偽名でツイートしている人が、私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄
をつぶやいていて、その内容が、一般人の感覚を基準として、当該私人の立場であれば公開を望まないであろうと認められる事柄
で、なおかつ、その内容が、一般の人々にいまだ知られていない事柄
であれば、プライバシー権を侵害されたと訴えられた場合、損害賠償請求が認められる可能性はあります。
どのような事例を想定されているのか具体的な情報が質問者様から提供されていないので、結論としては「誰が」「どこで」「なぜ」公開するかによりケースバイケースである、というのが正確なお答えになろうかと思います。
一般論として答えるのであれば、匿名性を保持したネットサービスにおける匿名性の保持は、法律上保護される利益と考えられますので、個人情報を暴露した人は、不法行為による損害賠償を被害者から請求される可能性があります。賠償額もケースバイケースですが、開示の際の被害に応じた額が判例規範に則り認められるでしょう。
ここで言う「被害者」は、実名を暴露された当人だけに限りません。実名を暴露された人の子どもが学校に行けなくなっただとか精神疾患を患ったなどの被害を訴えた場合は、子どもから賠償請求される可能性もあります。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
偽名でツイートされている方の本名を、偽名でツイートされている方自身がツイートで公開しているようなケースですと、公知の事実を公知させているわけで、権利侵害が存在しないと考えられますので、賠償責任は認められないでしょう。しかし、不法行為で賠償請求された暴露者が公知の事実であることを証明できない場合は、賠償請求が認められることになるでしょう。
報道機関が報道活動として報道するケースですと、個人情報を保有する情報提供者による情報提供があり、その情報提供が報道機関による報道活動によって、かつ、その報道が多くの人にとって重要な意義を持つ事実で、かつ、その個人情報を公開することが社会通念上社会的に利益がある場合は、通常の報道と同じく、無責任が認められると思います。
たとえば具体例を挙げますと、「これは海上保安庁が機密指定している機密文書の一部で、領海侵犯した中国船が海上保安庁の船に体当たりした時の記録ですが、それによると・・」というような内容のツイートを書き込んだ匿名者が海上保安庁職員であった場合、そのツイートを書いた海上保安庁の職員の実名を報道することは、過去の事例に照らして報道の無責任が容認されると思われます。
この事件については、ホイッスルブロワー(内部告発者)の匿名性を担保させることで社会的な不正告発を促し社会正義を実現させるべきであるという原則的なジャーナリズム論の立場から、報道機関であっても匿名性を尊重するべきとの議論があり、実際に匿名性を保持し続けた報道機関も存在したことに留意する必要があります。
報道以外のケース、たとえばTwitter社員やTwitterのサードパーティが、プライバシーポリシーに反して第三者に個人情報を漏洩し、その第三者や第三者から情報を得た報道機関ではない誰かが、その個人情報をばらして公開するようなケースでは、賠償責任を回避することは難しいでしょう。
その他、娘が父親の匿名ツイートに対して父親の実名を暴露するケース、会社社長の匿名ツイートを従業員が社長の実名を暴露するケースなど、さまざま考えられますが、前者については現実的に賠償請求などは行われないと思いますが、後者のようなケースではケースバイケースで賠償請求は認められなくても解雇などの社内制裁はあり得ると考えて差し支えないと思われます。
コメント(3件)
議員先生や某省の次官とかの隠れアカとか蒐集した・・。
もし現実に起きている問題なのでしたら、Twitterで問題行為を行っている相手に本名をばらさずに警告するか、なりすましの被害者を知っているのでしたら、その人に知らせてみてはいかがでしょう?
ご存知かもしれませんが、Twitterはなりすましなど被害者本人からの通報には対応するようです。
>>
日本国憲法
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
<<
プライバシー権に関する主な裁判としては「宴のあと事件」(東京地方裁判所 昭和36年(ワ)第1882号)が有名です。
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~suga/hanrei/10-1.html
東京地方裁判所 昭和36年(ワ)第1882号 判決