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?燃やし賞開催?

私、id:firestormを燃やし尽くすような未発表の創作小説・イラストを募集します。
テーマは「燃え」。モチーフは別URLにて掲載します。
日本語文章、または一枚絵を、回答で掲示(イラストはリンクで可)してください。
URLの紹介ではなく、書き下ろしでお願いします。コピペはスルー。
投稿作品は転載(はてな内)することを予めご了承ください。

最大の評価基準は「私が燃えるかどうか」です。「燃やせば勝ち」です。
最も燃えた作品には約500pt(可変)を差し上げます。

その他細かい事項は下記URLを参照してください。
http://d.hatena.ne.jp/firestorm/20061018/TheGreatMoyashiShow


※この企画は「萌理賞」およびid:sirouto2さん、ならびに「第一回萌やし賞」およびid:comnnocomさん、ならびに「第二回萌やし賞」およびid:mizunotoriさんとは無関係です。私、firestormが勝手に行っているものですので、ご意見等ありましたら私までお願いします。

●質問者: SHINO
●カテゴリ:ゲーム 芸術・文化・歴史
✍キーワード:FIRESTORM Mさん URL はてな イラスト
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 16/16件

▽最新の回答へ

1 ● くまいみずき
●14ポイント

題名:戦争が終わったとしても。



西暦5018年。

ついに、宇宙戦争が幕開けとなってしまった。

当初、内戦だったものが国家間の戦争に発展。

さらには、地球規模にまで発展してしまった今回の戦争。

この影響で、地球は荒れ果て、戦闘するには不十分な環境となってしまった。

人類は荒れ果てていく地球と共に倒れていった。

今では、戦争を繰り広げている軍人だけが生き残っている状態だ。

戦力は互角。どちらにも1人ずつ、非常に優秀なパイロットが存在した。

お互い、良きライバルという認識はあったものの、実際に戦を交えたことはなかった。

そう、今までは。


戦闘が宇宙へと飛び火してから1週間。

ついに、この2人が戦うことになった。

チナ・ストーク軍所属、シュン・カムティ

シャナ・パインジャー軍所属、キリ・リバーク

この2人の戦いが、この戦争の最終決戦と言っても過言ではない。


両軍の戦闘機が飛び立つ。

いよいよ最終決戦の幕開けだ。

「シュン、相手は分かってるわよね」

「分かっているとも。ついに、ついにヤツと戦えるのか……」

チナ軍所属のシュンは、わくわくする心を抑えながら応答した。

一方、

「キリ、これが最終決戦だ」

「大丈夫だって! オレの手にかかれば、あんなヤツ、10秒で倒してやるぜ!!」

シャナ軍所属のキリは、戦闘意識を全面に出していた。


お互いが戦闘圏内に突入した途端、動きがぴたりと止まる。

まずは、相手の出方を見ようという、お互いの想いがあるのだろう。

しばらくは、静寂に包まれると思った。その瞬間、

「行くぜーーーーー!!」

先手を打ったのは、シャナ軍のキリだった。

挨拶代わりと言わんばかりのミサイルが、シュンを目掛けて飛んでいく。

しかし、シュンは紙一重のところで全てを交わした。

「ふっ。それでこそ、オレのライバルってもんだぜ!!」

「ライバル? 笑わせるな。いつ、誰がお前のライバルになった?」

キリの言葉に、シュンは火に油を注ぐような発言をした。

「誰がいつ、だと!? そんなの、決まってるじゃないか!!」

そう言うと、キリは次の攻撃体勢に入った。

「お前が、オレのライバルだってな!!」

先ほどのミサイルとは比べ物にならない速さの弾丸が、シュンの元へ一直線に飛んでいく。

「この距離なら、絶対に避けきれないぜ!!」

シュンの機体の目の前で、弾丸が破裂する。

閃光が辺りに広がり、一時戦況が見えなくなる。

「確かに、お前の言うとおりだったぜ! お前はオレのライバルにもならなかったぜ!!」

「ぬかせ。お前という人間は、『防御』という言葉を知らないのか?」

「なに!?」

キリは驚きの声を上げた。

確かにシュンの機体に弾丸は直撃した。

しかし、シュンの機体には傷ひとつ負っていなかった。

「あいにくだったな。そんな攻撃では、この機体は傷つけることは不可能だ」

「それでこそ、オレのライバルだ!!」

「今度はこちらからいかせて貰う」

そういうと、シュンの機体からミサイルが発射された。

「このくらい……」

とキリが言いかけた時、ミサイルはキリとは別方向へ飛んでいった。

キリは一瞬、相手の手が分からなかったが、すぐに察した。

そして、飛んでいるミサイルを、自分のミサイルによって爆破させた。

「よく分かったな。母艦を攻撃しようとしたことが」

シュンは「闇雲に攻撃してるわけじゃないんだな」と、心の中で思った。

「なかなかやることが汚いじゃないか!!」

「汚い? これは戦争なんだぞ? きれいな戦い方があるか」

「これは、男と男の戦いなんだぞ!!」

「じゃあ聞こう。お前は何のために戦ってるんだ?」

「大切なものを守るために決まっているだろう!!」

シュンの問い掛けに、キリは瞬時に答えた。

「ふっ。そういうことか……」

「何がおかしい!!」

キリの挑発に、シュンは言葉で応じなかった。

その代わり、キリの機体へ向け、ミサイルを発射した。

今度は軌道を外れることなく、キリの機体へ向かってきた。

キリは迎撃しようとしたが、ミサイルは目の前で破裂した。

同時に、辺りにまばゆい光が立ち込める。

「閃光弾かっ!!」

キリはとっさの判断で目をくらますことはなかったが、一瞬だが隙が出来てしまった。

その隙をシュンは見逃さなかった。

キリは再び戦闘態勢に入ろうとした瞬間、あることに気がついた。

シュンの機体から伸びるアームで、自分の機体が押さえ込まれているということを。

「残念だが、これで終わりだ」

「それはどうかな?」

キリの機体から、無数のミサイルが発射された。

アームで固定されている以上、身動きは取れない。同時にシュンの機体へは直線で繋がっている。

アームを開放しない限り、ミサイルの直撃は避けられない。

だが、そのような隙は与えられなかった。

シュンの機体にミサイルが全弾命中した。

「危ないところ……」

と言いかけ、キリは目の前に迫ってくるアームの存在に気がつく。

キリは避けようと機体を動かそうとする。だが……

「なぜ……なぜ動かないんだ!!」

キリの機体は全く動こうとしなかった。

周りを見ると、そこには先ほどと同じ光景、シュンの機体から伸びるアームで押さえ込まれている自機の姿。

「嘘だ……そんなはずは……!!」

そして、迫ってくるアームが、キリの機体を貫通した。

「言っただろう。『防御』という言葉を知らないのか。と」

シュンの機体は、防御シールドに覆われていた。

実は、キリの機体を捕らえた時、目には見えない防御シールドを既に貼っていたのだ。

そのため、キリが攻撃してきてもうろたえることなく、キリに攻撃することが出来たのである。

「お前は大切なものを守るために戦ってたんだったよな。俺は違う。勝つために戦ってるんだ」

シュンの言葉に、応えるものはいなかった。


(終)

◎質問者からの返答

うわーいうわーい。一番乗りおめれとうございますー。

感想文は締め切った後に書きますのでよろしくですわ。


2 ● duke565
●14ポイント

『狐舞い降りて、OKINAWA』

1985年4月。沖縄本土決戦始まる。敵国総兵力55万に対し、牛島中将率いる沖縄守護隊は10万。干戈を交えるまでもなく、結果は明らかであった。

市街戦の跡地。一人の少年が、自分の生家であった廃屋の中で膝を抱えて泣いている。

「父さんも母さんも死んじゃったし。僕も死ぬのかな」

戦災孤児の少年は空を見上げる。雨が降っていた。しかし日も照っていた。狐の嫁入り現象。

その雨雲のはるか上空を巨大な飛行機が飛んでいる。今まで見たこともない馬鹿でかい飛行機。そして、そこから大きな雨粒が降りてくる。

少年はその「大きな雨粒」がはっきり目視できる距離まで落ちてきた時、ようやくそれが「人間」だと分かった。

次々に地上に降りてくるパラシュート部隊。その顔には白狐の面。その腰には大小。白銀色を基調とした戦闘服。9匹の白い狐が群れを成して降下してきた。異様な妖気が昇る。

少年は戦闘服の腕に印された「大日本帝国」の文字を見て、敵ではないと判断し近づいていく。現実離れしすぎたせいであろうか。不思議と恐怖は無い。

「お稲荷さんですか?」

隊長格の狐面の男が少年の問いかけに気づく。

「白狐隊、推参いたしました。今までの苦戦苦闘、誠にご苦労様でございました。これより戦闘を終結させて参りますので、どうかご安心を」

白狐隊の男はそう言うと、腰に下げた刀をガチャリと鳴らした。

「そんな刀で闘うの?」

「我ら白狐隊は刀の道を究めし者ども。戦に臨みては、己が刀こそが必殺必勝の武器であります」

「勝てっこない!」

少年は叫んだ。

「あいつらの機関銃や火炎放射器には勝てっこない!勝てっこないんだ!銃を持った兵隊さんも皆殺されちゃったんだ!死んじゃうよ!」

少年の言葉を聞いて、狐面の男は面を外した。傷だらけの男の顔が現れる。男は少年の目を見て言った。

「坊ちゃん。死ぬ死なないの話ではないのです。いいですか、坊ちゃん。既に我々は「死」を覚悟し「勝」を信じてこの場に立っている。覚悟し信じた後に、為すべきことは一つ。戦い、殺し、殺されるのみ。血の大河を渡り、死の荒野を走るのみなのです」

男の澄んだ瞳は何も映していなかった。人殺しの目であった。しかし、少年には何故か温かく感じた。

「でも……」

「ふむ。まだ心配と見える。何がそんなに心配なのですか?機関銃が当たったら死ぬ。爆風が直撃すれば吹き飛ぶ。本当にそうなのですか?答えろ、伍長!」

「はっ!そんなことを聞いた気が致しますが、実際にやってみないことにはわからんであります!」

「では本当にこの戦は負け戦なのですか?答えろ、兵長!」

「はっ!どうやらそのような雰囲気ですが、実際にやってみないことにはわからんであります!」

「わかりましたか、坊ちゃん。このような愚かに死に行く我らのことは気にせんでください。坊ちゃんは自分の「生」を覚悟し、信じ、生きていればよいのです。坊ちゃんは坊ちゃんの戦争を戦いなさい」

そう言うと狐面の男は自分の脇差を少年に手渡した。

「御武運を」

9人の狐面の男たちが一斉に刀を抜き、天にかざした。雨が刀身を濡らし、陽光が刀身を輝かせる。少年は刀の林にしばし見とれた後、狐面の男の目を見て

「……ゴブウンを!」

と叫び、走っていった。その目には少し涙が光っている。

「なかなかいい面構えの坊主でしたな、少尉殿」

狐面を被りなおした男に、隣の狐面が言った。

「うむ。凶事を為す前のいい清めになった」

「では少尉殿、参りますか。敵騎55万のもとへ」

「55万。一人当たり6000人弱か」

「6万人弱です」

「ははは、素晴らしい!では征こう!敵軍に死人の手管を見せつけに征こう!」

沖縄の戦場を刀を帯びた9匹の狐が征く。陽光照る霧雨の中を。

零戦・回天に次いで開発された日本軍最終兵器のことを知る者は少ない。既に戦場の花形は機関銃となり、近代戦闘において役に立たなくなった剣術・体術。その道の達人たちの肉体をサイボーグ化することによって、接近戦における絶対無敵を可能にした少数部隊が存在した。前時代の亡霊である彼らを、人は「会津白虎隊」にちなんで「白狐隊」と呼んだ。

沖縄本土決戦。戦死者19万人。その中に狐面の侍たちがいたかどうかは、記録には残っていない。

(劇終)

好きなモン全部特攻んだら、「求められてるもの」とだいぶ違うものになってしまいました。イメージの根底にあるのはコレね→http://www.youtube.com/watch?v=vFm6bH6PfD0]

◎質問者からの返答

きゅんきゅんしました。超せつない系です。

感想文は後で書きますです。


3 ● crow_henmi
●13ポイント

題名「最後のダンクシュート」

北極圏上空で、ブースターを切り離した。漆黒の空、白銀の機体から、ふたつの白い円筒形の物体が切り離される。

「最終加速終了。これより弾道飛行シーケンスに移行する」

『――了解。幸運を祈る』

ノイズ交じりの声に、ジッパーコードで応えた。すでに交わす言葉は必要ない。なすべきはただ、任務のみ。

冷戦は唐突に終止符を迎えた。ユーラシア連邦の戦略核システムが、突如環太洋条約機構の全戦略目標に対し、同時無差別熱核攻撃を加えたことにより。わずか30分で3億人が蒸発し、倍する人間がほどなく死んだ。俺の愛する妻と子。ささやかなマイホーム。一緒に野球を見に行ったヤンキーススタジアム。帰りがけに飯を食ったマクドナルド。何もかにもが燃え上がり、一緒くたの灰となって降り注いだ。

何が原因だったのかはわからない。ただ確実なのは、自分の故郷、そして祖国が、愛すべき全てのものが消滅し、今はただ核シェルターに避難したわずかな人々が生き残っているだけということ。それは「やつら」もそうだろう。それでも――いや、だからこそ、自分はこの任務を成功させなければならない。有人極超音速攻撃プラットフォーム、XF/B-03による、敵司令部撃滅。この地獄めいた茶番に打つべき終止符を。

戦術データリンクを開く。ディスプレイに表示された目標――シベリアの奥深く、ユーラシア連邦の戦争指導部が篭る国家戦略指揮所「ジグリ」。熱核飽和攻撃にも耐える巨大な岩盤と、それを取り巻く無数の防空コムプレックスにより守られた、無敵の要塞。通常ならば突破は不可能。だが、XF/B-03ならば、不可能を可能となしえる。いや、可能にしてみせる。

手駒を確認。ウェポンベイには極超音速AAM、FMRAAM2が12発、周辺制圧用の50kt戦術核4発、そして大本命、地下貫通型6Mt核弾頭が1発。これをジグリのど真ん中に叩き込めば、任務は成功だ。その分厚い岩盤ごと、やつらは蒸発して成層圏まで吹き上がる。全系統異常なし。

すでに北極圏を過ぎ、シベリアのタイガ上空を降下している。上層大気との接触で機体は赤熱し、全てのセンサは沈黙する。もっとも危険な瞬間。しかし現在、ジグリ周辺には条約機構の残存核戦力が飽和攻撃を仕掛けているはずだ。無数のダミー弾頭と露払いの戦略核を迎撃することで手一杯な奴らが、このタイミングで迎撃をしかけてくることはありえない。あるとするなら、成層圏に入ってからだ。

成層圏に入った。途端に警報。SAM8発、相対速度マッハ6で接近。FCSを対空戦闘モードに切り替え、FMRAAM2を8発発射し迎撃。同時に操縦桿を倒し、6Gでブレイク・スターボード。全身にのしかかる過重。暗くなる視界。敵SAMはことごとく迎撃ミサイルによって撃破。爆発の衝撃が続けざまに機体に伝わるが、機体に異常はない。そのまま機体を切り返してSAMサイトに戦術核を投下。次弾射撃準備に手間取っていた敵SAMサイトは、閃光と共に消滅。立ち上がるキノコ雲を掠めるように、ジグリへと機首を向けなおす。

が、気を抜く暇もなく新たな警告音。特徴的なフェーズド・アレイ・レーダーのパルス波は、敵の超音速迎撃機、MiG-31のものだ。機数4。相対速度マッハ5で接近中。敵がミサイルを発射。即座にECMを展開しつつ、迎撃機に向けてFMRAAM2を4発発射。あえて機首はそのまま、ヘッドオンで突っ込む。奴らの弱点はミサイル誘導を母機に頼っていること。母機さえ撃破できればミサイルはあさっての方向に飛んでいく。

「雑魚にかまっている暇はない!」

たちまちにしてMiG-31全てを撃墜。母機を失ったミサイルとすれ違うようにして突進。事前の飽和攻撃が効いているのか、敵の防空網は脆弱だ。これなら突破できる――そう思った瞬間、機体の表面温度が瞬く間に危険値へと跳ね上がる。

「――レーザーかっ!!」

ジグリ防衛の要、対衛星・対空レーザー兵器「サリシャガンの虎」。光の速度で目標を捕らえ、莫大なエネルギーをコヒーレント化された光波に乗せて叩き込むフライシュッツ。この前ではいかなる弾道ミサイルも爆撃機もただの的でしかない。対策はひとつ。叩かれる前に叩け。ジグリを三角形状に取り囲む敵レーザー陣地3基に対して戦術核を3発投下。同時にブレイク・ハードボード。大気圏再突入時、6000℃の高熱にも耐える腹部をあえて曝すことにより、時間を稼ぐ。貫かれる前に目標を殲滅できるか、それとも貫かれるのが早いか。

機体温度3000℃――4000℃――5000℃――そして閃光と衝撃。機体が木の葉のように吹き飛ばされる。回復した視界から見れば、立ち上るキノコ雲が3つ。機体状況を確認。レーザーによる加熱と核の爆風、そしてEMP効果で、ほとんどの系統が死んでいる。エンジンももはや気息奄々の状態だ。もはや水平飛行もままならぬ。しかし、機体中央に厳重に格納された決め弾だけは、まだ正常に作動する。

「よし――往くぞ」

予備系統を起動し、もはや丸裸になったジグリを目指す。見えた。大地に根ざす、直径数km、高さ100m以上の巨大な岩盤。あの奥深くに奴らが――俺の、人々の大切なもの全てを奪った連中が、のうのうと自分たちだけ生きながらえている。それを思うとトリガーが震える。しかし誰のために? 自分のためなのか、生き残ったみなのためなのか、それとも失われた全てのためなのか。どちらにしても、今やるべきことはひとつ。

「ダンクシュートだ、糞野郎!!」

トリガーを引き絞る。コンフォーマルウェポンベイから必殺の一撃が切り離され、岩盤の中心へと吸い込まれていく。もはやその威力圏外から脱出するすべを、この機体は持たない。だがそれでいい。全てを失ったものが、全てに終止符を打つのだから、いまさら生き残ろうとは思わない。

「俺は、やりとげた――やっと、全てを終わらせた」

それが最後の意識だった。

(終)

えと、シューティングゲームを意識したので雑魚>中ボス>ラスボスと展開したかったのですがなんとなく挫折。すみません。なんか実名兵器とか出てきますがフレーバーです。ネタ的にはメカデザイナーの宮武一貴氏が同人時代に書いてた小説「スーパーバード」をインスパイアした多分1.5次創作くらいです。多分ほとんどの人が読んでないと思いますが念のため。

◎質問者からの返答

はふん。うっかり燃やされるところでした。ぎゅんぎゅんです。

感想文は後ですわー。うふっふ。


4 ● tophel
●13ポイント

『魔法の言葉』


どの時代にも、英雄は存在する。彼らは現地調査という名目で豪遊し、税金を無駄に消費し、霜降り肉や蟹や海老を好む。女性の好みは多岐に亘るが、当然顔面暗黒星団なメスには興味を示さない。彼らは自分の人生が有限だと知りながらも、その満ち足りた生活に慢心し、自分たちに敵はいないと思い込んでしまう。

「ヘイ、ジャック! 今日はどこの銀河系に行くんだい?」

「ヨー、トム。本日は田舎怒田舎それいけ田舎、棒渦巻銀河だよ」

「エリダヌス座? ちょうこくしつ座?」

「ノンノン、ハイソでグラマラスでチーズ臭い女がいっぱいいる場所さ!」

星と星との距離は、数値で表すことができても、それを実感することは難しい。狭い四畳半の部屋に引きこもってレンタルアダルトビデオを見ている途中、そのビデオの返却日がとっくに過ぎていると気づいたとき、自宅からビデオ店のわずか五百メートルほどの距離がこの上なく煩わしいように、英雄ジャックとトム、彼ら地球育ちのヒューマンたちが銀河を横断するために用いた手段の最中、居眠りをしはじめたことに誰も非難することはできない。自らの足で歩めない海では、眠ることが最善だとかの哲学者アンソニーも著書の中に残している。『進めど進めど宇宙は闇。恒星も超文明惑星も、海から見ればただのプリン。だったら夢の中でジェニファーちゃんとムフフなことをしていた方がマシである。されども、目覚めたとき、眠る以前の地位を保っていたいならば魔法の言葉を忘れてはいけない。この本の内容を夢に見たとき、それはおぬしらが魔法の言葉をつぶやくのを忘れたことに他ならないことを、肝に銘じるように』と。そして、ジャックとトムは見事にアンソニーと対話を果たし、目が覚めたとき、超空洞の中でバイパス工事に着任していた。現場監督のG・Tは罵声を浴びせた。

「地球人さっさと働かないと飯食わせねえぞ! おら、ちゃんとボルトは四点固定すろ! 違う、ちゃう! こう、こうだよ、んだよ。んあー! その砂利は最後に撒くの! ほげな使えない二足歩行馬鹿やなぁ」

ジャックとトムは銀河帝国における未開発地域の探査を担当していたが、その資金を不正に利用したため、超銀河団という皮膜の中に存在する空洞での公共事業に参加させられた。光よりも速い速度で居眠りをしている最中、監査委員の大型甲殻類式宇宙船に捕まり、たんまり性的な意味での拷問を味わい、こうして冷たい宇宙の穴倉で泥ならぬ汗臭いオヤジにまみれて働いているのだ。

「魔法の言葉を忘れたせいか?」

「そうだろうな。あ、そこのシャベル取って」

「うん」

地球でいうところのザリガニのようなパワードスーツを着用し、二人は働き続けた。女を抱けない酒も飲めない賭けもできない生活は、まさに無限光にも等しく、終わりは限りなく宇宙そのものといえた。まどろんだ感覚はいつしか巨大なバイパスを生み、さらに見事な観客席を完備し、ポップコーンとソフトクリームを売る売店があちらこちらに目立ち始めた。現場監督のG・Tが完成予定図を久方ぶりに見たとき、此度の工事が大きく異なった設備を生み出したことに気づいた。超空間通路という庶民のためのバイパスは、二人の英雄の業績により、いまだ銀河帝国に属する知的生命体以外が生息する空間と隣接する狩場と化していたのだ。さらに、観覧席付きのである。

「おれたちは何を作ったのかな、ジャック?」

「さぁ? 鈴鹿サーキットより綺麗だからいいんじゃないかな。それより、ようやく奴隷身分から開放されるんだ! 地球行こうぜ」

「イクイク!」

これが、現在汎宇宙空間において最もクレイジーでジャポーネでハイスピーな祭典、カロッゾレースを生んだジャックとトムが確認された最後の場面の会話である。


ドットレベルの熱狂。ワンセクションの狂喜。ワールドワイドなオッズ。スターライズフェロモン。選ばれるのはわずか十機。その位を頂点にしたピラミッドは星海のエゴと自尊心の固まりであり、その銀河星団チャンプたちの血で描かれたものだった。たった一人、たった一騎の超時空戦闘機でヒューマンの繁栄を生み出したカロッゾの名前を戴いたラフディスポーツは、十五歳未満は視聴禁止のアダルトカテゴリーで放送されていた。

「GreenCobraの後方二千六百二にWhiteLord占位! たまらず珊瑚の中に突っ込んだ!」

時給三千万デレという高給取りである実況が中継する中、星すら飲み込む円形筒の中に存在する薄い粘膜で電子の妖精たちが組み上げた珊瑚礁の中に、緑の戦闘機と純白の狼が機首を中継カメラと垂直に交わらせながらパワーダイブしていった。派手に波しぶき代わりの血結晶が砕け散り、視覚的に狼の攻撃性を示した。カロッゾレースを取り仕切る企業のスタッフルームでは、視聴率の跳ね上がりに腹芸を見せる社員がいるほどだった。

「ブレイク。スターボードだ」

「駄目だ。どうやら誘い込まれたらしい」

「糞! アーリーデメの繁殖期か」

GreenCobraのタンデムの中で罵声が三つ上がると同時に、限りなく赤に近い卵が一斉に孵化しはじめ、結晶の中に赤く血走った眼球を盛んに動かすアーリーデメの大群を産み出した。数にして師団クラス。黒い師団長がすぐに統率指令を出し、子機が隊列を整えていく。カロッゾレースの真骨頂である、戦闘機同士の狩り比べに誘われたのだと、GreenCobraの戦術コンプは判断した。すぐさまオートマニューバ。アフターバーナのバルブを強制開放し、操縦者の生命を無視した機動を行う。大G運動により、後方に位置する白い狼を振り切りつつ、前方に展開する魚群をすり抜けようとする。

「おああっと! これは卑怯な戦法だ、コブラ。見る見るうちに人気指数が低下していく。これはレース後のインタビューで解雇通知を受け取る表情を撮影できそうです」

「いやぁ、その前に狼がエンゲージしましたよ。これは堕ちるでしょう」

「解説のクリフさんの言うとおり、WhiteLordが攻撃宣言。操縦桿から手を離したコブラを挑発するようにシザーズシザーズ! まるで両翼から挟み込まれるような感覚に陥るという、まさに歴戦の技! 満員トロッコから弾き出された豚のようにコブラが錐揉みしながら吹っ飛んだ!」

機械の世界が可能にする機動を、狼はヒューマンの操作によって実現していた。噛み締めた胡桃の苦味を感じつつ、狼の操縦者はマスターアームオン。ひび割れ、お粗末にもガムテープで補強したストアコントロールパネルに武装が表示される。RDY GUN。それだけの文字。それ以外は、すべて惰性と切り捨てた。狼は牙を研ぐより、自らの筋肉を信じる。

「撃墜する」

狼の声。同時に、コブラは独楽のように回転し、狼とヘッドオン。レースの勝利より生存を選んだ。逆走行。バイパス内にイエローシグナルが点灯し、正しい順路へと誘導するべく小型のフラッグカーが筒の外壁に点在している倉庫からゆっくりと現れた。ヒューマンが見たら職務怠慢だと叫びそうな鈍重な動きで、ギョロ目魚の群れに紛れる。

「溺れないようにな」

短く別れの言葉を吐き、狼――マーフィーは眼前に迫ったコブラのタンデムに照準を合わせた。よどみなく、超高速射撃管制システムが作動し、秒間五百発を叩き込んだ。機関部への直撃なし、ただヒューマンだけを殺し、コブラという機械は生きたままフラッグカーの網にすくわれた。その間、狼は前方から降り注ぐ破片群を回避するために高機動。ほぼ筒内で垂直に機首を上げた状況で珊瑚礁から離脱。珊瑚が眼下に広がるのを確認し、上壁にタッチするかのようにヨーイング。時機に迫ってくる魚群を受動センサーで電子照準。迷うことなく射撃。スプレッド状に降り注ぐ弾丸に、目玉が黄色い液体を撒き散らせながら死んでいく。

「少し数が多いな。それに」

マーフィーは残弾を確認しつつ、毒液を吐き出す敗戦者たちに粒子を吹かせつつ、センサーの感度を高めた。後方より青。

「若いなりにがんばるじゃないか。そうでないとトロフィーを棚に飾る意味がないからな」

狼は右の翼を欠いていた。今回のレースで負傷したのではなく、マーフィーが機体を発掘したときからである。操縦桿をニュートラルに固定すると、狼は回転しはじめる。まるで、回転することが宇宙で溺れないために必要だと言わんばかりに。左に大きく丸みを帯びた翼があり、それが海流を斬る。電子装置でいえばジャンクにも等しいが、格闘戦においてはこれほど自慢できる機体はないと彼は自負していた。

「さぁさぁ、レースも後半戦。カッパゾーンを独走状態になった狼を追撃するのは残り四機。他の五機は先ほどのコブラのように、莫大な掛け金を飲み込んでコーラを飲んだときのゲップのように無意味に消えたァ! ここでコカ・コーラ社の宣伝です」

鮮やかなCM突入と同時に、観客席を取り囲むように建設された英雄が生み出した全天モニターには、純白を追随する青い翼を有した戦闘機が映し出された。機首から尾へと濃淡が変化していく青。首には白い塗装で、天狗、とパーソナルネームが刻まれている。そのタンデムの後方席で耳をぴこぴことさせる少女が呟く。

「ようやく捉えたて。さっさとせんとゴールしてしまうぞ」

やけに年寄りくさい口調で言うと、ずるずると音をたてる。

「お前がきつねうどんを食いたいと騒ぐからだ。おかげで一番単調なルートでゴールするはずがこのざまだ」

「若いうちは何事も経験しなくてはな。ほれ、あれだ。女子高生の百本斬りといか言うじゃろ」

「どんな変態だそれは」

操縦席の男の両腕には点滴を受けるような形でチューブが突き刺さり、それが座席後部に延び、きつねうどんをすする少女を通り過ぎ、双発の推進機器へと繋がっている。地球でいうところのアジア圏らしい顔立ちをし、彼は操縦席に響くうどんをすする音とコカ・コーラ社の油ぎったCMに頭を沸騰させながらアフターバーナを点火した。後方で汁を顔にぶちまけた音が聞こえたが、それを無視してWhiteLordに肉薄する。

「さぁて中継の再開です。レースも佳境ということですが、ここで本日めでたく十五歳となり、この美しくも生存競争の真っ只中で火花散らすカロッゾレースをはじめてご覧になる青年の諸君のために解説をいたしましょう。クリフさんお願いします」

「はいはい、このためだけにわたしは巡回バスに揺られ、こんな都会にまでやってきたんですからね。散々人妻のケツをこねくりまわしてストレスと戦って都会までたどり着きましたが、ほんとにここは空気が汚い。若いギャルは馬鹿みたいな金額を吹っかけてくるし、ほんとうにここは地獄です。あ、その目はなんですか? 何か問題でも。あら、なんで守衛につまみ出されるんですかわたしは? おーい、あれ? おーい」

「さぁ、性犯罪者を消したところでわたしから改めて説明を。公務員として汚職を指摘された二人の犯罪者が、その黒い汚点を帳消しにするかのように建設した巨大バイパス。ご存知の通り、我らが銀河帝国内に開通していない場所はないとされる超空間通路ですが、実に大きな問題を抱えています。モニターでご覧いただいている通路は、普段は通行禁止永久工事区画として封鎖されています。その原因は至極単純! 実はあの通路、縁起が悪いというかなんというか、未知の生物、そう先ほどのぎょろついた目を光らせた魚に代表される惑星海洋生物に酷似した知的生命体が存在する外海をも繋ぐ役割を兼ねてしまっているのです。そうです、はいはい。このレース、名目は大衆の娯楽レースという形ですが、実のところ、銀河各地から優秀なファイターを選抜し、こうやって外敵との生存競争を行っているというのが実情なのです。みなさまの食卓に並ぶ、魚。その中にはこのカロッゾレース運営委員会があの気色悪い魚型インベーダーを加工したものも混ざっているのです。あ、吐いても無駄ですよ。、まあ、危険物は混入されていないのでご安心を」

実況の小話が展開される最中、純白と青がモスグリーンの海草が群生する回廊に突入し、超銀河団をいくつか飛び越える。その間コンマ何秒であり、うどんのつゆを乾かす暇もない。天狗は狼を見上げるような形で位置し、その操縦者――ハイフォウはドックファイトを宣言。主翼の制御翼面が最適運動をはじめ、ロール運動をしつつ距離を縮める。マーフィーは自分よりも百歳近く若い青年を見定めるように航路を維持し、警告音を無視した。代わりと言わんばかりに全方位で電波を飛ばした。

「少し遅かったな。もうラストゾーンだぞ。わたしと同じ最終コーナーに仕掛けてくれたのはうれしいが、もう少し準備運動がしたかったと思わないか?」

マーフィーはヘッドディスプレイに映る影に注意を払いながら続けた。

「後ろのお嬢さんとベッドの中で視聴する側に居た方がよかったんじゃないかな」

「ほれハイフォウ、わたしが言った通りじゃろ。おぬしが対抗意識なんぞもっても無駄なんじゃよ。さっさと帰ってイチャイチャしようぜよ」

「ふざけるな! お前は後方確認でもしてろ」

「服の中につゆが染みるのじゃ。ちょっと一回サービスエリアに寄りたいのぉ」

「もう三度目だぞ! それにオミクロンゾーンにはコンビニもない。仕掛けるぞ」

短い宣言と同時に短距離ミサイルを選択。照準を人間でいうところの適当な状態で保持し、一気に狼を追い抜く形で急加速。増速した状態でレリーズ。両翼からそれぞれ二基ずつのミサイルが星の海に着水し、青い機体に付随する。自機の周囲に火薬庫を漂わせるという行動に、昆布だし臭い少女が叫ぶが、構わずハイフォウは後方から撃ちだされた二条の帯をサイドスリップして回避。

「おっと、狼と狐がふざけている間に第二集団も追いついた。誰もが敵意剥きだしだ! 特に、WhiteLordと兄弟機であるCrinaleの射線は激しい!」

マーフィーの視界に影がせり出る。禍々しい十三のナンバーと悪魔ファウタスのエンブレム。その黒光りする昆虫のようなフォルムに、黄色い蛍光色を輝かす死神。その首下には機動を邪魔する以外に価値を見出せないマニュピレーターがぶら下げられており、そこにはレース中に捕捉した口からレーザーを撃ちだすウナギが捉えられていた。単座の席にはテクノが鳴り響き、死神はジンキングしながら狼の上方へ消えた。さらに後方から敵機。

「楽隊EmeraldSwordの一番機が続く! まさに剣と形容するのがふさわしい形状が矢のように狼へ迫る」

爆音を轟かせながら、その無意味な音を纏いながら突貫してきた機体をマーフィーは背面でかわす。同時に上方から三条、それを撫でるようにスパイラル。しかし、最後に登場した黄色い機体が無造作に撃ち込んだ炸裂弾の煽りを受けて左翼の可変に損傷。不安定になった機動に、黒がウナギを放り投げ近接。が、そこに二基のミサイル。Crinaleは短距離ブースターを捨て、盾にする。着弾、その隙にマーフィーは胡桃を噛み砕く。ゲット。狼が黒い昆虫をデッド・アヘッド。

「ゴキブリは嫌いだよ」

照準なしでフルオート。

「黙れチャンプ」

Crinaleの操縦者はエンジン排気口を可変させ、腹を見せた状態で被弾。だが、そこに積載されたバルーンに命中しただけで、機体にダメージなし。バルーンからは幻惑用の塗料が飛び散り、狼は仕方がなくダイブ。速度を落とし、右斜め上方に一本の矢になる黒エメラルド黄を確認した。

「邪魔をするな馬鹿ップル」

「うぜーよチャイナ」

「青瓢箪」

徒党を組んだと思われる三機から、狼の撃墜を阻止しようとミサイルを撃ち込んだハイフォウに文句が飛ぶ。特に、黒い機体からとめどなく罵詈雑言が流れてくる。声音が女だからこそ余計に辛らつに聞こえる。

「はは、若いのに助けられたかな」

わずかに血の滲んだ味を忌々しく感じながらマーフィーは前方に注視する。

「ほれほれ、おぬしの余計な手助けのせいでチャンプが生き残ったぞ。どうするんじゃ?」

天狗の後部で少女が囃し立てる。

「うるさい。おれは自分だけの力でチャンプに勝ちたいんだ。別に殺し合いをしてるわけじゃない。それに――」

ここでハイフォウは一拍置き、

「あのCrinaleのパイロットはババアだからな。気に食わない」

狼が演歌のボリュームを下げ爆笑した。釣られてエメラルドと黄も笑い出す。

「なんだか和やかな展開になってきましたが、このカロッゾレースのコースの中でもっとも過酷なオミクロンゾーン。フィニッシュゾーン直前には、あの凶暴で日焼けした釣り人が大嫌いなカジキマグロの形をしたインベーダーがたむろしています。その魚群を見事突破できなければ、そこで人生交信オーバーです」

黒の操縦者が甲高い奇声を上げながら狼に仕掛けたのと同時に、黒い空間に銀色の影がきらめいた。全機、フルスロットル。残り燃料をすべて燃やし尽くして加速。その矮小な戦闘機をあざ笑うかのように、カジキマグロ型インベーダーが尾びれを振りながら襲い掛かる。あまりの体格差に、モニターを見つめる観衆も息をするのを忘れたように沈黙する。しかし、その巨躯の威容が前座であることに、このカロッゾレースをはじめて視聴する子供たちは歓声を上げた。

「いっくぜぇ!」

「トランスフォームって感じ?」

EmeraldSwordが外部装甲を剥離させ、その網の目模様の肌を晒す。それがスピーカーを意匠したものと気づく間もなく、YellowSubmarineの機体が自機を含めた戦闘機だけを除外し索敵した空間に火薬球を撃ちだす。全方位に展開したその球を、エメラルドの筋を残す子持ちミサイルが追い、カジキマグロの眼前で炸裂した。黒い海に、鮮やかな花火が輝く。その隙間を縫い、二機は観衆が待つストレートを目指し駆ける。

Crinaleは狼を追いつつ、外部燃料を全投棄。その身軽になった機体を機動させ、巨大な腕でカジキマグロの顎をつまむ。そのヒューマンに対する蚊のような存在が、カジキマグロ型戦闘機械のマザーコンプを支配し、次々に同士討ちさせていく。あちこちで派手な火花が散り、哀れ投げ出された半魚人がWhiteLordに狙撃されていく。三点バーストで撃ち込んでいく狼の射撃は正確無比であり、それが高機動を維持しつつ、黒と尻を奪い合いながら行われていく様は圧巻だった。

その人外のパレードの中、唯一天狗だけが溺れかけていた。

「ほれほれ、置いてかれたぞ」

「黙れ! お前も手伝え!」

「いまは着替え中だから振り向いたら駄目じゃぞ」

「ふざけるな!」

痴話喧嘩の様相で千鳥足になる青い機体は、すでにカジキマグロの大群に囲まれていた。

「危ないのぉ。お、上から尻尾が」

少女の声よりも先に真っ赤に染まるモニターを見て、操縦桿に圧力を込める。しかし、あせり過ぎたため過度な負荷がかかり、機体は無様に泳ぐ。衝撃。警告音。右エンジンから喘息。

「おお、今度はダブルヒレアタックじゃ」

左翼が根元から折れる。安定機動を取ろうとするが、精神的なストレスで操縦桿がまともに操れない。ハイフォウの頭に死が浮かぶ。カロッゾレースがどんなに危険なものかを理解していたはずなのに、訓練生として優秀だとしても、この幻想的でありながら限りなく地獄に近い海がいかに人間を拒絶するかをようやく理解したのだ。何かが被弾した音を聞き、最後にマグロの顎を見たところで、彼の意識は光も速く夢へと逃げ込んだ。


ベッドの中でハイフォウが目を覚ましたとき、横に置かれた小型モニターには優勝トロフィーを掲げてインタビューを受けるマーフィーの姿と、若い女子アナウンサーの上半身だけが映っていた。包帯を巻かれた右腕をかばいながら上半身を起こすと、ベッド脇でピザをくわえたままフライトデータを入力している女性と目が合った。彼が看護婦かといぶかしんでいると、「ピザ食う?」とピザを差し出した。とりあえず空腹を感じていたのでピザを口に入れると、途端に重大なことに気づいた。

「あ、あの! おれと一緒に搭乗してた女性はどこにいますか?」

ハイフォウが切迫した表情で問うと、ピザを口に押し込んだ女性は沈痛な面持ちをし、首を振った。

「そ、そんなはずないだろ……。嘘だ、嘘だ!」

モニターの中で賞賛を受けるマーフィー。歴戦のパイロットにして、宇宙一速いとされる運送会社の専属CMモデルである。そんな英雄と張り合ったばかりに、大切な相棒を失ってしまった。そのあまりに馬鹿馬鹿しい落差に、ハイフォウは鼻腔をくすぐる昆布だしの匂いに耐え切れず涙を流した。相棒はうどんが大好きで、特にきつねうどんが好きだったと思い出すと、さらに麺をすする音まで聞こえてきた。気づけば少女の名前を連呼し、シーツを握り締めていた。

「恥ずかしいからやめい」

「うん……」

「ほれ、鼻水拭け」

「ありがとう」

手渡されたティッシュで鼻を拭うと、ハイフォウはピザを食べ終わって上官と最終確認をしている女性とは反対側を見た。そこには怪我一つなくうどんをすする相棒の姿があった。暢気に七味を足してかき混ぜている。

「死んだんじゃないの?」

「あほか。あんな魚臭い場所で死ねるか。あれか、墓標に釣り糸でも飾るのか」

「あ、いや、だって、な。おれたちマグロに食われたんじゃ」

「チャンプに助けられたんじゃよ。お情けでな。これからは自分のセカンドシーカーとして働けと言っていたぞ」

うどんを食べ終えた少女が車椅子を用意し、ハイフォウを乗せて病室を出た。彼が自分の怪我を尋ねると、どうやら彼女が中破した操縦席から出るとき、沸騰したうどんのつゆをこぼしたためによる火傷だということだった。あまりのくだらなさに彼がうなだれていると、長い歩行用エスカレーターの先に、巨大なドックが見えてきた。働き蟻のように整備員が動き、それを補助するために工業用機械が喚きたてている。その中心に居るのは戦闘機であり、その操縦者たちであった。

「ここは、どこだ?」

ハイフォウはその敬礼中の軍人の中に見知った顔を見つけながら少女に尋ねた。

「おぬしが参加したレース会場から繋がっている前線基地じゃ。ここで日夜魚型インベーダーと戦っているのが、目の前のおぬしの先輩たちじゃ。その偉人たちに喧嘩をふっかけおるに。ちなみにな、さっきの表彰式はもう二日前じゃ。いまはこうしてどのパイロットもそれぞれの指揮下で出撃する。おぬしみたいにピーピー夢の中でわたしの名前を叫ぶ暇はないのじゃよ、うんうん」

屈辱的ともいえる頭を撫でられるという行為にも反論できず、ハイフォウは歯を噛み締めた。と、そこに白い耐圧服に身を包んだ人影が三つ近づいてきた。

「威勢はよかったが、やはり若いな。若さが通用するのはベッドの上だけだぞ」

そうやって高笑いをするマーフィーに、

「へたれ」

とピザをくちゃくちゃとさせる女性。そしてその頭をぶん殴り黙らせる褐色肌の男性がいくつかハイフォウに励ましの言葉をかけた。ただ、ハイフォウ自身はその言葉をきちんと受け取ることはできなかった。本来、あの地獄に旅立つ彼らにこそ自分が声をかけるべきだと、あまりの情けなさに腹立たしかった。そんな陰鬱とした彼にさらに罵声を浴びせるピザ女がツインテールを掴まれながら引きずられていくと、残った狼はハイフォウの肩に手を置き呟いた。

「グッドラック」

それだけを言い残し、彼らは再び海へと挑んでいった。そこがどんなに過酷で、いかに溺れる存在を許さない場所かを知った上で。車椅子の上で、ハイフォウは拳を握り同じく呟いた。「グッドラック」、魔法の言葉。必ず会うと、再会を誓う言葉。その言葉の重さが、彼の瞳に再び青い炎を宿らせた。

「ほいじゃあ、早速反省会でもするかの」

少女が意地悪く頬をつねる。その痛みを感じ、ハイフォウは苦笑いを浮かべた。

◎質問者からの返答

きゃーきゃーきゃー。心のフォースフィールドがべんべん言いながら削れました。助けて!たすけてー!

感想文はのちほどっ…はふー…


5 ● 魔王14歳
●13ポイント

題「インドへの道」


「決めたよ! 僕はインドに行く! インド行って牛に乗る!」

たあ君は私の部屋に転がり込むなりそう叫んだ。

「インド? なんでインド? しかも牛」

「そりゃさゆちゃん、インドと言えば修行に決まってるじゃないか」

「だからなんで修行?」

従弟のたあ君は、修学旅行も嫌がる非行動的な男の子だったはずだ。というかアウトドア全般を憎悪している。そんな彼が、インドで牛とは何事だろう。

「僕は痛感したんだ、自分が口先だけの人間だったって。僕は無根拠な全能感に安寧していただけだった。中二病だった。無能なパンダに過ぎなかったんだ!」

「パンダ」

たあ君、また変な作家にお熱になってしまったのだろうか。この前も「神は死んだ!」とか読んだこともないニーチェを引用しまくってたし。

「で、具体的には?」

「じいちゃんに相談したら、任せろって言ってくれた。学校も一年休学して、じいちゃんとインドの山奥でみっちりシュウヨウを積んでシンタイセイを獲得するんだ」

「一年? 休学? え、うっそ」

今回はまた大きく出たものだ。私たちの祖父は、路銀も持たずに発展途上国を放浪するのが趣味の屈強な老人だ。通称【殺人!牛殺し】。思考にも少々エキセントリックなところのある祖父ならば、たあ君の一時の「思いつき」も全力で実現させてしまうだろう。

「僕はやるぜ! インドア派からインド派へ転向だ! 待ってろよ牛の群れ!」

とか言ってるが、でもこれはこれで良いかもしれない。何か勘違いをしているたあ君だけど、なにせインドだ。三日で帰りたいと泣き出すだろうが、あの祖父は赦すまい。インドで牛糞にまみれて嫌でも一年、それは人間が成長するのに十分な環境と時間だ。カラ悟りなんてたちまち抜けてなくなろう。

一年後のたあ君を想像してみる。何があっても一人で生きていけるだけの逞しさを身につけて、彼は戻ってくるだろう。バイトの面接なんかでしどろもどろになることもなく、誰とでも堂々と接することのできる人間になっているのだ。無闇に他人を見下したり、受け売りの知識をひけらかすこともなくなる。だってたあ君は、そんなことをしないで済むだけの経験をしてくるんだから。

ふと思う。なんだ、そうなるともう、私よりも立派じゃないか。一年後の未来、凛々しくなって帰ってくる彼を見るのが急に楽しみになってくる。

「さゆちゃん、何にやにや笑ってるの?」

一人愉快に思っていると、今はまだ情けないたあ君が不思議そうに首を捻った。

(終)

シューティングもライブアライブも知らない私が空気を読まずに投下。

◎質問者からの返答

「牛のいるゲームは良いゲーム」と偉い人も言っていたとおり牛にときめきました。うわあいうわあい。

感想文はのちほどっ。


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