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【人力検索かきつばた杯】
テーマは“叙述トリック”

創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
“叙述トリック”が出てくるオリジナルの小説や物語を書いてください。
叙述トリックの例
http://www.youtube.com/watch?v=-VMFdpdDYYA&ob=av2e
http://alfalfalfa.com/archives/390543.html

叙述トリックの説明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF_%28%E6%8E%A8%E7%90%86%E5%B0%8F%E8%AA%AC%29#.E5.8F.99.E8.BF.B0.E3.83.88.E3.83.AA.E3.83.83.E3.82.AF

かきつばた杯についてはこちらを参考に。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

●質問者: garyo
●カテゴリ:ネタ・ジョーク 書籍・音楽・映画
✍キーワード:オリジナル ショート ストーリー テーマ 人力検索かきつばた杯
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 7/7件

▽最新の回答へ

1 ● たけじん
●72ポイント

5回書けるんなら、とりあえずだしちゃえ。

叙述トリックの話

「水野さーん。起きてくださいよぅ。」

「な、なんだよ。さっきからカキ氷作ってる私が寝てるわけ無いだろ。」

狭い部屋は、夏はテーブルに化けるコタツと、その後ろの本棚でいっぱい。さっきから、パソコンを脇によけて、キティちゃんのカキ氷器でカキ氷を作っているのは私。元になる氷は、わざわざ取り寄せた天然氷。

「えへへ、冗談ですよ。ところで、叙述トリックって知ってま」

「皆まで言うな。はてなだろう?」

望月君は、イチゴミルクのかかった白い山をかき込みながらニヤリと笑う。薄気味悪い。

「叙述トリックね。」

「知ってま」

「って、ここで誰がしゃべってるかわからなくなるってのも、叙述トリックでしょ」

「いえいえ、これは作者の技量ですよ。」

「ま、登場人物の区別を明示しないのはアンフェアだなぁ。」

望月君は私を見て、おもむろに言う。

「じゃあ、ここで二人の趣味を語るってのは?」

「唐突だな。明らかに伏線を張っておきたいだけだ」

「いいから。水野さんの趣味って何?」

そう言いながら望月君は、結構な量のイチゴミルクを完食した。

「読書と映画鑑賞と音楽鑑賞」

「うわ、それって無趣味という意味では」

「趣味なんだからしょうがないだろ。この本棚の本とCDとDVDを見れば認めてくれるんじゃない?」

「まあ、いいでしょ。僕の趣味はウィンドサーフィンとスノボと自転車ですから」

「そりゃーチャラい趣味だな。全部続けてるの?」

水野君は、ちょっと後ろを振り向いて言う。

「やってますって。さっきも、そこまで乗ってきたんですから。」

水野君はボウルを差し出して、私に見せる。

「次は…そのブルーハワイってのがいいと思うよ。うん。」

コタツの端に並んだカキ氷のシロップの中で、右から二番目の青いボトルがブルーハワイ。だが、もう中身がほとんど無い。

「これは大事に取ってあるの。」

「まあいいでしょ。」

「自分で削ってもいない、お前が言うな。」

「いいもん。ちゃんと持ってるから。」

じゃーん、と言いながら望月君はブルーハワイのシロップを、コンビニの袋から取り出す。ボウルに盛られた白い山が見る見る青くなる。

「天然のかき氷には、青い色が似合うよね。うまそう。いただきます」

私は、自分の分をガリガリと削る。

「ねえ、水野さん。」

「ん?」

「ここで水野さんの性別が女性だった、ってのは叙述トリックになるのかな。」

「だれか予想してただろうけど。」

私は手を振って否定する。

「女性でもOKな書き方だが、引っ掛けようともしてないから、トリックと言ってはいけないんだな。」

「ということは水野さん、ここで別のトリックが進んでるの?」

私はブルーハワイのカキ氷を持って、頷く。

「君も気付いていないと思うが、叙述トリックは仕掛けられているのだ。」

「へええ。」

「ただ、問題は。このトリックが、たいしたことではない、ということなのだな。」

望月君が手を上げる。

「ちょっと待った。トイレに行って来る。」

望月君の姿がバタバタと慌しく消える。

私は、青いカキ氷を食べ終わる。

旨かった。

望月君現れる。

「待たせたな。あっ!」

「どうした望月君」

「僕のブルーハワイが、無くなってる!」

「知らないなあ」

望月君は周りを探し始める。

「ボウルもない!あのボウル高かったのに」

「なんで、そんな高いもの持ち歩いてんだ。」

「あ、こんなとこで割れてる。水野さん弁償して」

「なんでだよ」

「水野さんが割ったんでしょ」

「できるわけ無いだろ。さっきトイレに行った時に、自分で引っ掛けたんだろ、自業自得だよ」

「畜生、イチゴミルク食って冷えちゃったかな。トイレが近いんだ。」

私は、望月君に言う。

「そっちは暑くないのか?」

「暑い訳ないでしょ。寒いー。」

パソコンの画面ごしの望月君は、ほんとに寒そうだ。

「カキ氷食べすぎなんじゃないの?お腹壊すよ。」

「水野さんの方は暑いの?」

「ははは。驚くな。」

私は望月君に見えるように、狭い部屋の中で立ち上がった。

「ここは、めちゃめちゃ暑いわ。」

私は、自分が着込んだ分厚いどてらと、コタツのコントローラが”強”になっているのをパソコンのカメラに向けた。

「ガンガンに暖房入れて、かき氷食べるのって、冬の最高の楽しみなんだよな。」

「遠距離なのにスキー場で付き合って、高いボウル割っちゃった僕って何。」

泣きが入る望月君に、私は優しく語りかけた。

「次の脚本は、君がスキー場に行っているおかげで進んだよ。帰ってきたら読み合わせしよう。」

「雪を食べた甲斐があったってものですね。明日帰ります。」

「あ、ひとり身同士の合言葉、言い忘れてた。」

「ん?」

「メリー・クリスマス!」

********************************************************************

水野・望月ペアの前提で書いちゃったので、わからない人にはわからない構成になっちゃいました。

気楽に読んでね。

そこの人、こんなの叙述トリックじゃないって?

そうです、御題が「叙述トリック」なだけっていうトリックなわけで。


2 ● あるぴにっくす
●72ポイント

D菜「ねえねえ、叙述トリックって何? F吉に聞いたら『ジョジュツ=トリックっていう名前の登場人物出しとけばいいんじゃない』とかで全くアテにならないのよね」

B美(もしそれやってたらひどい手抜きね)

「叙述トリックって惹句としてはオビに書けない性質のものだから代表的な例を上げるのも難しいのよね。説明した時点で話が終っちゃうっていうか」

D菜「そこをなんとか、せっかくのカキツバタが流れちゃうのも惜しいし」

B美「そうね、あくまで私の解釈なんだけど・・・物語が文章で記述してあることを利用して、読者をミスリードすることで成立するトリック、と言い換えたらどうかしら」

D菜「それって作者が嘘を書くってこと? ミステリとしては邪道なんじゃないの」

B美「う?ん、そうじゃないのよ。書き言葉特有の思い込みとか印象操作を使って、読者の目を真実から逸らさせるっていうか・・・やっぱり例が無いと難しいわね」

D菜「探偵が犯人だったとか、そういうの?」

B美「そうね。いわゆるノックスの十戒を逆手にとったのが初期のものかしらね。あとは小説だとどうしても視点の切り替えが発生するでしょう。それを逆手にとるとかね」

D菜「Aさんの見たものと実際に起きた現象はちがうよ、というパターンとか。それって結構ずるいとおもうんだけど・・・」

B美「まあねえ。本格の密室と違って万人が納得できる基準が曖昧だとは思うわ。最後は好みの問題だとは思うけど。」

D菜「でも叙述トリックっていってもある程度予想できる方法って使い倒されてるんじゃないの? そもそも意外性のあるフーダニットとかをミスリードするためのものでしょ? だからなかなか回答付かないんだろうし」

B美「枯れてるトリックとは言えるわね。でも一概にそうとも言えない場合もあるのよ。叙述トリックってその作品の時代性を背景に成り立ってる場合もあるから。例えば「葉桜?」なんて昭和の初期にはありえなかった叙述トリックだと思わない?」

D菜「でもさすがに全く新しい叙述トリックを作り出すのは至難の技でしょう」

B美「ふふ、そうね。難易度を別にすれば・・・例えばこんなのはどう?」

--------------------------------------------------------------

J尼「F吉さん、トメハネってシッテマスカ? なんでも日本語を上手くなるには必要なコトらしいってキイタノデスガ」

F吉「とめはねはらい、だね! もちろん。日本人の歩く教本と呼ばれるこの僕にまかせなさーい。これができればキミもキレイな日本語使いだよ」

J尼「トメは分かるデス。簡単だし。難しいのがハネね。右に指を動かす操作がイマイチコツがつかめないです。字も多いデスし」

F吉「そ、そう? トメの方が難しいと思うんだけどな。それにハライが必要な文字ってそう多くない気もするんだけど」

J尼「ソウデスカ? ア段は全部トメですが、ウの段とエの段は上と右にハラッテマスヨネ。イの段がハライだとおもうんですが、オの段は(つづく)」

J尼「トメハネハライのどれになるんですか? 日本語ムズカシイネ」

F吉「もしかしてJ尼の使ってる筆って・・・・」

--------------------------------------------------------------

D菜「えっ! こんなとこで止めちゃうの? それに作中作をわざわざ持ってくるのはどうしてなの?」

B美「叙述トリックはミスリードで読者を引っ掛けることを主眼にしているから、場面転換が頻繁だったり、視点を変えて一人称がころころ変わる作品がどうしても多くなるのよね。作中作もその一つ。あなただって、冒頭でカキツバタの質問そのものに触れることで入れ子構造作っちゃってるじゃない。こういう視点を変える手法を散りばめることでどこが物語の基準線なのかわかりづらくなって頭がこんがらがるでしょ」

D菜「木を隠すには森の中ってこと? 」

B美「下手な鉄砲数うちゃ当たるとも言うわね。そういう意味では叙述トリックって良作になるかどうかは作者のこの辺の匙加減次第で紙一重ね」

D菜「ところで、F吉とJ尼の作中作のネタバラシはどうなってるの?」

B美「本格から社会派に移った有名なミステリ作家に東野圭吾ってのがいてね」

D菜「何よ、唐突に。東野圭吾ぐらい私だって知ってるわよ」

B美「彼の作品のなかにも叙述トリックを使った作品があってね『どちらかが彼女を殺した』と『私が彼を殺した』って言うんだけど、聞いたことあるかな※1

D菜「・・・あ、それ聞いたことある。確か主人公が「犯人はお前だ(ビシッ!)」って指摘したところで終わるんだけど、どっちを(後者は誰を)指さしてるのかが書かれてないとか・・・まさか」

B美「まさに叙述トリックよね(笑)」

D菜「え"」


※B美 D菜 F吉 J尼 はid:lionfan さんのオリジナルキャラクターです。

※1 東野氏の叙述トリックを使った作品は上述の2作品の他にもありますがネタバレになるので敢えて言及しません。


3 ● グラ娘。
●72ポイント

もう夏も終わりだというのにまだまだ暑い日が続いている。

ぼくらはたまたま貰ったチケットでサッカーの観戦に来ている。


「結構お客さん多いね」カスミちゃんが言った。

「うん、このところ人気だからね」

そうはいっても、日本代表のレギュラーなんていないチーム同士の試合。結構というのも思っていたよりかはといったところだ。


「わぁ、あの人スゴーイ!」

カスミちゃんが感心しているのはひとりの外国人選手の華麗なドリブルである。

「ああ、ジョジュツ・シュレディンガー選手だね」

観戦にあたって少なからぬ予習で仕入れた知識を披露した。

「彼女のフェイントは、すごいよ。誰にも真似できないっていうかクライフターンとかヒールリフトとかとは比較にならないくらいの……」

そういっている間にも、ドリブルでボールを前に運ぶ彼女に相手の選手が向かう。


ジョジュツ選手は全く慌てることはない。相手の接近に備えて自ら足を止めた。

左足のつま先で、ボールを一旦宙に浮かすとそのボールを右膝で左に蹴りだす。

相手選手がつられて左に動こうとすると、今度は左ヒールでボールを一旦自分の後ろへ。

相手の視界からは一瞬ボールが消えたようになる。とそのタイミングで彼女自身が右へ重心を振る。

向こうも当然それに対応しようとするのだけど、実はこのときにはボールは動かしていない。

それに気づいた相手はまっすぐにボールを取りに来ようとする。

でも、これが実は計算のうちで相手が取りに来たときにはボールが自分の所に来るようにあらかじめ強いスピンをかけている。

だけど、同じトリックが何度も通用するわけでもない。だから、このフェイントを何度か見た相手ならまっすぐにボールには向かわずにボールとジョジュツ選手の間に入ろうとする。

しかし、それすらも想定済みの彼女は、その相手の動きにあわせてボールのスピンを……みたいな複雑な手順を踏むわけではない。


単に一旦立ち止まってから、右か左へ加速するだけ。これがジョジュツトリックという奴でその名はまだコアなファンの間でしか浸透していない。

なぜ、相手を振り切れるのかは全く謎のままであるそうだ。

抜かれた選手に聞いてみても、スローモーションで見てみても全くわけがわからない。

ただ、彼女が右へ蹴り出した時には、相手は逆側への移動を開始してしまっていて彼女の一歩目には追いつかないらしい。

別名『シュレ猫フェイント』。まあこれはぼくが考えたんだけど。


「あれ? さっきもそうだったけどすぐ味方にパスしちゃった。あのままドリブルして行ったらいいのに」

「ああ、彼女のポジションはセンターバックだから……」

それに彼女は実はシュートは苦手らしい。複数に囲まれるのも。だから彼女のドリブルは自陣でわずかにボールを進めるくらいの役割しか担っていない。


そんなことより試合が開始したときからぼくが気になっているのは相手チームの一人。ポジションはフォワードだろう。

つい、この間登録されたばかりで試合経験は少ないがその圧倒的な技術と決定力から既に多数のファンが付いている。

その彼女にボールが渡るたびに、『ふぁーちゃん』とか『むーちゃん』とか言う声援があちらこちらから飛んでいる。

呼び名はまだ統一されていないみたいだ。


こないだ見た代表のユニフォームは着ていないけど、白地にオレンジをあしらったユニフォームがよく似合っている。ベリーショートだった髪はわずかに伸びて、逆にスポーティさに磨きがかかり健康的な魅力を増している。

たしかに、これだけ可愛いかったらファンの目も惹くよね。サッカーも上手そうだし。

そんなぼくの内心を見透かしたわけではないだろうけど「綺麗な人が多いね。コウイチくんのタイプもたくさん?」とカスミちゃん。

カスミちゃんは彼女の存在にまでは気づいていないみたいだ。グランドまでかなり遠いし。前にはほんの短い時間会っただけだし。

「……。そういえばカスミちゃんの友達のあのこもサッカー好きだったよね。今からでも呼ぼうか?」と話題をそらすぼく。

カスミちゃんはぷくぅっと膨れっ面になった。

「冗談だって……」実際のところは圏外なんですけどねとは言わなかった。

「いやよ。今日はふたりっきり!」

そんなぼくたちの甘いムードをぶち壊すべく、試合が動いた。


ジョジュツ選手とその彼女が1対1になった。ゴールキーパーからのボールを受けて徐々に押し上げようとするジョジュツ選手に彼女が果敢に向かっていったのだ。

絶対の自信を誇っていたジョジュツ選手のフェイントをすんなり看破した彼女はボールを奪いそのままあっさりとゴールを決めてしまった。シュレ猫の捕獲に耐性が付いていたわけでもあるまいに。

スタンドに歓声と悲鳴の絶叫が響き渡る。


結局試合は、新加入の彼女があげたワンゴールが決勝点となり1‐0で終わった。

スタジアムと最寄駅を往復するバスを降りたところでカスミちゃんの携帯が鳴った。

「はい。……いえ、電波の届かないところに居たんで……サッカーのスタジアムなんですけど辺鄙なところにあって……何ですって!」

「どうしたの?」

「事件よ! 高坂くん。すぐに現場に向かうわ」

「了解です。霞浦警部」


ぼくの名前は、高坂一郎。通称コウイチ。仕事の上ではカスミちゃんの部下にあたる。もちろん仕事中はカスミちゃんなんて気軽な呼び方はしていない。僕たちの付き合いは同僚達には内緒だ。

非番であるにも関わらず、圏外のあいだ中も何度も呼び出しを受けていた電話。

この時点では、この電話があんな記憶に残る大事件の幕開けになるとは思いも寄らなかった。でもそれは別の話。

まだまだ終わらない2011年の8月。




あっ、不破むつみ選手のグッズ買うの忘れた……。


4 ● グラ娘。
●71ポイント

あいつが心の底から憎い。

もう何年も前になる。そもそもわたしはあいつに金で買われた。

そして、ジメジメした部屋に軟禁され続けた。

時には熱湯を浴びせられ、

ある時は、汚物に体中を擦りつけられ。

わたしがあいつに殺意を覚えたとしても、同情こそすれ非難などされないだろう。

そうであることを切に願う。

「みさきさ??ん!」部下の高坂君が駆け寄ってくる。

「”みさき”なんて馴れ馴れしく呼ばないで! それに読者が混乱するでしょう。そんな苗字とも名前とも取れる微妙な呼称は無しよ」

「読者って?」高坂君は首を捻っている。

「あと、念のために言っておくけど、冒頭のわたしと今のわたしは別人物だからね。ついでにいうと冒頭の文章は別に要らないの。全然関係ないミスリードを誘うためのものですらないから注意してね」

「意味がわかりません。それはそうとしてなんてお呼びすれば……」

「普通に霞浦警部でいいわよ。霞浦さんとか。霞浦みさき、正真正銘女性。彼氏募集中!」

「彼氏募集中ってことは……」

「そう、察しがいいわね。第3回答での大事件と今回の件は全く関係ないわ。わたしとあなたが出会った頃の事件ね、これは」

「それはそうとこれから捜査本部へ向かうのでしょうか?」

「こら! そこのあなた! わたしたちの会話に割り込まないで。わざわざ地の文で説明なんてしないからね。こんな小さな事件で捜査本部なんてたたないわよ」

おそらくはわたしの部下である、名も無い男は口を噤んだ。



「で、今回の事件なんですけど……」高坂くんがおずおすと切り出す。

「そんな発言は控えて。厳密に言うと今回の件は事件と事故の両面から捜査中よ。まあ結論はほとんど出ているけどね」

高坂くんはそんなわたしの発言を聞いて仰天している。

「さすが、探偵役として抜擢されただけはありますね!」

「残念だけど、高坂くん、あなたの発言には信憑性がありません。それはあなたがわたしを探偵役だと感じたというだけでわたしが真実探偵役であるのかはまだ不確定なのです」

「えっ! じゃあ霞浦先輩が犯人だったとかっていうどんでん返しもあるんですか?」

「それは、続きを読んでのお楽しみ。ではいまからわたしの心中、こころの声に舞台を移します」




そう、連絡をうけてわたしと高坂くん、ひょっとしたらもうひとりの3人で現場にむかったのだ。

そこでの惨状を目の当たりにしたわたしたち。わたしはそこでひとつの推測を思いついた。

この物語の主人公は間違いなくたわし。

そう、この悲劇を巻き起こしたのもそうなのだろう。

いまはそれがわたしの中での確信に変わった。また、この回答は失敗だったなという思いも確信に変わりつつある。




「え?とわかりません」呆れることに高坂くんはそう言った。

「じゃあ、事件を整理しましょう。現場は浴室、老人が倒れていて頭部に傷を負い意識不明の重態」

「やっぱりさっぱりわかりません。どんな推理だったんですか?」

「推理なんてしてないわよ、おじいさんが意識を取り戻したから聞いただけ」

「えっひとりでですか? 僕を置いて……」

「そうねえ、最近のミステリでは刑事はペアで行動って鉄則が行き渡ってるようだからそこの彼とってことにしとくわ」

「で、ことの真相は?」

「少しは自分で考えなさい、そのスポンジ頭で」

「吸収力抜群ってことですか?」

わたしは高坂くんの頭をはたいた。

「なんて、ポジティブシンキング! スカスカってことよ。おじいさんは躓いて転んだんだって」

「……だけにスポンジってオチですか、こんなの叙述トリックでもなんでも……」

「あなたは黙ってって言ったでしょう!」

再び口を開いた彼を叱責しつつも内心では大きな感謝をしている。そう、彼の言及によって叙述トリックという回答条件が整ったのだ。


ありがとう名前もつけてもらえず台詞も2行だけだったあなた。

ありがとう、掛け合いを続けてくれた高坂くん。

ありがとう、最後まで読んでくださった皆さん。

ありがとう、途中で馬鹿馬鹿しくなって流し読みをして「?」となっているあなた(もし居れば……)。

ありがとう、わたしの誕生の機会を設けてくださったgaryoさんを初めとする皆さん。

ありがとう、読まなかったあなた。この気持ちが伝えられないのが残念です。


ありがとう!


5 ● hokke-ookami
●71ポイント

『8月14日』


あの人の背中を追って息をきらせながら坂をのぼりきると、急に視界がひらけた。

白く焼けた石段の先に、うろこのような群青の海が、夏の日ざしできらめいている。

水平線で黒煙をたなびかせているのは戦艦だろうか。いや、きっと焼きはらわれた島の影だろう。旭日旗をかかげ堂々と出航した戦艦や駆逐艦は、その多くが祖国へ帰りつく前に海原へきえた。

そっと横を見あげると、あの人の横顔が遠くをまなざしていた。

家族のひいき目をぬきにしても、美しい人だった。金色の花がまばらに咲いた桔梗色の着物で身をつつみ、すっと背筋のとおった立ち姿。赤い腰帯までとどくはずの黒髪は、飾りけのない銃後髷にゆわれている。潮風にまじって濃いおしろいのにおいが鼻をくすぐる。顔立ちは、逆光で影にぬりつぶされて判然としない。それでも整った容貌をしていることが輪郭からわかる。

くちさがない隣近所からうしろゆびをさされていたことは気づいている。このご時世に贅沢は敵だとわかっている。将校の家でなければ、ずっと前に憲兵につれていかれたかもしれない。だけど、だからこそ夫のいない家をまもるため、あの人が美しい着物を身にまとわなければならないと僕はしっている。

着物のすそからのびた細い手首に、こわごわ指先をのばした。柔らかい皮膚にふれると、あの人も優しく握りかえしてきた。ひょっとしたら僕は恋をしていたのかもしれない。

子供が大人を、それも母のような相手へ恋なんて、おかしいだろうか。たしかに、もっとふさわしい別の言葉があったのかもしれない。だいたい男児の僕があの人へ恋をするなんて、はたから見れば思いもつかないだろう。だけど、あの人を心から大切に考えていたことはたしかだった。あの人も僕を母のようにいつくしんでくれていたと思う。


ふいに、あの人が背中を曲げ、せきこんだ。低い声がもれる。懐紙を口にあて、細い眉をひそめ、それ以上の声がもれないように耐えていた。

あの人は夫の帰りをまっていた。その願いははたされなかった。家にとどけられたのは、ちいさな木箱と石ころひとつだけ。

僕らは帝国の勝利を信じていた。あの人もきっとそうだったろう。だけど何度も眠りをさます警報と、炭となった街並みにほとほと嫌気がさす心もちは同じだった。

あの人は夫をうしない、自分も体をわるくして、生きる意味をなくしていた。死にたいと何度か口にしていた。周身をひそめるように坂をのぼってかけていた願は、夫の帰りから祖国の勝利へと変わったらしい。あの人が、時とともに今の美しさをうしなう姿を見たくなかった。

だから僕は一歩さがり、死んだ父が望んでいたと感じるままに、目の前の背中を石段へつきおとした。


長い石段をおりた先に、赤い大輪の花が咲いたような光景がうまれた。

ほどけた黒髪が地面へ扇のようにひろがり、染めきれていない地毛がうなじからのぞいている。ふと自分の手を見ると、あの人の長い髪が金糸のように指へまとわりついていた。

義母の命をささげたのだ。きっと帝国は勝つだろうと僕は確信した。

再び石段を見おろすと、着物がはだけ、赤い襦袢と腰帯が白い肌にかさなり、しま模様となっている。まるであの人の祖国の旗だった。



※最後の風景の陰惨さを際立たせる以外に、母の意味がないかもしれない。

※とある錯誤と思わせて別の錯誤をしたかったのですが、読み直すと最初に想定した錯誤と思っていただけそうな可能性がそもそも低い。

※銃後髷についてはこちらのページを参考にしました。http://www.po-holdings.co.jp/csr/culture/bunken/muh/15.html

※想定したのは米ですが仏に感じる人もいるかも。そもそも想定した真相に結末の描写を読んだ瞬間は真相がわからないかも。

※外地出身にすると、たぶん主人公の主観では祖国の勝利うんぬんという表現にはならない。


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