感染症、ペスト、黒死病、インフルエンザ、牛海綿状脳症等のメカニズムについて

世の中に、病原体や特定蛋白を取り込む結果の疾病が多数あります。そうした発症・重篤者の増加、パンデミック終息のメカニズムを知りたいのです。
 
ペストや黒死病などは大流行しても自然終息する。これまで何度かのパンデミックがあって、地域で終息したり、グローバルになっても終息したのはなぜでしょうか。「流行して終息する生理学?的な説明」を知りたいのです。
 
台風や火山噴火、地震、津波などなら発生も終息もわかります。
 
人間は1000人いれば、この病原菌やウイルスには強いという生命力抵抗力免疫力の強い人が数百人いて、またその病原菌やウイルスに弱い人が数百人いる。その人間のバラツキが他の偶然と重なって流行と終息になるのでしょうか。

パンデミックが収まるのは、残っている人間が強くてその病原体のパワーでは圧倒できないからでしょうか。
あるいは、感染源が自らアポトーシスあるいは弱化してしまうからでしょうか。
 
参考図書を教えていただくのでも結構です。webサイトなどがあればよろしくお願いします。

回答の条件
  • 1人5回まで
  • 13歳以上
  • 登録:2012/09/29 14:19:49
  • 終了:2012/10/06 14:20:07

ベストアンサー

id:kyokusen No.2

きょくせん回答回数824ベストアンサー獲得回数862012/10/01 22:46:32

http://www.isl.or.jp/service/influenza-jp1918.html

 公衆衛生の方には、致死的な流行性疾患は広がりにくく、死なない疾患は広がる、というのがあるそうです。これは、病原体を広める感染者がそれほどの移動を起こす前に死んでしまうからその病気が伝播しない、という話です。一方、鼻水が出るというような流行性疾患であれば、それでも死亡例はあってもさほど危機的状況にも陥らず、感染者がうろうろ歩き回るので世間中に伝播してしまう、というものです。

 つまり、伝染病の終息とは、その伝播が止まり、新規の患者発生数が落ち着くという状況をさすのだろうと考えます。もしくは、その疾患に免疫を持つ人が増え、その病原体による致死性が低下した場合をさすと考えてよいのではないでしょうか。これには、人為的な病原体封じ込めやワクチン接種なども含みます。


 また、致死性の高いウイルスなどはその伝播の過程で変異して弱毒化するという論もあります。

他5件のコメントを見る
id:kyokusen

 ここしばらく考え続けてきて、ようやく回答になりそうな文章が組めそうな気がします。

 hathiさんの3つのご質問を統合すると、つまりこういうことですよね?
『ある物質/病原体に対しての感受性に個人差はあるのか?』
 
 答えは、ある、です。


 例えば『化学物質』への感受性。ここではよく例とされる酒の強さで話を進めます。
http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/sake/seminar/h19/02/02.htm
 これは、国税庁のサイトです。
 アルコールを分解するには、ザックリ言って2つの酵素、アルコール脱水素酵素(ADH)とアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が関わるのですが、これらの活性……遺伝子の発現は幾つかの種類があります。その詳しい内容は上記サイトを見ていただくとして、ある物質を分解するには個人差……遺伝上の差異があります。


 続いて病原体への感受性。ここではインフルエンザウイルスについて考えていきます。
http://www.polishwork.com/meneki/report_2.shtml
 ちょっとピンと来る話が見当たらなかったので、面白そうな所を。
 
 インフルエンザは、まずインフルエンザウイルス(以降IV)が喉なり鼻なりに取り付くところから始まります。で、鼻や呼吸器は基本的に粘膜や粘液(鼻水や痰になるものですね)ががんばってまして、これで取り付いたウイルスが流されてしまえば感染は成立しません。

 続いてIVは粘膜細胞に取り付きます。
 ここでIVは粘膜細胞の受容体に取り付き、細胞内に取り込まれ、ウイルスのコートタンパクを脱ぎ(解裂もしくは開裂といいます)、中に入っていたRNAと逆転写酵素が働きだし、RNAをDNAに変換した所で、そのDNA(遺伝子)を粘膜細胞の代謝系に割り込ませ、IVのRNAとコートタンパク、逆転写酵素を作らせることによって増殖します。
 粘膜細胞も黙っちゃいません。『ごめん、私IV取り込んじゃった』と、細胞表面に旗を立てる事でリンパ球のひとつであるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を呼びます。で、NK細胞に自身を攻撃させ……破壊させる事でウイルスの増殖/拡散を食い止めるのですね。(最近ではアポトーシスするという研究もあるみたいですね)
 で、このあたりを潜り抜け、IVの天下になった粘膜地帯は次々とIVを放出します。するとIVは体中に広がっていくのですが……その過程で免疫系が亢進して発熱やらなんやらが発生します。ひどい例になるとサイトカインストームという免疫機構の異常亢進/自己細胞に対する免疫系の無差別攻撃(?)が発生して死に至る例もあります。

 と。以上がIVに感染して死に至る系なのですけれども、そのどこかで食い止められればヒトはインフルエンザでは死なない、という事になるんですね。
 つまり、日ごろから鼻や喉の粘液が多い人はインフルエンザにかからなかったり……無茶に聞こえるかも知れませんが、痰を切る薬がインフルエンザの感染を抑えたという研究も存在するんです。最もこれは、痰というか、痰がサラサラで流動性が高くなるため、ウイルス粒子の排出が促進されるというものだったのですけれども。(粘度が高ければ粘液が動かない≒IVは粘膜細胞に取り込まれる確率が高くなるんですね)また、感染細胞の自己死が早い人はウイルスがたくさん出来てくる事はないでしょうし、NK細胞や食細胞が普段から活発な人はウイルスが粘膜細胞に取り込まれたり、ウイルスが出来てきてもそれを止めたりウイルスを喰い尽くせたり出来るかもしれません。(ヨーグルトでインフルエンザ予防というのがこのあたりです) ……また、免疫活性があんまり高くない人はサイトカインストームが起こらないというちょっと逆説的な話も出来てしまうんですねぇ。
 そんな感じで、ウイルスなり病原体に対して『感受性』なり『感染率』というものが出てきたりするのです。


 と、まぁ。
 化学物質に関しては汎用無毒化酵素の存在(酒飲みは麻酔や薬が効きにくいという奴です)とか、他にも色々ありますし、ウイルスなり病原体への感受性についてはもうちょっとややこしい話……鳥インフルエンザが本来かからないはずのヒトにかかるのか≒細胞の受容体についてのお話などもあるのですが、そのあたりは今回は割愛させてください。
 
 遺伝の話、でしたよね? で、私は『高等生物の遺伝子変異が発現系に現れにくい』と言ったのをお覚えでしょうか。それは、ある発現系は様々な遺伝子(つまりは酵素)が関わっていたり、そもそも高等生物は遺伝子の変異をオーバーラップして何とかしてしまう機構があったりして、これがこれ! というのは難しかったりするのです。

 あと、パンデミックというか、ある疾患の大流行において急激に死者が出たり、急速に終息したりというのは、私の日記なりなんなりでチョコチョコ書いています通り、ウイルスの拡散が止まったり……感染者が死んでしまってウイルスがそれ以上増えなかったり、人が歩き回れなくなって感染機会が減ったり、社会的に防護を強めたりするのと、ヒトの免疫機構の特性から来るものです。あのあたりって大抵の場合ガウス曲線のような経緯を取るんですよねぇ。

 という辺りで今回は筆を置きます。

2012/10/09 22:10:27
id:hathi

きょくせんさんありがとうございました。
岩波科学ライブラリーの『新型インフルエンザH5N1』はまだ読んでいません。近々読むつもりです。放送大学に感染症の教科書があるのでそれも探そうと思っています。
返事が遅れて済みません。
自力で何かして見ようと悪戦苦闘していました。
EXCELのVBAで、人口1万人の街区が10ある10万人の町をつくり、2.5街区(2つの街区、1つは隣に街区の側)に9人の初期感染者を発生させ、その後の365日の感染状況をチェックしてみました。結果でいうと、ある条件などでは280日目辺りで急速に感染の終息を迎え、300日過ぎでは5000名近くの未感染者がいるのにほとんど新規感染が起きない状態を作り出すことが出来ました。
このときのVBAでの設定は、感染後2日は潜伏期、3日間が発症し感染させる可能性のある時期、6日目には死亡です。感染初日から当日で回復する可能性を7.5%とし、当日に感染させる可能な人数を付近の住民15人の中で最大4名(感染済み、回復者、死亡者が増えると感染させられる人が減る)、食料や介護、死体処理などでコンタクトする可能性のある者1名にも感染の可能性があるとして(最近1週間の新規感染発生状況で)遠近の訪問度合いやダウン状況を調整。
当初感染が進んでほとんど終息しないため、次々色々な要素を組み込んだためこういう条件がうまく機能するのかどうか自分でもわからなくなっています。
ただ、一人の人間が感染した場合に最終どの日で治るかは別として最終的に助かり再発しない再感染しない確率が12&程度でも、大きな都市の一地域から感染症が発生し蔓延する場合、都市全体では5%程度の未感染者、30%程度の回復者、60%程度の死者で終息してしまうことのシミュレーションも可能なことはわかりました。モデルを工夫すれば、200日以内で終息し60%が死亡するというのも作れそうな気がしています。
ポイントは一部地域から流行が始まること、当初は各街区相互や町中での交流も多いが、流行がひどくなると行動を自重し動く人は少数になり移動範囲も減ってしまうこと、人の中には先天的か流行期間中の獲得免疫かはともかく、罹らない人、発症しない人、発症しても重症にならない人、重症になっても治る人がいることではないかと思います。もちろん、感染後すぐに発症する人、発症後すぐに死亡する人もいるのでしょう。
全員が均一の進行をするとどうなるかのシミュレーションはしませんでした。全員の免疫力、疾病抵抗性が同じであるというのはあまりにも非現実的です。一般に加齢と免疫力のカーブがあると思われていますが、そのカーブの形も、免疫力のレベルも個人差が大きいのは日常知られていることです。
http://www.menekiplaza.com/kinou.html
 
1)外入の患者が【ある地域(局部)に】病原体を持ち込む
 事から始まり、
2)初期の患者発生で医療リソースが消耗し (今回考慮しませんでした)
3)中期の患者は手当を受ける事ができず死亡し
 (潜伏期間は問題なしとした)
 (発症から死亡直後遺体処理の終わるまで間に感染を広げる)
 (本人の行動範囲は限定的、周囲に近づく人間が巻き込まれる)
4)生き残った患者/病原体に低度の露曝をした無症状者は免疫を獲得し
 (なぜ免疫を獲得する人と結果死亡する人とが出来るのかは謎です)
5)ある時点において、その地域ではその病原体によって死ぬ人がいなくなる
 (ある地域では、新規に感染する人がいなくなる)
  未感染のまま残る人、回復し感染源ではなくなる人、死亡して感染源ではなくなる人に分かれる。(確率現象なので統計的にしかいえないが、ある条件を前提にすれば、起きそうな分布は計算可能)
 
結構、面白そうなことなので、何かの機会があったら、また調べたいと思っています。
 
ウイルスや病原菌のそれ自体の変化でも、(数が、人口よりも数億倍多いでしょうし、色々のことが起きるでしょう)、感染経路や中間宿主の状況も都市内でも様々のはずです。人の生活の形態、家族や使用人、出入りする関係者の多少や種類の差も様々でしょう。個々人の生育歴からくる健康状態や溌剌さなどの元気さ加減も大きいでしょう。遺伝的な生物的なタンパク質や遺伝子的な違いも大きいでしょう。医療も多少は関係するでしょう。
 
きょくせんさん、ご回答、コメントありがとうございました。

2012/10/10 10:33:48

その他の回答(1件)

id:Lhankor_Mhy No.1

Lhankor_Mhy回答回数779ベストアンサー獲得回数2302012/09/29 17:41:18

インフルエンザに関しては、飛沫感染ですから、冬が終わり湿度が高くなると感染が収まるようです。
 
牛海綿状脳症に関しては、「肉骨粉」と話題になった飼料による伝染が有力なようですから、これを規制したことによって終息に向かっているようです。
 
ペストに関しては諸説あるようですが、公衆衛生に関する事柄が大きいようです。

 1727 年、ドブネズミRattus norvegicus がロシアのボルガ川を東から西へ大集団で移動しているのが観察されている。この後、ヨーロッパにドブネズミがひろがり、200 年後の20 世紀前半までに先住ネズミであったクマネズミがほとんど追い出されてしまった。このとき以来、ヨーロッパではペストは大きな流行病でなくなった。というのは、ドブネズミは下水や屋外に住み、ヒトと密接な接触を持たないからである*8。なお、日本へのドブネズミの侵入も江戸時代である。
 つまり、ネズミの大規模な移動か、交易などによりヒトの手によって運ばれる個々のネズミのいずれかにによってペストは引き起こされてきた。

http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1002_03.pdf

しかしもっとも大きな要因は、この時代にイギリスの東インド会社によって木綿が輸入されたことであろう。

http://books.google.co.jp/books?id=5odi39ElPcoC&pg=PA166&lpg=PA166&#v=onepage&q&f=false

 
 
 
主に感染経路が断たれることによって流行は終息しているようです。

id:hathi

2つの資料ありがとうございます。参考になります。
ところで、14世紀の黒死病は中国、黒海付近、ヨーロッパなどに広がり終息しています。教えていただいた資料P19にも、次のように書かれています。流行し終息するの繰り返しです。
「1592~1593年のロンドンにおける流行は先に述べたが、その後も、ペストは17~18世紀頃まで何度か流行している。 1663年にオランダで、1664~1665年にはロンドンで流行し、ロンドンでは約7万人が亡くなった(Great Plague of London)。後にダニエル・デフォーは「疫病の年」(A Journal of the Plague Year、1722年)で当時の状況を描いている。フランスでは1720年にマルセイユで大流行(Great Plague of Marseille)した。エジプト遠征中のナポレオン軍が1799年にペルーシウムでペストに感染して、それをシリアに持ち込んでいる。ペルーシウム、アレキサンドリア、コンスタンチノープルなどの地点は隊商や貿易船の中継地であるので、期せずしてペストの配送センターの役割をはたしていたことになる。」
流行してから検疫足止めを強化しても、既に流行しているところでの終息をさせる理由にはならないと思います。
クマネズミの一掃、木綿の下着が流行するのを妨げることになる、寒冷化による食糧事情の悪化がないことが流行を妨げるということはあると思うのですが、ある地域で大流行し死者が多数出ている状態から終息に向かう理由がわかりません。
インフルエンザで乾燥防止を対策に推奨しているのは知っているのですが、湿度そのものの変化とインフルエンザ患者数の推移をみると、流行の終息が湿度の上昇によるとは考えにくいような気がします。
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/swine-flu/hasseidoko/tokyo11-12/
http://www.garbagenews.net/archives/1222506.html
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/inf/2002/06.pdf
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/AN10494753/KJ00004179415.pdf
http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yamaharu/tenki3.htm
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=44&block_no=47662&year=&month=&day=&view=a7
 
ペストは1664~1665年にロンドンで流行し、約7万人が亡くなった(Great Plague of London)とのことです。英国の輸入に占める織物(主としてキャラコ)の割合は、1670年に36パーセント、1700年には55パーセントに急増し、これを危機に感じた毛織物業保護のため1700年に「キャラコ輸入禁止法」が、1720年には「キャラコ使用禁止法」が下院で可決されているそうです。イギリスで綿製品が急激に入ってきたのが1670年代以降で、多数の人の日用品として普及していくのはもっとあとでしょう。ペストの流行が終息してから木綿の下着着用が増えたという順序ではないかと思います。

2012/09/30 00:00:35
id:kyokusen No.2

きょくせん回答回数824ベストアンサー獲得回数862012/10/01 22:46:32ここでベストアンサー

http://www.isl.or.jp/service/influenza-jp1918.html

 公衆衛生の方には、致死的な流行性疾患は広がりにくく、死なない疾患は広がる、というのがあるそうです。これは、病原体を広める感染者がそれほどの移動を起こす前に死んでしまうからその病気が伝播しない、という話です。一方、鼻水が出るというような流行性疾患であれば、それでも死亡例はあってもさほど危機的状況にも陥らず、感染者がうろうろ歩き回るので世間中に伝播してしまう、というものです。

 つまり、伝染病の終息とは、その伝播が止まり、新規の患者発生数が落ち着くという状況をさすのだろうと考えます。もしくは、その疾患に免疫を持つ人が増え、その病原体による致死性が低下した場合をさすと考えてよいのではないでしょうか。これには、人為的な病原体封じ込めやワクチン接種なども含みます。


 また、致死性の高いウイルスなどはその伝播の過程で変異して弱毒化するという論もあります。

他5件のコメントを見る
id:kyokusen

 ここしばらく考え続けてきて、ようやく回答になりそうな文章が組めそうな気がします。

 hathiさんの3つのご質問を統合すると、つまりこういうことですよね?
『ある物質/病原体に対しての感受性に個人差はあるのか?』
 
 答えは、ある、です。


 例えば『化学物質』への感受性。ここではよく例とされる酒の強さで話を進めます。
http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/sake/seminar/h19/02/02.htm
 これは、国税庁のサイトです。
 アルコールを分解するには、ザックリ言って2つの酵素、アルコール脱水素酵素(ADH)とアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が関わるのですが、これらの活性……遺伝子の発現は幾つかの種類があります。その詳しい内容は上記サイトを見ていただくとして、ある物質を分解するには個人差……遺伝上の差異があります。


 続いて病原体への感受性。ここではインフルエンザウイルスについて考えていきます。
http://www.polishwork.com/meneki/report_2.shtml
 ちょっとピンと来る話が見当たらなかったので、面白そうな所を。
 
 インフルエンザは、まずインフルエンザウイルス(以降IV)が喉なり鼻なりに取り付くところから始まります。で、鼻や呼吸器は基本的に粘膜や粘液(鼻水や痰になるものですね)ががんばってまして、これで取り付いたウイルスが流されてしまえば感染は成立しません。

 続いてIVは粘膜細胞に取り付きます。
 ここでIVは粘膜細胞の受容体に取り付き、細胞内に取り込まれ、ウイルスのコートタンパクを脱ぎ(解裂もしくは開裂といいます)、中に入っていたRNAと逆転写酵素が働きだし、RNAをDNAに変換した所で、そのDNA(遺伝子)を粘膜細胞の代謝系に割り込ませ、IVのRNAとコートタンパク、逆転写酵素を作らせることによって増殖します。
 粘膜細胞も黙っちゃいません。『ごめん、私IV取り込んじゃった』と、細胞表面に旗を立てる事でリンパ球のひとつであるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を呼びます。で、NK細胞に自身を攻撃させ……破壊させる事でウイルスの増殖/拡散を食い止めるのですね。(最近ではアポトーシスするという研究もあるみたいですね)
 で、このあたりを潜り抜け、IVの天下になった粘膜地帯は次々とIVを放出します。するとIVは体中に広がっていくのですが……その過程で免疫系が亢進して発熱やらなんやらが発生します。ひどい例になるとサイトカインストームという免疫機構の異常亢進/自己細胞に対する免疫系の無差別攻撃(?)が発生して死に至る例もあります。

 と。以上がIVに感染して死に至る系なのですけれども、そのどこかで食い止められればヒトはインフルエンザでは死なない、という事になるんですね。
 つまり、日ごろから鼻や喉の粘液が多い人はインフルエンザにかからなかったり……無茶に聞こえるかも知れませんが、痰を切る薬がインフルエンザの感染を抑えたという研究も存在するんです。最もこれは、痰というか、痰がサラサラで流動性が高くなるため、ウイルス粒子の排出が促進されるというものだったのですけれども。(粘度が高ければ粘液が動かない≒IVは粘膜細胞に取り込まれる確率が高くなるんですね)また、感染細胞の自己死が早い人はウイルスがたくさん出来てくる事はないでしょうし、NK細胞や食細胞が普段から活発な人はウイルスが粘膜細胞に取り込まれたり、ウイルスが出来てきてもそれを止めたりウイルスを喰い尽くせたり出来るかもしれません。(ヨーグルトでインフルエンザ予防というのがこのあたりです) ……また、免疫活性があんまり高くない人はサイトカインストームが起こらないというちょっと逆説的な話も出来てしまうんですねぇ。
 そんな感じで、ウイルスなり病原体に対して『感受性』なり『感染率』というものが出てきたりするのです。


 と、まぁ。
 化学物質に関しては汎用無毒化酵素の存在(酒飲みは麻酔や薬が効きにくいという奴です)とか、他にも色々ありますし、ウイルスなり病原体への感受性についてはもうちょっとややこしい話……鳥インフルエンザが本来かからないはずのヒトにかかるのか≒細胞の受容体についてのお話などもあるのですが、そのあたりは今回は割愛させてください。
 
 遺伝の話、でしたよね? で、私は『高等生物の遺伝子変異が発現系に現れにくい』と言ったのをお覚えでしょうか。それは、ある発現系は様々な遺伝子(つまりは酵素)が関わっていたり、そもそも高等生物は遺伝子の変異をオーバーラップして何とかしてしまう機構があったりして、これがこれ! というのは難しかったりするのです。

 あと、パンデミックというか、ある疾患の大流行において急激に死者が出たり、急速に終息したりというのは、私の日記なりなんなりでチョコチョコ書いています通り、ウイルスの拡散が止まったり……感染者が死んでしまってウイルスがそれ以上増えなかったり、人が歩き回れなくなって感染機会が減ったり、社会的に防護を強めたりするのと、ヒトの免疫機構の特性から来るものです。あのあたりって大抵の場合ガウス曲線のような経緯を取るんですよねぇ。

 という辺りで今回は筆を置きます。

2012/10/09 22:10:27
id:hathi

きょくせんさんありがとうございました。
岩波科学ライブラリーの『新型インフルエンザH5N1』はまだ読んでいません。近々読むつもりです。放送大学に感染症の教科書があるのでそれも探そうと思っています。
返事が遅れて済みません。
自力で何かして見ようと悪戦苦闘していました。
EXCELのVBAで、人口1万人の街区が10ある10万人の町をつくり、2.5街区(2つの街区、1つは隣に街区の側)に9人の初期感染者を発生させ、その後の365日の感染状況をチェックしてみました。結果でいうと、ある条件などでは280日目辺りで急速に感染の終息を迎え、300日過ぎでは5000名近くの未感染者がいるのにほとんど新規感染が起きない状態を作り出すことが出来ました。
このときのVBAでの設定は、感染後2日は潜伏期、3日間が発症し感染させる可能性のある時期、6日目には死亡です。感染初日から当日で回復する可能性を7.5%とし、当日に感染させる可能な人数を付近の住民15人の中で最大4名(感染済み、回復者、死亡者が増えると感染させられる人が減る)、食料や介護、死体処理などでコンタクトする可能性のある者1名にも感染の可能性があるとして(最近1週間の新規感染発生状況で)遠近の訪問度合いやダウン状況を調整。
当初感染が進んでほとんど終息しないため、次々色々な要素を組み込んだためこういう条件がうまく機能するのかどうか自分でもわからなくなっています。
ただ、一人の人間が感染した場合に最終どの日で治るかは別として最終的に助かり再発しない再感染しない確率が12&程度でも、大きな都市の一地域から感染症が発生し蔓延する場合、都市全体では5%程度の未感染者、30%程度の回復者、60%程度の死者で終息してしまうことのシミュレーションも可能なことはわかりました。モデルを工夫すれば、200日以内で終息し60%が死亡するというのも作れそうな気がしています。
ポイントは一部地域から流行が始まること、当初は各街区相互や町中での交流も多いが、流行がひどくなると行動を自重し動く人は少数になり移動範囲も減ってしまうこと、人の中には先天的か流行期間中の獲得免疫かはともかく、罹らない人、発症しない人、発症しても重症にならない人、重症になっても治る人がいることではないかと思います。もちろん、感染後すぐに発症する人、発症後すぐに死亡する人もいるのでしょう。
全員が均一の進行をするとどうなるかのシミュレーションはしませんでした。全員の免疫力、疾病抵抗性が同じであるというのはあまりにも非現実的です。一般に加齢と免疫力のカーブがあると思われていますが、そのカーブの形も、免疫力のレベルも個人差が大きいのは日常知られていることです。
http://www.menekiplaza.com/kinou.html
 
1)外入の患者が【ある地域(局部)に】病原体を持ち込む
 事から始まり、
2)初期の患者発生で医療リソースが消耗し (今回考慮しませんでした)
3)中期の患者は手当を受ける事ができず死亡し
 (潜伏期間は問題なしとした)
 (発症から死亡直後遺体処理の終わるまで間に感染を広げる)
 (本人の行動範囲は限定的、周囲に近づく人間が巻き込まれる)
4)生き残った患者/病原体に低度の露曝をした無症状者は免疫を獲得し
 (なぜ免疫を獲得する人と結果死亡する人とが出来るのかは謎です)
5)ある時点において、その地域ではその病原体によって死ぬ人がいなくなる
 (ある地域では、新規に感染する人がいなくなる)
  未感染のまま残る人、回復し感染源ではなくなる人、死亡して感染源ではなくなる人に分かれる。(確率現象なので統計的にしかいえないが、ある条件を前提にすれば、起きそうな分布は計算可能)
 
結構、面白そうなことなので、何かの機会があったら、また調べたいと思っています。
 
ウイルスや病原菌のそれ自体の変化でも、(数が、人口よりも数億倍多いでしょうし、色々のことが起きるでしょう)、感染経路や中間宿主の状況も都市内でも様々のはずです。人の生活の形態、家族や使用人、出入りする関係者の多少や種類の差も様々でしょう。個々人の生育歴からくる健康状態や溌剌さなどの元気さ加減も大きいでしょう。遺伝的な生物的なタンパク質や遺伝子的な違いも大きいでしょう。医療も多少は関係するでしょう。
 
きょくせんさん、ご回答、コメントありがとうございました。

2012/10/10 10:33:48
  • id:kyokusen
    む。何でかまた回答内コメントが使えないorz

    とりあえずこのあたりの話は週末にザラーッとやらせてもらってよろしいですか?
    多分、けっこう長文になるものですから。

    とりあえず、細胞性/体液性免疫は、早い話が白血球(食細胞)と抗原系があるのだ、というあたりをつかんでおけば良いかと思います。食細胞は体内に侵入した異物を取り込むもの、抗原系は病原体や物質に対しそれを無害化するための機構です。

    参考書としては……私は学校でサラッとならって、その後仕事で覚えた口なのでこれというものを思いつかないのですが、『脅威の小宇宙 人体 6』あたりを見るとザックリはわかるんじゃないかなぁ、とも。個人的知識になってしまいますが、免疫の基礎あたりもちょっと週末に腰すえて書きます。
  • id:kyokusen
    http://www.kasugai.ed.jp/jinryo-e/jinryou-aids/j-aids/What%27s%20meneki.htm
     自分で文章を組もうかどうしようか悩んだんですが、こちらのサイトを参照していただきましょうか。
     細胞性/体液性の話してたのに自然/獲得になってる! というご批判は甘んじて受けるとして、この獲得免疫……私はここで体液性免疫の話をしたいと思うのですが、新種の病原体にヒトが晒された場合、まずは食細胞などがともかく喰い尽くせ! という勢いで展開するのですが、その結果重篤な状態に陥らず、つまり体内に致命的な損害を受ける前にその病原体をある程度駆逐できた場合、凡そ6~8週でその病原体に対する抗体を組み上げることが可能となります。これはヘルパーT細胞やB細胞が担う仕事なのですが、これが成りますとその人は再びその病原体に晒されても生命の危機を迎えずにすむという状況となります。

     
     では次にパンデミックという現象を考えて見ましょう。
     これが起きるにはまず、病原体に感染した人が移動してどこかの集団にその新規病原体をばら撒くという事から始まります。『致命的な疾患~』という分はこのあたりに絡んでくるのですが、その人がその病気に感染し、劇的な転帰をとり死にいたった場合、まずこの病原体の拡散が押さえ込まれるということになります。特にウイルスなどの場合、これは生体内でしか増える事はできませんのでそのウイルスが劇的であれば劇的であるほど再生産されるウイルス量は少なくなる訳で、劇的でなければ逆にウイルス量は増える訳です。
     また、致命的な転帰を辿ってしまった人は凡そ移動できませんので別の集団への病原体拡散は抑止されます。嫌な言い方ですけどね。
     
     で、パンデミックの恐ろしい所は、爆発的に患者が発生するために医療リソースが不足し、平時であれば助かる人も手当を受ける事ができず死んでしまう可能性が高まるということです。この場合も、その感染者は移動することができなくなりますし、平時よりも短期間で死んでしまうので、病原体の拡散が減ります。


     この2点より、ある地域においてある一定の期間で集団感染が落ち着くというのは、

    1)外入の患者(キャリア)がある地域に病原体を持ち込む
     事から始まり、
    2)初期の患者発生で医療リソースが消耗し
    3)中期の患者は手当を受ける事ができず死亡し
    4)生き残った患者/病原体に低度の露曝をした無症状者は免疫を獲得し
    5)ある時点において、その地域ではその病原体によって死ぬ人がいなくなる

     ことから集団感染が収束します。


     ちなみに、パンデミックというのは新規病原体による世界的な死亡患者の断続発生というものであって、毎冬起きるインフルエンザの流行はパンデミックとは言えません。アレはああくまでも『流行』です。いやま、千とか万単位で人は死んでいるはずなのですけれどもね。


     書物というお話ですが、パンデミックに関してということであれば、岩波科学ライブラリーの『新型インフルエンザH5N1』が私は読みやすいかと思います。これは、いわゆる『鳥インフルエンザ』の話なのですけれども、いつか来る可能性があるH5N1によるパンデミックについての研究書です。

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