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【人力検索かきつばた杯】


テーマ:「竹取物語のスピンアウト」

かきつばた杯を開催させていただきます。
お題を、文章中に書く必要はありません。スピンアウトをどう解釈してもいいですし、竹取物語をどう受け取るかもご自由に。

「かきつばた杯」って何よ、という方は、こちらをご参考に。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

初参戦の方、大歓迎です。短くてもいいです。
感想文程度でよければ、ご希望があれば書きますので。

〆切は、3/27(水) から3/28(木)にかけての夜半(時刻不定です。すみません)を予定してます。

では、よろしくお願いします。

●質問者: たけじん
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 7/7件

▽最新の回答へ

質問者から

ポイント付きになってなかったので、仕切り直しです。
すいません、こっちです。


1 ● dabloger
●40ポイント

『ある男の恋』


その姫と時の帝とがお互いにお心を慰めあっていた頃、一人密かに姫を想う男がいた。姫を想う男は多かったのだけれども、その男は帝にお仕えし信頼も厚かったのでそのようなことは気振りも見せず、ただ心の中でその想いを圧し殺していたのだった。
しかし、姫が月に帰ってしまった後、男の想いはどういうわけかますます強まりどうしたら月へ行くことができるのかそのことばかり考えるようになってしまった。
そんな折、帝は男をお召しになり、一つの命を下された。姫の残していった薬の壺を手紙と一緒に一番高い山の頂上で焼いてくるようにということだった。


幾月かの旅を経て、男は今、山の頂上にいる。
帝の命を受けたとき男に誘惑が忍び寄った。それは大変畏れ多いことで実行するなどとんでもないことだったので、それを振り払おうと一心不乱に山へ登った。しかしとうとう誘惑は男の心を捉えてしまったのである。
その誘惑とは薬をのんで不死になり姫のいる月へ渡る手立てを探すことなのであった。今や男の心は姫への憧れでどうしようもなく、帝への忠誠を上回るほどになっていた。
いくらか逡巡した後、とうとう壺の蓋を開けてしまう。ぱっと煙のようなものが上がり男はびっくりして思わず煙を吸い込んでしまった。酷い眩暈がし、一瞬目の前が真っ暗になったような気がした。
(なんと、罪深いことを。やはり開けるのではなかった。)
男は蓋を開けたことを悔やんだが姫のことを考えるとあきらめきれず、薬をそのまま持ち歩いて山を降り始めた。
ふと、男は自分の身がやけに軽く感じることに気がついた。それにもうかなり歩いているのに疲れておらず、お腹もすいていない。
(こりゃあ、あの煙のおかげかもしれない)
先ほどの悔いはどこへやら、男は意を決して薬を全部のんでしまった。するとさらに体が軽くなり、地面を蹴り上げるとそのまま体が宙に浮かんだので、もしやこのまま空を飛べるのではとさらに上昇を試みた。これで月まで飛んでいけるかもしれないのである。
だが、身体はある高さまで到達するとそれ以上は昇ってゆけなかった。
男は再び地に降りてしばらく考えていたが、仙人なら月へゆく方法を知っているのではなかろうかと思い、疲れを全く感じなくなった男は姫の手紙を懐に、そのまま仙人を探す旅へと出かけてしまったのである。


長い旅で男は何人もの仙人を捜し当てて問うたが誰も月へ渡る法を知らず、時は流れ去る。やがて帝はお隠れになられ、仙人たちも姿を消してしまい、もはや男が薬をのんだのは気の遠くなるような昔になり、当時と似ても似つかぬ時代になった頃。
船が月へ渡りそこから映像を送ってきた。
何もない、荒野がただ広がる景色。それが月の景色だという。
男はそれを小さな地方都市の片隅で見て悲鳴を上げた。
(姫は、かぐや姫は一体どこにおわすのだ!)
絶望のあまり男はそのまま気が遠くなり…


気がつくと男は山の頂上で倒れていた。薬の壺がそばに転がっている。なにか不思議な心地がして、長い夢を見たような気がするのだが思い出せない。ただ、
(帝があのように仰せになったのは正しかったのだ)
となぜかそう思い、かぐや姫の手紙を懐から取り出して転がった壺の上に置いた。
そして散々苦労して火をつけてそれを燃やした。

(調岩笠伝)


dablogerさんのコメント
講評お願いいたします。

たけじんさんのコメント
不二山のシーンですね。あとで感想書きます。

たけじんさんのコメント
後半の時間経過がややつかみにくいのと、夢落ちっぽいところが少し心残り。 調岩笠は竹取物語外伝的には、取り上げられやすい人物ですから、目の付け所はいいと思う。 状況説明に加えて、せりふがあるといいなあ。

たけじんさんのコメント
苦言から始めますね。 一文が長いです。読点がもう少し欲しい。読んでいて息が切れます。 語尾に、”である調”が時々顔を出してます。 現実から離れた瞬間を特定するのに、”まさに火を点けんとする瞬間”を印象付けると、読者もその瞬間に戻れると思う。一瞬目の前が真っ暗になった瞬間に舞い戻ってくるのでしょう? ここを、”読者に考えさせない”ようにするのが一つの手です。 それと、未来の絶望した瞬間にどうして気が遠くなるのか、という疑問を解消する方法を探ると、落ちに納得が行くと思うんですが。 全体の雰囲気は、原作を壊さない配慮があっていい感じです。原作の帝は、思慮深く、この国を任せるに値する人物と読み取れますしね。

dablogerさんのコメント
講評ありがとうございます。 >”まさに火を点けんとする瞬間” これは発想してませんでした。かぐやへの思いでいっぱいなため焼くことも忘れて上の空な感じを出したかったのですが、このあたりのことを考えて構成するといいのですね。 いろいろと未熟な点があり読みにくくて申し訳なかったです。

2 ● グラ娘。
●30ポイント

竹取れ! 武藤さん

今は昔、竹取の翁といふものありけり、野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。
名をば、武藤の善蔵となむ言ひける。

ある日、善蔵が、竹林を歩いていると、なんかこうもう、ピッカーン!!! って輝いてる竹があったのね。
そりゃあもう、すごい輝きようで……。
で、近づいて中を除いたんだか、鉈でぶったぎったんだかは知らないわよ。
一説には、チェンソーを持ち歩いていたとか言われてるから、それでいわしたのかも知れないわねぇ。
とにかくその、光る竹をぶったぎって、ひきちぎって、ひねくりまわしたわけよ。

で、出てきたのがこの私。輝やく夜と書いて輝夜(かぐや)……じゃなくって、武藤フアってことなのね。
それで、竹取は趣味で、本来は発明家だった善蔵の元で私は育てられました。
いろいろな発明品の実験台にされました。でも、義理というか、仮の親とはいえね、感謝してるわよ。武藤善三には。
だから、全然辛い日々じゃなかったです。しんどくても、毎日がハッピーでした。
でね、父は発明に夢中になっちゃって、全然竹を獲らなくなっちゃったの。
仕方ないわよね。あの人。生活能力が全然ないから。今までなんとかやってきたのが奇跡だって。
数少ない知人の皆さんは口をそろえていうわ。

で、本題ね。
しかたがないから、竹取りが私の日課になっちゃったの。
そりゃあ、もう何本も何本も、毎日毎日切ってたら、たくましくなるわよ。
スレンダーでありながら、筋肉質で美貌に磨きがかかっちゃったわけね。
だから、そりゃあ、男どもがほっとかないって。

ほっとけないよ? って歌があったでしょ? 知らない? 知らないんならいいけど。
求婚されまくりよ。だから、私はね、他に好きな人がいるってわけでもなかったし、
断るのに都合がいいかなって思って、『かぐや姫』『求婚』でぐぐったわけよ。
そしたら、某知恵袋でぴったりの質問があったのね。
仏の御石の鉢
蓬莱の玉の枝
火鼠の裘
龍の首の珠
燕の子安貝
って、なんだかよくわからないものばっかり。
で、読めないんだけど『火鼠の裘』とか、『燕の子安貝』はやばそうだから、あとの三つをローテーションでもってこい! そしたら結婚してやるわ! って言い寄ってくる男どもに言ってたのね。
仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、龍の首の珠の3つね。
そしたらみんな持ってくるわ、持ってくるわ。
でもそもそも、それが何なのか、読み方も知らないし、現物なんて想像できないし、とりあえずgoogleの画像検索で、画像を探してもなんだかよくわからなくなって、じゃあいいわってことになって、とりあえずなんか持ってきた人は第一関門突破ってことにして、第二関門を設定したわけよ。
ああ、でもさすがに蓬莱のぶたまんの底についている薄い紙みたいな木みたいなのをはがして持ってきた人はとっととおかえり願ったけどね。

で、第二関門はかきつばた杯でベストアンサーとってこい! ってね。
これでだいぶと絞られるはずだから。
でも中にはねぇ、奇特というか、文才に恵まれているというか、突破しちゃう人がいちゃったりなんかしたわけよ。
で、仕方なく第三関門を設定することになってね、じゃあ、今度はかきつばたを開催した人じゃないとだめよって。
これだったら、大丈夫だと踏んでたのよねぇ。なにせ忙しい人だから。
それに質問履歴見ても、質問数が滅茶苦茶少なかったから。
大丈夫、絶対開催しないだろうって。
それが甘かったのね。
よりによってお題が竹取物語のスピンアウトだなんて。
もしかして、ユーザーIDのたけじんって竹取物語からとったのかしらん。

そんなわけで、たけじんさん。
わたしとほんとに結婚したかったら、grankoyama氏にかきつばた賞をあげちゃってください。
これが、最終関門です。

ちゃんとスピンアウトできたかしら?
さあ、今日の分の竹を取りにいかなかくっちゃ。


たけじんさんのコメント
あとでちゃんと書きますが、スピンアウトはしてますよ、確実に。

たけじんさんのコメント
ははは、2段落目からの変わりようがなんとも。 ”除く”とか”善三・善蔵”とか、いろいろ目につきますが、そんなことはどうでもいいです。 「蓬莱のぶたまんの底についている薄い紙みたいな木みたいなのをはがして持ってきた人」と結婚した方がよかったんじゃないかなぁ。 私、第一関門突破してない気がしないでもないんだけど、気のせいかな? 結婚したいかどうかは、”わたし”の画像を拝見しないとね。 私の妻より美人だったら、考えます。(美魔女もびっくりの妻の画像はUPしませんが)

3 ● どの回答も吟味して
●35ポイント

「星(スター)の物語」

時は898年。
「大変じゃー」
おじいさんは切った竹を手に慌てて家に入ってきた。
「どうしたんです?おじいさん」
家で晩御飯の用意をしていたおばあさんが落ち着かせる。
「これを・・・」
おじいさんが手にしている竹筒の中をおばあさんに見せる。
「まぁ、なんて事かしら」
そこには可愛らしい女子(おなご)の赤ちゃんがスヤスヤと眠っていた。
「竹を取っていたら、赤ちゃんの泣き声がしたもんで竹を切ってみたら・・・」
赤ん坊を拾ったいきさつを説明し。おじいさんはようやく落ち着く。
「おじいさん、これは神様から授かった宝物かもしれません。私達で大切に育てましょうよ」
おばあさんの提案におじいさんは承諾した。
二人の家は決して立派な屋敷ではなかった。
かと言って粗末なボロ小屋でもなかった。
昔は子供や孫と楽しく生活していたが、こんな田舎の生活はこりごりと子供達は都へ出て行った。
都の生活が心地いいのか、出て行ったきり子供達は一度も家に帰ってこなかった。
そんな寂しい二人の前に現れたのがこの赤ん坊だった。
二人はその赤ん坊を歌救夜(かぐや)と名づけた。

成長すると歌救夜の頭から竹のような緑の髪が生えてきた。
村人の中には彼女を奇異な目でみる人もいた。
その影響で彼女はいじめられ、落ち込んで眠れない日もあった。
そんな歌救夜におばあさんは子守唄を歌って寝かしつけてくれた。
それがきっかけで歌救夜は歌好きになり、日が暮れると歌うようになった。

チュッ、チュッ、チュン
チュッ、チュッ、チュン
心コロンコロン、羽ばたく
ポカポカお日様降り注ぐ
ルンルンルン♪
タンポポの綿毛がフワフワ浮いている
でもね、お日様隠れちゃうとシィーンとなっていく・・・
早くお日様顔出して・・・
待ち遠しいよ・・・
ねぇ、お願い・・・

その心地よい美しい声は、帝の宮廷に響き渡るほどだった。

歌の噂は少しずつ広まり、月日は流れ歌救夜は十七歳の年頃の娘になった。
噂を聞いた貴族達は彼女の歌を聴きにやってくるのであった。
「歌声からさぞ美しい姿のかと。是非そのお姿を・・・」
簾で覆われた向こうから彼女が、
「ごめんなさい、あなた方が思うほど美しくはありません」
と断る。
姿を隠せば隠すほど見たくなるというのが人の性。
ある夜、一人の貴族が歌救夜の顔を一目見ようと家に忍び込んだ。
いつものように綺麗な歌声が響く。
その貴族は歌救夜の顔を見て驚いた。
当時長い髪が美しいと言われた時代に反して歌救夜は短めのツインテールだった。
しかも顔も馬のような形で、鼻が低く決して綺麗とは言えなかった。
彼女の正体は帝の耳にも入ってきた。
悪魔の顔をした娘が夜な夜な人を誘惑していると。
このまま放っておくと国に災いがやってくる。
帝はこんな美しい歌の女性が本当に悪魔なのか?
そう疑問に思いながら、周りの意見に流されて彼女の討伐に賛成した。

そして、満月の夜に討伐が決行された。
いつものように歌う歌救夜。
甲冑を装備し、五十ほどの兵を引き連れて帝がやってきた。
「そこで歌っている者、悪魔の顔をし人々を誘惑すると聞く。確認のため顔を見たい」
歌をやめた歌救夜が帝にこたえる。
「それは・・・できませぬ」
「問答無用!」
帝は兵士に歌救夜の姿を覆っている簾を取り外させる。
そこには脅えた歌救夜の姿があった。
兵士達は歌救夜の姿を見ると、
「やはり悪魔だー」
「殺してしまえー」
次々と罵倒を浴びせた。
そこにおじいさんとおばあさんが間に入って懇願する。
「どうかこの子の命だけはお助けください」
帝は悩んだ。
帝の目には歌救夜が美しく見えた。
しかし、帝の立場場、見逃すことはできない。
「皆の者、静まれ?!」
帝が兵士を黙らせる。
「確かに、夜な夜な人々を惑わす行為は許されることではない。だが、まだ年が若い事もある。せめて奥の部屋で予が処刑してやろう」
と声を上げて歌救夜に近づいていく。
本当は処刑したとみせかけてこっそり逃がすつもりだった。
「分りました。これ以上ここにいては迷惑がかかるので月へ帰ります」
意を決したように歌救夜が言った。
「月へ帰るだと?何を訳の分らぬことを言っている」
帝が疑問を口にした後すぐに、歌救夜は歌い出し彼女の周りから光が放たれた。

ベイビィ、泣き虫さんー
教えてくれたあの言葉あったでしょ
「吹っ飛んじゃえー」てね

その内に月から雲に乗った使者がやってきた。
兵士が矢を構えて彼女ともども殺そうとする。
「誰が矢を構えろと言った、やめー!」
帝が矢をやめさせた。

ベイビィ、おろおろさんー
教えてくれたあの言葉あったでしょ
「もち着きなー」てね
そうすりゃ、きっとなんとかなるさー
でもね、それでもおろおろさん治まらない
なんだろうこの気持ち・・・

歌救夜は今まで見たことのない不思議な踊りをしながら、使者が迎えにきた雲に乗って消えていく。
消える寸前に歌救夜は、何か言った。
「○○○○」
それはおじいさんやおばあさん、帝に対して言っているような気がした。
帝は心の中で悲しんだ。
あんな美しい女性は見たことがない。
二度と会えないだろう・・・
そして、彼はこの出来事を絵や文書に残した。

彼の死後、彼女のことが忘れられず、遺言で絵や文書と一緒に火葬された。
それから千百年後、アイドルが歌や踊りをするようになった。
これは史実には残らなかったが、アイドルの起源と言われる物語である。


どの回答も吟味してさんのコメント
講評希望ね。

たけじんさんのコメント
アイドルですか。いいですねぇ。 ちょっとへんてこな歌ってのは、キャリーなんとかって感じ? ちゃんとした感想は、またあとで。

たけじんさんのコメント
あら、カグヤってグリーンな髪だったのね。短めのツインテールって。 馬のような顔に低い鼻っていうのは、悪魔な顔なんでしょうか? 帝の時代なので、悪魔ではなくて鬼あたりで手を打っていただいた方がよかったかな。 この歌詞は、なにか原典があるんでしょうか。すみません、アイドル系うといので。 それと、最後の「○○○○」がわからないです。 帝が彼に替わってます。 「史実には残らなかったが」は省いていいのではないでしょうか。 結構、全体に荒削り感がありますが、姿勢は買います。かぐや姫→元祖アイドル説、いいじゃないですか。

どの回答も吟味してさんのコメント
「○○○○」の部分はたけじんさんの好きな言葉で補ってもらっていいわよ。 歌はあるSFものの歌を参考にして書いたけど自分的には納得いってない歌詞で詰め込んだ感じがちょっと悔しいわ。 大筋で伝わっただけでも良かったわ ありがとう。

4 ● 犬神工房
●50ポイント

『月人の神話 人狼を撃つ銀の矢について』

月には女神と巫女たちがいた。
女神は狩猟と豊穣の女神であり、純潔と多産を司る女神だった。その国は、女神を崇め、祀り、捧げ物を絶やすことがなかった。

その森林地帯は典型的な田舎だった。狩猟を主な生計とし、女神の使いである狼と、狼の魂を祓う銀の矢を奉じる部族の土地であり、隣村同士で争いが絶えなかった。
偉丈夫の狩人がいた。彼は若くして祖霊である狼の皮をかぶることを許されていた。戦を前にして、村人たちとともに狼の祠に祈った後、彼は立ち入りを禁じられていた女神の祠に一人祈った。
「村を守れますように。多くの敵を倒せますように。自分は多くの獲物を狩って女神に捧げます。何か証を示してください。それさえあれば、自分は女神の加護を信じることができます」
すると、若者の目の前に、この世のものとは思えないほど美しい、しかし見知らぬ女が立っていた。
「私は月の巫女です。あなたの祈りに応じて遣わされました」

戦が始まってから、若者はよく戦い、そして傷ついていった。しかし、巫女が手をかざすと、どんなに深い傷も塞がっていくのだった。
やがて戦は若者の村の勝利に終わり、彼らは隣村から多額の戦利品を得ることができた。巫女は月に帰ろうとしたが、いまだ独り身であった若者は巫女に自分と結婚するよう願った。若者と巫女は結ばれ、次の年には娘をもうけた。
幸せは長くは続かなかった。月の巫女は純潔であらねばならなかったからだ。巫女は女神の怒りを買い、赤ん坊が生まれた次の日、青年の目の前で、この世のものと思えないほど醜い、一匹のヒキガエルに変えられてしまった。
悲劇は終わらなかった。若者に嫉妬する者は多く、若者の次に強いと言われていた青年が、ヒキガエルを殺し、その毒をやじりに塗って、いつもの通り狼の皮をかぶって狩りの途中であった若者を、森の木陰から射殺し、赤ん坊を竹やぶの中に捨てて、そのまま何食わぬ顔で村に帰っていったのだった。
若者の父母である老夫婦は、山へ芝刈りに行った際、全くの偶然から息子と嫁の死体と赤ん坊を見つけ、深く嘆き悲しんだ。彼らは赤ん坊を大事に育てることで息子と嫁の霊を慰めようとした。

月の巫女の血を継いだせいか、赤ん坊は一年も経たないうちに大人に育っていった。娘は母親よりもさらに美しく、隣村からも彼女を一目見ようとする者が後を絶たなかった。老夫婦は彼らから銀の矢を受け取り、老夫婦はたちまち金持ちになった。
都の貴族たちからも幾度となく結婚の話が持ち上がったが、娘は他ならぬ青年に惹かれていたため、純潔を守り続けた。
が、ある日、村の中で一つの噂が流れた。娘の両親を殺し、娘を竹やぶに捨てたのは、青年ではないか。悲しむ娘と村人たちは噂の真偽を問うべく神託を仰いだ。女神は娘を憐れんで、娘にだけ聞こえる声でささやいた。
(噂は真実である。青年はお前の両親を殺し、お前を竹やぶに捨てたのだ)
娘は深く傷ついた。
(私はもうこのような地上にいたくありません)
女神は彼女にこう答えた。
(青年に、西にある山の術師たちの村から、不老不死の果実を取って来るよう命じるのだ)
青年は旅立つより他になかった。この罰に等しい旅を終えて、果実を取ってくれば、英雄としての名声が疑惑を上回り、彼は再び村に受け入れられるかも知れない。それは一つの賭けであった。

青年の旅は困難を極めたが、ついに西の山奥で術師たちの長老である老婆に面会が許された。老婆は快く果実を与えた。娘と、青年の分、二つ。
「これらは娘と青年のために特別に女神の祝福を施したものである。必ず村で、婚姻の儀において、二人で食するように。勝手に他の者に与えたり、独り占めしてはならぬ」
青年は果実を老婆のくれた箱に詰めると、山の中腹を流れ、故郷の村に通じる川から、舟で降りていこうとした。
だが、青年は思った。自分は村人たちや娘に疑われている。このまま帰って殺されはしないだろうか。それよりは自分がこの果実を食い、どこかで気立てのよい女を探して、もう一つの果実を食べさせて、そのまま幸せに暮らした方がよいのではないか。
青年はその甘美な果実を一つ口にした。たちまち黒い雲が天を覆い、老婆が恐ろしい形相で舟の舳先に立っていた。
「私がせっかくお前たちのために善意を施したのに、お前はそれを踏みにじった」
老婆が杖を振るうと、青年は黒い煙へと姿を変え、一部は雲の中に吸い込まれていき、一部は散り散りになって消えていき、一部は老婆に箱の中に詰め込まれ、固く固く縛られた。老婆は箱ともう一つの果実を舟に残したまま、ふっと姿を消した。

ある夜、青年の帰りを待つ娘のもとに、女神が語りかけた。
(川上から舟がやってくる。上には果実が一つと、箱が一つある。果実は拾って食べ、箱と船は再び川に流すのだ)
娘は村人たちとともに川で舟を見つけると、言われたとおりにした。
不意に、娘の体が宙に浮いていった。女神が他の巫女たちを従えて月から降りてきた。
(不老不死にして純潔なる娘よ。お前は新しい月の巫女の一員となるのだ)
女神は娘の手を取ると、そのまま再び月へ戻って行った。
娘が去っていき、老夫婦の嘆く声が狼の遠吠えのごとく天にこだました。娘は老夫婦と、わずかに青年のことを思い、はらりと涙をこぼした。それは小さな銀の粒となって、老夫婦の前に落ちた。

老夫婦はその後も狼と女神への祭祀を絶やさず、悠悠自適のまま生涯を終えた。
術師の長老の老婆はその後も生き続け、苦難の旅を超えてきた者には快く不老不死の果実を授けた。
青年の煙の入った箱は海にたどりつき、そこで舟とともに深い海の底に沈んだ。

その後、月世界で、女神が娘に問いかけたことがあった。
「お前は今でも地上に未練はないか。お前の母のように恋に心を惹かれてはいないか」
娘は口を開いた。
「父と母は禁を破って愛し合って命を失い、青年は私を裏切って姿を消しました。私にとっては恋はもう過ぎ去ったものです。未練はありません」
そして、ややあって、こう付け加えたという。
「それでも、過ぎ去った恋は、美しいのだと思います」

月には女神と巫女たちが今もいる。あの娘も、そこにいる。


たけじんさんのコメント
ちょっとあらすじ感がありますが、いい感じですね。 またあとで、ちゃんと感想書きます。

たけじんさんのコメント
登場人物も物語も、オリジナルなのにきちんと竹取物語を踏襲していますね。 文体も落ち着いているし、違和感なく読めます。 ただ、人狼である必然は…月繋がりって感じですか。それと、題名の銀の矢の活躍は? 全体には、世界観が貫かれているのが感じられて、いいと思います。

犬神工房さんのコメント
たけじん様の評価が済みましたので、軽くネタバレをします。 『月人の神話 人狼を撃つ銀の矢について』→『人月の神話 狼人間を撃つ銀の弾はない』 題名の元ネタはプロジェクト管理に関する「安易に人員を増やせば増やすほどプロジェクトは遅れる」という世知辛さを描いた有名な本です。 題名にしては人狼や銀の矢が、必然性を伴って活躍していない、というご指摘がありましたが、ご指摘の通りです。反省点の1です。 ヒキガエルと、青年に殺される若者と、西にある山の術師たちの村、不老不死の果実は中国の?(ゲイ)と嫦娥(ジョウガ)の夫婦が元ネタです。 ゲイは追放された神の狩人でしたが、夫婦の分の不老不死の薬を求めて西の山の仙女・西王母から不老不死の薬をもらいました。 ですが、ジョウガはこれを独り占めして飲んで月に逃げてしまい、彼女は天罰でヒキガエルにされてしまいました。 そしてゲイの方は弟子に暗殺されて取って代わられてしまいます。 この逸話を、ヒキガエルと暗殺と西王母・不老不死の薬の三つに分割して、流れに応じて改変しています。 不老不死の薬が果実なのは、西王母が長寿の仙桃を管理することもありまして、桃は桃太郎を意識しました(割っても子供は生まれてきませんが)。 同様に、海に沈んだ煙の箱も、実は浦島太郎を意識しています(誰も開けてはいませんが)。かぐや姫では山で天に昇っていってしまいましたが、それとも整合性を取ろうとしたものです。 また、本当はここにギリシャ神話のアルテミスとオリオンのネタを盛り込む予定でしたが、練りこめませんでした。反省点の2です。 後は竹取物語の話をちょっとずつ変えつつ、他の物語と絡めて展開しています。 あらすじ感があるというのも反省点の3です。 かきつばた杯は2000文字でおさえるということだったのですが、削りに削って2500文字程度になってしまったため、文体は圧縮せざるを得なかった、という事情はありました。 せめてあらすじでも映える口伝伝承スタイルにしようと思ったのですが、うまくいっているかというとあらすじ感が強すぎたようです。 白状するとだいたいこのような感じです。

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