【人力検索かきつばた杯】♯60かな?


かきつばた杯を開催です。

しばり:物書きがテーマ
 ※しばりは無視してもOKっす、OKっすよ!

お題:ちょう いぬ
 吉田戦車の作品(雰囲気とか)に寄せてきたらプラスポイント
 ※お題は完全無視さえしなければ、その語を使わなくてもOK。

水曜ぐらいに締め切り予定ですっ。(木曜の晩から上京するのでどうしても延長希望の場合は自動締め切りになります)

かきつばた杯についてはこちら
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

では、よろしく!

回答の条件
  • 1人2回まで
  • 登録:2014/04/18 15:31:20
  • 終了:2014/04/24 16:43:43
id:grankoyan2

なお、同人誌兼WEBマガジン『ぐらんこ。んちマガジン』に掲載希望の方は以下のアンケートを。
1.WEBマガジンに掲載(希望する・しない)
 こちらです
2.同人誌版に掲載(希望する・しない)
 秋の文学フリマin大阪で販売予定(予定は未定)
3.誤字脱字のお任せ修正(希望する・指摘してもらって自分でやりたい)
4.作者プロフィールの掲載希望(自分で書く、おまかせ、載せない)
 小説とかのカバーのところに書いてあるような奴。
5.掲載時のペンネーム

あと思いついたら、追加します。
1、2を希望しない人は何にも書かないでください。

ベストアンサー

id:kokiri385 No.3

銀鱗回答回数60ベストアンサー獲得回数92014/04/22 21:24:03

ポイント34pt

 蛹化

 「――さて私は、さなぎが大好きであります。ちょうのさなぎが好きであります。やはり美しくなるからと言えば、凡人と変わらぬように聞こえるかも知れないが、美しくなることが保障されていながら、現段階では大衆的には気にも留められないさなぎを、私は愛しているのであります。さなぎとはたいそう儚くその命果ててしまうこともある繊細さを持っているように思え、しかしそのドロドロと溶解したナカミは熱き溶岩のように魂が息づいているのだと思うと、感激のあまり震えるばかりであります。そしてそこいらの不完全変態な卑しいバッタどもと違い、完全に変態を遂げるのだから、私はその大きな成長を、その瞬間を見守り、その美しさを生涯愛していきたいと思い、ここにただただ拙い文を残すことに致した次第であります。」

 部活はテスト期間ということで、大会の近い運動部のいくつかを除き、オフといったところであった。教室に残る者はいないことはない、だが図書室やここから自転車で5分もしない市立図書館に行く方が静かで捗ると、多くの学生達はペダルを踏みつけて既にここにはいない。
 とある高校の、とある2年の、とある5組の、とある男子高校生はというと、演劇部であり、本日はオフであった。部室は開ける必要もなく、開けることもなく、教室でノートにシャープペンを走らせていた。西日が差し込むが、少年の席はその窓のかたちの橙のすぐ隣であり、眩しさに目を細めることはなかった。
 彼はテスト勉強をしているのだろう、と思ってノートを覗けば、そこには公式や漢文の書き下し文が書いてあったり、年表や原子記号が連なっていたりするわけでもない。シャープペンは長い文を書きとめたあとに、改行して「暗転。」とだけ続けた。

 「おや少年、こんなところで呆けていては、テストで赤点取ってしまいますぞ!」

 女子高生がいつのまにか、彼の後ろに立って台詞を読み上げた。彼女の声は良く通る。演劇部で活動を共にする彼女の声を、性格を相性を、知り尽くし書いた脚本を、まだ完成をしていないものを読み上げられ、彼は赤くなりつつノートを閉じた。
「それは俺の台詞だよ。高橋は優良遺伝子を持っているように見えて、こっちの方は空っぽじゃないか」
頭を指さし手首をひねると、彼は溜息まじりにからかった。
 高橋未来は黙っていれば可愛いものを、ドジばかりを踏み「犬君(いぬき――それは源氏物語に登場するうっかり者らしいのだが)」と呼ばれ、教師の頭痛の種の一つであった。本人は至って真面目で誠実で、風の噂によれば将来は画面の向こうの住人――アイドルになりたいという。最近は溢れるようにいる「おバカアイドル」となってしまうのではないだろうか、と彼は少し気にかけた。というのも彼女、努力を怠らず、ただ夢を見ているだけというわけではなさそうなので、心の奥底では応援しているのを彼は気付いていない。
「空っぽじゃありません。未来、台詞を覚えることに関してはピカイチってもんですよ! だがしかし、アタシは勉強が苦手というわけで…」
高橋の一呼吸が入った。

 「今回のテスト範囲のキーワードばかり出てくる脚本を、お願いしたいわけですよ! 未来の脚本家に!」
マイクも割れんばかりの大音量が男子高校生を襲う。

 「だが断る」
しかし予測しきっていた彼は冷たく返すのだった。そして未来のは余計だ、と心の内に呟くのだった。

 「そうはいきませんよ未来の脚本家さん…こっちにはとっておきのカード(切り札)があるんですからね!」
何故か興奮して上気した顔の彼女が突き出したものは、真っ白な封筒であった。ご丁寧に真っ赤なハートのシールが張られており、手首を返せば彼の名が大きく書かれている。どうやら、どころかどう見ても、これはラブレターであった。多感な男子高校生は先程とは比べ物にならない程赤面し、硬直している。何も返せずどうやら頭の中が真っ白になったとでもいうようだ。
 差出人は……『高橋未来』と書かれていた。
「これから家でお勉強デートっていう選択肢を、加えてもらえないですかねぇ…」
双方赤面した顔を伏せ、高橋の絞り出したような提案から沈黙が続く。影が伸びるのを待つように、校庭から響く掛け声がやむのを待つつもりかというほどに。
 彼は耐え切れず手を伸ばし、震える手が彼女の手と触れぬよう、慎重に封筒を受け取った。さらりと紙の乾いた感触を指先で確かめる。自分の名前をなぞると、彼女はその名を呼んだ。

 「蝶野蛹」

 羽ばたくのは君の方なのに、と彼は小さく笑ったのだった。

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id:kokiri385

編集と御指摘感謝します。プレビュー拝見しましたがオールオッケーだと思います。
a-kuma3さん誤字訂正有難う御座います。

2014/04/23 16:20:29
id:grankoyan2

冒頭から惹きつけられるのはやはり、波長が合っているんでしょうね。読者としてのわたしと。
 構成も見事です。キャラクターも活き活きとしてます。ライトノベルの一ページを切り取ったような、それでいてちゃんと完結している。地の文と会話が酷くアンバランスでありながらそれが作品の良さに繋がっている。
 これは見事でした。わたしには到底書けない。

2014/05/08 12:35:57

その他の回答(5件)

id:takejin No.1

たけじん回答回数1473ベストアンサー獲得回数1892014/04/21 16:55:17スマートフォンから投稿

ポイント33pt

『浮かぶ』


  フレーズ 「機械化された妄想と、その妄想に翻弄される若者」


  凄みってなんだ。


  女子高生が走っていく。白いソックスが、軌跡を描く。   スケッチになっているかな。

 文字に力はないのか。
       物語とフレーズと文体とセリフ
         
           グルグルする思い

               浮かんでは消える単語
    科学     未来      作家    小説     読者   文体   形容   
 
華麗な形容、意味深な暗喩、含みのあるセリフ、たくさんの伏線、驚愕の結末
簡素な文体、ぶっきらぼうな言葉、脈略の無い場面、唐突な結論、不合理な筋書き

朝起きました。朝食はごはんと海苔と卵でした。学校へ行きました。友達とかくれんぼをして遊びました。夕食はカレーでした。今日は楽しかったです。

日記だって書けないのに。
                作文なんて嫌いなのに。立って読まされるから。
                                読書感想文なんて、嘘ばっかり。


だいたい、国語が嫌いなんだよね。作者の思いとかさ、主人公の少年の考えとかさ、脇役の働きとかさ。
皆と同じじゃなくていいじゃん。評論家先生が、みんな同じこと言ってたら、それ商売にならないじゃん。
作者でさえ、50点取れないテストって、何なのだろう。それで、文章文化が育つってんだから、バカとしか思えない。
そして、文章や小説や説明文や企画書が書けないまま、大人になって。

僕らは、文章に不自由な人だ。文章障害者だよなぁ



               その証拠に、短い小説だって、ひねり出せない。


ひねり出しても、面白くない。受けない。広まらない。オカネにだってならない。


メモ。吉田戦車 ちょう いぬ   ちょうちょをとる  タイヤ


夕日が落ちる。
夕焼けが赤い。
夕陽が雲を染める。
赤い雲がたなびく西の空。
夕陽に向かうオレンジの直線が、紅に染まる雲を縫い付けている。
一番星が輝いている。
窓に振り向く高校生の、まつ毛が黄金色に光る。


コンビニの明かりは、誘蛾灯のように、人々をひきつける。


今日は惑星の輝く星空。月と火星がワルツを踊る。











※これらは、一日でスマホに記録された、音声メモ。創作の前段階を延々と続ける日々。いつ創作が始まるのかは、秘密である。





私は危惧している。これらを勝手に編集して、文章を構成するアプリが作られてしまう事を。
作家とは、物語るということは何なのだろうと、世に問う日が来る気がしてならない。

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id:grankoyan2

これって、改行とか余白はどうすりゃいいんでしょう?
WEB版はともかく、書籍は縦書きだし、レイアウトは原文尊重? って感じですか?

ちなみに、同人誌は文庫本サイズで42字×17行(見開きだとその倍)ぐらいを考えてます。今のところ。

2014/04/22 11:13:39
id:grankoyan2

クランチに投稿するとこんな感じです。レイアウトは画面サイズによって変わると思います。

ちなみに上記は下書き状態ですので、URLを直打ちしないと見れないようになってます。


あと、たけじんさんはクランチユーザーでもありますのでユーザーページにリンク張っても大丈夫ですか?

2014/04/22 11:34:07
id:kobumari5296 No.2

琴木回答回数60ベストアンサー獲得回数42014/04/22 19:52:20

ポイント33pt

タイトル『犬もおだてりゃ空を飛ぶ』



 アイデア帳。季節の紅茶。そして少しのビターチョコレート。私が文章を書くときに、必ず用意するのがこの三点だ。定期的にやってくる創作意欲に任せれば、物語の軸や肉付けまでできることが多いのだが、どうしてもつまった時、私は、アイデア帳、耐熱水筒に香りのいい紅茶を用意し、更に冷蔵庫に貯蔵しているカカオ多めのビターチョコレートを少し取り出して、近所の公園へ出て気分転換をする。これは気分転換の他にも観察の役目を果たしていて、対象は人間であったり、天気であったり、花であったり、色々だ。
 四月のある日、いつものベンチで日光を浴びていると、犬を連れた少女たちを発見した。小学校に入学したてだろう、身長は低く、声は甲高い三人組。少女たちを少し観察させてもらうことにした。私の頭でちょっとした妄想が始まる。
 私も犬を飼っていたからよく分かるが、おそらく犬は少女たちを下に見ているのだろう。自らリードを無理に引っ張って、少女を弄んでいる。犬だけではないが、動物はランク付けする生き物だ。野生の動物が血をみて決めるように、愛玩動物は家族に馴染んでいくことで大まかな順位を決める。大抵はその家の父親をトップにおき、次に餌をくれる母親を二番目。子供はその下ないし同等におく。私も随分と悪戯されたなぁ、なんて思い出したところでアイデアが浮かんだ。


“子供の成長を見ている、犬の心境(仮)”

 私はモモ。今日も歯切れよくワン!と一括する。うちの子供は昔より少なくなったものの、よくお母さんを困らせる。まったく、私がいないと何もできないのだから。
「手伝ってくれるのはありがたいけど、お皿は上手に運んでね。油ものと一緒にしたら、滑って落ちて、割れてしまうでしょう」
 今日は夕飯の片づけをしていて、キッチンに運んでいるお皿をわってしまった。床がべとべと。これじゃあお父さんやお母さんが滑って転んでしまうわ。
「ワン!ワン!」
「ほら、モモも滑っちゃうよって」
「御免なさい……」
 甘いわ、お母さん。もっときつく言わないと。
「ワン!ワン!」
「お母さぁん!モモがぁ!」
「モモだって転んじゃうよって言ってるのよ。ほら、はやく布巾を持ってきなさい」
 まったく、私がいないと何もできないのだから。
「はは、犬に負けてら」
「あなた」
 犬?お父さん、犬って何?私はこの子の姉なのよ。


――そこでペンが止まってしまった。今日は頭の調子がよろしくない。いいネタだと思うしなぁ、と思ったものの、このままベンチでメモを片手に少女たちを食い入るように見ていたらただの不審者だ。カカオが多めのチョコレートを一かけ口に含み、紅茶で流し込む。今日は終了、オンとオフの切り替えの為に、この動作はとても役立ってくれる。

『それはいい対処だよ。そのまま書いていたら今頃、お巡りさんのお世話になってたね』
「やはり、そうですよね」
 今日の出来事を、一から十まで担当に話した。執筆においては一番の理解者である彼は、あっさり笑い飛ばしてくれて、こちらまで気分が晴れる気がする。
『高島さんのペース、当る時は当たるんだけど、進まない時は象が押しても進まない』
「マンモスとか解凍して復活できませんかね」
『それは、高島さんが私に“先生”と呼ばれるようになってから』
「あう……どうすればスランプ脱出できるのでしょうか……」
『高島さん、ある意味バタフライ効果でやってきたからね』
「蝶ですか」
『ひらめき型ってことだよ。考えずに思うように書いている時は大抵当り。書き出しの時点でゴールが見えてるんだ。これを使いこなせるようになれば、階段昇れるかな』
「二段くらいですか?」
『一歩一歩確実に。ずるしないの。まだ時間はあるんだから』
「はい……」
 ガチャンと切られた電話を見つめても、何も起きない。それは分かっているのだけれど。
「……やるっきゃないか」
 呟いてベッドに入る。まぶたを閉じれば何年も前に死んだ愛犬が、昼間の犬と重なって元気に走り回っていた。この映像に蝶のような羽をつけて飛ばせる術を手に入れたい。それこそバタフライ効果だ、と言って担当をうならせることができ……ないだろうけれどな。そこまで考えて、私は眠りについた。

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id:kobumari5296

宜しくお願いします^^

弱小サイトなので大丈夫です。
更新し次第お伝えしますので、お暇なときにでもご確認ください。
わがままをきいてくださり、ありがとうございます。

2014/04/24 18:36:16
id:grankoyan2

「一歩一歩確実に。ずるしないの。」という言葉が残りました。
 なかなか納得いくものは書けない。でも書きたい。苦悩ですよね。
 バタフライ効果というのが、ひらめき型と一瞬では繋がらないのがわたしには難点でした。
 あとはすらすら読めたのですが、訴えかける何かがもう少し欲しかったです。

2014/05/08 12:35:43
id:kokiri385 No.3

銀鱗回答回数60ベストアンサー獲得回数92014/04/22 21:24:03ここでベストアンサー

ポイント34pt

 蛹化

 「――さて私は、さなぎが大好きであります。ちょうのさなぎが好きであります。やはり美しくなるからと言えば、凡人と変わらぬように聞こえるかも知れないが、美しくなることが保障されていながら、現段階では大衆的には気にも留められないさなぎを、私は愛しているのであります。さなぎとはたいそう儚くその命果ててしまうこともある繊細さを持っているように思え、しかしそのドロドロと溶解したナカミは熱き溶岩のように魂が息づいているのだと思うと、感激のあまり震えるばかりであります。そしてそこいらの不完全変態な卑しいバッタどもと違い、完全に変態を遂げるのだから、私はその大きな成長を、その瞬間を見守り、その美しさを生涯愛していきたいと思い、ここにただただ拙い文を残すことに致した次第であります。」

 部活はテスト期間ということで、大会の近い運動部のいくつかを除き、オフといったところであった。教室に残る者はいないことはない、だが図書室やここから自転車で5分もしない市立図書館に行く方が静かで捗ると、多くの学生達はペダルを踏みつけて既にここにはいない。
 とある高校の、とある2年の、とある5組の、とある男子高校生はというと、演劇部であり、本日はオフであった。部室は開ける必要もなく、開けることもなく、教室でノートにシャープペンを走らせていた。西日が差し込むが、少年の席はその窓のかたちの橙のすぐ隣であり、眩しさに目を細めることはなかった。
 彼はテスト勉強をしているのだろう、と思ってノートを覗けば、そこには公式や漢文の書き下し文が書いてあったり、年表や原子記号が連なっていたりするわけでもない。シャープペンは長い文を書きとめたあとに、改行して「暗転。」とだけ続けた。

 「おや少年、こんなところで呆けていては、テストで赤点取ってしまいますぞ!」

 女子高生がいつのまにか、彼の後ろに立って台詞を読み上げた。彼女の声は良く通る。演劇部で活動を共にする彼女の声を、性格を相性を、知り尽くし書いた脚本を、まだ完成をしていないものを読み上げられ、彼は赤くなりつつノートを閉じた。
「それは俺の台詞だよ。高橋は優良遺伝子を持っているように見えて、こっちの方は空っぽじゃないか」
頭を指さし手首をひねると、彼は溜息まじりにからかった。
 高橋未来は黙っていれば可愛いものを、ドジばかりを踏み「犬君(いぬき――それは源氏物語に登場するうっかり者らしいのだが)」と呼ばれ、教師の頭痛の種の一つであった。本人は至って真面目で誠実で、風の噂によれば将来は画面の向こうの住人――アイドルになりたいという。最近は溢れるようにいる「おバカアイドル」となってしまうのではないだろうか、と彼は少し気にかけた。というのも彼女、努力を怠らず、ただ夢を見ているだけというわけではなさそうなので、心の奥底では応援しているのを彼は気付いていない。
「空っぽじゃありません。未来、台詞を覚えることに関してはピカイチってもんですよ! だがしかし、アタシは勉強が苦手というわけで…」
高橋の一呼吸が入った。

 「今回のテスト範囲のキーワードばかり出てくる脚本を、お願いしたいわけですよ! 未来の脚本家に!」
マイクも割れんばかりの大音量が男子高校生を襲う。

 「だが断る」
しかし予測しきっていた彼は冷たく返すのだった。そして未来のは余計だ、と心の内に呟くのだった。

 「そうはいきませんよ未来の脚本家さん…こっちにはとっておきのカード(切り札)があるんですからね!」
何故か興奮して上気した顔の彼女が突き出したものは、真っ白な封筒であった。ご丁寧に真っ赤なハートのシールが張られており、手首を返せば彼の名が大きく書かれている。どうやら、どころかどう見ても、これはラブレターであった。多感な男子高校生は先程とは比べ物にならない程赤面し、硬直している。何も返せずどうやら頭の中が真っ白になったとでもいうようだ。
 差出人は……『高橋未来』と書かれていた。
「これから家でお勉強デートっていう選択肢を、加えてもらえないですかねぇ…」
双方赤面した顔を伏せ、高橋の絞り出したような提案から沈黙が続く。影が伸びるのを待つように、校庭から響く掛け声がやむのを待つつもりかというほどに。
 彼は耐え切れず手を伸ばし、震える手が彼女の手と触れぬよう、慎重に封筒を受け取った。さらりと紙の乾いた感触を指先で確かめる。自分の名前をなぞると、彼女はその名を呼んだ。

 「蝶野蛹」

 羽ばたくのは君の方なのに、と彼は小さく笑ったのだった。

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id:kokiri385

編集と御指摘感謝します。プレビュー拝見しましたがオールオッケーだと思います。
a-kuma3さん誤字訂正有難う御座います。

2014/04/23 16:20:29
id:grankoyan2

冒頭から惹きつけられるのはやはり、波長が合っているんでしょうね。読者としてのわたしと。
 構成も見事です。キャラクターも活き活きとしてます。ライトノベルの一ページを切り取ったような、それでいてちゃんと完結している。地の文と会話が酷くアンバランスでありながらそれが作品の良さに繋がっている。
 これは見事でした。わたしには到底書けない。

2014/05/08 12:35:57
id:a-kuma3 No.4

a-kuma3回答回数4502ベストアンサー獲得回数18692014/04/23 02:34:40

ポイント34pt

「April 23, 2014. Weather: Fine ...」    


 鍵がかけられてることがほとんどない扉を開けて、ちょっとした教室くらいの大きさの研究室にはいると、使い方が分からない道具やチカチカ光っている謎の機械が所狭しと置かれたテーブル以外には、誰の姿も見えない。

「あれ、留守なんて珍しいな。こんにちは」
「お、ケンタくんか。その辺に適当に座っててくれ」

 一番ごちゃごちゃしたテーブルの向こうの方から博士の声が聞こえてきた。どうやら、しゃがんでいたらしい。立ち上がった無精髭のおじさんの名前は小橋博士という。ちょっと変わってる人だけど、昔はロボット技術者としてとても有名な人だったらしい。真面目が服を着て歩いているような、ぼくのお母さんは、博士のことがあまり得意ではないみたいだけど、ここに来るなと言われているわけじゃない。

 またしゃがみこんで、机の向こうに隠れてしまった博士は、いったい何をやっているのだろう。机に近づいてのぞいてみると、まず目に入ったのはがっしりとした白衣の背中で、その脇から見えているスペースにいたのは、メカニカルな研究室に似つかわしいとは言えないものだった。

「犬?」
「そうだ」

 茶色い柴犬は、不機嫌そうな低い唸り声をたて、鼻の辺りにシワを寄せている。どうやら愛想が良い方ではないらしい。でも、お世辞にも人付き合いが良いとは言えない ――― というよりは偏屈と言った方が人柄を正確に表している ――― 博士に犬を預ける酔狂な人がいるとも思えないし、ましてや博士がひと恋しくなってペットを飼い始めたなんて、もっと信じられない。

「可愛いですね」
「そうか?」
「名前は何です?」
「調整に手間取ってな。名前はまだない」

 周りを見回した感じだと新しいものは増えてないような気もするけれど、大物をガレージの方で作っているのかもしれない。まだ名前をつけてないという柴犬は、まだ、ぼくを警戒している様子だ。

「あまり、ぼくのことが好きじゃないみたいですね。犬は得意な方なんだけどなあ」
「仕方あるまい。初対面だからな」

 博士は白衣のポケットからはみ出しているでっかいリモコンを取り出すと、犬の方へ向けて黄色いボタンを押した。犬はすっと立ち上がるとスタスタとぼくのところに近寄ってくるとクンクンと臭いをかぎはじめた。博士がまたリモコンのボタンを押すと、柴犬は尻尾を振りながらぼくの方を見上げてきた。

「登録完了」
「なんですって?」
「きみのデータを、こいつに登録した」

 じゃれついてきた柴犬の頭をなでていた手を止め、顔をじっくり見てみるがよく分からない。嬉しそうに尻尾を振りながら、はあはあ言っている口をこじ開けてみる。小さくてかわいい歯がきれいに並んでいるが、口の中は濡れていない。

「まさか、これロボットなんですか!?」
「ああ。さっき言わなかったか?」

 あらためて、あちこちをなでまわしてみるが、しなやかな筋肉をつやつやした短毛の毛皮がおおっているとしか思えない。柔らかいお腹をなでてみると、奥に多少固いものが手に触れる気がする。ぶんぶん振っている尻尾をぎゅっと引っ張ってみるが、柴犬はうれしそうなままだ。

「まあ、細かい反応まではこれから改良、ってところだな」

 本物と寸分たがわぬロボット犬。博士ならこれぐらい作りかねない。それにしても、本物そっくりだ。

「博士、正にスーパーロボット犬だね! スーパードッグだ!」
「ふん。褒めてくれるのはうれしいが、横文字は止めてくれないか。
 触ってみて分かっただろう。
 しなやかさと強度を併せ持った特殊ファイバーをより合わせた外殻。
 外殻を覆う人工毛皮は、ミクロなレベルで自然毛を模擬している。
 内部のモーターはこの大きさに必要な個数を集めると、どうしても小さくしなくちゃいかん。
 精密な加工は、技術大国日本の得意とするところ。
 精密さに加えて、軽量化、低コスト化を実現するために、私が持てる技術をすべて注ぎこんだ。
 もちろん、材料はすべて純国産を使っている。
 簡単に横文字などで呼んで欲しくないな」
「はあ……」
「ただ、語感は良いなあ。そうだ、ちょういぬだ」
「え、チョー、何です?」
「こいつの名前さ。犬を超えると書いて、『超犬』だ」

 博士はリモコンを再び手に取ると、ボタンをいくつか押した後に、ちょういぬ、と言った。

「さあ、今日からお前は超犬だ」
「ワンッ」

 こんなものを作っちゃうくらいだから、技術者としてはものすごい人なんだとは思うけど、なに、この命名のセンス。

「調子が狂うなあ」
「そりゃあ、いかんな」
「いや、そういうことじゃなくてですね」

 小一時間ほどのつもりだったのだけれど、スーパーロボット犬の話を延々と聞かされているうちに、すっかり長居をしてしまった。その代わり、家ではあまり飲ませてもらえないコーヒーを二杯と、博士がとっておきのチョコレートをちゃっかりといただいた。ぼくは、転んでもただでは起きないタイプの男なのだ。

 もう外は薄暗くなりかけている。宿題も予習もやらなきゃいけないことは、たっぷりとある。急いで帰ろうとカバンを担ぎなおして駆け出したところで、曲がり角から出てきた人にぶつかってしまった。

「すみませんっ! 大丈夫ですか?」
「イテテ。ああ、大丈夫さ。」
「ほんとに済みません」
「ああ、君は他人のことよりも、自分の無事のことを考えた方が良い」

 土ぼこりを払いながらゆっくりと立ち上がった手には鈍色に光る金属が握られていた。

「おとなしくしてくれれば、手荒なことはしないよ。私が言っていることは分かるな?」

 無言で何度も頷くぼくが覚えてるのは、いかにも悪そうに口を歪ませている男の顔だった。何が手荒なことはしない、だ。後ろからガツンとやられたぼくは、あっという間に意識を失っていた。


 ひんやりとしたコンクリートの床の感覚で、ぼくは目を覚ました。どれくらい気を失っていたのだろう。破れかけたガラス窓からは、満月の光が差し込んできている。後ろ手にしばられ、無造作に床に転がされたぼくは辺りの様子をうかがってみる。
 どうやら倉庫のようなところらしい。向うの壁から漏れている光の向うから、話し声が聞こえてくる。どうやら博士の発明を狙っているらしい。ぼくは交換のための人質というわけだ。
 大事な人質を簡単に殺すことはないだろうと楽観的に考えながらも、このやばい状況を抜け出そうと身をよじってみるが、しばられた手首は痛くないものの、がっちりと結ばれているようで簡単にはほどけそうもない。

 誰か、助けに来てくれないかなあ。

 思わずつぶやいた言葉が聞こえていたかのように、窓の外を黒い影がよぎる。小さな黒い影は、積み上げられた荷物の上を軽々と飛び移りながら、ぼくの横に来た。あ、博士が作ったロボット犬じゃないか。

「スーパードッグ! ぼくを助けに来てくれたのかい? 手をしばってる縄をかみちぎってくれると助かるんだけど……」

 ロボット犬は尻尾を振ってうれしそうにしているだけで、ぼくの言葉を理解している様子はない。ロボットのくせに、人間がしゃべることも分からないのか。まさか……

「超犬?」
「ワンッ!」

 やっぱり、そうだ。
 登録した言葉にしか反応しないんだ。

「超犬。ぼくを縛っている縄をかみちぎって」
「ワン、ワンッ」

 駄目だ。ワンワン言うだけで、言葉を理解しているふうではない。何が超犬だ。そのとき、向うのドアが開いて、ぼくをさらったやつらが顔を出した。

「何だ、うるさいな」

 しまった、気付かれた。近づいてくる男たちは、ぼくのそばにいる超犬に気が付いた。

「なんだ、野良犬か。どこから迷い込んだんだ、まったく……」
「ヴーッ」

 悪いやつらだと分かるのか不快感をあらわにうなっていた超犬は、男たちに吠えかかっていく。

「駄目だ、超犬!」
「うるせえっ!」

 ひとりの男が無造作に蹴りだした足で、超犬は五メートルほど吹っ飛ばされて壁に当たったまま動かなくなってしまった。

「超犬!」
「なんだ、おまえの犬か。残念だったな。ヒーロー犬が主人公を助ける、ってわけにはいかなくて」
「超犬! 超犬っ!」

 動かない超犬を目の前にして、ぼくの視界は真っ白になっていく。

 ブチブチッ。

 手首と足を縛っていた縄を、力任せに引きちぎったぼくは、あいつらに飛びかかる。十メートルの距離をあっという間に詰めて、横殴りの一閃で片方の男を昏倒させた後、もうひとりのやつのパンチをかいくぐり、腹にストレートを一撃。悶絶しながら、もうひとりも動かなくなる。

「ああ、またやってしまった……」


 ぼくの体は、七割がたが機械に置き換えられた、いわゆるサイボーグだ。普段の生活ではリミッターがかかってるので、普通の大人程度の力しか出せないけど、感情が高ぶったときとかに、たまにこうなってしまう。ぼくは悪者の骨を折らないように気を付けながら、近くに転がっていた鉄パイプで両足を固定する。

「大丈夫か!」

 遅いよ、博士。倉庫に飛び込んできた博士の心配そうな顔を見て、安心したぼくは気を失ってしまった。

    ――――――――――――――

「どこも壊れてはいなかったよ。あいつらも、命に別状はないらしい」

 去年の夏、世間を騒がせた電車の衝突事故に巻き込まれ、瀕死の重症を負ったぼくを助けてくれたのが、小橋博士だ。それときから、不完全なリミッターのモニタリングと、当時のサイバネティクスの粋を結集したぼくの手足などのメンテナンスをしてくれている。

「あいつも誉めてやってくれ」
「超犬!」
「ワンッ」

 博士がしゃくった顎の先には、ちぎれんばかりに尾を振っている超犬がいた。

「ねえ、博士。あいつが精巧なロボットなのはわかるけど、はっきり言って、ただの犬じゃん」
「何を言う。あれだけ説明したのに、まだ分かってないのか。超犬は、普通の犬とは比べ物にならないぞ。例えば、あいつの嗅覚センサーは、犬の1.2倍の性能を持っている。きみの後を追うことなど、造作もない」
「いや、普通の犬並みってことですよね」
「あいつには GPS を搭載してある。だから、あいつがどこにいるかすぐに分かるんだ。私がケンタを助けに行けたのも、そのおかげだ」
「……」

 携帯電話でもできることを自慢げに話されてもなあ……

「まだあるぞ」

 博士は、また白衣のポケットからリモコンを取り出すと、ボタンをいくつか押した。
 超犬はしばらく動かなくなると、おもむろにプリンターの方に向かって、チャッチャッと爪を鳴らして歩いて行った。




「どうだ、こいつが作成した今日のレポートは? 小説モードも組み込んである」
「はあ……」

 超犬がくわえて持ってきた、プリンターが吐き出した紙に書かれている内容を読んだぼくは、なんて答えて良いか分からない。確かに、今日、起きたことが小説風に書かれてはいるのだが。

「いや、すごいとは思いますけど、まず、そのリモコンをどうにかしましょうよ。今どき携帯電話だって音声認識してくれますよ」
「そうなんだ。語彙のデータが意外に大きくてな。メモリを増やすと柴犬のフォルムが保てない。泣く泣く音声認識の処理を簡素化してだな……」

 バランスが悪いのは、名づけのセンスだけじゃないんだ。
 まあ、良いや。
 小説モードのテストという名目で、今年の夏休みの宿題は少しだけ楽ができそうだ。



(おしまい)

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id:a-kuma3

投稿後に、自分が書いたのをじっくり読んだのは、初めてかも。
いじりだすとキリがないので、あのままでプリーズ。

2014/04/24 00:37:14
id:grankoyan2

 細かいところを突っ込んだら負けのなんちゃってSFですね。好きです。
 作中作とかいろいろ工夫もされてます。惜しむらくは、ちと盛り上がりに欠ける点と着地でしょうか。
 どちらも悪くはないんですが、もう一声! とお尻を叩きたい感じ。
 とはいえ、軽いノリで楽しめました。

2014/05/08 12:36:12
id:shogo2469 No.5

コイル回答回数200ベストアンサー獲得回数252014/04/23 19:34:14

ポイント33pt

蝶を捕まえに行こう




「ジョン! こらジョン! 待てってばー!!」
 僕は、ひたすら走るジョンを追いかけた。
 公園でジョンが完全にはしゃいでしまってる。僕の体がなんとなくついていかないのだ。犬の走りは速い。

「ハァ、ハァ・・・。もう…、あんまり走るなよ」
 ジョンがやっと止まってくれた。ジョンの方は「まだまだ走れるぜ」って顔をしてる。僕なんてクタクタなのに。
「ワン、ワワン。ワン」
 ジョンが何かを見て吠え始める。僕は下に向けた顔を、正面に向きを変えた。

「蝶々だ! たくさんいるね。今年の春は暖かいもんなあ。菜の花も咲いてるわけだよ」
 数えてみると、数十匹、数百匹もいる。一匹一匹綺麗に飛んでいた。
さらには、菜の花もいくつも咲いている。
そういえば、もう春だな。ポカポカしてきたし。

「ワワワン! ワンワン!」
ジョンが唐突に走り出した。
「おい、こら、やめろってば!」
僕は必死にリードを引っ張った。
だが、ジョンは引き返そうとしないのだ。ひたすら蝶に向かって走ろうとする。
蝶を捕まえる気のようだ。しかし、いくらジョンが手を叩いても、一匹も捕まらない。


ジョンをいくら引っ張っても、止まってはくれない。
面倒臭くなったので、僕はリードを手放した。
するとジョンは、とっさに蝶を捕まえに行った。
ふぅ。ジョンには困ったものだ。

そうだ、スマホ持ってたんだった。
僕は一回、カメラでジョンと蝶を撮った。
よし、ツイッターに、公園でジョンが蝶を追いかけてる、って投稿しよう。
僕は、ベンチに座り、スマホの電源をつけて、ツイッターにアクセスした。
そして、20秒で全ての文字を打ち終わると、ジョンの写真を貼り付けて「ツイート」ボタンを押した。

僕のツイートが画面に表示された。
「さて、注目のキーワードないかな~」
僕は呟きながら、画面の右上を見た。

柔道

こんなキーワードがあった。僕はキーワードにアクセスすると、画面にたくさんのハイクが表示された。

立岡選手、決勝行ったアアアアアァァァ!!!○────'(*゚▽゚*)♪───○

立岡選手、明日決勝かぁ。
相手は中国ですね! いやあ、緊張感高え。

みゆう頑張って! 金メダル取って!
今年の東京オリンピックは、みゆうちゃんが金メダルだお!
みーゆう! みーゆう!



柔道の立岡選手に、コールツイートが殺到した。
って立岡…? ああ、立岡みゆうさんかあ。未祐さんかぁ…! 懐かしいなぁ。
そういえば、幼稚園で一緒だったし、小学校時代は、6年ともクラス同じだったよな。
中学から離れたけども。
 オリンピックで柔道は見たが、立岡選手が僕のクラスメイトと気づいたのは、たった今だった。

「未祐さん、今頃どうしてるだろう。あ、オリンピックに出てんのか。ああ、そういえば卒業式で「東京オリンピックに出て、柔道で金取る」とか宣言してたよなあ。どこにいるかな今。ちょっと会ってみたい…」
「あのぅ、私ならここにいますけど?」
 右隣から声が聞こえてきた。…って、え?


「み、みみ、未祐さん!?」
 僕の目は点になった。未祐さんは、僕の隣に座っていた。
「うん、久しぶりだね。想紀くん。えっと6年ぶりくらいかな…」
「え、立岡未祐さんだよね。ひ、久しぶり。いつからいたの」
「今だよ。想紀くんも東京に来てたんだね。いやあ、会えて嬉しいよ」
 会えて嬉しいよ。学校でこのような言葉は1回も聞かなかった。今が初めてだと思う。
 彼女は、テレビで見たのと同じように、笑顔であった。別に好きなわけではないが、僕の心臓は揺れていた。


「み、未祐さん」
 とにかく、話はしなきゃと思って、話題を作ると思った。
「えっと、今の生活大変じゃない?」
「うん、日々特訓だからさ、結構厳しい日常だよ」
「へー、そうなんだ。大変だねぇ選手って」
「まあね、でもいやだって思うことも、なくもないけどいつも楽しいよ。こっちは柔道好きだし、上手くなりたいし」
「ふぅん」
 僕は呆然とした。

 そういえば、学生時代は卓球部に入ったが、上手くなりたいって意志はあんまりなかった。気がつけば今となっては、卓球は月に数回ぐらいしかしない。いくらやっても上手くなれないのだ。小学校の時にやってたクラブも、長続きはしなかったのである。
 しかし、未祐さんは違うようだ。小学校の時から志した柔道を、今でも捨てていない。
 多分、僕が未祐さんと腕相撲したら、5秒もしないうちに僕が負けてしまうだろう。


「そういえば想紀くん」
 未祐さんが急に話しかけてきた。
「想紀くんてさ、ネットで「コイル」で活動してる人だよね」
「うん」
「想紀くんの小説なんだけどさ、毎回面白いよ」
 未祐さんは、僕を褒めていた。
 えっ、褒めてる・・・? 未祐さんからこの言葉を聞いたのは初めて、てか未祐さんて、僕が小説書いてんの知ってんの?

「特にさあ、この間のイロトリドリはすごかったよ。私、あんな小説かけないよ」
 未祐さんは堂々と僕の小説について語った。
「想紀くんの小説、絶対賞もらうんじゃないかな…」
「いい加減なこと言うなって!」
 僕はカァっとなってしまった。
「想紀くん・・・?」


「未祐さんて、ほら。柔道で世界にも出てるじゃん。オリンピックに出場してるんだしさあ。しかもいま決勝に行って、金メダル間近なんだからさ。すごいよねえ。それに比べて僕なんか! 何回もコンクールに送ったのに、全部落選だったよ。一回も受賞なんてしたことないんだよ。僕に受賞できる小説なんか書けるわけないんだから」
 僕は恥ずかしながら、卑下をした。
 ハッキリ言って、未祐さんと僕とでは比べ物にならない。
「ほら、あれ。『犬がいくら追いかけても、蝶々を捕まえられない』のと同じだよ。僕はいくら頑張っても、未祐さんを越えられない」
 

「ごめん、想紀くん。私、トイレ行ってくるよ」
 未祐さんは、そのままベンチを立ってしまった。
 ああ、行っちゃった。不快だったかな、僕の言い方・・・。
 未祐さんは、そのまま姿を消した。

 前を向くと、
「あれ、ジョン。まだ蝶々を捕まえようとしてんの? 無理だよ、諦めなって」
 僕は笑ってみる。
 それでも、ジョンは僕を無視して、蝶を狙い続ける。

 ったく、もう勝手にしてよね。
 って、ふと右を見ると、僕の隣に、未祐さんのスマホがある。
 未祐さんのスマホ…、ツイッターとかやってんのかな?
 黙ってみるのも悪いと思ったが、好奇心のあまり、未祐さんのスマホを起動させた。

コイルくんの小説面白いっ! 本当にコイルくんが書いたの…?
いいなあ、私もこんな文書けるようになりたい…。
私、柔道だけで、文章下手だし…。書き方を教えて欲しい!

 未祐さんのつぶやきだった。
 コイル…。僕のことだよなあ。てか、ここまで褒めてたのか・・・。
 未祐さんて、本当に僕を尊敬してたんだなあ。でも、下の僕が、上の未祐さんから褒められるなんて…、いいのかな。


「ワン! ワンワン! ワン!」
 突然ジョンが吠え出した。ちょっとビビリながら、ジョンの方を振り向いてみた。
「どーしたの? ジョン」
 僕はジョンの手を見た。って、え。
「ワワン! ワワワン!」
 僕は目を丸くした。ジョンの手には、一匹の蝶がいた。え、ジョンが…、犬が蝶を捕まえたの?
 僕は、自分のスマホを起動させ、慌ててジョンを撮った。

「すげえな、ジョン! 本当に捕まえたんだ!」
 ジョンは笑っているようだった。
 って、そういえばさっき、

『犬がいくら追いかけても、蝶々を捕まえられない』

 って僕が言った。
 あれは間違いだったのか・・・。今この目で、ジョンが蝶を捕まえているのを見ている。火を見るよりも明らかに。
 そうか、僕は思った。
『諦めずに、未祐さんを追いかけてたら、いつか捕まえられる、超えられる』
 って。


「ごめん、待った?」
 未祐さんがベンチに向かって走った。
「ううん、大丈夫。そんなことよりさ、ほら。犬が蝶を捕またんだよ」
「えっ、マジで!?」
「うん、写真撮ったんだ。見る?」
「うん! 見せて見せて!」
 未祐さんは、写真を見る気マンマンだった。


 犬が蝶を捕まえられるんだから、きっと僕も未祐さんを捕まえられるだろう。
 たくさん努力して、賞もらって、みんなから人気になって・・・、夢が一つ芽生えてきた。
 よし、今から未祐さんを超える旅を始めよう。
 飛び回る、蝶を捕まえに行こう。

他4件のコメントを見る
id:shogo2469

両親に聞いてみますた。一応許可はもらいましたよ!

てわけで、掲載希望・・・

2014/04/26 23:38:18
id:grankoyan2

ぐんぐん成長してますね。よくもまあ、ここまでいろんな設定を思いつけたものです。
 というのは、年齢を考慮しての褒め言葉。
 今後伸ばしていってほしいのは、突飛な設定を突飛と感じさせない自然な繋ぎや描写ですね。
 あるいはリアリティを持たせるための工夫といったところか。
 でも、しっかりテーマも持って書かれていて、そこは素直に感心です。羽ばたけ!

2014/05/08 12:36:25
id:takejin No.6

たけじん回答回数1473ベストアンサー獲得回数1892014/04/24 16:38:28スマートフォンから投稿

ポイント33pt

赤い雲がたなびく西の空。夕日が落ちる。その夕日に向かって、女子高生が走っていく。
校舎の窓から見る光景は、私のグルグルする思いとは別に、脈略の無い場面を示している。

後ろの教室からは、延々と続く会話が聞こえてくる。
「だいたい、国語が嫌いなんだよね。作者の思いとかさ、主人公の少年の考えとかさ、脇役の働きとかさ。」
「皆と同じじゃなくていいじゃん。評論家先生が、みんな同じこと言ってたら、それ商売にならないじゃん。」
「作者でさえ、50点取れないテストって、何なの」
「だろう?それで、文章文化が育つってんだから」
「バカとしか思えない」

そうだ、日記だって嘘ばっかり、作文なんて読まされるから嫌い、読書感想文なんて。そして、文章や小説や説明文や企画書が書けないまま、大人になって。

「僕らは、文章に不自由な人だ」
「文章障害者だよなぁ」

私は、心の中で頷く。その証拠に、短い小説だってひねり出せないじゃないか。

「朝起きました。」
「朝食はごはんと海苔と卵でした。」
「学校へ行きました。」
「友達とかくれんぼをして遊びました。」
「夕食はカレーでした。」
「今日は楽しかったです。」
「これで済んでた時代が懐かしいな」
「なんかひねり出しても、面白くないもんなぁ」

夕陽に向かうオレンジの直線が、紅に染まる雲を縫い付けている。
「お、飛行機雲」
窓に振り向く高校生の、まつ毛が黄金色に光る。
「すげー、まっすぐだなぁ」
一番星が輝いている。
文学に興味を持って、物語とフレーズと文体とセリフを頭に受かべては消す。単語が点滅する。
科学と未来、作家と小説、読者と形容する文体…浮かんでは消える単語に、意識を奪われそうになる。

ふとl気づくと、教室の二人は、漫画の話をしている。
「…吉田戦車」
「ちょうちょをとるって知ってる?」
「タイヤに入ってたっけ」
「蝶犬ってのが出てくるの」
「あれ、おっかしいよなぁ」

文章で形容できない漫画、特に吉田戦車の描く世界は、文字にするととたんに色褪せてしまう。
小説なら目指す方向、
『華麗な形容、意味深な暗喩、含みのあるセリフ、たくさんの伏線、驚愕の結末』
ではない世界。
どちらかと言えば、
『簡素な文体、ぶっきらぼうな言葉、脈略の無い場面、唐突な結論、不合理な筋書き』
になる。でも、その世界は読者をつかんで離さない。

なんなのだろう、文字に力はないのか。

だが、筒井の言う「凄み」があればいいのではないのか。

夕陽が染めた雲の下から、女子高生が帰ってくる。走っている白いソックスが、急に暗くなっていく背景に軌跡を描く。
このフレーズ、スケッチになっているかな。


すっかり暗くなった校庭を通り、門を出る。道路に面したコンビニが、目の前にたたずむ。コンビニの明かりは、誘蛾灯のように人々をひきつける。教室の二人も、その明かりに吸い込まれていく。ガラス越しに見えるのは、漫画のコーナーで雑誌を開く二人だった。

見上げると、惑星の輝く星空が広がっていた。

月と火星がワルツを踊る下で、右足から歩き出す。

フレーズが浮かぶ。使えるかも、メモしておこう。


「機械化された妄想と、その妄想に翻弄される若者」

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id:takejin

編集者におまかせです。
というと無責任ですかね。一応こちらでOKです。

2014/04/28 07:38:52
id:grankoyan2

 なんかよくわかりませんが、真面目に書かれた雰囲気のある文章だと思います。
 ふんわりとした中に、文章に向き合う姿勢が描かれているような。
 吉田戦車の初期作品に出る雰囲気を文章化しようという気概を持ち始めたわたしにぴったりの作品でした。
 沢山積まれた瓦礫の上に文学が成り立っているみたいな絵が浮かびました。
 なかなか読みごたえがありました。

2014/05/08 12:35:21
  • id:grankoyan2
    次のお題が決まりました。
    開催予定のある方は、それが終わるまで待ちますので、ご連絡いただけたりしたらうれしいです。
    お題「ブラジルの○○、○○○○○?」
  • id:grankoyan2
    ↑ちなみに、あたしも書きました。同じお題で。
    https://i.crunchers.jp/data/work/3742
  • id:gm91
    ちなみに拙者も木曜晩から上京しますぜ!
    区内ちゃうけど。
  • id:kobumari5296
    色々調べたんですが分からず……
    しばりって、なんですか?
    物書きの視点で、お題をみつめるってことでしょうか?
    エッセイ的な?

    ちなみに参加させていただく予定です。
  • id:grankoyan2
    あたしも、木曜の深夜から埼玉に行きます。車で高速です。
    一緒に行きますか?

    しばりというのは、そういう感じの作品だったら嬉しいというしばらない縛りです。
    言い方を変えると、開催者からの希望は物書きをテーマにした作品だと嬉しいな~という程度です。

    お題はいつものお題と同じ解釈です。

    ご参加お待ちしております。
  • id:kobumari5296
    ありがとうございます。
  • id:kokiri385
    埼玉よかとこごゆっくり。
    お疲れ様です。
  • id:shogo2469
    もうちょいで完成しそうです!
    できれば、明日の晩まで待ってください
  • id:gm91
    私は3億円事件の現場検証です。
    いやそんなことより原稿が・・・
  • id:grankoyan2
    連絡事項。
    作者プロフィールは、書くのが面倒になりました。ご自身で書いていただけたらそれを一覧ページを作って載せます。
    書いていただけなかったら、わたしが勝手に代表作をかきつばたから選んで、

    ぐらんこ。
    代表作「アンドロイドとハンバーガー」など著作数点。

    ぐらいの簡潔なものになりそうです。

    あと、クランチマガジンには、プレビューみてご本人からのゴーサインがでたら順次掲載します。
    今のところ目立った誤字等が見つけれてません。他の人の作品で見つけたらご指摘おば! 

    よろしくおねがいします。
  • id:grankoyan2
    作者紹介ページのたたき台ができました。
    https://i.crunchers.jp/data/content/3456/10039

    自分で書く、これでいい。やっぱりいらないなど反応ください!

    あと、明日の昼過ぎには締め切ります。
  • id:a-kuma3
    何の文句もありませんです >作者紹介
  • id:grankoyan2
    作者紹介はあとたけじんさんの了解ですね。
    それではぼちぼち行ってきます。講評等は後程~
  • id:takejin
    了解しました。
    ちょっとこそばゆいですが。
    ゴメン魔神を投稿しましたよ。
  • id:kobumari5296
    お久しぶりです。
    HPにこの企画のことをのっけました!
    お暇なときにでもご確認ください。
    そして、直しがあれば瞬時に直させていただきますので、よろしくお願いいたします。
  • id:grankoyan2
    ってわけで、講評というか感想とかきつばた賞を決定しました。
    ご参加ありがとうございました。次回もお待ちしております。既に開催中。
  • id:kokiri385
    お疲れ様でした。
    BA有難う御座います! これからも貪欲に頑張りたいです。

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