「こんな辺鄙(へんぴ)なところに、炎天下をご苦労さん」
「おう、しばらくぶり。しかし、東京は暑いなあ」
「この辺りは多少ましだけどな。おい、まさか、手ぶらじゃないだろうな?」
「当然だ。手土産は、奥方に渡してあるさ」
「相変わらず、気が利くねえ」
「何、言いやがる。あからさまに催促したくせに」
「ちょっと待ってろ。準備をしてくる」
「へえ、土産は関サバの干ものか」
「まあ、行儀が悪い。私がやりますから、居間へ行っててくださいな」
「まあまあ。まずは干ものをあぶって、あとは、焼けるまでにつまめるものを……」
♪
「ビールは冷えてるよ、と。確か、明太子(めんたいこ)か塩辛(しおから)があったはずだけど。お、あの店の豆腐! すまなかったな、この暑い中を買いものに行かせて」
「朝は、それほどでもなかったの。それに、あなたのためじゃありません」
「はいはい、おもてなしの心ですね。じゃあ、冷奴には茗荷(みょうが)を刻んで。それとイカの塩辛でも出しておくか」
「まだ、みっつか。ええと、あと何があったっけな……」
─
ネタばらし不可。
とりあえずノーヒント。
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