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【人力検索かきつばた杯】
テーマ:3つの願い

創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
ルールははてなキーワード【人力検索かきつばた杯】を参照のこと。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

ルール
悪魔が3つの願いを適えてくれます。3つの願いがかなうと、魂を取られて死んでしまいます。死後も地獄で永遠の責め苦に苛まれます。
禁則事項
・1)不老不死の願いは魂が取れないので却下です。
・2)願い事を増やすのもNGです。

●質問者: garyo
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 11/11件

▽最新の回答へ

1 ● グラ娘。
●10ポイント

とつぜん、犬が現れた。イングリッシュコーギーだっけか?
「あなたの願いを3つ叶えるワン! はてな関連限定だワン!」
「はてな限定?」
「そうだワン、はてな関連の望みで好きなものをいうとよいワン!」
……なるほど。しなもんさんだっけか?
会長職ともなれば、そりゃあはてなに関しては、社長を顎でつかい、ディレクターも
社員も思いのまま、どんな願いも叶えてくれるのだろう。ふか?く納得。
「く、くいずを……」
「クイズかワン?」
「そう、回答即オープンではなく、回答を伏せておける機能の実装おば……」
「おやすい御用だワン」
しなもんさんは、その辺をくんくんと嗅ぎまわりながら、うろうろしている。
……叶ったのか?
「次の願いは何ワン?」
「わ、わたしに……し、質問者としての才能をください! 面白い質問とか、
全然思いつかないお約束クイズがすらすら思いついて、質問が注目を集めて、面白い回答がつくように……」
「一個の願いじゃあないような気がするワン。でもまあいいワン。
その願い、叶えてしんぜよう」
何故だか最後だけ壮言に。しなもん会長は、犬用のひも付きボールにじゃれ付いている。
「し、しなもん会長?」
「儂はしなもんではないワン! 悪魔だワン!」
……あ、あくま????!
「そうだワン。願いをみっつ叶えたら、魂をいただくワン。
3つの願いがかなうと、魂を取られて死んでしまうワン。死後も地獄で永遠の責め苦に苛まれますだワン!!」
そんな、聞いてないよ?。
「言うの忘れたワン。さあ、最後の願いを言うワン」
追い込まれた私。困ったもんだ。
そして私はひらめく。ある秘策を!
「じゃ、じゃあ……最後の願いは……かきつばた杯で……」


かきつばた杯でベストアンサー取りまくりが、わたしの本来の願いであったのだが、
かきつばた杯はあくまでも実力や質問者との相性の世界。
このような安易な方法で得たいるか賞になんの価値があるのか。
と思い直す。さらに言えば、魂を抜かれ、地獄の責め苦というのがイヤだった。
そして、おもむろに願いを言う。
しなもん会長、もとい悪魔の力が絶大でも叶えられそうもない願いを。
「こ、講評を、素敵な講評を質問者さんから……過去の質問、かきつばた杯に答えた全ての回答において、
講評をつけて貰えるように……」
「…………ワン?」
「できますか?」
「………………ワン


というわけで、しなもん会長、もとい悪魔は去っていった。
一つ目と二つ目の願いが叶えられるのはさておき、第3の願い。
悪魔の力を持ってしても…………。


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 過去の質問は昔のかきつばたのように回答がそろうまで読まずにおいて、一斉に読んで回答をつけていたのですが、最近は回答を沢山頂いて中々難しくなっていました。 今回から回答を頂いたら即コメントつけることにします。 読んでコメント書くのはけっこうドキドキします。 さて感想ですが、読みやすくて面白いです。 すこし楽屋ネタ(かきつばたネタ)になっている気がします。私は判りますが、ネタを知らない人が読んでも面白いといいなと思います。

2 ● standard_one
●9ポイント

ここはとある小学校
今日は未来ある子供たちに警察官がわかりやすく訓示を述べる行事の日
校庭に座る子供たちを前に警察官が切り出す
「皆さんは自転車に乗っていますか?自転車も交通ルールを守って乗る乗り物です、私はこの世から一切の交通事故がなくなることを願っています」
すると子供が一人立ち上がり大きな声でこう言った
「お巡りさん!ボクは悪魔です!ボクならお巡りさんの願いを3つまで叶えることができます!」
一斉に周りの子供たちがドっと笑った
警察官も笑顔で応えた
「それは凄いね、じゃあお願いしちゃおうかな」
すると子供はこう言った
「でも願いを3つ叶えるとお巡りさんは魂を取られてずっと地獄にいなければならなくなります」
周りの子供たちがまた笑う
「それは怖いな、でも世の中の平和のために尽くすのが警察官だからそれは我慢しよう」
そして警察官は交通事故の撲滅と犯罪の撲滅と世の中の人々の助け合いを願った
・・・
犯罪がなくなり助け合いの精神の元、現世から地獄へ来る人はいなくなり
地獄の亡者もポツリポツリと減り始め、今では亡者の数より鬼の数の方が多い始末である
ごく稀に地獄に落ちてくる亡者から聞いた限りでは今の現世は事故も犯罪もなく人々が助け合い充足した世界になっているという
そこにまたあの子供が現れる
「人間が人間同士の助け合いで願いを叶えてしまうからボクに願い事をする人間が居なくなってしまったぞ、どうしてくれる」
警察官は少し悩んでから答えた
「私は3つの願いと引き換えに地獄に居ます、あの願いがなかったことになったらどうなりますか?」
・・・
ここはとある小学校
今日は未来ある子供たちに警察官がわかりやすく訓示を述べる行事の日
校庭に座る子供たちを前に警察官が切り出す
「皆さんは自転車に乗っていますか?自転車も交通ルールを守って乗る乗り物です・・・」
なぜか警察官はそれ以上声が出ない、必死に喋ろうとするが声が出てこないのだ
見る間に大量の汗が吹き出し、いかに必死に喋ろうとしても言葉が出てこない
すると子供が一人立ち上がり大きな声でこう言った
「お巡りさん!何事もバランスが大切です!自転車もバランスがよくないと転んでしまいます!」
どこかで見覚えのある子供だ、しかし誰だったか思い出せない
そうしている間にも汗は噴き出し続けノドはカラカラだ
警察官は必死の思いで声を絞り出す
「み・・・水」
子供がニヤリと笑みを浮かべてこう言った
「それが願いですね」


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 いいですね。思わすにやっとしてしまいます。 読みやすくて途中でどうなるのかなと思いました。

3 ● グラ娘。
●9ポイント

「そ、そりゃあ自分の人生に満足してる! なんて言えないわよ。
こんな平凡な毎日を繰り返すのも嫌だし……
ある日突然真っ白くてほわほわの可愛い妖精とパートナーになって、
悪い奴と闘えたりとかしたら楽しいだろうなぁって思うときもあるわ。
プリキュアみたいな……」
「それがキミの望みなのかい? 鹿名目マミカ?」
「だからって悪魔みたいなのの力を借りようなんて思わない。
私が望むのは、その悪魔とかと闘う力なんだから!!」
「キミの願いを聞き入れた」
「えっ?」


「また、Qベエがやらかしたらしい……」
「ほんとにあいつは……。で今度は何?」
「それがな、契約時にはたったひとつ願いを叶えてやるだけで十分なのに
3つも願い事を受け入れたらしい」
「まあでも、それを叶えてやった後は、その少女から第二次性徴期の絶望……
じゃなかった……『魂』が手に入るんだろ?」
「それが、なにやら厄介なことになったらしくて……」


「ひとーつ、平穏な日常からの脱却。
ふたーつ、白いパートナー。
みーっつ、敵と闘う力!」
「えっ? なに? ざっくりと……まさか、それがわたしの願いだなんて……
いやよ、叶えて欲しくなんか……」


怪しく光るモノアイ。とそれに続いて明らかになる巨大な機動兵器の全貌。
モスグリーンに彩色されたそれは、巨人のシルエットを持っている。
二体の巨人が会話を交わす。その内部にいる搭乗者間の通信だ。
「お前はここに残れ」
「は、曹長」
一体の巨人――というかザク――は、住宅地に隣接した工業区画へと向かっていく。


「きゃあぁ! なに? あれ……」
マミカの頭上を大きな黒い影が飛び去っていく。
「まさか……、あれが敵? 行かなくっちゃ! でも……わたし……
まだ、妖精さんと知り合って、闘う力を持ってないわよ」
戸惑うマミカを見つけ駆け寄る人影。
「マミカ! 何しているんだ」
「お、お父さん?」
「何してるんだ、木馬へ行け、木馬へ」
「も、木馬?」
「あっちだあっち、早く行け!」
父親に促され、木馬とかいう方面へ向かうマミカの前に一人の少女が立ちはだかった。
「鹿名目マミカ。あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」
「あ、あなたは……」
「わたしはホム村アケミ。って名前はどうでもいいわ。ほんとは良くないけど」
「え、えっと、わ、わたしは、大切、だよ。家族も、友達のみんなも、大好きで、とっても大事な人達だよ」
「もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね。さもなければ、すべてを失うことになる」
そんなこと言われてもなあ……。ここからのストーリ展開のためには、マミカは立ち止まることは許されない。


ホム村さんのことは無視して、マミカは駆け出した。とそこには一体の敵モビルスーツが。
「どうしよう、あんな敵想定外よ。妖精さんは見当たらないし……」
と、ザクの放ったマシンガンの爆風の衝撃を受け、マミカは吹き飛ばされる。
そのまま、開け放たれた連邦軍のモビルスーツのコクピットへ。
「こ、これは……」
マミカはモビルスーツの操縦経験など皆無だ。
だが、出来る……ような気がする。
マミカが得た三つ目の力、すなわちNT能力。それが開花しつつある。
「大丈夫、わたしは強い女の子じゃないか」
操縦かんを握るマミカ。
「こ、こいつ、動くぞ」
そのままガンダム――あ、言っちゃった――を起動させ、ザクに対峙する。
ザクはマミカの乗るガンダム目掛けマシンガンを放つがガンダムの装甲には通用しない。
「なにか、ぶ、武器は……」
ビームサーベルを引き抜き、ザクを両断するマミカ。
返す刀で、Qべえもついでに八つ裂きにしようとおもったが、思いとどまり叫ぶ。
「美しき魂が! 邪悪な心を打ち砕く! マーブル・スクリュー!!」
掛け声はそれっぽいが、結局頭部のバルカンを連射し、Qベエを葬り去った。
「……はぁ、はぁ…………。
確かに、平凡な日常から……
敵も居たし……
白いパートナー……って
なんか違????う!!」

次回予告
「サイド7を発つ木馬を待ち受けていたのは、何事も無かったかのように復活していたQベエだった。Qべえは、紅いモビルスーツに載り、マミカと対峙する。マミカを絶望へ陥れるために……。
次回『マミカはとっても嬉しいなって、ぶっちゃけありえない』」


機動兵器マミキュア 第一話完


「で、願いは叶えたんだろう? 3つとも。Qベエの奴が?
なのに何故魂が取得できない?」
「それが、3つ目の願いが、完全ではないらしい」
「どういうこと?」
「真のNTとして目覚めるまでは願いは保留ということで……」
「じゃあ……逆シャアまでお預け?」
「そういうことだな……」
「そういうことか……」
「そういうことだ……」
「先は長いな……」
「先は長い」


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 笑えました。 思いっきり趣味に走られているのがいいと思います。 ……個人的にはほむほむも出てきたら嬉しかったと思います。

4 ● minoru-0413
●9ポイント

「ただいま。」
誰も居ない部屋に、無意識に声をかけ、靴を脱いだ。
「御帰りなさい。」
ぎょっとして振り向くと、リビングから足音が近づいてくる。
姿を現したのは、にこにこと笑う青年だった。

綺麗にセットされた髪を撫でながら、青年はソファに腰掛けた。
「どちら様ですか…?」恐る恐る訊くと、
「初めましてですね、一瀬と申します。」とだけ答えた。
暫くの沈黙、何を話すべきか、彼は何者なのか、不法侵入は110番か、と俺の頭は忙しく疑問や提案を述べてきた。
首をかしげて笑うだけの一瀬は、感情を顔に出そうとしない。
雨の音、
雨の音、
雨の音。
「貴方の御願を3つ、訊きましょうか。」
「…いきなり何ですか。」
保険会社のCMで見たような手振りで一瀬は語り始めた。
「私、一瀬悪魔という者です。本名ですよ。面白いでしょう。」
ただにこにこと仮面を脱がずに、淡々とした口調で、カセットテープのようにたらたらと言葉を流す一瀬。
怪しすぎる、怪しすぎるのだ。
「貴方の御願を3つ叶えます、叶え終わったら貴方を地獄に御招待しようと。」
「よく見る悪魔と同じですね…漫画とかで。招待されても困りますよ。」
「おや、弟さんと同じリアクションを取られてしまいましたね…ふふ。」
双子の弟はやはり一人暮らし、此処からそう遠くない街の洋食店を営んでいる。
小さい頃から料理が好きで、毎日楽しそうに働いている。
兄である俺は、そこらへんによくある不動産会社で普通に働いてるだけ。
何だろうな、この違いは。
二卵性双生児というのは赤の他人みたいだと俺は思う。
世間は違うかもしれないが。
「嬉しいね、アイツと似ているなんて言われるのは滅多に無いから。」
「良く似ていらっしゃると、私は思いますけどね。」
「だと良いですけど。」
「では1つ目から参りましょう。何にしますか?」
即答、理由は無い。
「殺されない夢が見たい。」
「と言いますと?」
「最近夢の中で必ず誰かに殺される。見飽きたんでね。」
一瀬は頷くと、俺の額に手をかざした。
「それだけ…ですか?」
「ええ、叶えましたよ。2つ目をお願いします。」
地獄行きだが、小さな願いにすれば苦痛も減るんじゃなかろうか。
ちょっと考えてみる。
小さな願いにしたら、針の山もツボ押しぐらいになるんじゃないだろうか。
火の海が40℃の風呂になるかもしれないじゃないか。
…結構阿呆らしいことを思いつくんだな、俺は。
弟ならどうしただろうか。
アイツは結構普通な奴だから…
そういえば、何で一瀬は俺の弟の事知ってるんだ?
弟と同じリアクションって、弟にもう既に会っている…
弟は既に…
地獄行き?
「雨は良いですね。悪魔は雨が好きなんですよ。」
「へぇ、初耳だ。どうして?」
「雨の方が人が殺し易いんですよ。傘や荷物で手が塞がってる人を狙う殺人犯居るでしょう?」
「…何だ、聞かなきゃ良かったな。」
「そろそろ決まりましたか?」
よし、これなら小さいから大丈夫だろう。
「弟が今どうしてるか、知りたい。」
「貴方の弟さんは今私の部下が伺っております。貴方と似たような御願をされてますね。やはり兄弟というのはよく似ていらっしゃる。」
「…テレパシーでも使えるんですか?」
「使えますよ。さて、3つ目をお願いします。」
さらりと答えた一瀬は雨の音に耳を傾けながら待っている。
…弟も願を叶えたら地獄行きか。
最後の願いも小さいものにしようと思っていたのに。
俺の心はそうじゃないのか。
一緒に地獄で苦しむというのはどうだ。
嫌な気分になるのは何故か。
俺は一体アイツに如何して欲しい?
「弟が、『寿命』が尽きて死ぬまで、そして死んだ後も幸せであるように。」
「叶えましょう、その願い…を……」

「おはよう。朝飯作っといたよ。」
寝ぐせを直しながらリビングに行くと、弟が居た。
合鍵を渡してあったが、来るなら連絡くらいくれれば良いのに。
「昨日変な夢を見たよ。悪魔が来て、3つ願いを叶えましょうっていう。」
弟はテレビのチャンネルを変えながら、楽しそうに語った。
「夢じゃないのかもしれない。兄貴が生きてるから。でも夢かな。俺生きてるし。」
その言葉を聴いて、俺は小さく笑った。
久し振りに、殺されずに夢から覚めた。
すぐ隣に居る弟の、今していることが分かる。
弟が生きて、笑っている。
そして、俺も生きている。
「俺も見た。その夢。」
結局俺等は、似てるんだな。


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 ほのぼのとしたお話ですね。 2つの願いのタイミングもぴったり同じでないといけないところがいいですね。

5 ● グラ娘。
●9ポイント

全身に輝く透明の結晶を纏った人型が迫り来る。
俺はそれから必死で逃れようと駆け出す。走る。
しかし辿り着いた先は袋小路だ。遂には追いつかれ、数十という同じような結晶人間達に囲まれる。
奴らはだんだんと俺に近づき……。
やがて、その中の一人の手が俺の目前まで…………。



――またあの夢だ……
5年前に起こった悲劇。俺達は幸いにして被害を免れているが、それでも俺の深層心理ではあの出来事の恐怖を抱き続けているらしい。
ふと、ベッドサイドの時計を見た。
5:50。
いつもよりは少し早いが、もう一眠りするには遅い時間だ。
俺はとなりで静かに寝息を立てる妻と子を起こさぬようにそっとベッドから抜け出した。

「今日はえらく早いじゃないか?」
研究室で、コンピュータに向かう俺に背後から声がかかった。振り向くと所長が立っていた。手にはふたつのカップが握られている。
所長はコーヒーの入ったそのうちのひとつを俺に手渡しながら、
「どうだい? ひよこちゃんの様子は?」
『ひよこ』というのは所長が、俺の娘に付けたニックネームだ。
「ええ、おかげさまで相変わらず元気ですよ。今朝は、畑にイチゴを取りに行くとかで、はしゃいでました」
「そうか」
「もちろん、体温や心拍など、定期観測データも正常です」
「いや、いいんだ。そういうつもりで聞いたんじゃない。といっても、まあ気にはなってしまうがな……」

5年前、この研究所でひそかに培養していたウィルスが盗みだされた。
まさに絶海の孤島というべき立地のこの研究施設に進入し、厳重なセキュリティを掻い潜った犯行は、どこかの国家レベルの組織が背後に付いたものだと考えられている。

盗まれたウィルスは2種類。
『HOPE』、つまりは『希望』という名を冠した『H?α』と『H?β』。
その二つのウィルスは、まさに人類の望みをかなえるべく意図的に改良を加えられていた。 炭素をダイアモンドに再構成させる能力を備えた『H?α』。
感染した生物の遺伝子情報に関与しテロメアの短縮を阻止する『H?β』。
つまりは金銭欲と不老不死という二つの願い――希望というよりはむしろ欲望だ――を叶えるべくして創り上げられたものだ。
それらはほとんど完成していた。その情報は、極秘にはされていたが、漏洩を防ぐことはできなかった。
せめてもの救いは、暴力的な手段によって、それらの奪取が図られ無かったこと。
この研究所は今も、その機能を失っては居ない。

5年前、、つまりは二つのウィルスの盗難の直後に世界は混沌に陥った。盗まれた『H?α』と『H?β』は、交じり合い、突然変異し、二つの力を併せ持つ、脅威のウィルスとなった。
そしてそのウィルスが人類に猛威を振るった。


「あれから5年も経んだな……」
ふと所長が漏らす。
「外はどうなってるんでしょうね」
もう何度も繰り返されてきた会話だ。
脅威のウィルスを発端とする悪夢の発生初期の映像は、この研究所でも衛星を通じて受信できていた。
ウィルスに感染し、死を迎えることのない生ける屍となった者たち。
その体の表面は、ダイアモンドで覆われ、思考能力を無くし、彷徨う。
考えてみれば滑稽な話だ。高価な宝石で全身を飾りつけたゾンビが街を徘徊するのだ。
しかし、それらを間近で見たものは、さぞ戦慄を覚えたことだろう。
ことに、そのゾンビたちが新たな感染者を求めて、襲い掛かってくるとすれば……。

瞬く間に、都市はその機能を失い、ライフラインも断絶。この隔離された研究所からはそれら様子を伺い知ることはできなくなった。
ここにいる研究員や職員、およびその家族以外の生存は絶望的ではないか? という意見も多数を占めている。

「なあに、うちの研究所は無事なんだ。他にも孤島や山奥で生き延びている奴らはいるさ。早いとこ、助け出してくれって願ってるんじゃないか、今頃みんな」
所長は軽く言う。意識して、深刻に考えまいとしているのだろう。
俺達に関して言えば環境が、味方した。
元々極秘の研究を行うために、本島から遠く離れた孤島に設立された研究施設。その状況の特殊さゆえに、初期段階から自給自足が可能となるように設計されていた。
農業をするものもいる。周囲は豊富な漁場で、水産物に困ることはない。電力は自然エネルギーによってまかなわれている。水も海水をろ過して生成可能なのでなにも困ることはないのだ。
この島に居る限り、ウィルスの感染から逃れ、自給自足の平和な毎日が続けられた。
「そうですね……。そうだといいのですが……」
それを聞いて、所長は遠くを見つめながら呟いた。
「その為にも…………」
そこで、所長は言葉を切った。
所長の言いたいことはわかっている。
『希望の卵』。
人類を滅亡寸前まで追いやった『H?α』、『H?β』に対抗すべく、研究を重ねて辿り着いた実験体。
幸いにして、『H?α』、『H?β』のふたつのウィルスのサンプルはこの研究所にもわずかではあるが、残されていた。
それを元にして、脅威のウィルスに耐えうる遺伝子構造を持ったサンプルが創りだされた。
わずかな望みではあるが、残された人類にできたささやかな抵抗の産物。

「しかし、皮肉なもんだな」と所長。
「…………?」
「ええ、考えても見ろ、ランプの魔人か、悪魔でも現れて3つの願いを叶えるといわれたら……人間は何を望む?」
「ダイアモンド……、永遠の命……」
「そうだろう。『H?α』は炭素から無限のダイアモンドを生み出す。
いわば金銭欲を叶える存在。
『H?β』がやってくれるのは、人間の老化防止だ。
そもそも、盗み出した連中がずさんな管理であんな悲劇を生み出さなければ……」
――そうであればどうなったのだろう?
――ふたつのウィルスは平和的に活用されたのか? それとも……
俺の顔に浮かんだ微妙な表情の変化には気付かずに所長は続ける。
「残る願いはあとひとつだ。慎重に考えないとな。みっつの願いを叶えた後は地獄で永遠の責め苦を……なんて洒落にもならん」
みっつめの願い……。俺は何を望むのだろう。
悪魔のウィルスの根絶か……。
その時、机の電話が鳴った。俺はそれを取り上げる。
『緊急事態です。所長をお願いします』
嫌な予感がする。俺は受話器をそのまま所長に渡した。
「なに!?」
電話に出た所長の顔が一瞬にして青ざめる。まさか……。
「島内に感染者が出たらしい。とりあえず、隔離作業に入ってはいるが……」
あのウィルスには長い潜伏期間がある。後手に回った今……。
この島ももう終わりなのかも知れない。そして人類も。
「悠長なことをしている場合では無かったな。とはいえ……、できることは全てやってきたか……」
諦めにも似た口調で所長は言うと、研究室を後にした。

ウィルスに対抗する措置として、様々な研究が行われた。
その中で唯一、成果を挙げたのは、生まれてくる胎児の遺伝子を改変するということだった。
たまたま、その時期に妊娠が発覚した妻とさんざん話し合った。
そして決意した。生まれてくる子供にウィルスへの耐性を持せてやろうと。
その結果、誕生したのが愛くるしい娘だ。まさに人類の最後の希望、砦といえる。 しかし、それ以降、他の胎児に同じような遺伝子治療を行うことは出来なかった。
人体実験のサンプルとすることを恐れたのか、どの夫婦も子供を設けなかった。
唯一として、最後となる俺の娘。
島の人間が全て、ウィルスに感染してもあいつだけは、生き残るのだろう。
たったひとり。
そして、孤独のまま果てていく。

俺はどうすればいい?
俺の最後の望みは……。
娘が少しでも、生きながらえることを願うのか? 他の人間が次々に怪物化していくという地獄のような責め苦を味あわせながら……。
それとも…………。
俺は培養機に向かい、密かに開発した新型のウィルスを手に取った。
娘の体にも通用する、つまりは娘も俺たちと同じ病になるための、
本来であれば、何の利用価値も無いはずのそれを……。


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 SFですね。とても読みやすかったです。 読んでいるうちにどういう落ちになるのだろうとわくわくしました。 全体的に上手に書かれているので、落ちにもう少しインパクトがあるとさらに良くなると思いました。

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