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【人力検索かきつばた杯】♯58

かきつばた杯を開催します。

お題:「馬」
創作文章(オリジナル・ショートストーリー)を募集します。

かきつばた杯についてはこちら
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

今年は午年!ということで馬が出てくるショートストーリーを募集します。
お題に沿ってご自由に書いてください。

講評なんてのはできませんが←
感想は書きます☆

ルール確認
必ず馬を出す縛りはないです。
お題に合えばなんでもOKです。

締め切りは13日(月)の夜9時です。

では、よろしく!


●質問者: コイル
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 4/4件

▽最新の回答へ

1 ● 琴木
●80ポイント

翔ける、翔ける、翔ける
その細い脚で、地に足を付けて、幼い馬は翔ける
私も 走ってみたい
幼い馬のように 彼のように

「ついてない……」
私が一番好きな新緑の季節がやってきた。生命の息吹を感じるこの季節、窓の外の木は緑がとてもきれいで、緑の香りを肺いっぱいに入れたい気分にさせる。そんな中を走ったら、どんなに気持ちいいだろう。
「広翔ちゃん、点滴の時間よ」
「はいはーい」
私の名前は広翔(ひろか)という。広い草原を翔けられるように丈夫に育ってほしいから、だとママが言っていた。さっきまでベッドの横にいたママは、「午年なんだから、広翔は大丈夫なんだから」と、少し暗い声で言って帰っていった。私を励ましながら、自分に言い聞かせているようにも見えて、なんだか私まで暗くなってしまった。窓の外は、あんなにきれいなのに、気分が台無しだ。
私は、生まれつき心臓が弱かった。入退院を繰り返して小学校は乗り越え、更に死に物狂いでこの病院の付属中学受験もパスしたものの、入学式の直前に倒れてしまった。死に物狂いが、本当に私の心臓という物を限界まで狂わせてしまったのだ。即行入院、主治医からは手術を受けるように言われたが、どうも決心がつかない。大丈夫だから、と主治医に言い聞かせられても、絶対に大丈夫なんてありえないと私は知っている。だって絶対に大丈夫なら、私の体は投薬と入院で治癒したはずだ。毎日こんなことを考えているものだから、ママの慰めも主治医の配慮も全て裏目に感じてしまって、憂鬱な入院生活の末、両親を裏切ってしまうのだと、半ば諦めていて窓の外ばかり見ていた。
しかし最近、楽しみが増えた。窓の外、新緑の奥にある私が通うはずだった中学校のグラウンド。私の病室からバッチリ見える、午後三時の、テレビよりもおやつよりも楽しみな時間。
「あ、やってるやってる。いいな」
「どうしたの?」
「あ、いえ、なんでもないです」
部活、というやつで、きっと陸上部、とかいうものだろう。グラウンドをぐるぐると走っている。病院併設とはいえ流石に顔は分からないけれど、四月からほぼ同じペースで、ずっとびりっけつで走っている男の子がいる。
「今日も遅れてるなぁ。私に言えたことじゃないけど」
「無きにしも非ずね」
「うわぁ!」
いつの間にやら点滴を打ってくれた看護師さんが去っていて、病室にはニヤニヤしている主治医がいた。
「先生、いるならいるって言ってよ」
「広翔、いい加減ため口やめてよ」「先生が“広翔ちゃん”って、呼んでくれたらね」
終わりのない会話。知り合いの少ない私の、唯一心おきなく話せる友人の様な姉のような彼女は主治医で、研修生の時から知っている。色々な面で迷惑をかけているパパやママには言えない秘密も先生には言えて、カウンセラーのようにもなっているのだ。
「外、見てたんでしょ」
「知ってるじゃん。わざわざ聞かないでよ、私の楽しみ」
「何がそんなに楽しいの?」
「ほら、あそこの男の子。四月から、いつもびりっけつなんだよ。馬鹿にしているわけじゃないけど、もう少し早くなってもいいよね。私、時計見ながらタイム図ったりしてるけど、全然変わらないの」
「広翔、そこまで行くと、ストーカーの域だよ」
「大丈夫、恋とか愛とかじゃないから。羨ましいよ。私は走ることすらできないのに」
「それに、充に失礼」
「はいはい……って、あれ?」
頭の上にはてなマークが浮かぶ。先生にこのことを言ったのは初めてのはずだ。
「みつる……?先生、知ってるの?」
「まぁね。私の患者だし。あんたほどじゃないけど、あいつも心臓弱くてね。小学生が手術だよ、相当な度胸」
「どうせ、私はチキンですよ」
「違うわよ」
そう言うと先生は、後ろに組んでいた手をほどいて、前で腕組みをした。そのまま椅子に腰かけて、グラウンドを見た。いつも女王様な先生が少し笑った気がした。
「充だってさ、嫌がったよ。広翔より幼かったんだから。でも、言ったんだよ。手術受けるって」
「あーもう、私は臆病ものなの!絶対とか、そういうの信じないの!」
「……充はね、走りたかったんだって」
「え?」
「動物図鑑の馬のページを開いて、私のところへ来たんだ。『僕も走ってみたい。だから、僕の心臓を強くして』って、涙ながらに訴えたよ。手術しても過度の運動をしちゃいけないハンデがついたから、マイペースで走り続けているわけ。でも、だいぶ早くなったんじゃないかな」
「だから……いつも、あの位置なんだ」
「手術を受けるも受けないも、あんたの勝手だよ。広翔の人生なんだから。今までみたいに頑なに拒むもよし、話し合うもよし」
「人生か……」
「親御さんが一番悲しむのは、自分の子供が後悔した時だよ。あんただって、走りたいんでしょう」
「……パパとママ、呼んでくれないかな」
「了解」


翔ける、翔ける、翔ける
その細い脚で、地に足を付けて、幼い馬は翔ける
私も 走ってみたい
幼い馬のように 彼のように


「お久しぶり、充君」
「ん?会いましたっけ、入部希望ですか?」

広翔が彼に会いに行くのは、もうすこし先の、桜が薄紅の色を付けた頃のお話。


琴木さんのコメント
感想希望します。

コイルさんのコメント
OKです。後ほど書きます。

コイルさんのコメント
コブマリさーん。回答ありがとうございます!そして一番乗りおめでとー! おおう。今回はちょっと明るい話ですね♪ お題の処理もええですなぁ。うん。 ポイントは、主人公の気持ちをよく描いてるとこです。 ただ、気になったところが4つほどあります。 >> 私の名前は広翔(ひろか)という << ()いるかなぁ?無くても、「ひろか」って読めると思いますけども。 >> 「広翔ちゃん、点滴の時間よ」 << んん?これって誰のセリフ?看護師さん? 読んでいけば何となくわかりますが、誰のセリフか書かないと、わかりづらいと思いますぜ。 >> 「広翔、いい加減ため口やめてよ」「先生が“広翔ちゃん”って、呼んでくれたらね」 << どうして改行しないのかな?同じ人のセリフじゃないんでしょう?この場合、1行にまとめるのは適切ではないかと思います。 >> 広翔が彼に会いに行くのは、もうすこし先の、桜が薄紅の色を付けた頃のお話 << えっと、この小説って、一人称小説?三人称小説? なぜか、最後だけ三人称になってます。これは違和感があってちょっと変ですね。 あ、最後のって、主人公には知らない設定?だとしても、一人称小説の場合、これを書くのは不適切じゃないかな。 文章がもうちょい安定してれば、BAだったかな。 あと、遅れましたが、本年もよろしくお願いします☆

琴木さんのコメント
感想ありがとうございます!遅くなってスミマセンm(_ _)m 的確なアドバイスありがとうございます。 こちらこそ、よろしくお願いしますね^^

2 ● たけじん
●70ポイント

『エンブレム』

「クッ」
ハンドルからのキックバックが、左手をねじ上げる。右手はティプトロニックの上に置いたままだ。踏み込む足をゆるめると、テールのスライドが甘くなる。逆バンクのコーナーに飛び込むと、シフトダウンして手首を戻す。
「どこだ」
バックミラーに映っていた、ファイアーレッドが消える。遠心力で振られた頭を戻すと、右目の端に赤い影がよぎる。シフトから右手を戻し、ハンドルを半回転回す。グリップを失いかけたフロントタイヤが悲鳴を上げている。
「ドリフトッ!」
ロボットアニメのように、技の名前を叫ぶ俺は、少しガキだ。その声に被るように、甲高い機械音が聞こえてくる。背中から聞こえてくる唸り声とは、音調が違う。
次のカーブミラーの先は、S字だ。ここでインを取られたら、その先で前に出られてしまう。
ブレーキを踏みながらアクセルをオン。すかさずシフトダウンして、ハンドルを右にねじる。右ドアミラーに映っていたファイアーレッドが、左ドアミラーに移動したと見えて、すぐに右に移る。その大きさが、大きくなってきた。
「行かせるかっ!」
アムロのように叫びながら、アクセルを踏み、車を右に寄せる。左カーブのアウトに膨らむ車体は、そのままガードレールに右側面をこすり、ガタガタと振動し始めた。そのすきに、鋭角にインに食い込んできたファイアーレッドが、左ドアにぶつかってて来た。
「その先は、ヘアピンだぞっ」
ハンドルを左手で右に押し込み、アクセルを踏む。クリッピングポイントを通ったとたん、アウトにファイアーレッドが見えた。意表を突かれて、思わずアクセルを離した瞬間、ガードレールの向こうの松の木が、急に大きくなった。

世界が回った。

ガードレールを破壊する音が聞こえるのと、ファイアーレッドの車体が浮き上がるのが同時だった。そのあとを追うように、俺もガードレールの向こう側へ飛び出していた。
体重が無くなり、目の前が真っ暗になった。

「ゲームオーバー」
乾いた女性の声が響く。ポルシェの扉が開けられ、女性が顔を出した。
「お疲れ様でした」
車の外に出ると、隣のブースのフェラーリから、明日香が出てくるところだった。
「もう事故っちゃってぇ」
明日香は、僕の足に蹴りを入れる。
「まぁいいじゃん。また跳ね馬対決しようぜ、明日香」
僕らは、ゲームセンターをあとにした。


コイルさんのコメント
たけじんさん、回答ありがとうございます! をを、SFチックですね。なかなか面白かったです。 「跳ね馬」ですか?!捻りましたねぇ!もう少しストレートなのを予想してました。 Tの神さんが描く作品は半端じゃないですね。マジで。うん。 今度、SF挑戦してみようか。俺。 あと、遅くなったけど、あけおめです。今年もヨロシクです。

たけじんさんのコメント
ポルシェの紋章と、フェラーリの紋章の逸話を調べてみよう。

3 ● GM91
●75ポイント ベストアンサー

『星を継ぐもの』

お葬式、というものに慣れていないせいなのだろうか?
揃って悲痛な表情を浮かべた大人たちを尻目に、僕は悲しさよりもササキさんが亡くなったという事実に対する現実感のなさに対して戸惑いを感じていたのだった。
ササキさんのお葬式はまるでずいぶん前から予定されていた行事であるかのように淡々と進み、ササキさんの亡骸を乗せた車を見送ってしまうと、後には大人たちの煙草の煙の匂いだけが残った。
僕は、しばらく成す術もなく立ちすくんでいたけれど、ここに居てもどうしようもない事に気が付くと、形見分けしてもらった古ぼけた通信機を片手に、最寄駅行のマイクロバスに乗り込んだ。
バスを降り一人になった僕は、慣れないネクタイを緩めてポケットへねじ込むとふらふらと改札を抜けた。
ふと、自宅とは逆方向の電車に乗ろうという衝動に駆られたけれど、結局どこに行くあてもない事を思い出し、大人しく家路についた。
車内に差し込む二月の夕方の生暖かい日差しと電車の揺れ心地に、僕は少しまどろみながら膝の上の通信機をぼんやりと眺めた。
通信機は、生前のササキさんから特に僕宛に渡してほしいと奥さんに言伝があったそうで、僕がもらっていいのかちょっと躊躇したけれど、遺言とあればそれを拒むのも何だか気が引けて、結局僕が引き取ることにした。

しかし、困ったことが一つある。僕にはこいつの使い方がわからない。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

新美原市天文台は、天文台とは名ばかりで、申し訳程度の天体望遠鏡と天文関連の展示室が在る他は特に何か子供の目を引くものがあるわけではなかった。そんな場所に足を運ぶ物好きは僕くらいなもので、僕も何か用事があって行くというよりはほとんど暇つぶしに立ち寄る場所という認識でしかなかった。

2年前の冬休み、僕は宿題の作文に苦しみもがいた結果、天文台のことを書いた。3G方式による星間通信というのは、僕の予想に反して皆の好奇心をくすぐったようで、僕の作品が市のコンクールに入選(努力賞だけれど)すると、ちょっとした話題になってしまった。
まもなく援助運動推進の声が上がり、設備の維持にまとまった予算が付くことになると、閑散としていた天文台にも足を運ぶ人が増えた。先の戦争の後なんとなくだけど閉塞感の漂う世間に射した希望の光、みたいな雰囲気になってしまったのだ。

そして今日1/3は「返信」が届く予定日とあって、天文台には多くの人が押し寄せた。
「やれやれ、騒々しくて気が散るな」
ササキさんは、きまりが悪そうに頭を掻くと受信機のダイアルを弄んでいる。素人目には設定の微調整をしているようにも見えなくはないが、単に手持無沙汰なだけであることは僕だけの秘密だ。
「賑やかでいいじゃない、おかげで予算も付いたんでしょ?」
「まあ、そうだけどな……」

その時、通信機が待望のデータ受信を知らせる鳴動を始めた。
「よし、復号するぞ!」
ササキさんは勇躍して作業を始めたのだけれど、その内容は僕らの期待に適うものではなかった。
『HappyNewYear! 今回は残念なお知らせがあります。詳細は5分後に送信する第2信をご確認下さい。星暦1278年1月2日。TEパプソニアG2天文台』
「何だって……?」
ギャラリーの中に不審な空気が漂ったけれど、ササキさんはまるで目もくれずに第2信の受信準備を続けた。
きっかり5分後の第2信はかなりの長さだった。要約すると、情勢が悪化し来年の送受信ができない可能性があることを示唆していた。
夢見た新天地もまた戦禍に脅かされているという事実が皆の胸に失望の陰を落としたのかもしれない。落胆するギャラリーの面々の表情が見なくてもわかるくらいに消沈しているのが僕にも伝わってきた。
一人、二人と立ち去ってゆく観客たち。そして、遠のいた客足は再び戻ることは無かった。

「なあに、元に戻っただけさ。静かでいい」
悪びれもせず軽口を叩いてみせるササキさんだったが、僕は何だか得体の知れない不安を感じたのだった。
そして、それはひと月も開けずに現実となった。
学校の帰り、一週間ぶりに天文台を訪れた僕は入口のドアに奇妙な張り紙を見つけた。

『公金の無駄遣いはやめろ』
『食料事情や治安の改善が第一』

僕は衝動的に張り紙を引き剥がすと、部屋の中で呑気にコーヒーを啜っていたササキさんに突き付けた。
「なんだよ、これ?」
「ああ、また嫌がらせか。ここんとこ毎日だ。さっき片づけたとこだったんだが……」
「毎日?」
「そうさ、一昨日のはなかなか傑作だったな『星をいくら眺めても、決して腹は膨れない』とさ」
自嘲気味に笑うササキさんに、僕は思わずカッとなり、張り紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱へ投げつけた。
「笑い事じゃないよッ!」
「まあそうカリカリすんな。そう考えるもんも少なからず居るってことさ」
「だからって!」
「まあ、気にしても始まらん。ほっておけ」
「……」

その日、僕はササキさんのコーヒーを飲まずに天文台を後にした。
翌日も、その次の日も、僕は何だか気が進まなくて天文台には足を運ばなかった。
そんなある日の放課後、天文台に行こうかどうか逡巡している僕の横を、消防車が何台もサイレンをけたたましく鳴り響かせながら駆け抜けて行った。
(火事……天文台の方だ!)

夢中で駆け付けた僕が目にしたのは、燃え上がる炎と黒と灰の入り混じった煙に包まれた天文台の姿だった。
「おじさん!?」
ササキさんの姿を探そうとして、思わず叫んだ僕の背後から聞きなれた声が聞こえた。
「坊主! こっちこっち!」
煤けた格好ではあるが、とりあえずは無事そうなササキさんを見つけて、僕は少しほっとすると同時に怒りが込み上げて来た。
「ちきしょう、いつもの連中の仕業か!」
「坊主、人の事を根拠もなく疑うんじゃない」
だって、と言いかけた僕をササキさんは珍しく真剣な眼差しで制した。
「それより、逃げ出すときにちょっとヘマしてな……」
足を挫いてしまったようだ、と呻いたササキさんに、僕は無言で肩を貸した。

翌日、入院したササキさんを見舞いに行った僕は、ササキさんの口から最も恐れていた事態を知らされた。
「天文台は……」
「廃止だそうだ。再建の予算はつかないらしい」
「そんな……」
「仕方がないことさ、そんな辛気臭い顔するな」
幸い、怪我は大事なさそうでよかったけれど、落胆を表に出さずに明るく振舞おうとするササキさんにかける言葉を見つけられず、気まずい空気に押し出されるように僕は病室を後にした。

ササキさんの訃報が届いたのは、その三日後のことだった。
(そんな馬鹿な? あんなに元気だったのに?)

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

僕は、電車を降りた後も何だか白昼夢を見ているような気分から抜け出せないまま帰宅すると、そのまま自分のベッドに倒れこんだ。
(あ、手紙……)
僕は、葬儀場で通信機と一緒に預かったササキさんからの手紙のことを思い出し、寝転がったままその封を切った。

『井崎 謙君へ

この手紙を読んでるってことは、おそらく私はもうこの世にはいないのだろう。
君にはずっと隠していたが、私は長い事心臓を患っていて、医者には余命いくばくもないと言われていた。
騙すつもりはなかったんだが、いや、申し訳ない。

さて、通信機だが、暫く預かって置いてほしい。今となっては貴重な装置なんだが、残念ながら素人の手におえる機械じゃあない、無理に直そうとせず預かっておいてくれ。昔の知り合いに大山という男が居る。私にもしもの事があった時には君のところを訪ねる様に伝えておくから、不躾で申し訳ないが、それまで預かって置いてくれないか。

天文台の事は残念だったが、生きていれば、そりゃ色々あるさ。
良いことばかりでもないが、決して悪いことばかりでもない。
私が昔、恩人からもらった言葉だ、困ったときには思い出すといい。

人間万事塞翁が馬

笹生 克己



(了)


コイルさんのコメント
GM91さん、回答ありがとうございます! 「星に願いを」の続編系ですね。 ストーリーはなかなか良かったです。ごちそうさまでした。 「人間万事塞翁の馬」ですねぇ。お題をなかなか上手く使っていて、いいと思いました。 文章もなかなか安定してます。 個人の意見なのですが、 気になったのは、下手すれば、最初の葬式のシーンで、オチが見えてしまいますねぇ。 「星に願いを」の作品を既に読んでる方は特にそうです。 表現としては、最初では亡くなった人を匿名にするのも一つの案と。 まあ、他の方に聞けば、沢山の意見が出るはずですので。あくまで僕の意見です。 結局これが一番いいかなと選びましたが、かなり悩みました。 もう少し、練り込みがあれば、満足だったかもです。 あと、昨年は色々お世話になりました。今年もお世話になります←

GM91さんのコメント
騙すのはキライさ。

質問者から

【お知らせ】
今日の夜9時が締切と言ってましたが、やっぱり自動終了前まで延ばします。
1、2件は来るか来ないかと思ってますんで、朝まで待ってマース。


4 ● a-kuma3
●75ポイント

『Number of Stars is Same Everywhere』


「仕事帰りですか?」

年始から炎上プロジェクトの火消しを振られ、年明け早々から残業続きだ。そんなことはよくあることだし、文句を言うほどは、そう遅い時間ではないのだが、少々疲れた。認めたくはないが、寄る年波にはは勝てないということか。何かうまいものでも食ってから帰ろうと繁華街に出た。どこに入ろうかと普段はあまり立ち寄ることがない繁華街でうろうろしていたところに後ろから声をかけられた。
いつも職場で元気が良い山下君だった。元気が良いのが取り柄というと、まるで仕事ができないと言っているように聞こえるが決してそんなことは無い。

「お食事がまだだったら、ご一緒させてもらえませんか。いいお店を見つけたんです」

こちらも何を食べようかと迷っていたところだ。まさに渡りに船というところか。

「本場大阪の串カツを食べさせてくれるお店なんですけど」

串カツか。何度か行ったことはある。疲れ気味のときにはガツンとしたものを食べるのも悪くない。

「もしかして、油っこいものは苦手ですか?」
「いや、大丈夫だよ」

年寄り扱いに苦笑しながら、私の好物は鶏の唐揚げだと心の中でつぶやく。と言っても山下君は知る由もないか。

少し歩いたところにその店はあった。入り口を開けると威勢の良い店員の声が耳に飛び込んでくる。

「何を食べましょうか」
「君に任せるよ。適当に頼んでくれないか」
「じゃあ任せてください。ビールで良いですよね?」

壁のお品書きを見ながらなにやら頼んでいる山下君にメニューを任せて、私は熱いおしぼりで顔を拭いた。なんでも大阪では有名な店からのれん分けしたということらしい。けっしておしゃれな店ではないが、こういう雰囲気は嫌いじゃない。店内の壁には所狭しとお品書きが貼ってある。串カツだけではなく一品料理もいろいろとあるようだ。悪くないじゃないか。
ほどなくしてビールとキャベツ、つまみの土手煮がきた。まずは乾杯だ。

「お疲れさまでした」
「うん、乾杯」

ジョッキに冷えたビールが体に染み渡る。

「実家に帰っていたんだっけ」
「おじいちゃんの葬式だったんです」

おじいちゃんか。いろいろとかわいがってもらったんだろう。おじいちゃん子だったことをうかがわせる。
そうこうしているうちに、最初の串が揚がってきた。最初は豚だ。ソースをつけてがぶりといく。良い具合に揚がっている。旨い。玉ねぎ、うずら、ハムカツと次々と出されてくる揚げたての串カツを、会話もそこそこに次々と平らげる。

「すいませーん!」

最初に頼んだものが全て出てきたようだ。山下君が店員を呼ぶ。

「何か食べたいものありますか」
「少し変わったものが良いな。好き嫌いはほとんどないから」
「じゃあ、なすびと、うずべい、それと紅しょうがに、えーと……」

うずべいに紅しょうが? 確かに壁のお品書きには書いてあるようだ。追加の注文を終えた山下君に聞いてみる。

「うずべいというのは何だい?」
「うずらの卵をベーコンで巻いたものなんです」
「紅しょうがって、串カツ?」
「そうです。さっぱりして美味しいですよ」

お代わりのビールと追加の一品料理が来た。

「この肉は……」
「これ、馬の肉を干したものなんです。馬のジャーキーってところです」
「へえ」
「おじいちゃんの好物だったんです。昔はよく作ったものだと聞かされながら……」

はっとした表情で口をつぐんだところに、次の串カツが運ばれてきた。紅しょうがの串カツだ。確かにさっぱりしてて旨い。

「結構いけるな、紅しょうが」
「え、ええ。関東だと出すお店はあまりないんですよね……」

明らかに表情が先程と違っていた。少ない会話を思い出してみても、当たり障りのないことしかしゃべっていないはずだ。それから何となく会話が途切れがちになり、追加の注文もそこそこに店を出て、お休みを言ってそれぞれの家路についた。

やや長い家路を終え、たどりついた玄関の奥では家人は既に就寝している。私はコートを脱ぎ、冷蔵庫の缶ビールを取り出すと、私の定位置に腰を落ち着けノートパソコンの電源を入れる。ディスプレイの向こう側では、なんとなく点けたテレビからは店のランキング上位のメニューを食べないと帰れないという番組が流れている。
今日は串カツの店がターゲットらしい。
紅しょうがの串カツは、やはり大阪ではポピュラーなものだったのか五位にランキングされていた。名前を思い出せない、あの旨かった肉と、山下君のことをぼんやりと考えながらいつもの巡回コースをチェックする。チャレンジを達成した歓声でテレビに目を向けると、番組を付けたときには順位が空いていた四位は、あの肉だった。

「さいぼし、と言ったか」

開いていたノートパソコンで検索をすると、六十万件ほどヒットする。それなりに有名なものだったか。トップにあるフリーの百科事典サイトを開くと簡単な説明が書いてあった。
そう、これだ。
関連項目には油かすとある。食べたことはないが、こちらは知っている。そういえば油かすも関西のものだったか。他にも関西の食品ならいくらでもありそうなものだが。
短い記載の中にその答えは書いてあった。
山下君の態度が変わった理由も。
昔からの風習とか伝統というようなしがらみが薄い土地で育ったからなのか、私は、こういったことについては不得手というか鈍感なようだ。口の中にはビールとは別の苦さが広がっていた。

ノートブックのディスプレイを閉じて、コートをひっかけて外に出る。車のダッシュボードから煙草を取り出して火を点けた。毎年恒例の禁煙も今年は三日目で終了だ。

外は、煙草を持つ指がしびれるほど寒い。
澄みきった空には、都会よりも一割増しの星がまたたいている。



(おしまい)


a-kuma3さんのコメント
この物語は全てフィクションです。

コイルさんのコメント
a-kuma3さん、回答ありがとうございます! 馬の肉(さいぼし)ですね。 読みやすさはAです。読みやすいです。 基本的なストーリーはいい感じ。描写も悪かあらへんし。 少し、お題が無理やりな気はしますが。 新年早々(?)a?kuma3さんのストーリー、ごちそうさまでした。 美味しかったです((沙*・ω・) あと、遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。(人∀・)

a-kuma3さんのコメント
かけ込みですみません。 当初の締切の時刻には、[http://h.hatena.ne.jp/a-kuma3/228174550732625827:title=こんな状態]だったので、また今回も無理だったか、なんてあきらめてたんですけど。 今年は、何回開催されるか分からないけど、2回に1本は書きたいなあ、とか思ったり。 こちらこそ遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。

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