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●質問者: コイル
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 6/6件

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5 ● たけじん
●45ポイント

「張弦」


キリキリキリ… キリ… キリキリ…

その山は、神社の裏にあった。様々な木々が生え、下草に蔽われ、枝と枝の間は蔓と蔦が絡み付いていた。様々な濃さの緑が覆い尽くすそこに足を踏み入れると、蝉の騒音の中に奇妙な音が聞こえて来た。
キリキリ… キリ…
それは、ギターの弦を強く張り過ぎ、切れてしまいそうな時の音の様だった。
その音は、耳の良い奴には聞こえていた。聞こえていないシゲは、「なにそれ」と言っていた。
ケンは、その音が特にが気になるようだった。
「あの音、だんだん高くなってきてないか?」
ケンが、樹齢三百年以上ありそうなクスノキの根元で言った。クスノキは蔦とコケで覆われ、緑色の怪物の様だった。根元を触りながら真上を見上げると、遥か彼方のクスノキの頂上がかすかに見える。その先端が風で揺れているのが見え、そのゆっくりとした鼓動のような振動が、根元を触る右手の手のひらに伝わってきた。
「うん、僕もそう思う。最近あの音、切れそうな気がして」
「だよな」
放課後に、神社の裏手に集合して、山の探検をするのが、ケンや僕たち4人の日常だった。
二学期の最後の日、通知表しか入っていないランドセルは、宮司さんに見つからないように社の床下に隠しておいた。
「おおーい、シゲ、サトル。なにやってんだ」
シゲとサトルは、クスノキの上の方に登ってる。もともと小さいサトルが、ますます小さく見えるくらい高い。
「おい、あれより上は」
「宮司さんに怒鳴られる」
以前、クスノキを登っていたら、神社の宮司さんに見つかって、メチャクチャ怒られたことがある。クスノキの半分より上に登ったら死んじゃうぞと。
「サトル。戻れ。それ以上行くな」
すると、シゲが僕たちを手招きしている。
「何かある」
あそこなら、半分くらいだからいいか。都合よく考えて、僕たちもクスノキを登った。周りの木々の高さを超えたあたりに、二人がいた。
サトルが、クスノキの幹に顔を突っ込んでいる。木の幹に穴が開いていて、そこに顔を入れられる様だった。
「見てみろよ」
振り向いたサトルの顔には、木のかけらがいっぱいついていた。そのかけらの隙間から見えるサトルの眼は、何か異様に輝いて見えた。
その表情に惹かれるように、僕は木の穴に顔を突っ込んだ。バラバラと顔に掛かる木の粉を振り払うと、そこは木の中にできた空洞だった。内部の壁を蔦や蔓が覆っているのが見える。上の方には、木の穴を抜けて青空が見えていた。
「ずっと下の方だよ」
言われる通り、顔を下に向ける。すると、薄暗い穴の底に、白や緑色に鈍く光る塊がいくつか見えた。
「なんだろ、あれ」
底に向かって伸びる蔓が集中するところをジッと見ていると、あの音が聞こえてきた。
キリリ… キリ…
いつも聞くより、ずっと大きな音だった。
「おい、俺にも見せろよ」
ケンの怒ったような声が聞こえた。僕は、とりあえず穴から元に戻った。
ケンが穴に顔を突っ込むのを見ながら、サトルに言った。
「あれなんだ?それに、あのキリキリキリキリがいつもより大きく聞こえたぞ」
キリキリが気になるケンは、いつもより鼻息が荒かった。
「なんだろう、底の塊は。キリキリ言ってるのは、周りの蔓みたいだったし」
考え込むケンをよそに、サトルが再び穴に潜り込んだ。小柄なサトルは、腰まで入ってしまっている。
上の枝に取りついたシゲが、そこにからんでいた蔦に足を取られた。バランスを崩して、その蔦にぶら下がってしまった。
「シゲ、気をつけろ。こっちへ降りろ」
シゲは右手で蔦にぶら下がり、体を振って僕たちの枝に飛び降りようとした。手が蔦を離れた時だった。ピンと張っていた蔦がはじけ、その先端が上空へ飛び上がって行った。シゲは、その反動で僕たちの横に勢いよく落ち、そのままサトルの足を木の中に押し込んでしまった。
「うわー」
クスノキの中に落ちてしまったサトルの声が、穴から聞こえてくる。僕は穴に顔を突っ込んだ。
「大丈夫か」
穴の下の方を見ると、蔓の絡まっているところでゆっくりと弾んでいるサトルが見えた。
「ああ、大丈夫。全然」
手を振るサトルが、暗い底の中からかろうじてわかる。
「これなんだろう」
サトルはそこに転がっている白い塊を触っている。
「お札だ、これ」
すると、僕の後ろでケンが叫んでいる。
「キリキリがやんだ。なんか起こるんじゃないか」
僕はサトルに怒鳴った。
「早く上がってこい。蔦づたいなら上がれるだろっ」
「わかったよ。上がる」
サトルが、お札の塊を落とし、手近な太い蔓を掴んで登り始めた時だった。
プチンプチン プチン と穴の周りの蔦が千切れ始めた。ピンと張っていた蔓が、ピンやブーやボーとそれぞれの太さに応じた音を奏で始めた。
その和音がクスノキの空洞に響いて、僕の耳が壊れそうになった。
「いそげサトル。なんかおかしい」
あわてたサトルが、蔓の途中で片手でぶら下がった途端、

和音が止まり、静寂が訪れた。

次の瞬間、僕は穴から引きずり出されていた。ケンが足首を引っ張って僕を引き出した時、蔦が一本僕の首にからんでいた。
シゲがそれを外そうと、手を掛けた時。

その蔦が、勢いよく穴に吸い込まれていった。穴の奥では、何かが上にすごい速さで上がっていくのが見えた。
と、同時に、クスノキが大きく揺れた。僕たちは、その揺れに耐えきれず、枝から振り落とされた。
下草のクッションに助けられたところに、宮司さんがやってきた。
「まさか、クスノキに登ってないだろうな。この神事が起こった時にクスノキに登ると、命は無いと言われてるんだ」
僕は周りを見回し、ケンに視線を合わせた。ケンも周りを見るが、首を振っている。
「あの、クスノキの中にサトルが」
宮司さんは顔を赤くして、叫んだ。
「なんてことを」
宮司さんはクスノキの根元でごそごそなにかやり、反対側に回り込んだ。そしてそのまま、姿を消してしまった。
「サトル、どこ行ったんだ」
ケンが呟く。シゲは、右手を左手で掴んでいる。
「いて」
シゲのところに這い寄ると、小指の先が無くなっている。俺はハンカチを出し、シゲの小指をグルグル巻きにして、血を止めた。
「病院へ行かないと」
「蔦で切ったんだ。あの蔓の勢いだと、サトルはどうなったんだ」
僕は恐ろしいことを考えてしまった。ケンも蒼い顔をしている。
「立てるか?」
シゲを立たせていると、宮司さんが木の反対側から現れた。
「サトルは大丈夫だ。保護してもらった。シゲ、怪我したのか、いそいで山降りて病院へ行かないと」
宮司さんは、僕たち3人を引きずるようにして神社の境内へ向かった。その間、ケンが宮司さんと話していたが、言葉が難しくて良くわからなかった。
なんとか聞き取れたのは、年に一回くらいこれが起きること。蔓の和音は、神社で聞こえるくらい音が大きいこと。なにか悪いことをお札にしてクスノキに収めておくこと。お札ごと、どこかに飛んで行ってしまうこと。それは、その辺に落ちてくるわけではないこと。クスノキに蔓が絡んで成長するからこうなるらしい、という程度だった。


境内に着くと、僕は少しホッとしたのか、急に眠くなってしまった。
そして、三人ともそのまま夏休み中寝ていたという。誰が起こしても、起きなかったらしい。


宿題を全然しないまま、二学期の始業式になってしまった。
教室に行くと、先生が話を始めた。
「みなさん聞いてください。お友達の鈴木サトル君は、ご家庭の都合で転校することになりました。夏休み中の急なお引越しだったので、みなさんにご挨拶できませんでしたが、もう次の学校に元気に行っているそうです。」
ケンと僕は、目を合わせた。ケンは驚いていて、かえって無表情だ。僕もおんなじ顔をしていたんだろう。
その後ろのシゲの右手の包帯は、小指の短さを隠しきれていなかった。僕は、あれが、夢ではなかったんだと確信した。



息子の自由研究を何とかまとめて、8月31日の夕方にベランダに出ている。
私は、宿題を全然しないで行った遠い日のことを振り返る。
そして、何もできなかったその夏休みのことも思い出し、私はふと呟く。
「あのとき、サトルはどうなったんだろう」
ふと見下ろした川面に、数枚のお札が流れている。
お札をたどって上流へ目をやると、数個の白い塊の上に、一人の少年が座って流れて来ている。


コイルさんのコメント
たけじんさん、ありがとうございます。遅くなってすみません…。 何この謎だらけの文章。 キリキリの正体は何か、サトルはどうなったか、最後に出てきた少年は誰か。 なんとなく想像は出来るんだけれど、結局よくわかりません。 お札に何か書かれているのかもしれないし、もしかしたら、最後に出た少年は、主人公がよく知っている人物かもしれないし…。 今度、じっくり考えてみます。

6 ● しをこ
●35ポイント

ヤンキーと学級委員


俺は今日も学校をサボってコンビニの前で仲間とタバコをくゆらせていた。本当はヤニは煙くってあまり好きではないが、仲間の手前ポーズというやつである。
そんな時である。あの変なヤツと会ったのは。

眼鏡をかけていかにも優秀!という感じの制服、あだ名はきっと学級委員、そんな真面目風のやつが平日の昼間からコンビニになんて登場したら、いやでも目立つだろう。入り口に円になってたむろしていた俺たちの前に、やつは現れた。
委員長は自慢の一品らしい、今時珍しいテンプル部分が巻き弦タイプの眼鏡で日光をやけにギラギラ反射させて近づいてきた。

君たち、やつはそう言って俺たちの前に立った。そしてこう言った。


「金がないので、肉まんをおごってくれ」


カツアゲかよ

そんな仲間の小さなつぶやきが妙に耳に残った…。

当然。こうなるわな。
突然のカツアゲまがいの発言に血の気の多い仲間の一人がヤツの胸ぐらに掴み掛かる。あんだテメェ?ああん?アアーン??というあれである。
そりゃオメーが悪いよ。俺は委員長に同情の眼差しを向けていると、ヤツは掴まれている胸ぐらにも気にもとめない様子で、

「餡か…あんまん、それもまた良し」

揺すられたせいでずれた眼鏡をスチャ!と直すと、上記のようにのたまった。つーかなんで眼鏡を直すとき音がするの?!それが眼鏡キャラの力なのか?!

「アンってその餡のワケあるか!お前なんなの一体!?」

「なんだそうか。俺は今非常に空腹でな。正直食べられるならなんでもいい。何か寄越したまえ」

「寄越したまえじゃねえよ!丁寧に言っても駄目だよ!お前この状況わかってんの?」

委員長は妙に落ち着いた様子で食料を恐喝してくる。俺は力一杯ツッコンだ。俺の必死の突っ込みも意に介さず、委員長はムム?と何かに注目すると、仲間の一人に近づき、

「なんだこれは、パンか?コッペパンか?」

ヤツの自慢の茶髪のリーゼントを鷲掴みにした。

リーゼントをパンに見間違うとかどんだけ腹減ってんだよお前?!というか、まずいよ、地元でも暴れん坊の狂犬のヤスキが今にも切り裂きジャックに進化しそうなくらい青筋を立てている。俺がどうにかいさめようとしたその時、

「お前ら高校生だな?学校行かずに何している!」

コンビニの店員が通報したのだろう。学校の教師が数人近づいてきた。警察を呼ばれなかっただけ良心的だといえよう、しかし助かった。狂犬もこれでは委員長に構ってもいられないだろう。
と委員長を振り返ると、ヤツは駐車されていた車の後ろに真っ先に隠れ、隙間からこちらをうかがっていた。

「……お前、何で隠れてんの」

「隠れてなどいない。これはあれだ、ウンコだ。ウンコするところだから」

「大地に直接落とす気かよ?!開放的過ぎるだろ!!」

「時に君。俺は教師に見つかると非常にまずい。そして何か食べ物をくれ」

「またそれか!…なんかヤバいことでもしたのかお前ェ」

俺は聞いてはいけなかった。
いつもじいちゃんにも言われていたのに。お前はちょっとお人好しなところがあるから気をつけろって。
後悔するのはいつだって、気づいた後だ。


コイルさんのコメント
しをこさん、ありがとうございます。 弦って、メガネの巻き弦ですね。学級委員、なぜ見知らぬ奴にカツアゲを…ww こんなキャラなのには、理由があるとは考えているんですが、その理由が未だにわかりません…。 しかも、「教師に見つかると非常にまずい」って……。 主人公が聞いたのは一体どんな回答だったんでしょうね…。 これもミステリアスで面白かったです。

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