「動物の第六感」モーリス・バートン より
http://www.amazon.co.jp/%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%AC%AC%E5%85%AD%E6%84%9F-%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%B9-%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3/dp/product-description/4588762087
http://blog.goo.ne.jp/augustrait/e/cbb166b25764748943a9b19dc3075562
蚊の頭部には二酸化炭素を感じる「毛状感覚子」という感覚器が備わっている。
数百メートル離れた先から人間や動物の吐き出す炭酸ガス(二酸化炭素)、
そして体温を感知して標的に近づくという、恐るべき性能のセンサーである。
哺乳類の体温から発する熱を感知する能力は、1.2cmの距離で100分の15度の温度差も感じるほど感受性が高い。
触角の毛状感覚子には臭覚受容細胞もあるようです。
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/103/mgzn10308.html
ネッタイイエカの触角や小顎肢 (しょうがくし) に存在するさまざまな感覚子について徹底した調査を行い、触角の毛状感覚子に、DEET に対して用量-反応関係を示す臭覚受容細胞が存在することを発見した。この細胞はもともとテルペノイド類 (植物の芳香成分の一群) に反応する臭覚受容細胞として知られていた。また、この嗅覚受容細胞がある毛状感覚子には、オクテノールに反応する、前述のものとは別の嗅覚受容細胞が存在している。従来の研究対象は乳酸やオクテノールに反応する嗅覚受容細胞であり、DEET の忌避メカニズムに関する研究は臭気成分と DEET との相互作用を前提としていた。しかし DEET の量に応じて直接反応する新たな嗅覚受容細胞の発見は、DEET の忌避反応において臭気成分との相互作用を考慮する必要がないことを示すものであり、非常に興味深い。
蚊の二酸化炭素受容体(センサー)は、頭から突き出した小顎鬚にあります。
http://j.nestle.co.jp/science/topics/topics0802_2.htm
http://ghop.exblog.jp/7427035/
下側の口吻の上にあるのが小顎鬚
http://nksci.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2011/08/8a3f45d0235a95c023323f054494b74c.jpg
感知後の走行性についてですが、おそらくガのフェロモンと同様に
C02濃度差を元にした確率論的な方向決めにより目標に到達していると考えます。
(こちらは昆虫学者では自明なのか蚊に限定した論文が引っかかりません)
Gr21aとGr63aの蚊の相同体は、CO2を感知する蚊の器官にあるニューロンのサブセットにおいて、ともに発現していた。
http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ec_20070109.asp
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kumonoyouni ●420ポイント ベストアンサー |
興味持ったので調べてみました。
[1]生物学・期末レポート いつのまにか血を吸われている 蚊の吸血メカニズム
http://tsussy.info/pub/%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/biology_repo2.pdf
蚊が検知するのは、二酸化炭素、体温、乳酸という複数の要素があるようです。
参考書籍も書かれてました。
(1) 蚊の不思議 宮城一郎編著 2002 東海大学出版
著者は農学博士で,衛生昆虫学,特に蚊類の分類や生態の研究を専門
とする方である.非常に詳しく書かれた学術的な書籍.
(2) 蚊の科学 荒木修著 2007 日刊工業新聞社
著者は化学専攻の工学博士.本は学術書というよりは一般向けに分かり
やすく書いたもの.次の栗原博士が著者の一人となっている「蚊の科学」
という本を参考として書いている本で,図もいくつか引用されている.
(3) 蚊博物誌 栗原毅著 1995 福音館書店
著者は医学博士で衛生動物学専攻,蚊と蚊媒介病の研究者.本は蚊の
生態や蚊にまつわる文化について詳しく書かれている.
(4) 日本動物大百科9 昆虫II 1997 平凡社
図鑑的な本だが文章が多めの解説書.フリガナが振られていない,一般向けと考えられるもの
[2]5/11 Malaria Mosquitoes Follow Foot Smells May 12 [Thu], 2011, 15:31
http://yaplog.jp/podcast/archive/334
マラリアを媒介する蚊は、足のにおいを追いかけます
アフリカのAnophelesという蚊は、二酸化炭素の豊富な呼気をたよりに私たちを見つけます。 しかし、近くまで来ると、蚊は我々の頭から足をめがけて急降下します―足は明らかに蚊が軽食を取る大好きな場所です。
生物学者Remco SuerはオランダのWageningen大学での博士号論文に蚊の行動を取り上げたのだと思っています。そして、論文の内容はマラリアとの戦いに役立つかも知れません。
以前の研究で、人間の足に生息する10種類の細菌が作り出す臭いとその組み合わせのうち、近くにいる蚊が好むものを突き止められていました。Suerの研究はこれらの10の匂いのうち9つが蚊の口吻の毛髪のような構造の下にある嗅覚神経細胞で感知されることを示しています。 もっと距離のある場所で私たちが発生するCO2を感じ取る他の神経細胞のすぐ近くにあります。
Suerは、臭いの混合物から分離したバクテリアが作り出す5つの異なる臭いが、実際CO2を感じ取る神経細胞の働きを妨げることを見つけました。ですから、細菌の出す匂いの分子があれば、CO2を嗅ぎまわる蚊を方向転換させ、おそらく近くにある足(の臭い)めがけて殺到させることでしょう。
Suerは、足に生息する細菌を囮にして蚊を惹きつけ、血を吸う前に捕まえてしまう罠のようなものを考えています。それは、足で蚊を踏みつける次に良い方策です。
[3]蚊を狂わせる
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/11186/12988/68684403
Nature 誌に掲載された Stephanie Lynn Turner さんらによる "Ultra-prolonged activation of CO2-sensing neurons disorients mosquitoes" というのがその論文。まず、ハエは二酸化炭素を嫌うのに、二酸化炭素を発する熟した果物にはどうして寄ってくるのかという疑問から、熟した果物の香りにはハエの神経の二酸化炭素受容体を混乱させる成分が含まれていることが突き止められました。そして、二酸化炭素を入れた容器と、二酸化炭素とその問題の撹乱成分を混ぜて入れた容器を用意して、蚊がどちらに行くかを見たら、二酸化炭素だけのほうに2倍多く蚊が集まっていたとのこと。蚊除け薬の成分などに比べて安価に生産でき、成分も天然由来のものなので、マラリアやデング熱などの予防に期待ができそうだとのことです。
[4]CiNii論文?ドライアイスと蚊帳を用いた蚊の捕集方法
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003824439
1961年7月より10月までの間, 横浜市鶴見区師岡町付近で未吸血の蚊が炭酸ガスに多数集まつて来ることを利用してドライアイスと蚊張を用いたトラップを作り, 捕集される蚊について検討した.7月28日にはドライアイスの消費量が100g?550gである蚊張に午後6時から9時までの3時間のあいだ3, 000?8, 000の雌成虫を捕集することが出来た.侵入口の方向が発生源の反対側の方向および風下であると, より効果的に捕集することが出来, 多少の風力および蚊張の配置場所には著明な差が認められなかつた.ドライアイスとヤギおよびニワトリを入れた蚊張に集まる蚊の数はドライアイス>ヤギ>ニワトリとなり, 動物誘引法およびライトトラップ法に比べてドライアイストラップ法ははるかに効果的であつた.ドライアイスに集まる蚊の日週活動を8月4日から9月6日に至る間, 午後6時から翌朝午前6時まで一時間毎に採集し観察した結果, 午後7時から8時までに侵入数が最高となり以後漸次減少するが午前4時?5時まで侵入は続いた.蚊の種類別による日週活動の差はあまり著明ではなかつた.
[5]蚊の概日リズム
http://www.c-able.ne.jp/~y-chiba/japanese/treatise.html
一般に生物には1日の生活リズムがあり、1日の環境サイクルに合わせて活動している。この日周変動は本質的には内因性の約24時間周期のリズム(概日リズムcircadian rhythm)に支配されている。このことは、生物を、照度と温度を一定に保った実験的な恒常環境に置いてみればわかる。環境の周期変化のない状態でも、約24時間のリズム(自由継続リズムfreerunning rhythm)が維持される。概日リズムには光および温度の24時間サイクルに同調する(synchronizeあるいは引き込まれるentrain)性質がある。自然界での1日の生活リズムは、概日リズムが1日の環境サイクルに同調している(引き込まれている)姿である。この同調が、適した環境の到来を予知して、その時間に活動することを可能にしている。概日リズムは、生理学的あるいは発生学的過程などを広く支配しているが、加えて、季節的環境変化に対する適応である光周性(photoperiodism)にも関与していると考えられる。この論文の目的は、蚊における概日リズムならびにその関連現象に関する研究を総説することにある。
蚊の行動リズム研究に便利な本に2種類ある。ひとつは、概日リズムおよびそれに関連した分野に関心のある蚊生物学者が書いたもので、かなりのページ数がそれに割かれている1,2。もうひとつは、昆虫のリズムあるいは光周性を扱った本で、蚊が頻繁にでてくるものである3,4,5,6,7 。
[6]最近読んだ論文 11. 蚊のCO2センサーを長時間活性化する分子
http://www.molecularscience.jp/read/001.html
"Ultra-prolonged activation of CO2-sensing neurons disorients mosquites"
S.L. Turner et al., Nature, 474, 87-91 (2011).
蚊は様々な伝染病を媒介し,また単純にうっとうしくもあることから,何とか奴らが寄ってこないようにしよう,という試みはそれこそ有史以前から行われてきたし,今でも多くの研究が行われている.
よく知られるように,蚊はCO2を探知して動物や人に接近するので,この感覚器を何とか誤魔化せばよい.例えばこの感覚器を麻痺させる薬剤であれば人間を探し出せなくなるし,逆に強く刺激する薬剤なら蚊を引きつけるトラップに使える.実際,ドライアイスやCO2のボンベ,ガスの燃焼などを使った蚊の捕獲機が利用されている.しかしCO2は毒性が高い上に取り扱いも面倒であることから,もっと手軽な手法の開発は常に望まれ続けている.
今回,電気生理学的手法を用いたスクリーニングで興味深い反応をもたらす化合物の発見が報告された.
蚊に作用する化合物を発見する場合,一番単純な手法は蚊を(沢山)持ってきて各種物質の気体を吸わせて影響を見る,というものである(実際昔はそうやって研究が行われていた).しかしながら,何せ蚊の行動はふらふらしているので影響がわかりにくいし,沢山の蚊を毎回準備して実験をするのも大変である.そこで最近は,電気生理学的手法が用いられる.これは近年の生理的な研究では欠かせない手法で,反応を調べたいレセプター(今回の場合なら蚊のCO2感覚器)を取り出し電極を繋ぎ,様々な物質に曝すことで起きる電位変化を見てやる,というものである.感覚器が反応すればパルスが生じるので,生じる電位の回数や強度から反応が電気的に読み取れる.
さて,著者らがそのような手法で様々な有機分子の影響を調べていたところ,2,3-butandioneがこの感覚器に過剰かつ長時間の興奮を引き起こすことを発見した.通常の刺激なら,その刺激を取り除くと秒の単位で感覚器の興奮は納まるのだが,2,3-butandioneに関しては数分間も過剰興奮が続くのである.しかもこの間はいわば感覚器が励起しっぱなしでほとんど飽和してしまうため,通常のCO2に対する応答はマスクされてしまってほとんど起こらない.
この結果,2,3-butandioneに曝された蚊は人間や動物を感知することが出来ず,特に当てもなくふらふらと飛び回るだけとなる.また彼らは,2,3-butandioneと1-hexanol,1-butanal,1-pentanal(これらはいずれも感覚器をマスクする効果がある)のカクテルを作用させると効果が10倍程度になることも見つけ出した.3種類のマスク剤でCO2への感度を落としておいて,さらに2,3-butandioneで反応を飽和させることで何も感知できなくなるらしい.
またこれとは別に,2-butanonがかなり強く蚊を引きつける事も見出している.これらを元に,著者らは
・2,3-butandioneカクテルを人のそばやドア・窓の近くで用い,蚊の感覚を麻痺させることで家の中や人の近くに寄ってこないようにする
・さらに近傍に2-butanonを噴霧するトラップを設置し,そこに蚊を集中させ捉える
という利用を提案している.なお,今回用いられている物質はそのままでは人体にも有害であるため,これらの構造を元に無害な化合物を開発する必要がある点には注意が必要である.
今でもアフリカや赤道に近いアジア各国では蚊の媒介する伝染病は猛威をふるっており,蚊に対する対策の重要性は高い.今回の研究が何とか新たな薬剤開発に繋がってくれれば良いものだが.
どうでも良いことだが,著者にケニアの人ってのは初めて見たかも知れない.やはりアフリカだけあって蚊への対策は重要なのであろう.(2011.6.2)
ご参考になれば幸いです。