモリ。山の状況は予想通り。噴火は近い様子。」
    「レスキューのヘリは3分遅いという報告だ。そちらが先に着く予定。」
    「了解。」
    山の姿が大きく見えてくる。火口は尾根の向こう側だ。火口内との通信は、今は直接できない。

    「こちらカザマ。アダチの状況は変わらず。落下時に右足を挟まれて動けない。火口壁から30m下の地点。」
    「了解。あと2分で直接交信が可能になる。」
    ヘリは高度を上げる。頂上を回り込んでいく。噴煙の色に灰色が混じり始めている。
    「噴火予定時間は、予想通りあと10分程度と思われる。山体の膨張も進行中。」
    私は手元のPCの画面と噴煙を見比べて告げる。
    「了解。ミラクルに伝える。」
    パイロットが私を見て言う。
    「ドクタ、ミラクルとは誰です?」
    「ミスタ・アダチのニックネームです。」

    全開した教室の窓から、蝉の鳴き声が入ってくる。
    私は風間君に聞く。
    「ねぇ、ミラクル君って、なんでミラクルなの?」
    私の頭上をバスケットボールが飛び交う。
    ボールを無視して、風間君が笑って答える。
    「あいつ、不死身なんだよ。こーんな高い崖から落ちて、ピンピンしてるんだ。」
    「へええ。」
    足立君は窓際で外を見ている。
    「それもさ、子猫が落ちそうだったから、抱えて一緒に落ちたんだぜ。な、ミラクル。」
    足立君はこっちちへ振り向く。その上を、バスケットボールが通り過ぎる。
    「あ」
    ボールを抱えて、足立君が消える。
    窓に駆けよる、私と風間君。ここは四階。
    下を見ても、足立君はいない。

    グラウンドに降りると、風間君にバスケットボールが当たる。
    見上げると、松の枝に、足立君がぶら下がっている。
    「また、落っこちても無傷なのかよ。」
    呟く風間君の横に、足立君が落ちてくる。
    着地に失敗して、右足から崩れる。
    「いてぇ。前の時も、右の足首をぶっ壊してるんだ、無傷じゃねぇよ。ほら」
    立てない足立君を支えながら、風間君が言う。
    「死んじゃう高さから落ちて、その程度なら、ほとんど無傷じゃねぇか」

    フフフ
    緊急事態なのに、少し笑ってしまった私。ミスタ・ミラクル。
    「通信可能です、ドクタ」
    我に返る。
    「こちらフジモリ。アダチ調査員、聞こえますか。」
    「こちらアダチ。聞こえる。」
    昨日聞いた声と変わらない。
    「怪我はどう?」
    「怪我はしていない。右足先の装備が挟まって動けない。装備を外す角度に、足が曲がらないんだ。」
    「噴火の予兆は連絡行ってると思うけど、あと8分程度。硫化水素があるから、マスクは外さないで。」
    「近くにいるのか?」
    「あと2分で、火口壁のそばにホバリングできる。そこに来て欲しいんだけど」
    「この足がなぁ。」
    「レスキューがあと5分で来るけど、救助活動する時間があまり。サンプルはいいから、戻ってきてミラクル。」
    「なぁ、フジモリ。昨日も言ったけどさ、三度目の正直なんじゃないかなぁ。」
    「それじゃサンプル採取をお願いした、私の方が」
    「それはいいっての」
    「まて」
    風間君の声が割って入る。
    「珍しく足怪我してないんだろ、早く帰ってこいミラクル。」
    「よし。…ちょっと待ってろ。」
    足立君の音声が途切れる。


    ホバリングを続けるヘリの窓から、火口の縁が見える。
    その縁から、重装備のヘルメットが浮かび上がる。
    縁を越えて、転がるように降りてくる人の右足は、見たこともない方向にねじれていた。
    ヘリから降ろした輪に体をねじ込み、ミスタミラクルは浮かび上がった。
    「このまま飛びます。」
    パイロットの声に答える間もなく、ヘリは上昇し、山を離れる。
    背後の火口から立ち上る噴煙は、黒い色に変わり、周りには礫が降り始めている。
    「いて」
    足立君に火山礫が当たったらしい。音声が回復している。
    「聞こえる?足立君」
    「ああ。」
    「昨日の話。三度目の正直じゃなくて。」
    「ん?」
    「二度あることは三度あるって。さっき、そう思った。」
    「じゃ、サンプル持って帰ってきたらっていう話の続きは?」
    「その件につきましては、またあとで」
    風間君が割り込む。
    「昨日の話ってなんだよ。え?」
    こういうとこ、風間君って、高校のころから変わってないわね。そう思わない?ヒロシさん。
    「お前、その足どうなってんだ。怪我してないって言ってただろ。あ、自分でねじったんだな。信じられん、すげえなお前…」
    測候所の屋上で跳ねる風間君が見える。
    私のヘッドセットに、ミラクル・ヒシの呟きが届く。
    「二回ひねってるから、三回目は簡単だったよ。これのどこが、ミラクルだよ。」



  • id:maya70828
    なんかポイント頂いたうえに講評してもらうなんていたれりつくせりかなあと思います。
    本来ならポイントを払って講評してもうらうのが当たり前なんだけど、その辺をなんとかならないものか・・・
  • id:takejin
    質問に、自分の文章を挙げて、講評してください。
    でいいんじゃない?
  • id:gm91
    お手本付きでかきつばた開催すればOK
  • id:takejin
    ヒロシがヒシになってる。肝心なところを脱字とは、トホホ。

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