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【人力検索かきつばた杯】
テーマ:『探偵』で『ファンタジー』な文章

創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
ルールははてなキーワード【人力検索かきつばた杯】を参照してください。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

締切は2/7(火)の夜を21?22時くらいを予定しています。

●質問者: グラ娘。
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 7/7件

▽最新の回答へ

1 ● minoru-0413
●35ポイント

黒というのは、種類が沢山ある色だと私は思っていた。
空一つ見ても、赤みを帯びた夕暮れの黒、青みを帯びた日が昇る前の黒、雲を羽織り静かに微笑む黒、雪明りに下の方だけが白く泣いている黒…。
しかし、此処まで感情や意味を無くしてしまった黒があっただろうか。
明りが無いわけではない、しかし、明りとして機能していない色たち。
色ですらない赤を纏った、オカシナ色の月。
光を当ててもいないし、放ってもいないのに、色をくっきりと映す街。
影の無い黒、くろ、クロ。
(此処は一体何処なのだろうか。)
近くに看板が幾つか見られるが、文字の配色が狂っていて、直視することをまるで眼球が拒否しているかのように、眼を逸らしてしまった。
よくよく見れば、街全体の色使いが実に狂気に満ちている。
人がいるにはいるのだが、彼らもいたって普通の通行人な筈だ。
(見ているだけでは始まらない、動かなければ。)
足を持ち上げた時、足もとでからりと乾いた音がした。
足元は底なしの闇のように黒がしがみついており、何の音かは分からなかった。
すぐそこの街灯の下に居た、口紅のようにしつこいピンクのワンピースを着た少女が、視界の隅でニヤリと笑った。
(声を、かけてみようか。)
「御嬢ちゃん、ちょっと良いかい?」
「なぁに、真っ赤な探偵さん。」
指先に鼓動が伝わったように、血管がぴくぴくと動いた。
何故、私の職業を知っているのか。
一つの疑問を真っ二つに裂くように、もう一つの奇妙な言葉が目の前に浮かぶ。
真っ赤な…?
私は今は白いコートとジーンズ、革の靴を身につけているだけで、真っ赤な物は何も持っていない筈だ。
少女は一体何を見て赤という言葉を探偵の前に貼りつけたりしたのだろうか。
背筋に何かが走った気がした。
「此処は何処だい?新宿には、如何行けばいいのか知っているかい?」
「此処は何処でもないわ。そして何処でもあるの。だから此処が新宿よ。」
(おいおい、何を言っているんだこの子は。)
「私の事務所は知っているかい?」
「それも此処よ。全ての場所は此処であって、此処でないの。」
「そういう話をしているんじゃないんだよ…御嬢ちゃんは、何処から来たんだい?」
「此処よ。何処にも行ったことはないし、何処に行ったこともあるわ。」
「貴方も此処にずっといるのよ。私の隣で、足もとの乾いた音を転がして、ずっとずっと此処で歌って、踊って、年もとらずにずっとずっとずっと…」
「御嬢ちゃん?」
「…帰っちゃうの?」
「?…いいや、まだ帰るわけじゃ」
「そう。じゃぁ…」


「グッバイ!」


「御帰りなさい、新城さん。遅かったですね。」
驚いた私は、ドアノブからパッと手を離した。
(事務所じゃないか。いったいどうやって帰って来たんだ…?)
「如何したんですか?」
「いや、何でもない。それより、今何時だ?」
「六時ですよ。時計忘れて行っちゃうなんて珍しいですね。」
コンクリートの灰色と木材の茶色がようやく目に馴染んできた。
事務所の前に、私は立っていた。
自称助手の、金田が後ろに立っている。
今、普通に会話をしていた。
事務所の中は、いつものコーヒーと書類の紙の匂いがしている。
(何事も無かったのだ、きっとそうだ。)
私はそう自分に言い聞かせ、事務所に入って行った。


終電の中、一人の男が居眠りをしている。
白いコートのポケットから、携帯のライトが顔を出している。
バイブにも気付かず、男はぐっすりと寝ていた。
ふいに向かいの席に座っていた別の男が立ち上がる。
乗客の悲鳴で眼を覚ますことなく、彼の音は途切れた。


「真っ赤な、探偵さん。」


2 ● あるぴにっくす
●25ポイント

予告という名の枠予約、という名目の自分への追い込み

"「『探偵』で『ファンタジー』な文章」は如何にして成立してきたかに関する一考察"


to be continued! 2012/02/05 12:08:37

_____________________________
本編投下 2012/02/07 00:38:00
加筆修正 06:45:00
_____________________________

古来、探偵的な文章とファンタジックな文章は対極にあるといって良く、水と油、海と山、ステマ業者とA楠ほどに相容れない存在であった。探偵でかつファンタジーな文章などという存在は本来奇跡の産物といってもよいだろう。
探偵の論理的で人間の内面に収斂していくエナジーは空想上の産物を寄せ付けなかったし、ファンタジーの壮大でエキセントリックな発展性は常識という名の鎖に縛られていては、あれほど羽ばたくことができなかったであろう。
それがついに現代に至って革新的な融合を果たし、耽美的なまでの発展を遂げたことは皆さんの認識するところである。

とはいえ、両者の長い歴史の中で、その融合が如何にして成立してきたのか? それを完全に解き明かした者は、いまだ私を除き皆無ではないだろうか。そう! 私のこれまでの『探偵』的な地道な調査活動と、幸運にも私自身に備わった『ファンタジ』ックな能力により、この考察が本日をもって完成するに至ったことをここに高らかに宣言する。

考察の結論をお伝えするのは簡単だが、その前にまずは私に備わったファンタジックな能力を皆さんに説明することが先決だと思われる。それ無しには結部に至った経緯を理解いただくことは、平凡なる人智のみ備えた皆さんには不可能に違いないからだ。

或る日、それは本当に或る日突然に、私の体に舞い降りた能力だった。
探偵的な地道な文献考証を数日間続けていた私の脳内に、輝く光輪が何重にもスパークし、私は意識を失った。時を忘れ、起き上がった私は、自分の身に舞い降りたその能力を誰に教わるともなく自然に理解した。それは、"過去のありとあらゆる文章内の、ありとあらゆる存在と意思の疎通が可能となる能力"だった。時代を遡り、過去の特定のキャラクターと会話し、その存在の真意を知ることができるのだ。現実世界でも有用な私の交渉能力も、この謎を解き明かす一助となってくれたこともここに付け加えておこう。

ではこの能力を使って、私が最初に交渉した舞台に皆さんを誘おうと思う。

19世紀Dの世界
私がその存在に語りかけると”彼”はそれまで燻らせていたパイプを右手に持ち替え、こうつぶやいた。
「待ちたまえ、口を開く必要はない。まず最初に断っておくと、キミは未来から私と会話しにやってきた存在だね。いや説明も不要だ。その右手小指の蛸、そして服の裾について時空汚れ、それが全てを語っている」
私は問いただした。あなたはファンタジーと如何にして融合していったのかを。
「そんなことはありえない。私の存在にファンタジックな要素など皆無だ。明快で筋道の通った論理とこの世の理に従った事実のみが、探偵のあるべき姿だ。それ以外にあろうはずがない」
私は理解した、”まだ”この世界は融合前であったことを。謝辞を述べ、次の世界へと転移することにした。


1950年代、Fの世界
私はその小さな存在に問いかけた。あなたは如何にしてその長く困難な旅路の中で『探偵』的な要素を取り込んでいったのかを。
「いや、僕はそんな大それたことを身につけてはいないよ。中つ国 を救った真の功労者は僕ではないし、旅の仲間の助けが無ければ僕の旅の終わりはとても悲惨な結果になっていただろう。何より、この世界に頭デッカチな推理や論理は不要だよ。そんなものは裂け谷の谷間に放り込んで蓋をしてしまえ!ってなもんさ」

私は理解した。まだこの世界も融合前であったことを。さらに次の世界に転移を続けることにした。

20世紀、米 Dの世界
初めて彼に出会った時、私は戸惑ったものだ。なぜに作者と探偵が同名なのか、と。そこには当初は強烈な自己顕示欲を、そして著者名が二人の人物の共著名であったことに気づくと、その壮大でメタなネーミングセンスに二重に驚かされた記憶がある。
「君の質問は実に興味深い。ただ、ここまでに記述された内容だけで宣言しよう。答えは既に読者の中にある、と。これは私の君への挑戦状だ。そして文字数の制限をもって即回答編に映るとしよう。答えは否、であり、ファンタジックな要素は私の世界には不純物でしかない」

私はここでも空振りに終わったことを理解した。ただ世界が古典から近代に移っていく過程でこれまでカテナチオだと思われた扉に、僅かながら合致する鍵のようなものを感じ取ってもいた。

20世紀後半 邦文のFの世界
私が"彼"の創造主に最初に出会ったのはTVメディアであった。そのこと一つをとっても『探偵』の世界の譲歩を感じるが、何より私が最も注目したのはその創造主が『探偵』と『ファンタジー』両方の世界に通用する作品を世に送りだしていた事実である。特に"彼"が主役の「ファンタジー」的な世界はこの国に確実に一つのブームを築いていたと言い切ってもいいだろう。その中心たる存在の人ならぬ面相をもつ"彼"に私は問いかけた。
「異世界から来た男よ。俺のような異形の物に、何を聞こうというのか。たしかに俺はヒロイックFとホラーを目指した存在ではあったし、外伝で『探偵』紛いのことはしていた"王子"もいるようだが、所詮本線ではない。なにより、この世界は未完なのだから『探偵』の世界から最も遠い存在なのではないかな、男よ」

私は確信した。この異形の者がこんなもったいぶった言い回しをする時は裏があるはずだ。世界の融合は近い。

20世紀後半 ???の世界
私はついにたどり着いたと感じた。この世界はこれまでとは明らかに肌に感じる空気が違う。

なんと表現すればいいのだろう?

文字通り、行間にたゆたう隙間が明らかに広く濃く、
無駄に改行され、
これまでの転移世界とは同じ版型とは目を疑うほどに文字組も緩やかだ。

そして文字ページに対する絵柄ページの割合も高い。

この世界こそ目指してた融合の世界なのだろう。

「ファンタジーと探偵って、もうそんなジャンル分けの話をする必要あるの?
超常現象だろうがUFOだろうが分けわかんないものがあったら何でもかんでもあたしんとこ持ってきなさい! 今はとにかく表紙に可愛い女のコの絵、あたしのことね!
があればいいんだし謎解きだってファンタジックな要素だって読者に届けばなんだっていいの。
要は楽しくて読みやすい文章になってるかどうかが重要なんだから」


都内某所、冗句堂書店4F文庫本売り場
「店長?、ま?た来てるんですけど。"あ・の・人"」
女性書店員が頬を引き攣らせながらバックヤードの乱雑な事務所スペースで、店長と呼ばれた男に詰め寄っている。男も目尻をひくつかせながらため息をついた。
「・・・で、今日はどこに現れたんだ」
女性書店員は害虫を噛み潰したような口調で続ける。
「今日なんて、ラノベ棚ですよ、ラノベ棚。一週間前に海外ミステリ棚に現れてからこっち、毎日毎日、あの調子で書棚の前でブツブツブツブツ独り言呟いてるんですよ。店長は裏にいて気にならないかもしれないですけど、喋ってる中身だって”『探偵』で『ファンタジー』な世界のユウゴウ”とか日本語で喋れよな内容で気持ち悪いったらありゃしないんですから。
なんか身なりもミスボラシイし、目の死んでるし、引き篭りかなんかじゃないんですかね。立ち読みばっかで購入意思も微塵もなさそうですし、もう、今日という今日は、声掛けして追い出しちゃった方がいいと思うんですよ。
そろそろ他のお客さんも気味悪がってますし!」



fin


3 ● sokyo
●40ポイント

『落とし物』

気付いたらバイト控え室だった。机に突っ伏していた。僕は壁を眺めた。
壁に人影があるような気がする。まだぼんやりするな。いま何時だろう。

バイトを始めてそこそこ経つ。機械から出てくるシャリを整えるのはうまくなったし、タッパーからネタを取り出して、お皿に載せるところまで、なんとかコンベアの速度に合わせてできるようになった。廃棄も遅刻も少ないし、いまや我ながらまあ優秀なバイトだ。とか思いながらまたシャリを手に取る。
「…と、サバですね。毎度ッ!」
ところが、カウンターでひと世代上の板前さんが、威勢よく魚を取り出したのだ。板前さんは手際よくそれに包丁を入れた。ちょ…。
ふわっっ!!
やっぱダメだった。僕は気絶した。

慣れれば血を見ても大丈夫になるとか嘘だなあ。やっぱり倒れちゃったなあ。また迷惑かけちゃったけどもうしばらく休まないとたぶんまた倒れるなあ。とか思いながら壁を見ていたら、人影のような何かは、本当に人物のかたちになった。胸元開き気味の服を着た女の人だった。
「はろー♪ キミが落としたのは金のシャリかな? それとも銀のシャリ?」
きらきらしたシルクのドレス。この人だれだろう。
「あら、私のこと知らなくって? 私はファンタジーの女神様。略してファンタの神様よん☆」
…古い。
「私ね、最近は神様の力を生かして副業で探偵業を営んでるの。シフト6時までだけど。キミ、落としたものがあるんでしょ?」
「あ、銀のシャリです」
「言うと思った。キミ、そんなバカ正直じゃこれからも彼女できないわよ」
「じゃ、バイトとしての信頼を落としました」
「うーん。60点かな」
「…あの、なんか用ですか」
「落としたもの、それ以外にもあるでしょ。私にはお見通しなのです」
女神様は僕に顔を寄せた。鼻が当たる。ち、近い。
「キミ最近、女の子からメールもらって、返してないのがあるでしょ。落としてますよ、恋のきっかけ♥」
いつの間にか少し遠ざかった女神様は、なぜか僕のケータイを手にしてた。
「メールボックスに残ってるんじゃなぁい…? あ、見つけた。ほらほら。“榎本さん”」
「ちょ。か、返してくださいよ」
僕は立ち上がって腕を伸ばした。とたんに頭に血が回らなくなって、またイスに戻ってしまう。
「ほぉら。ムリはしちゃだ・め・で・しょ♥ 安静になさい」
「なんで僕のケータイ持ってるんですか」
「探偵だから。それくらいお手の物よ」
「手段じゃなくて、動機を聞いてるんですけど」
「動悸といえばキミ、血がダメなんでしょ。カノジョと寄生虫博物館でも行ったら? 寄生虫ならだいじょぶだから! でさ、こわがるカノジョの手とかさ――」
「あの! ――榎本さんは、彼女じゃ、ないです」
「なら、手込めにしちゃえばいいん――」
「そういうこと、言わないでください」
「キミのことに興味あってメールくれるんじゃないの? そんなのも、」
「わーかーりーまーせーん! わかんないですよ。どうせ僕な」
「あーそうですか。それだからキミってばカノジョいない歴=年r……



……ねえ。私のこと止めないの? …怒らないの?」

「最後まで言ってください」
「…」
「最後まで言ってくださいよ。『それだから彼女いない歴=年齢』って言いたいんでしょう」
「…」
「どうせおっしゃる通りですよ」
「…。ごめん、なさい。からかいすぎた」
「女神様になんて謝られたくなんかないです。ケータイ返してください」
僕は今度は座ったまま、女神様からケータイを奪い返した。画面が光ってる。
「え? これ?」
電話発信中になっていた。
「しかも絶対つながる魔法をかけといたから♪」
「はぁ? マジ信じらんねぇ! これ女神のすることか?」
「てへぺろ☆(・ω<) カノジョによろしく」
トゥルルルルルル…。
従順なケータイは本当にコールを始めた。息を吸い込んだ。僕の意識はすっかり復活した。彼女じゃねぇし、って思った。まだ彼女じゃねぇし、って。
電話から、相手が出た。意識が復活して初めて、僕の喉が声を出した。
「もしもし、榎本さん?」

そのとき女神様が消えていったのに、僕は気付かなかった。


4 ● GM91
●30ポイント

『第3種探偵』

「あの?、サガワ商会さんはこちらでよろしいでしょうか?」
雑居ビルの3階の1室。小男が軽くノックの後ドアを開けると、そこには人相の悪い男たちが数名たむろしていた。

「お前、誰や?」
中でも気の荒そうな強面の大男が来訪者を睨み付ける。

「これはご挨拶が遅れました。私、探偵を務めておりますイサクラと申します。」
「興信所がウチに何の用じゃい?」
強面は突然の来訪者に対して、不信感を露にして凄む。
しかし、イサクラの方と言えば、頭ひとつ違う相手に対してまったく動じず言葉を続けた。

「探偵免許:通産奉行認定:第03910007号。俗に言う第3種探偵でございます。以後、お見知りおきを。」
「だっ、第3種!?冗談も休み休み言……」
強面の口を封ずるかのようにライセンスを男の鼻先へ示すイサクラ。

男はライセンスの真偽については納得しきっていなかったが、自分に警戒させる間もなく懐からライセンスを取り出した早業を見逃すほど素人では無かった。今のが仮に得物なら今しがた死んでいてもおかしくないのである。何やら得体の知れない不気味さに嫌な汗が背中を伝う。臆した事を悟られないように一歩身を引くのが精一杯だった。


……説明しよう!
第3種探偵とは幕府が認定した特殊探偵資格である。一般の私立探偵とは異なり、その業務遂行に至っては特別高等警護組(特高)を凌駕する捜査権限を有する。具体的には公共交通機関の任意占有、公的私的を問わず家屋事務所への強行立ち入り、必要とあらば殺人までもが許容される。当然ながら「業務遂行上」という縛りは存在するが、その業務の特殊性もあって遂行する本人により判定されるのが実情である。なぜそのような資格が存在するのか、についてはまたの機会に……。


「ワカヤマ!座れ!……若いもんの非礼はお詫びしよう。そんで公儀の探偵さんが何の御用やろか?ウチは公儀に睨まれるよな事に覚えは無いけどな」
奥に座っていたスキンヘッドの中年男が苦々しげに口を開いた。

イサクラは我が意を得たりと嬉々として応じる。
「いや、私の仕事は取り締まりではありません。ちょっと人探しをしておりまして。この人物に見覚えは?」
「……知らんな」
「そんなはずはないでしょう。これはあなたの親……もとい直属のご上司の息子さんではありませんか?」
「オヤジは知っとるが息子は知らん」
「そうですか、では質問を変えましょう。先月、この事務所から資金150両ほどが盗難にあっておりますね。何故か盗難届けは出されていないようですが、時を同じくして、この事務所職員のキヤマコウイチさんの行方が不明になっておりますね。ここまでは間違いないですか?」

……そんな事まで調べてやがるのか、と言いたげな表情でスキンヘッドは、ああ、と頷いた。
「そのキヤマさん、先日居場所がわかりましてね。名護屋で公儀に保護されました」
なに?と強面のワカヤマが思わず腰を浮かすが、スキンヘッドに一瞥されると肩をすくめて椅子に座り込んだ。

「それで、金は?」
「保護された時、キヤマさんはほぼ文無しでして、公儀の尋問にも『金は兄貴に渡した』の一点張りのようです。この兄貴というのが先ほどの写真の方、サガワトキヤさんでして、実際名護屋でキヤマさんと一緒に居たという目撃情報も在りました。」

「……ボンは確かに先月名護屋に行くと言ったきり行方がわからん、本当や」
「余人はともかく私に隠し事はしない方が良いですよ」
「くどい!」
「……そうですか。失礼しました」

事務所を後にしたイサクラは表に止めたモトラーダに跨り、お気に入りの玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべると、帝都高速を東へ向かって駆け出した。

続く



* * * * *



「陽雲社の荒岩です。先生、原稿ありがとうございます。
早速ですが思うところを述べさせていただきます。

……そもそも、「探偵」ってなんなんですか?
人探しくらい、ちょっと魔力のある人間なら自分で簡単にできることでしょう?
どうしてわざわざこんな特権振りかざして強引に聞き込みなんてしないといけないんですか?
え?魔力が一切存在しない世界?
いやいやいや、そんな世界で秩序が保たれてるってのはちょっと荒唐無稽すぎじゃないですか?
ファンタジーも結構ですけど、もうちょっと真面目に推敲してくださいよ?。お願いしますね」


5 ● なぜなに
●20ポイント

シャーロック・ホームズ・ミュージアムのある
ベイカー・ストリートを、リージェント・パークの方から
オックスフォード・ストリート側に少し南下したところに、
家族経営の小さな「ワトスンズ秘密探偵社」
("Wastons' Detective Agency")はある。

グレードIIリステッドと称されるヴィクトリア朝時代の
歴史的建築の、美しい装飾の施された高天井のオフィスには
暖炉があり、今は単なる飾り棚として使われていた。
歴代ワトスン氏の写真と、輝かしい功績の数々が並んでいる。

この探偵社の業務の多くは、身元調査や身辺調査、
内偵や素行調査、そして、一番のお得意は、
「訳あって警察の手におえない行方不明者の調査」である。
訳あって警察の手におえない行方不明者とは何か…。
それは人間ではない、もしくはこの世のものではない
行方不明者なのだと言う。
そして、初代ワトスン氏の代から、現在までに
未解決の事件はなかったのだというから驚きである。


探偵ジョン・ワトスン氏は昼休みに軽くパブランチをした後、
腹ごなしに相棒のワトスン君とリージェント・パークを散歩していた。
今日は天気が良かったので、息子のジョナサン・ワトスンと
ジョニー・ワトスンに仕事を任せて、散歩を少し延長したところだが、
どうも先ほどからワトスン君が何かを言いたげな様子だ。

「どうしたんだね、ワトスン君。」

相棒のワトスン君は、いつもは寡黙だが、
何か言いたい時は主のジョン・ワトスン氏にだけは
吠え立ててでも、もの申すものなのだが…。
どうも今日のワトスン君は何かに気をとられては、
合間に何かを言いたげに、その青い瞳を向けてくる。

やがて、遠くからサイレンの音や騒ぎ声が聞こえ始めた。
ロンドン動物園にある研究室の方からではないだろうか。
また、猛獣でも逃げ出したのだろうか。

以前にも、似た様なことがあったのをよく覚えている。
まるでデジャヴか白昼夢、ファンタジーのようである。

拡声器を持った警備員が、何かを言いながら走ってくる。

「公園におられる皆さん!すみやかに公園から離れて下さい!」

ジョン・ワトスン氏はワトスン君に囁く。

「どうやら、また新たなエスケープ・アーティストが出た様だね、ワトスン君。」

ワトスン君は静かに頷き、空を見上げる。

何かが上空をものすごい速さで飛んで行ったようだが、
逆光でかすかなシルエットが一瞬見えただけである。

「公園におられる皆さん!すみやかに公園から離れて下さい!」

拡声器を持った警備員は、公園中を走り回るが、
ロンドンの人達は過去の経験からか、相変わらず動じないので、
ベンチに座ってポットに淹れた午後のお茶を楽しんでいた御婦人は、
「このお茶を飲んだら行きますけどね。何が起きたんですか。」と、
警備員にクロテッドクリームたっぷりのスコーンとお茶をすすめている。
警備員も警備員で、英国人らしくこの非常事態でもお茶のお礼は忘れない。
英国の空気は乾燥しているので、喉が渇いたのだろう。

少し前から英国中で流行っていた“Keep Calm and Carry On”
(「あわてずさわがず、今やってることを続けましょう」
※戦争中、街が爆撃されていた最中用に考えられたという英国の標語。)の
Tシャツを着た青年も、芝生でのんきに昼寝をしたままである。

ジョン・ワトスン氏とワトスン君も好奇心から、
ベンチで御婦人の横に座ってお茶をしている
警備員の方に歩み寄って行った。

「おや、これは立派なハスキー犬だな。飼い主はどこだい?」

警備員はワトスン君の頭を軽くなでると、
御婦人にお茶とスコーンのお礼を言ってベンチから立ち上がり、
ジョン・ワトスン氏の体を通り抜けて、
昼寝中の青年を起こしに行った。


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