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●質問者: グラ娘。
●カテゴリ:芸術・文化・歴史
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 13/13件

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11 ● たけじん
●31ポイント

『メロン味のミゾレ・果肉入り』

「ミユキぃ。いるかぁ」
俺は、お客の応対をしながら姪っ子を呼ぶ。慣れてないから、周りをバタバタ走り回っているだけだ。
「俺の車から、シロップのブルーハワイと、えーとメロンを取ってきてくれるかな。」
「えー、暑いよ」
もう、ガキはこれだから。
「それとって来たら、氷食って休んでていいから。」
遠ざかる足音を聞きながら、ますます増える客の応対をする。氷かき機が電動でよかった。
「ハイ、イチゴね。そっちのボクはマッチャか、おとなじゃん。ミゾレとメロンとブルーハワイは待ってね。はいレモン。」
バタバタという足音が帰ってきた。
「持ってきたよ、もういい?」
「ブルーハワイを一番左の子にあげて、残りの子にメロンをあげてくれたらいいよ。」
かいた氷の入ったカップを、ふてたミユキに渡した。もう氷が無い。ミユキの分をかいて、新しい氷をセットして、と。
「ミユキ、これ」
あっという間に俺の手の上のカップが消える。
ん?そこに立っている子は?まだ渡してないんだっけ?この、幼稚園児くらいの子はメロンだったよな。
「ごめん、まだ渡して無かったかな?」
うなづく。
「メロンだっけ?」
うなづく
メロンあげろって言ったろ、と口の中で呟きながら氷を削る。シロップをかけようとして、手が止まる。
あれ?メロンのシロップが無い。さっき取って来いって言ったよな。
「ちょっと待っててね」
うなづく
見回すと、ブルーハワイとメロンの瓶はほとんど空で、ミゾレの瓶がふたが閉まったまま転がってる。紙パックのブルーハワイのパッケージが空いたまま置きっぱなしで、まわりにシロップが飛び散っている。
やれやれ。中学生に頼むことじゃなかったか。
メロンの瓶をひっくり返して、なんとか一杯分を作る。
「お待たせしました。ごめんね。」
うなづく
でも帰らない。
「ん?どうしたの?」
「メロンはくエないの?」
「それ、メロンだけど」
顔が左右に振られる。右目と左目がダブるくらい、左右に振られている。
「メロン。メ・ロ・ン」
何を言っているんだろうか、この子… 俺は、車の中の様子を思い浮かべた。

あ。まさか。

俺は顔くらいの大きさの玉を、両手で作って聞く。
「メロンって、こおんな丸い果物のこと?」
今度は顔が縦に振られる。
「そう。まウいの。あエ、くエウんでしょ?あのおにーさんがもアったみたいに」
お兄さんてだれだ。あ、さっきのミゾレの子か。
「いや、あれは…当たりの時だけね。君は残念賞だから、それ一杯ただ。お代はいらないよ」
ミユキはどこなんだ。
「メロンがいい。メロン」
「だから、それ、メロン味だって」
「メロン、メロン、メロン」
おれは、頭を抱えた。この子の親御さんはどこなんだろ。ミユキはどこ行ったんだ。メロンはどこなんだ。
「メロン食べたいの?」
聞きなれた声が、足下でする。周りを見回していた俺は、足元の幼稚園児のそばにしゃがみ込む巫女さんを見つけた。
「おねえさんね、メロン持ってるの。いっしょに食べる?」
また顔が縦に振られる。さっきよりも振れ幅と速さが違う。おもし… いやいや、お客様だ。
巫女さんが立ち上がり、俺に振り向く。
「ね、このメ・ロ・ン、切ってくれる?」
巫女さんは、顔くらいあるメロンを、俺の目の高さに持ち上げる。これは、あのメロンだ。
「えっと、その、あの」
なんて言えばいいんだ。
「あの、ユミ。そのメロンは」
ユミの手の上で、メロンが半回転する。
「これ、タケシ君のでしょ。こんなことするの。」
俺の目の前には、”YUMI LOVE”と彫りこんであるマスクメロンがあった。
たぶん、俺、今真っ赤だと思う。
「あの、その、今夜それをね、ユミにね、えと」
しどろもどろ
「なんで、これ、私が持ってると思う?」
いたずらっぽく笑うユミの巫女の袴を、幼稚園児が引っ張る。
「あ、そうね、メロン食べるのね。うしろで、これ切るわよ。ミユキちゃんもおいで。」
いつの間にか現れたミユキと、浴衣姿の少年と少女が俺の屋台の裏にまわる。この少年は、ミゾレの子だな。
メロンを半分に切って、その半分を六等分。種を取って、横に切れ目を入れて、氷のカップに乗せて串を刺す。てきぱきと巫女の姿でメロンを分けるユミ。手際がいいねぇ。っと、そのメロンは
「はい、タケシ君もどうぞ。」
目の前のメロンを食べる。うまいなこれ。
「このメロンをね、この子がぶら下げて、お守り買いに来たの。目の前にメロンがあるじゃない?そこにさ、へたくそな文字が彫られてて、YUMIな んて書いてある。あら、これどこで買ったのって聞いたら」
「もらったんス」
と少年が言う。スポーツ刈りの少年は素直そうだ。
「っていうから、そんな気前のいい屋台ってどこって聞くとね」
「かき氷屋さん」
浴衣の似合う少女は、よく見ると美少女だったりする。
「ははぁ、なにかの手違いなんだろうなぁって思ってると、社務所の裏からミユキちゃんの声が聞こえてくるじゃない」
「あ、さっきのメロン。そんなの彫ってあったんだ。」
「でね、ちょっと休憩もらって、話、みんなから聞いたのよ。」
「ごめんなさい、メロンとメロン味のシロップ間違えたみたい」
ミユキが頭を下げる。ま、説明が足りなかったんだよな。
「説明が足りなかったんだよな。俺が悪い」
「見つけてよかったわよね。私が。ま、メロン程度だからよかったけどねぇ。」
いや、そうじゃないんだ。メロン程度じゃ
幼稚園児が、ユミの袴を引っ張ってる。
「アい、こエ」
プラスチックでできた先の丸い白いフォークの先に、何か挟まっている。
「あら、何?これ」
さあて、なんて言おうか。予定してたシチュエーションと違いすぎて。ええい、出たとこ勝負だ。

指輪のサイズが合っていることを祈ろう。


グラ娘。さんのコメント
なんとなく、推敲不足とか言ってしまえば、推敲の鬼に対して失礼にあたるような あたらないような。

たけじんさんのコメント
見抜かれますねぇ。

12 ● meefla
●50ポイント

拓也とカオス

「さぶっ」
拓也は12月の冷たい風に、ダウンジャケットの襟を立てた。抜けるような青空だが、朝の6時だ。
庭では拓也の気配を感じたのか、カオスが吠えている。
「いま行くよ」
拓也はカオスにリードを付けた。
カオスは白い北海道犬で、別名『お父さん』。
散歩に出るたびに、出会った人たちから「『お父さん』だ」と呼ばれるので、本人も、いや本犬も
――ピキッ――
拓也のダウンジャケットは急速に薄くなっていき、かき消えた。
蝉の声がしている。
夕方とは言え、まだまだ暑い。
Tシャツ姿の拓也は、首を横に振った。
「まただ」
彼は、ジーパンのポケットからピルケースを取り出した。中には紫色をした錠剤が入っている。
口の中に放り込んだ錠剤は、唾液ですぐに溶けた。
「行こうか」
カオスは嬉しそうに尻尾を振った。シベリアン・ハスキーの散歩は大変だ。

神社に向かう通りは、夏祭りの最中だった。
拓也が子供の頃と、人出はあまり変わらないが、変わったものが一つある。
夜店だ。
昔は夏祭りというと、どこからともなく集まってきたテキ屋のお兄さん・おじさんたちが、「カラーひよこ」だの「ミドリガメ」だの「パンダうさぎ」だのを売る夜店を出していた。
今はそういういかがわしい店はことごとく排除され、「地元商店街の有志」による、毒にも薬にもならない夜店しかない。
拓也は、かき氷を売っている夜店の前で立ち止まった。
「ミゾレを一個。蜜は多めにしてくだ
――バキッ――
「おまたせ。メロン一個。……それにしても、可愛いワンちゃんだこと」
果物屋のおばさんは、拓也にメロンを渡すと、カオスの頭を撫でた。
「シェパードかい?」
「ええ。ジャーマン・シェパード」
答えながら拓也は、ポケットをまさぐった。ピルケースから錠剤を取り出して飲み込む。
「帰るよ、カオス」
カオスは、拓也がぶら下げているメロンの匂いを嗅いでいた。

駅前の商店街を抜けると、カオスの散歩コースも終わりに近い。
拓也とカオスは、もう少しで家にたどり着こうとしてい
――ベキバキッ――
倒れこんだ拓也は雪に埋もれながら、カオスに言った。
「だんだん薬が効かなくなってきてるね」
ユングフラウヨッホは荒れ模様だった。防寒服を着ていても、吹き付ける雪と風が容赦なく体温を奪っていく。ズボンのポケットに手を入れるのは至難の業だ。
「カオス。僕もう疲れたよ」
目をつぶろうとした拓也の顔を、カオスが舐めた。その首には、小さな樽がある。
凍える手で拓也は樽の蓋を開いた。中に入っていたはラム酒ではなく、ピルケースだった。
「ありがとう、カオス。でも、薬は飲まないほうがいいと思うんだ」
ピルケースを握りしめながら、拓也は目を閉じた。
体の上に降り積もった雪が、布団のようだ。拓也は寒さよりも眠気を感じていた。
「このまま眠れたらどんなに幸
――ミリメキミリッ――
ホエザルの鳴き声が静寂を破った。拓也の頭上を、原色の鳥が飛んでゆく。
アマゾンの熱帯雨林。幅広い川に面した空き地に拓也は立っていた。その眼前でゆっくりと流れるように動く動物。長さ10メートルはあろうかというアナコンダだった。
アナコンダは、チロチロと二股に別れた舌を出しながら、拓也に近づいてくる。
拓也が振り返って駆け出そうとしたその時、森の中から黒い影が飛び出した。ドーベルマン・ピンシャー。
「カオス!」
アナコンダと拓也の間に割って入ったカオスは、アナコンダに向かって威嚇の唸り声を上げた。アナコンダの目に警戒色が浮かんだ。
カオスは少しづつアナコンダとの間合いをつめていき、もたげた鎌首を狙ってジャンプした。アナコンダは素早くスウェイし、カオスの牙は空を切った。
地面に降り立ったカオスの脚に向かって、アナコンダの体がムチのように跳ねた。カオスはアナコンダの攻撃をジャンプでかわしつつ反撃のチャンスをうかがっていたが、何度目かのジャンプの途中でアナコンダに捉えられた。カオスの体の回りに、アナコンダが巻き付く。カオスはアナコンダに噛み付いたが、アナコンダの固い鱗に覆われた体は、カオスの牙をものともしなかった。
締め付けられてのけぞったカオスの口から、赤い舌が見えた。拓也はズボンのポケットをまさぐった。ない、ピルケースがない。このままではカオスが死ん
――バリボキグラミシッガラガラグシャッ――
拓也の現実は完全に崩壊した。


「大丈夫?」
アマギ博士の声に、フィリップは息も絶え絶えにヘッドセットを脱いだ。
「なん……とか。アナコンダと喧嘩しちゃいけない、って事だな」
物理的な圧迫を受けた筈はないのに、体を動かすたびに筋肉が痛みを訴えた。アマギ博士は、憂鬱そうな表情で言った。
「また、1からやり直しね」
フィリップは首を横に振った。
「これまでに比べたら、だいぶ長持ちしてるさ。昔なら瞬殺されてた所だ。気になるのは……」
「何?」
「現実固定薬の効果が弱くなっている気がする。耐性ができてるのか、それとも……」
フィリップは、視線をかたわらのベッドに向けた。そこに横たわっているのは、拓也。眠っているだけのようにも見えるが、この状態になってすでに9ヶ月が経過している。嗜眠病だ。胃瘻からの流動食がなければ、すでに餓死していただろう。
「ま、手強いのは覚悟の上の治療だからな。ドリームダイバーの意地にかけても、こいつを叩き起こしてやるぜ」
「お願いね。彼が目覚めないと、人類に未来はないわ。で、次のセッションはいつにするつもり?」
フィリップは少し考えた。
「今日はもう無理だな。明日の0900から。……ひとつ聞いていいか?」
「いいわよ」
「『ミゾレのかき氷』って何だ?美味しそうなイメージしかなかった」
アマギ博士は初めて微笑んだ。
「あなたは食べた事がないでしょうね。日本の伝統的な食べ物よ。私の家に来る?ごちそうするわ」
フィリップも笑みを浮かべて、うなずいた。

拓也の眠るベッドから離れ、二人はドアに向かって歩き
――ピキッ――


(了)


グラ娘。さんのコメント
正当派のSFですね。面白かったです。 勢いでベストアンーにしそうになりました。

13 ● a-kuma3
●48ポイント ベストアンサー

『Hello, Mr. Green.』


「お待たせ。緑川くん、早いねー」
「いや、オレもさっき来たばっかりだよ」
「だって、約束の時間まで、まだ一時間もあるよ」
「うん、家に居たって、平和サミットがどうとか、つまんないニュースしかやってないしさ、それに、お祭りだと思ったらさ、なんか、もう、うずうずしちゃってさ」
「うん、私も」

もしかしたら、陽佳(はるか)が来ているかもしれない、とか思ったなんてことは、絶対に言わない。
朝顔の柄の浴衣に、アップした髪がとてもよく似合っている。まぶしいのは、提灯の明かりで逆光になっているだけじゃなさそうだ。いつのまに、こいつはこんなに女っぽくなったんだろう。

「まだ、みんなが来るまでには、しばらくあるね」
「どうせ、弘(ひろし)なんて、がっつり遅れてくるんだろ。いやー、わりぃわりぃ、電車が脱線しちゃってさー、とか言いながら」
「ふふっ。弘くん、小学校のころから、言い訳がおんなじだもんね」
「せっかくだから、夜店の方でも、ちょっと覗いてこようか」

なるべく、さりげない風を装って、陽佳の手を引く。
声は震えてなかったろうか。
手は汗ばんでないだろうか。
やべ、緊張してきた。後ろを振り向けない。

「慌てなくったって、夜店は逃げないよ」足がもつれそうになってたオレの横に陽佳が並ぶ。手はつないだままだ。
「ふたりっきりでしゃべるの、久しぶりだね」
「そうだなあ。小っちゃいときは、いつも一緒だったのにな」
「中学に入ってから、お父さんの仕事を手伝ってるんだっけ。学校もよく休むもんね」
「中学生には、中学生にしかできない仕事がある、んだと」
「いいなー、わたしも仕事してみたーい」やっぱり、言うことは、まだ子供だ。同い年のオレが言うのも何だけど。

「ちょっと、腹へらね? 陽佳、焼きそば好きだったよな」
「軽く食べてきちゃったんだよね。私、かき氷が良いな」
「良いね、かき氷。やっぱり、ミゾレ?」
「もち!」

陽佳を待たせておいて、かき氷の屋台へ向かう。

「おじさん、ミゾレをひとつと、えーと、ブルーハワイをひとつお願い」
「あいよ。ミゾレとブルーハワイ、ひとつずつ!」

かき氷ができあがるのを待ちながら、後ろを振り返る。
こっちを見ていた陽佳と目があい、こっちに向かって小さく手を振ってくる。なんとなく照れくさい感じがしたが、オレも小さく手を振りかえす。
親父の仕事に引きずり込まれ、自分だけが変わってしまったと思っていたけど、何も変わっちゃあいないんだ。で、みんなもちょっとずつ大人になっているんだ。祭りの提灯に照らされている陽佳を見ながら、こいつのことが好きなんだろうか、などということを考えていた。


「ほい、かき氷二つ、お待ち! 人が多いから、こぼすんじゃねえぞ」

屋台のおっさんの声で我に返り、オレは両手を伸ばして、かき氷を一つずつ受け取る。

「ぼうず、ごっつい腕時計してるじゃねえか。かっこいいねえ」
「おじさん、オレが頼んだの、ミゾレのやつだよ。これ、メロ……」
「ん?」
「いや、何でもないや。ありがとう、おじさん」

大人の世界が、無粋だ、ということを、あらためて思い出した。
人混みを離れ、腕時計をカードリーダモードに変更して、紙コップの底に当てる。思った通り、反応がある。イヤホンを耳にはめ、PIN を打ち込んで読み取りを開始する。

「Hello Mr. Green. Your mission, if you accept it ...」

ちぇっ、やっぱり呼び出しか。
あーあ、もうすぐ花火が始まるってのに……


(続く?)


a-kuma3さんのコメント
講評希望。 厳しい言葉には、耐性があるつもりです。 # ネットの外で、枕を濡らしてるかもしれませんが...

グラ娘。さんのコメント
旨い展開。伏線も良し。 タイトルとか登場人物の名前とかもいい感じで、 なんだか、ベストアンサーの気分です。 で、けちょんけちょんにけなされたいんですか? 逃げに走った気がしますね。ちょっとあっさりしすぎかな? と。 あと、賛美歌13番みたいに、緑イコール依頼の合図みたいなのを ほのめかせていればもっと良かったとおもいまふ。 そいから、おっさんが腕時計に触れたのは余計かな? まあ、それなりにめんどくさくて長いのを2作読んだあとってのもあって、 結構なプラス査定です。

a-kuma3さんのコメント
>> まあ、それなりにめんどくさくて長いのを2作読んだあとってのもあって、 << 運も実力のうち、かな? 最近は、自分が書き込む前には、他の人の回答を読まないようにしてます。 心が折れちゃうことがあるので(グラスハート)。 >> で、けちょんけちょんにけなされたいんですか? << 愛が感じられれば、耐えられるような気がしなくもない... 自分でも、もう少し盛れただろう、とは思うんですけどね。

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