【人力検索かきつばた杯】Vol.75　テーマ：悪役の独白

落ち着け。落ち着くんだ。
一旦、出直そう。
「今日の所は、この辺で勘弁してやろう。また会おう、諸君」
脱出装備は？

あった、これだ。

起動。

あいつら、正義とやらを振りかざして、やりたいようにしやがって。

世界征服を志すことが、なぜ悪い。あいつらに阻止される理由はないわ。
世の中を変えるだけだ。神の見えざる手を俺の手に変えるだけだ。

お山のボスがいれば、No2狙いの小競り合いしか起こらないだろ？
世界を抑止力で征服して、平和な地球を作るんだ。

どこが悪いんだ？

あいつらと戦わなければ、人も建物も傷つけないんだぞ。
あいつらが俺を倒すから、街が壊れるんだ。
あいつらのレーザーを避けると、コンビナートが炎上するんだ。

ん？

あいつらの目的は、何なんだ。
世界平和なら、共に戦おうと言ったのに、拒絶している。
悪を滅ぼすって言ってるけど、悪って何だ?
俺は、人殺しも、大量破壊もしていない。ちょっと、力の誇示をしてみせただけだ。

わかった。「正義の味方」って何なのか。

少なくとも「正義そのもの」ではないのだな。


しばらく地下活動に専念しよう。俺が「地球防衛軍」を設立するのだ。



あいつらの目的を阻むために。




それが、世界平和への近道だったのだ。

「いやね、最初の登場の時から扱いがおかしいな、とは思うとったんよ。
主役はんには"素手"でエリマキ引きちぎられるとか、どんな展開やねん、て。

ほんで二週目にはもう、ワイの上位互換した悪役出てきたときにはもうね、
テコ入れ策にしても早すぎるやろ、て。それも三倍やで、三倍！
　
ツノ付いとったら強い、いう分け方も納得できへんかったわ。
ほならツノ無いワイはメスか！ちゅうの。　

あと辛かったんは、出撃して主役はんと見せ場作ったときに、ちいと気い抜いとっただけで
帰れえへんようになったときのやつ。
ツノ付きの中のニイサンは『無駄にはせえへんで』言うとったけど、結局アレや、ワイだけ熱い思いしただけやもんな。
主役はんの胸アテのヒダヒダがクーラーの噴出し口やった、やて、神さんでも分からんかったやろ。
　
まあでも、一番アカン思たんは、雷の日ィのアレやなあ。
まさか味方思うとったあの人の口から
『おまえとは違うんじゃあ！　雑魚があ』
て、啖呵切られるとは思うてなかったわ。
その場にもワイらおったっちゅうねん！　

ちゅうても、ムチ持ちの中のおっさんには逆らえへんから、こないな風に、ひとりごちるしかないねんけどな」

私の星は寿命が尽きかけていて、
遠からず滅びてしまう。

我が星の住民を、
住める星に移住させなくてはいけない。

太陽系の第三惑星、地球が
住むのに良い。

地球の生物は、放射能に弱いから、
隕石に偽装した、放射能カプセルを落として消毒して、
地球人類が死に絶えたら移住開始だ。

しかし、地球でとんでもない戦艦が作られて
反乱を始めた。

地球の技術では作れないはずだ。

莫大なエネルギーを作り出して、
恒星間旅行を可能とする波動エネルギーを
武器に転用するとは、野蛮人の発想だ。
我々は考えもしなかった。

そして機雷を、手で押してどけるとは、
原始人の発想には感服した。

蛮族の戦闘力は侮れぬ。
我が軍最強の戦士も破られてしまった。

しか所詮は鉄の艦だ。

我が星の硫酸の海に叩き落せば
跡形も無く溶けるだろう。

今度のは若い白菊、細工は十分。
煮て食おうか焼いて食おうか・・売る前に食うのは当然の権利だよな。
薬を使うと臭くなるから、現生をもう少し食わしてから食うかな・・・？
ヤニ臭いのを嫌がる客もいるし・・どうするかな・・・。
土壇場で逃がさないように、締めていこうぜ、・・・俺。

もう夜の8時か。そろそろ活動を始めるとしようか。
今日はどこに行こう。六本木かな、それとも渋谷かな。

この極東の島国に来てまだ1ヶ月そこそこだが、同じ島国でもイギリスとは大違いだ。
ここの何が良いって、誰もが自分は安全だと思っている所。
夜中の1時に、女の子が平気で街中を歩いてるし。

その上、女子の大半にとって、外人というだけで好感度が上がるらしい。
貴族の血を引いているとでも言えばなおさらだ。
で、何を期待してるのか知らないが、ちょっと親しくなっただけで、平気で自分の部屋に招き入れる。
強引に押し入るのが嫌いな私には、この上なく便利な場所だ。

あと、キリスト教徒が少ない。
ま、仏教徒のくせして、アクセサリーで十字架をぶら下げてるやからもいるので油断は禁物だが。

ああ、何でもっと早く日本に来なかったんだろう。
そうだ、あいつにも教えてあげようと思ってたんだ。
iPhone はどこかな？

おや、新着のニュースだ。
おお、ユニコーンが絶滅危惧種に認定、か。
これも時代の流れだね。

さて、ラインを立ち上げてと。
「ここは良い国だ。カーミラも早く来るように」

あ、ツイッターを忘れるとこだった。
「ブラッディマリーなう」

何が悪いというのだろう。縄張り争いも狩りも生存競争も当たり前のことじゃあないか。
それだけじゃあない、これは正当防衛だ。先に手を挙げたのは僕じゃあなかった。そもそもなぜ僕に襲い掛かってきたのだろう、お門違いも良いところじゃあないか。
僕は全く関わりを持ってなどいなかったし、悪さしたっていうそいつとの面識もないし、濡れ衣を着せられてむしろ怒っているくらいだ。いつか見つけたら一発殴ってやろう。一発で許してやるさ、僕は生きてるわけだし、そいつも僕に罪を擦り付けるつもりはなかっただろうし。そのつもりがあったなら半殺しくらいにはしてやってもいいかな。
しかしあの集落もそこまで食べ物に困っていたなんてなあ。この島はそこまで困らないからわざわざ船に乗ってあっちに渡る必要はないけど。いつああなってもおかしくないんだなあ。僕も気をつけようっと。
それにしても随分散らかったなあ、片付けにこんなに時間がかかってしまうなんて。そろそろ夕餉の支度をする時間だ。今日はすっかり予定が狂わされてしまったなあ。
さて、ちょうど良いから今日の夕餉になってもらおう。随分な御馳走だ！頑張ったご褒美ってところだろう、たまの贅沢くらい許してもらえるよね。
まず焼き鳥でしょ。こっちのは煮込めば良いのかな？みそも珍味だったっけ。こいつは腹に米を詰めて蒸し炊きにすると美味いって聞いたことがあるな、エノコロメシってやつ。
…人はやっぱり鍋にするのが一番かな。さあ、包丁を研いでこよう。

ブン♪　チャ♪　ブンブブン♪　チャ♪
ブン♪　チャ♪　ブンブブン♪　チャ♪

Yo! Yo!　俺は悪役
俺の攻撃手段は炸薬

一人寂しく今宵も独白
世間毒吐くぐらいなら行動

今日も街中ぶっとばす！
今日の疲れを癒すぜfoot bath!

何でもかんでも爆発三昧
バラバラ死体の素材に　Don't mind♪

捥（も）げ～て　焦（こ）げ～て　こ削（そ）げて　炎上
それ見て　ひとりで　ご満悦　enjoy

Ah～　Ah～
俺の生まれた理由（reason＜リーズン＞）
Ah～　Ah～
ビートを刻む連続爆発音（Rhythm＜リズム＞）

子守歌だYo　籠るよ廃墟
Say　Sey！　生成！　爆弾生成！
Say　Ho！　製法！　秘密の製法！

赤子もじいいもばばあも犬コロも
俺のSuper BomB（スーパーボム）で等しく肉団子（ミンチ）さ～！！

もう指に力が入らねえ。
腹に大きな穴が開いちまって血もいっぱい流れ出ちまった。
目もかすんできやがった
ケチな人生もここでお終えか。あっしはここで死んじまうんだ。



ああ、でうすさま
あっしのようなもんでも、ぱらいそに行けるってのは本当でやしょうか。

物心がついたときには独りぼっち
ゆすり、たかり、かっぱらい
生き延びるためなら何でもしやした。
それが悪いだなんて思ったこたあございやせん。
何のために生きるのかなんて、考える暇さえごぜえませんでした。

十三くれえの時分に江戸を所払いになっちまってから弾かれるように住処を西へ西へと移し、
この肥前の国に流れ着いたのが、もう五年も前でやす。

へまをしてとっつかまったあっしを許すなんて言いやがって
てめえらの食いもんすらろくにねえくせに、おまんまを届けたり
底抜けのお人よしか気がふれてるんじゃねえかと思いやした。


時貞さまには本当に申し訳なく思っていやす。
佐賀藩のお侍にをお城に手引きしたのはあっしでやす。
女房、子供を盾に取られてどうしようもなかったんで……

やっぱりてめえのことだけが可愛いってえか
ちんけな性分というやつは
さくらなんとかってやつでもそう簡単には変わらねえようでやす。

虫のいい話のようでやすが、あの方は無事に逃がしてあげておくんなさい。


もう何も見えねえ。
熱い……
お城の火がここまで
それともいんへるのの火に焼かれているんでやしょうか