6)の補足です。
入賞者でポイント希望者は事後申告お願いします。
(辞退された場合は使い道を別途検討します。)
締め切りは・・・自動終了させます。
採点はその後コメントします。
「マジュツ・ウキシロ・スズ、マジュツ・ウキシロ・スズ・・・」
なんだか変な呪文を呟いてる男(匿名)がこっちに近づいてくるよ。
「マジュツ・ウキシロ・スズ、マジュツ・ウキシロ・スズ・・・」
瞳は虚ろで歩き方もなんだか覚束ない、大丈夫なんだろうか。まるで締め切り前夜に追い込まれたプランナーみたいだ。
「よう、どうしたんだい、疲れてるのかい?」
男(匿名)は私の声に弾かれたように首をブン、と回し、目を見開いた。
「どうもこうもないですよ。なんですかアレは!」
それだけ言われてもなんのことやらサッパリわからないだろう。
「一つ目はまだなんとかなるんですよ。つい先週始まったアレも使えるし、何より解釈次第で幅が広いキーワードだから、科学技術系のものでもそうだと言い張ればなんとかなるでしょう。」
だからなんの話だ?
「でも次はなんですか? そもそもどうやって発音すんの? こんなのでベタなアレ意外に思いつくのはこんなのくらいですよ! まあ飛んでるのは最後だけですけどねっ・・・て自分で突っ込み入りますけど。」
目の光り方が怪しいしテンションが高過ぎる。なけなしの親切心を出してハイクで声を掛けたのは失敗だったかもしれない。
「それで言うに事欠いて、三つめはなんですか。前二つとどうやって絡めりゃいいんですか。私に死ねってのかっての」
ああ、それで冒頭の呟きに戻るわけね。お題消化とストーリー創出が主従逆転してるわけだ。
「もうね、開き直って登場人物の名前が○子とか、そういうので誤魔化そうかとも思ったわけですけど他に書く人もいないしそれでいいのか、とさんざん悩んでるうちに締め切りが迫ってくるわけですよ、恐怖ですよ」
別に君一人がプレッシャーを感じる必要はないだろう、そもそも名前でないんだし。
「ああ、あんなのを消化できる人がいたら見てみたいもんですよ。希代のストーリーテラーが気が狂ってる人ですよね」
私は彼(匿名)に見せようかどうしようか迷っていたフリップをそっと鞄に仕舞いこんだ。
「連想」なので、無理に消化せずともOKよ。
▽2
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『昭和19年、呉』
車は海軍工廠の脇を通り過ぎた。ほんの一瞬だったが、車窓から巨大な鋼鉄の塊が見えた。帝国海軍第一戦隊旗艦、大和だ。
「圧倒的じゃないか、我が軍は」
出川少佐は呟いた。
「まさに『浮城』だな」
死んだ父から教わった言葉だ。『浮城』とは『軍艦』の謂である。世界一の戦艦、大和にこそ『浮城』の言葉がふさわしい。
自室に着くと、面会希望者がいるという。急ぐ用事もなかったので、まずは会ってみることにした。
面会者は二人だった。中年の男と、若い女性。
「お忙しいところ恐縮です。私は武藤。東京帝国大学で心理学を研究しております」
武藤と名乗った男は、度の強い眼鏡の奥から、鋭い視線で出川を見つめた。
「で、どんなご用件です?」
「この大戦を勝利するために、彼女の力が役立つと思いまして。知り合いのつてをたどって、呉まで来ました」
「彼女の力?」
出川は女性に目を向けた。長髪で細身。小ざっぱりした服装の、ごく普通の女性にしか見えなかった。
「申し遅れました。こちらは勅使河原 鈴さん。……鈴さん、あなたの能力を見せてあげなさい」
女性は頷くと、瞳を閉じた。
「出川少佐は、神奈川のお生まれですね。お父上も海軍の軍人。将棋がお好きですが、最近はその暇がない」
出川は少しの間、言葉を失った。
「ぜんぶ当たってる。……魔術か、千里眼?」
武藤は初めて微笑んだ。
「千里眼でも透視でも読心術でも構いませんが、『魔術』ではなく『超感覚的知覚』と呼んでいただきたいですな。心理学の一領域です。……米国ではデューク大学のライン教授を始めとして、熱心に研究されています。残念ながら我が国では、福来教授の一件以来、まともな学問とはみなされていませんが」
武藤は苦々しく言うと、言葉を続けた。
「鈴さんの他にも、帝国全土を探せば『超感覚的知覚』の持ち主は大勢いる筈です。組織を作って帝国軍の秘密部隊としていただきたい。さすれば勝利は我が軍のものです」
出川は鈴に向かって言った。
「あなたのその能力には、距離の限界はないのですか?ここからルーズベルトの心が読めるとか」
鈴は首を横に振った。
「あまり遠い所は無理です。呉から北海道くらいならなんとか」
「まずは実証実験です。鈴さんを大和に乗せてください。敵軍司令官の考えを読み取って、作戦に生かすのです」
力説する武藤とは対照的に、出川は冷静になっていった。
「そうなると、上官の許可を取らなければ。あなたの能力がインチキではない事を彼らに納得させる必要がありますね」
「私達は、どんな条件でも呑みます。お手数ですが、是非ともお取次ぎください。彼らが信じるまで、何度でも足を運ぶ所存です」
武藤の言葉に、出川は事務的に答えた。
「検討してみます。連絡先をこちらに。必要があれば、当方からご連絡しますので」
事務用箋に旅館の住所と電話番号を書き込んでいる武藤の傍らで、鈴が小さな声で呟いた。
「千里眼なんぞの軍事利用を上司が許可するはずがない、と思ってますね」
出川は目を見開いた。
「私の事をどうお思いになろうと結構ですが、このままでは大和は来年沈みます。鹿児島の坊ノ岬沖で」
「ば、馬鹿なっ。大和は不沈艦だぞ」
気色ばむ出川を、鈴は冷ややかに見つめた。
「あなたのような人がいるから……。私は帝国が火の海になるのを見たくないだけです。今ならまだ間に合うかもしれない……」
武藤と鈴が出ていった後、出川は事務用箋を見つめた。ため息を付いた出川は、紙を丸めて屑籠に放り込んだ。
こうして日本は、大戦に勝利する最後の機会を失ったのである。
(了)