「脳内○○ こじつけ」
脳内○○とこじつけを上手く料理してください。
脳内○○の中は、文字数に関係なく脳内インターネットや脳内会議でも何でも結構です。
感想は希望者のみで、講評も回答者の希望で、質問者の視点でなく回答者や閲覧者の間で、誰に講評して欲しいのか指名し合えばいいでしょう。
特に常連ユーザーさんにおまかせします。
ポイントはいろいろな事情から均等配分にします。すいません、独断ではできません、アンケートにしてもギリギリで投稿する人に不利かもしれないので。
修正履歴は採点に影響しません。
締切は均等配分なのでギリギリまで時間を使ってください。
【人力検索かきつばた杯予告】#34→http://urx.nu/1bOm
「甘い、甘ーいもの」
「もの」に関してはコーヒーやトマトなど物質的な物でも、恋やハートなど精神的な物を指していても構いません。
配点基準は「甘い、甘ーい」にちなんで甘い配点です。
甘いですが、「誤字脱字があるよ」ぐらいは言うと思います。
高ポイントの基準は「甘さ」を文章で表現できてること。(ただし、文章が誤字だらけとか推敲ができていないとかそういう意味ではない)
感想は希望者のみ。もちろん甘~いコメントです。
ちなみに元ネタはデトロイト・メタルシティの「甘い恋人」です。
http://www.youtube.com/watch?v=ynTz88jku2s
http://www.youtube.com/watch?v=vAEXXESZ-BY
「もの」が何かを考えるのが面倒臭い人は元ネタのパクリでもいいです。
文章苦手な人はあらすじ風ストーリーでも可
(例
http://q.hatena.ne.jp/1345602541#a1164048
修正履歴は採点に影響しないとか、そんなことは言いません。
自分が納得するまで修正してください。
誰にでもミスはありますので一発勝負でなくてもいいと思います。
ただし、複数回答で修正されると読む方も大変なので回答は一回までとします。
かきつばた杯はこの質問終了後(七日後)に開催します。
『執行人』
名のある武士なのかもしれない。
これから首を刎ねられるというのに落ち着き払った態度を微塵も崩さないのは見事な覚悟だと浅右衛門は内心感じ入っていた。
切腹ではなく斬首を賜るからにはそれ相応の罪を犯しているのであろうが、身の上や罪状は敢えて聞かないのが浅右衛門の矜持である。
一切の感情は無用。
そう己に言い聞かせ意識を刀へ集中させる。
息をゆっくりと深く吸い、軽く吐いて止める。
徐に刀を高々と振りかぶり、気合いと共に一気に振り下ろすと、刎ねられた首がドサッと鈍い音を立て転がり落ちた。
血に濡れた刀身を手桶の水で濯ぎ、それを拭い終わらぬ内に、側に控えていた白装束の男たちが地に落ちた首を拾い上げ足早に持ち去っていった。
いまわの際に分泌される脳内物質とやらを採取するそうだが詳しいことは浅右衛門にも知らされていない。また、興味もなかった。
「いつもながらお見事な腕前」
「務めですから」
お目付の労いの言葉に対して、我ながら無愛想だとは思うが性分は変えようもない。尤も、旧知の仲であるお目付も今更そのようなことは気に留めてはいないようであったが。
+ + + + + + +
帰宅し、身を清めたあとで浅右衛門は座敷で畏まっている二人の息子に声をかけた。
「今日立ち会ってどうであった。恐ろしかったか?」
「いえ」
間髪入れずに応えたのは、弟の吉忠、数えで15になる。
先月元服を済ませたばかりではあるが、跡継ぎの候補として「仕事場」を見せるには頃合いだと考え、同伴させたのだった。
「無理をせずともよい」
言葉とは裏腹に青白い顔をした吉忠へ、労りのつもりでかけた言葉であったが、それが却って気に障ったらしく、吉忠はカッと顔を紅潮させ口答えをした。
「無理などしておりません!咎人の首を刎ねるはお役目なれば、取り立ててどうこうなどとは思いませぬ」
「左様か。吉親は、どうであった?」
兄の吉親は、今年で17、元服も2年前に済ませてある。刑場へ立ち会わせたのも今回が初めてではない。吉親は遠慮がちに口を開いた。
「正直、何度見ても気分の良いものではありませぬな」
「そうか」
「兄上は気が優しすぎるのです。咎人に情けなど無用。罪を犯して罰を賜るは必定、それこそが正義と心得ます」
「吉忠、それは違うぞ」
心外そうな目をした吉忠を制するように浅右衛門は言葉を続けた。
「正義等というのは、お上のこじつけた大義名分にすぎん。人が人を裁くなど本来畏れ多きことじゃ。理由は何にせよ人を殺めていることに変わりはない」
「では何故父上は首を刎ねるのですか」
「それが儂の務めだからじゃ」
「咎人を斬り捨てるのに、一体何の躊躇がありましょうか」
吉親の表情が一瞬歪んだのを見逃さなかったが、浅右衛門はあえて気が付かぬ振りをした。
「武士たるもの、気概は必要じゃ。しかし、お前は考え違いをしておる。一切の感情は無用。ただ無心に職務を全うするのみぞ」
わかりませぬ、吉忠の眼がそう告げている。
「うむ、わからぬことにわかったふりをしないのがお前のよいところじゃ。
今はわからずともよい。だが父の言葉、努々忘れるでないぞ」
吉忠は無言で頷いた。
+ + + + + + +
祥雲寺。
突然訪れた浅右衛門を、住職が意外そうな顔で迎えた
「叔父上、お久しぶりです」
「珍しいな。お主がここを訪ねようとは。しかもこのような土砂降りに」
「通り雨でしょう。ちと、雨宿りを」
「たまには先達の供養でも、と言うくらいは罰もあたらんぞ」
住職の皮肉に、浅右衛門は苦笑するほかなかった。
住職に案内された客間には先客が居た。吉親であった。
「近頃、よく通うて来る。父親と違って殊勝なことよ」
「父上」
「どうした、吉親」
「・・・・・・吉忠にはまだ話しておられぬのですか?」
「何のことだ」
わざととぼけた浅右衛門を吉親は逃さなかった。
「無論、私の出自のことです」
ーー咎人の子。
16年前、幼子をつれた女が斬首の罪を賜った。身よりのない子を預ける先がないわけではないが、まだ子のなかった浅右衛門は、自分の養子として引き受けた。
別段不憫に思った訳ではない。首斬り人の息子として生きるよりもっとましな人生はいくらでもあるはずだ。ただ、浅右衛門にとっては後継者の選定は看過せざる問題であり、自分の養子として育てる事になんら支障はなかった。
浅右衛門は本人の元服を待って真相を告げた。それは引き取る時から決めていたことであった。また、そのことは叔父である住職を除き、一切他言していない。
表向きには、咎人の子では世間体も悪かろうと、さる旗本の家から跡取り候補として貰い受けたことになっている。
それでよいではないか、と諭す浅右衛門であったが、吉親は容易に納得できないようであった。
「気にせずともよい、そう言うたはずじゃ」
「しかし父上」
「無用じゃ」
浅右衛門が突っぱねると、吉親はようやく矛先を変えた。
「昨日の話、吉忠は納得しておりません。やはりきちんと説き伏せるべきではありませんか」
「跡継ぎはまだ決めてはおらぬ。自信がなければ他の道を探すのもよい」
「答えになっておりませぬ」
「辛ければ、逃げ出すこともできる。が、誰かが代わりにやるだけの事。
腕前のないものが斬れば、斬られた方は苦痛を味わうのみ。できるものができることをやる、ただそれだけよ」
「父上の『正義』はどこにありましょうや」
「儂の務めが正義なのかどうかはわからん。
ただ、いつの日か儂も必ず死ぬる時がくる。地獄にて、亡者となった先達に囲まれても堂々と胸を張って応えたい。それだけよ」
「・・・・・・」
吉親が沈黙すると、それまで二人の話を黙って聞いていた住職が静かに口を開いた。
「繊細なのは尊いことじゃ、無理に切り捨てることはない。
ただし、あまり思い詰めると身を持ち崩すぞ。この私のようにな」
浅右衛門がふと表に目を向けると、雨はいつの間にか上がっており、庭の松の向こうに虹が浮かんでいた。
了
たとえば、朝早く、日が昇る前に起きたとして。
明るい青色にかわっていく空に、白んできた空に魅入っていたときにだ。
遠くの、ああなんて高いんだろう、空を引き裂いて建っているあのマンション。
いつもは遠くの山を見るにも、夕焼けを望むにも、邪魔で仕方ないあの摩天楼の一つから。
何かが落ちるのを見てしまったときだ。
いや、本当は分かってる、そう認識したくないだけで。
女の子が。
言えばこの場で倒れそうだ、そう、邪魔なあいつは結局良いとこなんて一つもないじゃないか。
高いところから、女の子が。
視界に入れたくないのに、あいつはでかくてよく見える。
思い出したくなくたって、あいつは無理やり見せてくる。
女の子が飛び降りた。
そう、突き落とされたのではなさそうで、足から静かに空を切って。
まるで祝福されているかのように美しく降りていって。
大きな音がしたような。
「双悟の頭ン中は相変わらずだなぁ…そんなんだから彼女ができないんだろ」
「それとこれとは話が別だって! …こじつけるなよ、マジの話してんだ」
甘ったるいシェイクを飲み干して、ポテトの塩気で違和感を拭い去りながら、友人に軽く肘鉄を喰らわす。
笑ってあいつは、彗太は、ハンバーガーに齧り付き、くちゃくちゃと汚らしい音を立て、胡坐をかいて床に座った。
信じてもらえないのは俺が狼少年みたいなものだからだ、小さいころから変わっていたから、何を言っても「理解できない」と言われるだけ。
見えるものが違うらしい、俺が歩く道にはよく野良猫の死骸とか、蝶のむしられた羽だとか、そんなものがあったけれど、他の人は皆前を向いたり、隣の顔を見ていたり、液晶に目を向けていて、気付きもしない。
でも今日の話は、俺が前を向いていたときのできごとだ。
「暗いよなぁ…本当。皆さ、俺と仲良くしてんのおかしいって思うんだってよ」
「お前の頭が軽くて鮮やかだからだろ」
幼馴染の彗太とだけはまだ繋がりがあって、他のやつは知らないうちにグループとやらを作って逃げていった。
話が合わないと思ったのは俺だって同じだ、それでもやつらは世間話をするのも嫌で離れていった。
いじめとか、俺が何も反応しなかったから、殴られたくらいですんだし。
うるさいやつらは教室よりお外が好きなようだ、廊下が騒がしい。
「さっき、こないだ書き終わったやつ読んだけどさ、お前マジ中二病だよな~」
暇が増えて小説なんかも書くようになった。
あいつが読んだのはきっと夢の話だ。
夢の中で自分の心を冒険する話。
…見て良いとは言ってない筈なんだが。
「お前の頭ン中を見てみたいよ、マジで。どんなんなってんだ?」
染めた頭をガシガシと掻く幼馴染は、俺のポテトをつまみながら溜息を吐きやがった。
見せられるもんなら見せてやりたいよ、こんなに素晴らしい世界、現実にはないんだからな。
考え事ばかりしてしまう俺を、こっちに引き戻す程面白い何かは、まだ見つかってないからさ。
「新しいの書くよ、お前に見せてやる。俺の頭ン中全部」
くしゃっと潰した紙屑を投げたら、綺麗な弧を描いてゴミ箱に納まった。
迷子にしてやるよ、俺の頭ン中は広いんだからな。
教科書の間に、紙が2枚挟まっていた。
プリントはファイルに入れた筈だった、見逃してたのかと思って取り出す。
「彗太 出口を探してみろよ。俺には見つからなかったからさ。 双悟」
幼馴染の縦に細長い字が並んでいて、うっすら裏の文字が見えた。
裏返せば、明朝体だか何だかと美術で覚えさせられた字体で、文字が軍隊のように整列している。
ソフトの名前なんか憶えてないが、パソコンで打ったのは分かる。
教室でのあのやり取りを思い出し、双悟にしては意外と時間がかかっているような気もしながら、座りなおして読み始めた。
黒い世界が頭に浮かび、登場人物達がぼんやりぼんやりと姿を現し始める。
こいつの話はいつも、はっきりとしたイメージが掴めなかったり、鮮明に見えるような描写がなかったり、よく分からないなんてのが多い。
古い記憶を引っ張り出したときのような、色だけ思い出せて輪郭の掴めない感じ。
1枚目は結局、黒から赤に変わった瞬間だけ何かが見えた気がして終わった。
…勉強のできない俺にはそういった表現しか浮かばない。
2枚目は裏に何も書かれていないので、そのまま何も構えずに読み始めた。
「けいちゃん? 熱出して寝込んでるから、御免ねそう君」
おばさんに行ってきますと告げ、俺は彗太の家から離れ、バス停に向かう。
熱を出して寝込んでいる…か、意外だな、あいつは凄く繊細なやつだったようだ。
あれを理解できるやつはきっと俺だけで、分からないやつは基本目をそらす。
好きになって、飲み込まれるやつもいるだろう。
だが彗太はどれでもなかった。
「分かりたいと思うなんて、優しいってことだ」
何故か感情が込められないまま、言葉は口から逃げ出した。
俺のことを理解しようとしてくれる友人に、俺の心は何も感じなかった。
空っぽだ、あいつのことを俺は……
俺の後ろに、何かが並んだ。
立ち止まって後ろを向いた。
「………」
あいつだ。
遠くにいたあいつが、やってきた。
何をしに、ここまで。
女の子が。
「……人殺し」
俺が、人殺し。
見殺しにしたからだ、女の子を。
だからあいつは俺にそう言ったんだ。
「お前の夢は人を殺す……」
彗太を苦しめていることか。
俺が何も感じないからか。
「あの娘、夢、お前に殺された、人殺し」
何だそれ。
夢、俺が書いたあの夢の話か。
何でそれを知って。
「お前が殺した」
こじつけか。
それとも本当に、俺が、殺した?
分からない、分からない、分からない。
大きな音がしたような。
意味わかんねー!!
いや、出だしは百点。
『たとえば』この四文字だけで、引きずり込まれました。なんて素敵な一行目!!
第一段落(ひとつめの空行まで)は百二十点!
これぞ、京ワールド! 黒くて、素敵。
鮮やかで残酷!!
すげー!! ここだけ読んだだけで、読んだ価値あったわよ!
大助かりだわよ!
えっと、第二段落以降ですか?
それはちょっと、意味わかんねっす。
正直、視点人物が誰なのか、どんな場面で誰がなにしてんのかが、浮かんでこなかったす。
難しいね。京ワールドは。
というわけで、Ver.0.90まで更新してみました。
別にVer.1.00が完全体ってわけでもないですけど…。
最初名前決まってなかったから、あんな感じになっちゃったけど、今読み返すと実に「意味わかんねー!!」
とりあえず彗太君と双悟君の視点だけなので、少し読みやすくなったかなとは思います。
京ワールドは、たぶん理系男子とかにはウケない世界です…。
意外と入るのが難しいかもですが、もやもやふわふわが好きな人ならきっとすぐ慣れますよ。
第一段落は自分でも上手くまとめられたかなと思うので、そこが分かればあなたも立派な京ワールドの住人だよ!!
最後の段落、最後の一行が分かっちゃうあなた、ちょっと一緒に語りませんか←
たとえば、今朝、東から上った太陽が、沈みゆくその直前に世界が終わりをみせたとして。
山間を明るく照らし始めた、その太陽を見つめながら、俺は呟く。
「結局……ふたりだけなんだよな……」
父も母もいない。物理的には存在するが、実の子供に対して社交辞令じみた笑みを浮かべながら、俺たちの機嫌を伺いながら、俺と妹の関係を疑いながら。
親という認識が薄れ、平穏を乱す存在へと変化した。
関わり合いになることが、疎ましく、関わり合いにならぬようにすることすら煩わしく。
すうっと寝息を立てて眠る妹の姿を眺めながら、俺は想像する。
今日一日で世界が終わる。
理由なんてなんだっていい。
昨日一日で、多くの命が失われた。
さまざまな事象、様々な原因。
いらない、説明なんて。こじつけられた気休めなんて。
一日の死者数は30万人らしい。
今このときも人が死んでいく。
30万人ずつ、スペースが空いていく。
それなのに、その空白は、空白でいられずにすぐに埋まってしまう。
今日もどこかで誰かが、居なくなる。
明日を迎えられない理不尽が、荒れ狂う。
理不尽な世界に新しい命が生まれる。
なんの価値も無い命が生まれる。
俺の世界。俺と妹の世界。
ふたりだけの世界。
ふたりっきりの世界。
ふたりと、その他大勢の無意味な群衆の世界。
「もう起きてたの?」
眠そうに眼をこすりながら、妹がこっちへやってくる。
「ああ……」
とだけ呟く。
「ほんとは寝てないんじゃないの?」
「そんなことはないよ」
妹の顔に不安がよぎったのを俺は見逃さなかった。
もう夜が明けた。夜は必ず朝に変わる。
陽の光は、街を照らす。
だけども俺の世界は真っ暗なまま。
一点だけ灯った光。妹。
妹のためだけに生きる人生。
俺のためだけに生かされている妹。
たった二人だけの世界。
ふたりしかいない世界。
ふたりと、多くのノイズが入り混じる世界。
ふたりの間を、すり抜けていく人々。
この世界には無駄が多すぎる。
無駄、不要、不快、悪意、忌み、邪悪。
いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない。
不要、無用、冗長。
なんの意味もない、なんの価値もない、なんの実りもない、なんの輝きもみせない。
不要だ。
「おにいちゃん……」
妹の呼びかけにはっと俺は我に返る。
「だ、大丈夫だ」
「……学校行く……準備しよ……」
また、今日が始まる。今日という日が。
妹と俺の世界が。
妹と俺と、その他大勢の世界が。
食卓へ向かうと、既に朝食がセットされている。
トーストとサニーサイトアップ、コーヒー。
母という記号に象られた人間が、微笑みかける。挨拶を交わす。
俺と妹に。
父という肩書を持つ人間が、不干渉を貫ききれずに語りかけてくる。
俺に、そして妹に。
俺の世界。
俺と妹の世界。
ふたりだけの世界。
ふたりと、別なふたりのあわせて四人の世界。
ふたりとふたりの空間。
脳内に広がる2+0の世界ではなく、2+2の世界。
決して交えることのない、4が導き出されない数式。
2+2は2+2のまま、あるいは2+1+1。
俺と妹と、誰かと誰かの空間。
俺と妹と、何かと何かの世界。
妹を従えて、重たい玄関の扉を開ける。
朝日が差し込む。
空気が流れ込む。2+∞の世界の空気が俺たちを侵食する。
混じりあう。溶かされる。
今日が始まる。
今日という世界が。
京の世界が。
脳内マウンテン
世の中には、まあケチという人がいましてな。中でも掘割の近くの長屋に住むケチ兵衛ってやつは、そらまあ桁違いのケチでして。
毎年ケチ兵衛の長屋じゃあ、掘割で花見でどんちゃん騒ぎをすることになっとる。それでもケチ兵衛はケチなもんだから、何も出さないし、持っていかない。ってんで、宴会にも参加しない。長屋の連中にかかわるだけ損だってわけで、掘割を歩いていると、コツンと頭に当たる物がある。おやと思って拾ってみると、そいつはサクランボだ。花見も終わるころだと、サクランボもできていて、足元にいっぱい転がってた。こいつぁいただきとばかりに、あたり一帯のサクランボを全部食っちゃった。泥のついてるのも全部。満足してケチ兵衛家に帰ったものだった。
翌朝、ケチ兵衛はなんだか頭がいたい。女房に頭を見てもらうが、外から見てもなんともない。鏡を見てもなんともない。おやどうしたんだろうと、目をギュッとつむるってえと。
何かある。
なんだかわからねぇから、もう一回目をギュッとつむる。するてぇと、木の芽が見える。
を?ををを?
ケチ兵衛が何度も何度もギュッと目をつむるもんだから、女房が目の前で手を振る。ケチ兵衛は見えねぇもんだから、反応しない。女房はあせって手を振る。でも、反応しない。お前さんどうしたんだようと、女房が尋ねると。ケチ兵衛、
頭ん中に、桜が生えた。
とぼそっと言う。何だよお前さん、んなわけない、と女房が笑うが、ケチ兵衛は取り合わねぇ。
俺の目ん玉の奥を見てみやがれ。
と言いやがる。真ん丸に開いたケチ兵衛の目を覗き込むってぇと、女房があららと腰を落としちまう。あ~らほんとに桜が生えてる。それも満開。と女房はケチ兵衛に顔をくっつけたまま言っている。
評判を聞きつけた長屋の面々、ケチ兵衛の眼を次々に覗き込んでは、立派な桜だと絶賛する。そうこうするうちに、散ってしまった掘割の桜をほっておいて、今や満開のケチ兵衛の頭の中の桜の花見を始める。まあ、どうこじつけようが、桜なんてあってもなくても宴会出来ればいいというわけで。時折、ケチ兵衛の眼を覗き込む奴もいるが、宴会は勝手に進んでいく。長屋の連中の酒でほろ酔いのケチ兵衛、また目をギュッとつむると、
散り始めた
とつぶやく。何だって、とわらわらとケチ兵衛の周りに集まった長屋の連中、今度は散り際のケチ兵衛の桜の周りで騒ぎだした。散っちまったら宴会出来ねえな。散るまで近くで飲んでようぜ。とケチ兵衛の桜に登ってで暴れだす。桜のてっぺんまで登り、その上の梁のような物に、長屋の熊さんが手をかけてブラ下がったもんだから、ケチ兵衛にはたまらない。そいつは脳梁ってやつだ。
頭が痛てえ
と首から上をブルンブルンと振った。バラバラと床に落ちてくる長屋の連中。ケチ兵衛の女房は、そいつらのけつをたたいて追い出しちまった。
引っこ抜いてくれないか。
とケチ兵衛、女房に言っている。へ?と聞き返す女房に、
耳の穴から手ぇ突っ込んで、桜の木を引っこ抜いてくれ
っとケチ兵衛は言う。頭ん中で宴会なんて、かんべんしてくれと。素直な女房は、言われた通りに耳に手を入れる。触った感触が桜の木のところを、うんしょと引っ張る。ケチ兵衛は反対側に身体を引っ張る。うんしょうんしょと夫婦で引っ張り合うちに、べりべりっと音がして、お互いに反対側にすっ飛んじまった。女房は、大きな桜の木を抱えて、三和土に座り込んでいる。壁にぶつかったケチ兵衛は、それを見て、抜けた抜けたと喜んだ。
さて、頭ん中はどうなった?とケチ兵衛また、目をギュッとつむる。するてぇと、頭ん中に大きな穴が開いている。ポッカリと。大きな洞窟のような、大穴があいている。どうやら桜の根っこを引き抜いたら、大きな穴になったみてぇなんだな。
おい、洞窟がある。
女房が眼の奥を覗いてみると、そこには霊験あらたかなように見える洞窟が。うす暗い入り口の先には、鍾乳石のようなものや、きれいな水のたたえられた池なども見える。おやまあ、きれいな洞窟だこと。そのままケチ兵衛の女房、洞窟の奥へ行ってみる。そこには、鍾乳石で覆われた、宮殿のような大広間が広がっていた。お前さんきれいなところだよ、おいでよ。という女房に誘われて、ケチ兵衛も洞窟にやってきた。
おや、きれいなところだねぇ。心が洗われるようだな。
とおいおい泣きだした。うなづく女房と手を取り合うケチ兵衛。周りを見回していると、さっきまでちょろちょろ流れていた水の量が、少し多くなっている。天井から降ってくる水滴が、なにやら幻想的でまたまた美しいこと。
この景色を見世物にして、木戸賃集めたらいい暮らしができるんじゃねぇか。
こう思うと、ケチ兵衛さらに泣けてきた。女房と手を取り合って喜んでいると、洞窟の奥から音がする。振り向くと、奥から大量の水が。あっという間に飲み込まれ。
おいおい、ケチ兵衛。どうした。おい熊さんこいつはいけねぇな。死んじまってる。
八っつあん、こいつはどうなってんだ。土左衛門みたいじゃねぇか。
ああ、溺れちまったみたいだな。
そうか、ケチだけに、溺れる者は久しからずって言うじゃねぇか。
熊さんうまいこと言うねぇ。
初めから白状しますが、本歌取りです。
前半は、頭山からいただいています。
それ以上の「説明は、無いのじゃ」
ありがとうございます。
2012/10/01 00:11:16が、今回は質問者の視点以外の講評という方針なのでしません。
何か講評したがっている人がいるようなのでその人にしてもらってください。
ひと言だけ言うと、私が長文が苦手だと思って言葉を絞って書いたそんな気がします。
ご講評お願いします。
2012/10/03 23:31:49質問者の視点以外で構いませんので。
また、質問者さんの得手不得手は気にしていませんのでお気遣い無用です。