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ボクはゆうメイト。いつもおなじルートを配達し、同じ郵便ポストや最近はコンビニのポストからも「集荷」してるんだ。もちろん守秘義務はあるよ。だから、ここには書けないんだけど、ここ一ヶ月不思議な葉書が毎日ポストに入ってるんだ。おそらくひいきめに見積もっても小学校低学年の鉛筆の字。宛名は「くりやまみさちゃんへ」。差出人は不明。相手の住所も書いてないんだ。その葉書が毎日、二丁目の角のポストに入ってるんだ。もちろん、裏は見ちゃいけないよ。
でも「見える」こともあるよね。葉書だから。そこには、どうもその差出人の子の毎日の様子が短く書いてあるみたい。「きょうわくもがきれいでした。」「とまとがおいしかったです。」「みさちやんのゆめをみました。」先輩の配達員の人に聞いたら、そういうのはとりあえず局で保管して、一定の時期がきたら処分だよ、と教えてくれた。お節介と思いながらも、自分なりに「くりやまみさ」ちゃんを捜してみたけど、この街の子ではないらしい。お休みの日の「創作はてな」です。よろしければ、続きをお願いします。(コメントがつけられない設定でしたので再質問しました)

●質問者: aoi_ringo
●カテゴリ:生活 人生相談
✍キーワード:お節介 はてな はと ゆうメイト コメント
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 10/10件

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1 ● fdskaf
●15ポイント

探してもみつからない

誰だろう・・・

くりやまみさちゃん。。。

とある日、集荷の際に、偶然にもはがきをポストに入れる小学生に出会った。

そう。

あのはがきの差出人だ。

でも僕は、何も聞かなかった

聞いてはいけないと感じたのだ

今でも解らない

そのはがきと、そして、あの子の思いは。


2 ● ElekiBrain
●30ポイント

僕はその葉書を見て、どうしても届けたいと思った。なんで届けたいかって、その理由は特にない。使命感? いや、そんな大したものじゃない。僕はこの歳になってもゲームが大好きだったから、その手紙の謎をどうしても解き明かしたい、なんて思ったんだ。僕はコンビニの前にある赤いポストの鍵を開けると、そこから大量の手紙を取り出した。普段、こういった仕事をしていて、特にそれらの手紙を見ることはない。当たり前だ、入っている内容は大抵機械にかけられ、自動で判別されるのだから。

しかし、その日目に付いたある葉書は少し違った。袋の上のほうに置いてあったそれをなんとなく手にとって見ると、差出人が書かれていない。そして、宛先も。不審に思ってまじまじとそれを観察したが、どうも、わざとなのか、それとも単に作文の才能がないのかは知らないが、裏側に一行だけ文字が書かれているのだ。

「きょうわくもがきれいでした」

この葉書は必ず集荷の直前に投下されるらしい。最近のラインナップはこんな感じだ。

「とまとがおいしかったです」

「みさちやんのゆめをみました」

どうも、小学校低学年の子供が女の子に向かって書いたもののようだった。差出人不明なのだから、性別は分からない。そんなことが毎日続き、僕は気になってこの葉書がどうなるのか、正規の局員に聞いてみた。すると、こういった宛先、差し出し人不明の手紙は数日間の期間をおいて、破棄されるのだという。僕は、それはもったいない、という思いと、差出人に対する好奇心から、それらの手紙を自宅に持ち帰って保管するようになった。

ある日のことだった。毎日のように集荷するためにコンビニに向かい、夕暮れ時に鍵を開けて中の袋を取り出した。僕の期待通りにそれはあった。今回も一行の文字が書かれている。僕はそれを手に取ると、宛先と差出人を確認した。

僕の目が皿のようになった。

ある。

差出人は不明だが、宛先は確かにある。僕の心にクリアできないボスキャラを倒した時のような感動が押し寄せた。

「よし!」

心はやる気持ちを抑えながら、その日の仕事を素早いスピードで終えると、僕は帰宅した。どうせ届けるならば、以前から届いていた手紙をまとめて届けてあげたい。僕は帰宅した後も興奮が冷めず、そのままの勢いで、やりかけで投げ出したRPGに手を付けた。

が、相変わらずボスキャラに勝てず、深夜2時を過ぎる頃に、僕はDSを床に投げ出していた。ゲーム・オーバーのメロディーが耳元で哀しげな旋律を奏でた。




翌日、僕はカブ(原付)にまたがると、葉書に書かれている住所へと向かった。やっとシッポをつかんだ私は嬉々としていた。昨日のゲーム疲れはどこへやら、小さな神社の前を通り過ぎ、並木が流れる団地の丘を越えた。やがて、住所に書かれている場所へと到着した僕は、辺りを見渡した。

そこは、かつて一度だけ配達したことのある場所だった。空には太陽が燦々と輝き、アスファルトから陽炎が立ち昇った。書かれている住所の指示する場所へと、僕は歩を進める。この辺はまだ記憶に新しい。道に迷うことなくスイスイと歩いていたものの、ふとある想いが浮かんで立ち止まった。

この先に曲がり角なんてあっただろうか。それとも、大回りしてそこへいかなくちゃならないのか。

書かれている住所どおりに行けば、そこは行き止まりのはずだった。僕は不審な気持ちを抱きながら、葉書が指し示す場所へと向かった。

はたして、それはあった。見たこともない標識が本来行き止まりであるはずの場所に立っていた。まるで登山コースにあるような木製の板を加工したものだ。そして、行き止まりには見たこともない曲がり角があり、曲がり角の先には山がそびえて、看板の指し示す方向には洞穴があった。真っ暗な洞窟の先は全く見えない。

僕はカブを駐めると、おそるおそるその洞窟へと近づいた。いざ近づくと、遠くから見ていた時よりも大きく見える。僕は慎重に、その暗がりの中へと一歩を踏み出した。自然と腰は中腰になり、前屈みになる。やがて、しばらくすると、前方に蝋燭(ろうそく)の火のようなものが見え、それは両サイドに配置されているのが分かった。

目が慣れてくるに従い、僕の中腰の姿勢は解け、曲がりくねった洞窟をひた進んだ。湿気が酷く、時々落ちてる水滴が顔を濡らす。いくつも蝋燭が目の前を通り過ぎ、20分も歩き続けた頃だろうか、洞窟は直線になり、遠くの方に黄金色の光が差し込んでくるのが分かった。僕はなぜだかほっと胸をなで下ろすと、落ち着いた足取りで光の差す方向へと向かった。

トンネルを抜けるとそこは、という川端康成の有名な一節がある。当たり前だが、その先は雪国ではなかった。20分程度の距離感でトンネルを抜けた途端に雪国が広がっていたら、それはファンタジーである。だが、雪国ではないにせよ、その場所は驚くべき風景を眼前に展開した。

遠くには細長い煉瓦造りの屋根が立ち並び、小さな風車が風を受けて回る。所々にある花の生態はまるで現実味のない漫画のような形状をしていて、目と口があった。さらに遠方にはなにやらゲーム機らしきものが山積みにされていて、その裾野では男の子達がきゃっきゃっと声を上げてゲームにいそしんでいる。さらに、目の前を良くできた人形が通り過ぎて、僕に向かって自己紹介、ウィンクをして去っていった。驚く僕に間髪入れず、足下から声がした。

「やああ! いらっしゃーい。ようこそ『おやつ』へ」

ぎょっとして足下へ目を走らせると、そこには葉っぱで丸を描き、満面の笑みで微笑む“花”がいた。

なんだ、何が起こっている。あなたは誰? 誰ですか。

遙か彼方に虹が架かっているのが見える。

僕は酷く混乱した。そのままよろよろと歩き出すと、丘を越え、遠くに見える民家(?)へと、頼りない歩調で足を伸ばした。近くに薄暗い洞穴のようなものが見えたが、もう洞穴に入るのはごめんだった。ここ以上にクレイジーな世界に連れ込まれそうな気がしたのだ。やがて、数十分後、煉瓦造りの家並みが眼前にあった。それはどれも小さく、遠近法で眺めていたから小さく見えていた訳ではないことが分かった。

僕が近づくと煉瓦造りの窓に照らされていた明かりが消え、ゲームで遊んでいた男の子達は慌てて物陰に隠れた。僕はその変化に特に目を奪われる事はなかった。いまここで起こっている情景に慣れてさえいないのだ。ここにいる子供達がどうして遊んでいるのか、なぜ隠れたのかなんて、考える事すら出来なかった。

やがて、ぼんやりと歩くうちに、家が建ち並ぶ場所の中央に、公園のような広場を発見した。公園は噴水を中心として円形に広がっており、僕はその中心に向かって放心状態のまま歩き出した。どの家も低く狭く、とても住めるようには見えない。しばらく見渡していたその時だった。後頭部に熱い衝撃が走り、僕の意識はそこで途絶えた。




なにか、かび臭い場所で目を覚ました。じめじめとした石造りの壁面に苔が生えている。

時々足音が聞こえた。横になったまま顔を上げると、なにやら背の小さな人間がペタペタという音と共に通り過ぎてゆくのが見えた。壁の一部が切り取られ、そこに設置された鉄格子の向こう側に、その足は見えた。足音をさせている小さな人間は、長い棒を持っているようだった。柵の外にはわずかな明かりが見えた。時々明かりが明滅するのを見る限りでは、それはどうも蝋燭のようだった。

ここの情景から察するに、これは、牢屋のようだった。目の前の鉄格子がその証拠だ。僕はそれに気がついた瞬間に勢いよく起き上がった――つもりだった。起き上がる瞬間に後頭部に衝撃が走った。見上げると、そこには天井。まるで子供の背丈ほどしかない位置に天井があった。

「いってぇ」

つい、声を出してしまった。つい、というのは、何となくここで声を上げてはいけない気がしたからだ。

先ほどの足音が急速にこちらに向かって来るのが分かった。まずい、と思った。理由は分からないが、緊迫した様子が足音から感じられた。鉄格子の向こうで走ってきた人物は止まり、背をかがめると手に持っていた槍を突きだした。

「お前、どこから来た!」

しばらく静寂が包んだ。のど元には槍、しばらくその槍を見つめるしかなかった。やがて、ゆっくりと顔を声の主の方へ向けると、僕は拍子ぬけした。まだ、小学生低学年のあどけない顔がそこにあった。頭にはヘルメットがあった。

ヘルメット……。

僕は頭に手をやった。そう言えば、先ほど頭を打った時に気がつくべきだったが、ヘルメットがない。そして、目の前の子供が被っているのはまさしく……。

だが、相手が少年だと分かると、幾分か心に余裕が出来た。

「ああ、こんにちは、ところで、それは僕のヘルメットなんだけど、返してくれないかな」

しかし、少年はさらに槍をぐいと突き出すと、威嚇した。

「これは戦利品だ。そんなことより、どこから来た!」

とりつくしまもない。僕は仕方なく、今までの経緯を話した。僕がゆうメイトのスタッフであることも伝えた。しばらくは疑わしい目を浮かべていた少年も、やがて柵から槍を引き、興味深く僕の話を聞いた。

しばらくすると、待っていろ、とだけ言うと、少年は足音を響かせながら石段を駆け上がっていった。

僕は早速中腰で頭をぶつけないように鉄格子に近づくと、向こう側に手を回して、強引に木製の南京錠に手をかけて、力を込めた。それは予想に反して思っていたより簡単に外れた。仕掛けそのものが子供スケールであるらしかった。僕はどうしてか申し訳ない気分になった。自分の状況を専一に考える場面ではあったが、僕はその鍵をそっと元に戻した。そして、元に戻した数秒後に、石段を駆け下りる足音が聞こえてきた。

「おい、メイト、大長老様への面会が許されたぞ!」

どうも、僕に言っているらしかった。“メイト”とは、おそらく、“ゆうメイト”の事であろう。まあ、いいのだが。

やがて少年はいくつかの鍵をじゃらじゃらと響かせながら取り出し、物色した後、一つの鍵を手に取ると、南京錠に差し込んだ。

「へへ、これは俺様が作った特製の鍵なんだ。そんじょそこらの奴らには外せないんだぜ」

少年が自慢げに鍵穴に差し込まれた鍵を回すと、南京錠は開いた。やはり、先ほど鍵を元に戻した判断は正しかったらしい。僕はこの少年を落胆させたくはなかった。

それから、少年は牢の右手にある何かを動かした。ここからはよく見えない。すると、目の前の柵がせり上がってゆき、目の前からすっかり鉄格子は取り払われた。

「出てこいよ」

少年が言うので、僕は牢から這いだし、やっと背中を伸ば――すべきではなかった。やはりそこも子供スケールで、天井向かって勢いよく後頭部を強打した。その姿を見て少年は大声で笑った。頭をさすりながら周囲を注意深く見渡すと、天井からチェーンが伸びているのが分かった。それは滑車に繋がれており、引くことによって牢の柵が開く仕掛けらしかった。

少年は石段の方を指さすと、走って登っていってしまった。どうやらここから出られるらしい。私は極めて腰を低く構えると、階段を一段ずつ上がった。

やがて夜の星空が見え、細長い階段を抜けると、高台に出た。高台からは昼間見た、町らしき景色が見えた。地面に咲いている花たちがキラキラと輝いているのが見えた。ふと、足下から声がした。

「マア、ヤダわあ、あなたなんか悪いことしたのお。クスクス」

夜に輝く花の一つだった。もう、何を見ても驚かないようにしよう。僕は少年が手招きする方向に歩み始めた。時々踏んづけた草たちが僕に悪口を言った。

空には大輪の花火が休むことなく打ち上げられ、町の全景を映し出した。




あの公園に招かれた僕は、噴水の前にいた。メットの上から何かで強打され、気絶した公園である。周りには少年や少女が不安そうな面持ちでこちらを見守る。中世の兵士みたいな格好をした少年や、蛮族のような格好をした少年。マントを羽織ってヒーローに扮した少年や、お姫様のような格好をした少女、結婚式のドレスを着こんだ少女に、婦警の格好をした少女。思い思いの格好をした子供達が、僕を取り囲んでいる。少年達の大半は何らかの武装をしており、いくら子供とはいえ、ここで何らかの不穏な動きを見せるわけにはいかなかった。もちろん、そうする理由も見あたらないが。

しばらくすると、様々な姿をした子供達が十戒のごとく道を開いてゆく。そこに、牛乳瓶ほどもある度のきつい眼鏡をかけた、ふとっちょの少年が姿を現した。

ふとっちょは噴水の縁に登ると、手に持った杖を掲げて、高らかに叫んだ。

「諸君、今日は予言の日である」

周囲がざわめくのが分かった。長老、長老、という声がざわめきの中で聞こえる。とすると、あの牢の少年が言っていた長老とは、この少年の事なのか。横シマのさえないシャツを着て、短パンに半ズボン。どう見ても周囲の子供達の方がセンスがある。僕は隣にいた牢の少年の肩を叩き、小声でこう伝えた。

「あの長老さん、センスがない格好してるね」

すると、牢の少年はむっとした顔ですぐに返事を返した。

「馬鹿をいうな、あれこそが我々凡人が全くマネできない隠者のお姿。あのようになろうとしても、なかなかあのようになることはできないのだ。ああ、憧れる」

あれは平成のセンスではない。強いて言えばドラえもんに登場する少年の典型。まあ、確かにマネできないセンスといえばそうかもしれないが。

やがて長老は語り始めた。

「大人がこの世界にやってくる時、この世界の均衡は破れ、外の世界へ戻らなくてはならなくなる。それは先代が既に予言したことだ。この男は先代の予言通りに現れ……」

長老の声が止まった。

一度は止まっていたざわめきが湧き起る中、長老は噴水の縁から身体を揺らして降りると、僕の目の前に立ち、突然片膝をついた。

「おお、忘れもしません。そのりりしいいお顔。よくぞいらっしゃいました、この『おやつ』へ。我々をお導きください」

なにがなんだか。

周囲はの子供達は顔を見合わせ、不思議そうな顔をしていた。

僕はまたこんがらがってきた。まず、この長老がひざまずいたこと。そして、『おやつ』と言う単語。入り口に立った時に、喋る花もそんなことを言っていた。僕はこんがらがる頭をどうにかしようと、当初の目的を思い出す事にした。

ああ、そうなんだ、ここへは手紙を届けに来たはずなんだ。

僕は自分自身で用件を確認したが、どうにも歯車がかみ合わないような、すっきりしない気分になった。手紙を届けに来るという目的とは到底かけ離れた出来事が目の前で起こっているのだ。それも無理はない。ゲームのような展開を想像して、実際にゲームのような展開に見舞われると、人はこうも動転するものなのか。

僕の思惑をよそに、周囲では大合唱が巻き起こった。

「先代様バンザーイ! 先代様バンザーイ!」

やがて公園には速やかにテーブルが並べられてゆき、僕の目の前だけに大人サイズのテーブルが姿を現した。僕は少し不安になってきたので、長老に牢の少年を残すように伝えると、牢の少年は嬉しそうに僕のテーブルの横へと座った。牢の少年の目は輝いていた。

「なあ、君の事をなんて呼んだらいい?」

僕は牢の少年に向かって告げた。

「チッポって呼ばれます。小さいからです。あの、昼間は部下が大変無礼な仕打ちをいたしました。お体は大丈夫ですか」

先ほどと違い、少年は敬語を使っていた。僕はなんだかバツが悪くなり、

「いや、君とはもう友達だから、普通に、いつも通り喋って欲しいんだ」

と告げた。チッポの目が大きく見開かれ、嬉しそうに白い歯を見せた。

「うん!」

しばらくすると、テーブルには足の付いたチキンや、チョコがたっぷりと塗られているドーナッツが運ばれてくる。それらは無秩序に並べられ、鉄製の、まるで給食のような皿に盛られている。

「なあチッポ、肉が丸焼きになってるんだが、その、これはやっぱり、うーん。飼っているの?」

聞きづらかった。殺しているの? とはさすがに言えない。だが、チッポは目を輝かせたまま、まだ会食が始まってもいないというのに、チキンを頬張ってた。

「モゴ……ううん。飼ってるって? これはね、時々長老様が杖の力でこうやって料理を出してくださるんだ。モゴ……すごいよ、長老様の力は。でもね、どうしてか、モゴ……不思議なんだけど、その杖の力を使った明くる日に、鶏を飼ってる奴の家から時々鶏がいなくなるんだよ」

ああ、そういうことか。僕は右手にある小さなテーブルからふとっちょの長老に向かって手招きした。長老は慌てた様子でこちらに走ってくると、かしずいた。

「ああ、いいんだよ。楽にしていて欲しいんだ」

そう言うと長老は直立不動の姿勢でこちらを見据えた。どうリラックスしてくれといっても、長老はリラックスしてくれそうにもない。僕は小声で長老に向かって鶏の件を切り出した。

「はは、そのことでしたら、先代様に仰せつかった通り、秘匿にしてあります」

先代? そう言えば、さっきも先代がどうとか。

「すまない、先代って、なんなの?」

すると、長老はご冗談を、といって高らかに笑った。小学生の笑いにしてみれば貫禄を感じる。

「実はね、何もかも忘れてるんだ」

僕は思いきって切り出してみた。瞬時に長老の高笑いは止み、低い声でこう言った。

「そうでしょう。先代様はこの世界をお出になるときに、記憶を消してゆかれたのです。やがてここに戻られる事を宣言されて、杖を掲げて、洞窟を出て行かれました。我々はいくつかの暗号文を大人世界に送ることを約束しました。それに先代様は気がつかれた。それが――」

長老はポケットから手紙を取り出した。それは、僕が渡そうとしたあの葉書だった。

「この葉書です」

僕は言葉を失った。それはあの必死に家に戻っては保管していた、あの葉書だった。どうも、チッポが長老に手渡していたらしい。

「まず、この『くりやまみさ』ですが、『栗の山で開かれるミサ』のことです。この世界に入るときに、山に栗の木が生えていたはずです。ミサとは我々の世界が最後の時を迎える時に行われる儀式のこと。『きょうわくもがきれいでした』とは、『おやつ共和国』の雲が切れ、イデシが田に住み着く季節になると、先代様が現れる、という意味です。イデシとは、我々の心に住み着く不安のことで、虫の形をして夜中胸の中から入り込みます。『とまとがおいしかったです』とは十万十(トマト)のイデシが、生い茂るカッタ・デスを浸食するようになると、我々の生活も終わりに近づいているという意味です」

早口で長老は言い切った。

なんだ、こりゃ。下手なゲームのシナリオよりもできの悪い暗号だな。

僕はしばらく空を眺めて、考え込んでしまった。隣ではチッポがまだチキンを頬張っている。チッポは鶏がどこかで殺されているとは夢にも思わないのだろう。

「長老、世界の終わりって、どういう意味だ」

僕はとりあえず思いついたことを口にした。公園の中央ではフォークダンスが催され、楽しそうに輪を作ってみんなで踊っていた。花火が音を立てて上空を飾り立てた。

「分かりません。ただ、先代様が現れたということは、その日は近いと思われます」

花火が途絶えた瞬間、フォークダンスで足を引っかけた少年が床に転倒して泣き出し、ペアを組んでいた少女が背中をさすって慰めていた。




その日は快晴だった。いや、少なくともこの世界では、快晴ではない日などないのだろう。僕は山積みになったゲーム機の山に近づくと、そこで夢中になっている少年に声をかけた。

「よう、なにやってる」

遠くでは等身大のりかちゃん人形とおままごとをする少女が見えた。きっと、あの人形も、地面にある喋る草花も、長老の杖が動かしているのだろう。

それも、元々は僕が持っていたという。

実感が湧かなかった。それはそうだ。この世界の情景ですら受け入れることができないのに、僕が以前この世界で先代として君臨していた等と、どうして実感できようか。

ぼんやりしていると、突然元気な声が飛び込んできた。

「『鉄拳』ですね」

ああ、意外と最近のゲームもあるんだな、と僕は思った。見れば、がらくたのように積み重なったゲームの山には、結構な年代物のゲーム機もある。僕の世代にしか分からない、オセロビジョンなるゲーム機や、セガのSG1000シリーズ、ファミコンの残した唯一の汚点であるロボットまで置いてある。

きっとそれらが長老の杖で出現する度に、現実世界の子供達の家から、ゲーム機が消えて無くなっていたのだろう。あの鶏がチキンへと“変化”したように。

僕はしばらく彼らの相手をしてやると、彼らはとても興奮して、何度でも再戦をを申し込んできた。さすがに不得手なボンバーマンでは勝てなかった。

僕は立ち上がると、等身大のお人形ごっこに興じる少女達の元へと移動した。

「わあ、先代様、いらっしゃい」

少女は満面の笑みを浮かべる。彼女がいる場所は、巨大なりかちゃんハウスだった。エレベーターや、電動式の自動ドアが付いた本格志向だ。ただ、“彼女がいる場所”と言ったように、その規模が半端ではない。4階建てを貫くエレベータがひっきりなしに移動しては、彼女は人形とかくれんぼを楽しんでいるようだった。

この世界へ来たときに、ウィンクをした人形は、彼女だったのか。いや、人形に彼女というのも変な話だが。

しばらくその様子を眺めていたが、僕は何かが不安になって、その子に手を振ると、おもちゃの山を後にした。

やがていくつもの風車を越え、民家を通り過ぎ、公園を越え、小高い丘の上へとやってきた。牢への入り口がすぐ傍にあった。おそらくチッポはそこで見張りをしているのだろう。

僕は牢へと降りることなく、近くにあった木にもたれかかると、そよ風に髪をなびかせた。

突然、木の上の方から声が聞こえてきた。

「上からすみません、先代様」

ふわりと目の前に降りてきたのは、唐草模様のマントを首に巻き付け、横シマのシャツを着た少年、長老だった。

「ああ、君だったのか」

先代はひざまずいた。きっと、僕がその姿勢はやめてくれ、と言ってもやめないのだろう。

「なあ、長老、具体的に現れた兆しを教えてくれ」

長老は静かにうなずくと、杖で円形を描いた。そこには田畑の情景が映し出された。田畑は黒く濁り、そこから何か発生して蠢いている。

「イデシの大群です」

長老は厳しい目つきでそう言った。やがて他の場所の情景を長老は映し出した。

「既に、カッタ・デスの森はこのような状況です」

田から出たイデシがカッタ・デスと呼ばれる森林を好き放題に食い荒らしているのが見えた。

「そうか、分かったよ」

僕はただ、静かにうなずくと、遠くに見える町並みを眺めた。

「どうなさいますか」

僕の心は、この二日間の出来事で、すっかり疲弊しきっていた。なんとなくおざなりな気分になり、長老にこんな提案をしてしまった。

「とりあえず、その杖を使って、僕の記憶を蘇らせてくれ。もちろん、先代の頃の記憶だ」

言った後、少し後悔したが、長老は躊躇することなく杖を振りかざすと、精神統一を始めた。僕の目の前に、中学校の時、美術の時間に体験したマーブリング・コラージュのような世界が広がった。




僕は杖を持って大衆に何かを伝えていた。

「イデシは、我々の記憶に住む虫である。それは君たちが大人世界にいた頃の記憶だ。それは君たちにとっても必要な記憶だ。この世界に住むイデシは大人世界の問題を解決しなければ、全く解決しない。私は記憶を消し、あの大人世界の門を再びくぐろうと思う。もちろん、大人社会では時間という概念が私を包み込むであろうから、私は今の姿をしていない。いつか私はこの世界に訪れるだろうが、けして悲しまないで欲しい」

場面がノイズと共に移り変わった。

「君が今日から長老だ」




一挙に引き戻された。目の前には長老がいた。僕の頭の中にあらゆる記憶が蘇り、僕は目の前にひざまずく長老に涙を流しながら、声をかけた。

「お疲れ様。今まで大変だっただろう」

長老はまるで子供のように、という言い方も変なのだが、とにかく子供のように泣き出して、僕の胸に飛び込むと巨体を揺らして大泣きに泣いた。




それから、数日後だった。時間という概念が存在しないここで、数日後、という言い方も変なのだが、日が昇って月が上がり、やがてまた日が昇って、そういったサイクルを幾たびか繰り返した後に、それは突然訪れた。大地は割れ、そこからイデシの大群が姿を現した。

町は遭遇したことのない火事に見舞われ、りかちゃん人形は動かなくなり、ゲーム機の山は消え去った。チッポが勇敢に火を消す指導者となって辺りに指示を飛ばした。

僕は業火に包まれる公園の中心に立ち、長老から手渡された杖を握りしめ、空に掲げた。

この杖の原動力は、大人世界の夢。その夢が枯渇している証拠だった。この世界を保つ力はなく、この世界を保とうとすればするほど、大人世界は荒廃した世界へと変貌する。この世界を作った先人が何を考えたのかは分からない。きっと、その子はとてつもない想像力とイメージ力を持って、この世界を作り上げたのだろう。その手法は先代である僕にも分からない。

やることは一つだった。

掲げた杖の先から、多くの子供達の頭上に光が降り注いだ。やがて全ての子供達はその場に倒れ、大惨事の中深い眠りについた。ただ一人、長老にはその光を向けないように意識した。

さらに杖に意識を集中させると、杖の先端が欠け始めた。いよいよ、夢の結晶は消えようとしていた。裂ける大地はうねり、そこから巨大な都市が見えた。それは灰色の荒野を思わせた。

全てが消えゆく中、僕は眠る子供達を杖の最後の力で消し去ると、杖はまっぷたつに折れて地面に転がった。

やがてイデシの大群も見えなくなり、火車と化した風車は瞬時にかき消え、小さな煉瓦造りの家は次々と消滅した。

それが最後の景色だった。真っ白な空間に身を投げ出され、僕は上下感覚の分からない場所へと放り出された。まるでジオラマのようなあの世界は既になく、代わりに下の方に小さな穴のようなものが見えた。それは徐々に拡大し、薄汚れた街の上空を映し出した。凄まじい風圧が身体を貫く中、子供を抱えた主婦が必死の形相で何かを叫んでいるのが見えた。その主婦は「坊主先生」と叫んでいたようだった。

遠くから、金髪の外人が後を追っている。どちらも足がない。

遙か下に見える幼稚園には、なにやら坊主がお経唱えてる姿が見えた。ここは距離感の喪失した、狭間のような場所らしかった。僕の意識はそこで途絶した。




ゆうメイトは今でも続けている。あの頃の記憶は今でも時々思い出す。僕はあれからあの郵便物を見かけることはなくなっていた。それはそうだろう。あの世界はこの世にはもうないのだから。

コンビニの前でポストから袋を取り出すと、一枚の絵はがきが入っていた。僕はその手紙の宛先を探した。

2丁目の外れの方に、その家はあった。住宅街の鬱屈した空気にうんざりしながら、僕はインターホンを押した。程なくして、宛先の書かれていない葉書の差出人は姿を現した。子供だった。

僕はその子供に目も合わせず、手に持った葉書を手渡した。

だが、視界の片隅に、入ってきたものがあった。その少年は長いプラスチックの棒のようなものを持っていたのだ。僕は殆ど無意識に顔を上げていた。その少年は勝ち気な顔で、それでいて好奇心溢れる眼をしていた。手に握っていたプラスチック棒は、おもちゃの槍だった。

チッポ。

それはあの牢の番人、チッポだった。

もう記憶を失ったチッポは、僕の事が分からないらしい。

涙が、ふいに溢れた。

僕の目から流れた想いは、玄関にいくつかの跡を残し、チッポは、僕の顔を不思議そうに眺め続けた。

やがて、後ろから太った横シマのシャツを着た少年が現れ、僕に深々と礼をした。

「お疲れ様です」

太った横シマシャツの少年は、もう誰だか言わなくてもいいはずだ。僕はあの杖を振りかざした思い出を胸にしまい、二人の少年の前で、敬意を込めてヘルメットを脱いだ。

あの世界は消えてしまったが、おそらくこの大人世界は夢に満ちあふれたものになるだろう。僕たちは年をとってしまうが、それでも絶望だけはせずに生きることが出来るはずだ。あの子達は、世界中の夢を身体一杯に集めて、その体験を胸に、今から生きてゆく。 そしてやがて、世界の希望となるだろう。








おしまい














久々のファンタジーです。

多分、aoi_ringoさんだけが気付いてくれるであろうキャラクター達が終盤に登場しますが、単なる遊び心ですので、ストーリーに直接関わって来るわけではありません。

なお、今回は内容量は多めですが、込められたメッセージは

http://q.hatena.ne.jp/1163154756

の内容の方が遙かに重く、伝えたいものがこもっています。ですから、今回は完全娯楽として捉えてください(今回提出した掌編は、我ながら読みづらいんですよ。一応簡単に修正は入れたのですが。ちょっといつもよりクオリティが落ちますが、ご勘弁を!←言い訳)。

◎質問者からの返答

すごいです。途中で千と千尋の展開になり、あとは、まったく想定外の展開でしたがとてもたのしかったです。また楽しみにしています。おつかれさまでした。ありがとうございました。


3 ● ttz
●15ポイント

その頃。。。

くりやまみさちゃんは首を長くして待っていた。

全然葉書が届かない。

毎日書いてくれるって言ってたのに。

なんで?

あれはうそ?

それとも、他の人に届いてるの?

この街にくりやまみさは一人しかいない。

「栗谷真美沙」

漢字が書けるようになったら、ゆうメイトさんが探し当ててくれるだろう。。。

◎質問者からの返答

おもしろい展開ですね。

ありがとうございました。


4 ● sakura19749
●15ポイント

続き。。実はみさちゃんは、去年突然転校して行ったこのことです。

本当に突然のことで連絡先もおしえてもらえないまま、突然転校していってしまいました。

みさちゃんとは、毎日川に行ったり野原で花を摘んだりして(田舎)遊んでいました。すごく仲が良かったのです。

届くことがないはがきだとはわかっているけれど、

彼女は毎日届くことのないはがきを書き続けているのでした。

いつか会えることを信じて。

◎質問者からの返答

いいですね。

ありがとうございました。


5 ● tarou4649
●15ポイント

でもなにか気になってもう一回だけ探してみることにしました

まずはタウンページでくりやまという名字を探したけど多すぎて特定するのは難しい。

だけど二丁目の角のポストにはいっているんだからその家と同じ区内の可能性が高い。その区内を探すと一軒だけ見つかった。

たずねてみるとその家はもうなかった。隣の人に聞くと引っ越してしまったらしい。その人に住所を聞くと外国だった。

もうどうしようもないとわかっていながら、まだ気になってしまう。ということで今度は差出人を調べることにした。

この校区の学校に行き「くりやまみさ」と仲の良い子を聞くとすぐにわかった。その子の家に行き手紙を渡すと「なんでとどけられないの?」ときかれたので住所を書いてまた出してねといっておいた。

その後住所を親にかいてもらい出してきた。その手紙はちゃんと届けられたらしく返事が返ってきたみたいだ

◎質問者からの返答

よかったですね。

ありがとうございました。


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