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【人力検索かきつばた杯】Vol.74

テーマは『リクエスト』(http://q.hatena.ne.jp/1441341826 参照)
1.「滅亡」「タイムスリップ」「メタ」←自由選択
2.妖物なんぞ
3.壮大なSF
以下、順次追加?

締め切りは9/15前後です。いろんな事情によって左右されます。多分伸びます。

詳しくはこちら。はてなキーワードさん↓
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

なお、開催者がわたしですので、文字数は限界突破! 1万字前後まで受け付けます!! (140文字以内でもあり←ついったー小説家さん用)

返信は、感想的なのが良いのか、講評的なのが良いのかぐらいの希望を受け付けます。のんびりお待ちください。

以上です。

●質問者:
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 16/16件

▽最新の回答へ

1 ● a-kuma3
●35ポイント

「 T is for Timeslip 」


今度の台風もすごいねえ。いつかの台風のときも地下街に水が流れ込んでくる映像がニュースで流れてたことあったよね。地下街に降りる階段をざあーって水が流れ込んでくるやつ。
目の前であれだと、びっくりしちゃうよね。

ポセイドンアドベンチャーだっけ。閉鎖空間に水が流れ込んでくるやつ。
どんどん水が流れ込んでくるから、天井がどんどん近くなってきて閉所恐怖症の気があるから、想像するとちょっと恐かったね。
まあ、泳げないからその前にお陀仏になっちゃうだろうけど。


そうそう、びっくりしたといえばさあ。こないだ、いきなりタイムスリップしちゃってさあ。
多分、とんでもなく未来。
いきなりくらっときて気が付いてみたら、周り一面焼け野原みたいな所なんだよ。
空が赤黒い感じの雲で覆われてて たまに稲光なんかが光っちゃうし、さながら世界の滅亡の瞬間に立ち会っているような感じ。
妙に蒸し暑いし、濡れたら何だかヤバそうな感じのスコールのが突然 降ってくるんだよ。
それに、ミサイルだか隕石だか分からないんだけど、ときおり爆発音とかするわけ。
一日も経つと腹もへってくるしさあ。何が起きてるかなんて理解できてないし、意識はもうろうとしてくるし。
もうメタメタよ。

どうやってそこに行ったかなんて分からなってないから、自分で帰るってわけにもいかないし。
そうだなあ、一週間くらいは居たんだろうなあ。

え? 一週間も飲まず食わずだったら死んじゃうだろうって。

それがねえ、二日 経ったくらいかなあ。
メカニックな感じの物置小屋くらいの大きさのものを見つけてさ。っていうか、急に現れたような気がするんだよね。
暑いわ、腹は減ってるわで、ぼんやりとはしてたんだけど、そこにそんなものは無かったはずなんだよ。

それがさあ。どうも屋台みたいなものらしいのよ。まあ、屋台かなと思ったのは後のことなんだけど。
手の形が書いてあるパネルみたいのがあって、そこに手を置くとさ、頭の中に声が響いてくるの。
「ご注文は?」って。
うん。大きな自動販売機という感じじゃないんだ。きっちりと箱型をしてるんじゃなくて、切り欠きがあるのよ。腹の高さくらいから頭よりもちょっと高いくらいのところまで、こう、ちょうどカウンターみたいな感じでね。

それでね。マジで腹減ってたし、なんで声が聞こえてくるのとか、そんなことよりも、餃子くいたいなあ、とか、ラーメンも良いなあとか、焼肉とか寿司も美味しいよなあとか、そういうことしか頭に浮かんでこないわけ。そしたら、目の前のパネルに餃子とかラーメンとかの画像がぱーっと並ぶのよ。
ついタッチしちゃうじゃない。もう、なんにも考えてなかったね。そしたら「かしこまりました」って声がまた頭に届くのよ。目の前のパネルがカウントダウンに変わって、そりゃあもう、どう考えても出来上がるまでの時間じゃない。

カウントが減ってくると匂いがしてくるんだよ。
腹はぺこぺこだし、本当に待ち遠しかったね。

パネルの表示がゼロになると、表示が「お待たせしました」って変わってさ。そう、そこだけはパネルに文字が表示されたね。
湯気がたってて、もう見るからに皮はパリパリで中はジューシーな感じの餃子がすうっと出てきたのよ。タレや辣油はもちろん、きちんと白いご飯と箸も一緒にね。餃子は羽根がついてて、いい色の焦げ目がついててさ。メイラード反応って言うの。見た目とか匂いとか、もうヤバいわけよ。

旨かったねえ。

腹へってたこともあるかもしれなかったけど、本当に旨かった。食べたら本当の意味でヤバいんじゃないかなんて考えるような冷静さはこれっぽっちもなかったよ。

突然 現れたから、消えるのもいきなりかと思ったんだけど ずっと残ってたね。
焼肉やラーメンも食べたよ。天ぷらやウナギも食べたし、ビールも飲んだよ。

え、都合が良すぎるだろうって。うん、そうだよね。
思うにさ、この世界でも迷い込んできた野生動物を保護したりするじゃない。
自然に返す前に餌さとかあげてさ。
そういうのじゃないかと思ったんだ。


それにさ、世界が滅亡するようなときには、飯屋(メシア)が現れるのが定番じゃない。



(おしまい)


2 ● miharaseihyou
●30ポイント

2050年、ある隕石の落下から世界は変わった。
異常に密度の高い、その隕石は、後にHAZARDとあだ名されることになる。

太平洋上に落下した隕石は直接の被害もほとんど無く、学術調査も一年以上経って予算が付いてからだったが、落下から数ヶ月後に太平洋沿岸の諸国で奇妙な事故が発生し始めた。

一番最初はハワイのリゾートホテルだった。
カードでの支払いができない客が大量に発生した。
困り果てたホテルの経営者は客に頼み込んで、臨時に借用証を書いてもらってその場を凌いだ。
その頃から各地のサーバーや個人のパソコンがエラーを頻出させるようになった。
一ヶ月後には銀行のサーバーまでがダウンするに及んで、世界経済はパニック状態に陥った。

先行して開始されていた調査により、原因は新種のウィルスによる金の食害であることが判明した。
このウィルスは電気を良く通す金属に付着して、電力を栄養にして繁殖する。
シールドしてあっても、わずかな接点から侵入して、最終的には電子回路そのものを酸化させ、不良導体に変えてしまう。
最初は接点だけの不良だったとしても、徐々に内部に入り込んで、全ての金部品を作動不能にしてしまう。
銀や銅で素子を作ったとしても、寿命を延ばすことにはなっても、それほど永持ちしない。

数ヶ月後には既に世界中の銀行が営業を停止し、管理をコンピュータに頼る全ての大企業も崩壊寸前だった。
規模のメリットが逆の意味で使われ、大企業は文字通り手書き算盤で管理可能な小企業の集団であるグループ企業に変身し、様々な理由で徐々に崩壊していった。

銀行が崩壊した結果、通貨は旧来の紙幣硬貨がしばらくは使われていたが、徐々に物々交換に近い形に変化した。
収入を奪われた大都市の住民は難民と化し、そのまま移動できなかった人は数年で餓死した。
以前は見捨てられていた山野に人々は農地を求めて分散し、帰農した。

一方、機械化された全ての産業が全滅したわけではなかった。
製鉄や造船はIC化されていた全ての部門を可能な限り手作業に置き換え、物資とエネルギーが不足する中で生産を維持した。
電力会社も手作業で停電が頻発する中でも、一時的には無料奉仕の状態で送電を維持した。
特に大口の産業電力で存続可能だと思える会社には優先的に送電が行われた。

高速鉄道や航空会社は全滅したが、マニュアル制御可能な旧式の鉄道は営業母体まで変化させながらも辛うじて存続した。
電話会社は電話線網が全滅して潰れたが、送電線網を持つ電力会社は情報量が激減しながらも、送電線経由の通信で最低限の通信網を維持した。

斯くして、世界各地で、わずか数年で、農業を主体とする地方社会と、重化学工業を主体とする産業社会が、物々交換に近い手形取引をベースとして国家を再合成した。
世界人口は数分の一にまで減少した。


神戸の街は、港に面している。
朝は良子の好きな時間だ。
眠い目を擦りながら、きらめく海を見るのが彼女の日課である。
普通の客は夜半までには帰ってしまうので、朝の彼女を邪魔する者はほとんどいない。
売春宿の二階から青い水面をぼんやりと眺めながら、皆が起きてくるまでの時間を過ごす。

昨夜は良夫が来た。
良夫というのは偽名で、本名は辰夫といい、寄せ場人足の若頭である。
良子を身請けするから女房になれと迫ってきた。

良子は長い黒髪を撫でながら思った。
「誰が言うことを聞くモンか!」
どうせ数ヶ月で別の女を作って来なくなる男など欲しくない。

撫でている黒髪のおかげで、彼女は大分と得をしている。
客の少ない妹分は、宛がい扶持を減らされて、流行病でいなくなった。
田舎に行けばここまで堕ちることもなかったかもしれない。
だけど、彼女はこの街が好きだった。

身内は誰も彼もが、生きているのかどうかも分からない。
優しかった父としっかり者の母は、最初の暴動の時に巻き添え喰らって死んでいた。
妹がいたが、どこにいるのやら。
そんなことを思いながら、少しだけ目立ち始めたお腹をそっと触る。
この子だけは産んでやりたいと、苦海に沈みながらも願う彼女であった。


3 ● a-kuma3
●40ポイント

「It feels trashed-out because of META」


「またゲーム? こんなところで」
「別に良いじゃないか。電力の供給には余裕があるようだし、何よりもここは誰にも邪魔をされない」
「キースが探してたわよ。何か頼みたいことがあるって」
「な?」

コクピットの上からのぞきこんでいるアーリンがけらけらと笑う。

「また、いつものをやってるのね」
「ああ。終わりがあるようで実はずっと続けられる」
「よく飽きないわねえ」

好奇心に満ちた赤い目をくるくるさせながら、また同じことを聞いてくる。

「資料映像だってろくに残ってない時代を題材にしてまで戦闘シミュレーションなんて。まあ、ろくに戦闘もない辺境の地に配備されて退屈してるということなのかもしれないけど」
「昔の時代が題材ではあるんだけど、もうちょっと凝っててね。ある時代の戦闘部隊がタイムスリップして更に昔の時代に来てしまう。飛ばされた時代では、世界中を巻き込んだ戦争が行われていて、そこにまきこまれてしまうんだ」
「未来から来たのが相手じゃ戦争にならないんじゃないの?」
「技術的には進んでいても、魔法がある世界だ。それに人数的には圧倒的な不利。資源はあってもそのままでは戦闘物資としては利用できない。そんなに簡単じゃないのさ。火力という意味では圧倒的だから、世界を滅亡させる恐怖の帝王が現れた、というような扱いなんだけれども……」
「キースが探してたことは伝えたわよ」

何度目かの説明を また途中でさえぎって、アーリンはずんぐりとした機体からひらりと飛び降りる。

「戦闘の合間のひまつぶしに戦闘するなんて、異国の方の考えは私には理解できそうにないわ」

ひらひらと手をふって笑いながら格納庫を出ていくアーリンの姿は、コクピットの中にいても見えるようだ。


彼らの間では、おれは訳あって遠い国からここに流れ着き、素性については明かしたくない、ということになっている。彼らにとって、おれはちょっと変わっている異邦人だ。おれが、いつのどこに、どうやってやって来たのかということに比べると些細なことかもしれないが、彼らのことを理解できないのはこちらも同じだ。

宇宙空間で戦闘ができる程度には発達した技術を持つ彼らだが、どうやら、その技術の中身を理解しているのがいないらしい。ここに来てからの短い間でおれが行ったことがないずっと中央の方にはいるのかもしれないが、立ち寄った都市や集落の様子や、ここと本部との通信内容を聞いても、どうやらそうらしいのだ。装置の使い方やそのメンテナンスは半分以上は自動化され、残りは完璧な保守マニュアルのおかげで、この年期の入った機体でも現役で飛ばすことができる。

操縦も保守も大半がコンピューター制御されているというのに、その存在をあまり意識してないことも不思議だ。保守マニュアルだけではなく、開発用キットやリファレンスなども存在しており、この機体搭載用のコンピューターにすら入っているというのに、保守と使用という以外の行為は頭にないらしい。

一番使われているらしい言語は見たことが無いものだったが、それほど難しいものではない。おれの知識や経験でも扱えるようになるまでには大した時間は必要が無かったくらいだ。というよりも、随分と古いはずの知識でも理解の外にあるような概念や記法がほとんどない。プログラミング言語はあまり進化しないということはよく言われていたが、どうやら本当だったらしい。コクピットのパネルに映されているこのゲームも持ち込んだ携帯ゲームを取り込んだやつだ。彼らにとっては、維持しながら使えれば十分なマシンの違った使い方を知っている少し変わったやつ、というだけでそれ以上の興味はわかないらしい。まあ、そのおかげでこうやって、食料と居場所らしきものが手に入っているわけなのだが。


ふいにアラームが格納庫内に鳴り響く。

「第一種戦闘配備! アタッカーは各自、出撃の準備!」

どうやら、これからリアルな方が始まるらしい。

メインのストーリーモードの方でデータを保存し、オートバトルジョブを二つほど設定する。こっちの城は弾薬を節約しつつ前線を少し前へ。メインの前線の方は守備を主体にして、エリアをふたつほど下げた位置に移動するように設定する。こっちの離れた村にも、一応 牽制をかけておこう。騎馬をいくつかまわしておけば良いだろう。帰還するまでの時間なら、三つのジョブが適当なところだろう。

「ヒロト遅れてるぞ!」
「はいはい。すぐに行きますよ、っと」

まだスイッチを入れていないマイクに返事をすると、発進の準備にとりかかる。フロントパネルのゲームを消し、通常の画面に切り替えて、シートベルトを装着してから発射位置への移動プログラムを起動する。実機のコクピットにいるわけだから、出撃まではそう時間はかからない。

グリーンランプを確認した後、カタパルトの発射ボタンをタップする。発射後の軽いGを感じている間に、二回ほど緩いカーブを通過すると、そこはもう射出口の外だ。射出されたずんぐりとした機体についた厚めの翼が密度の高い大気を切り裂く。姿勢制御完了の文字がゴーグルに表示され、メインエンジンが点火される。

「ヒロト出たぞ。どこだ」
「A7のエリアから二時の方向。レーダーに敵の機影がみえない。数は少ないと思うんだが、低空で近づいてきてるらしくて、よく分からない」

左手で握ったサブの操縦桿をぐいっと傾けて機首をA7の方に向ける。A7の二時の方向には、峡谷が二本通っている。数が少ないのなら、敵の侵入経路は狭い方だ。

「ルート187に向かう。峡谷の上の方を頼む。こちらは正面から迎え撃つ」

先に出ているはずの二人に指示を出し、セミオートモードに切り替えてブースターに点火する。急激な加速で数を増したカルマン渦が機体を揺さぶる。数秒で加速のGは弱まり、A7エリアの地形データを確認してナビゲーターにロードする。一番狭いところで、幅は機体の三、四倍というところか。クルーズコントロールは弱めでも大丈夫そうだ。

「ヒロトだ。後、二十秒ほどで着く」
「バッカス、了解」
「アーリン、了解したわ」
「あと十秒で谷に入る。明かりを頼む。七、六、五……」
「照明弾 打ちます」

濃密な空気を照明弾の明かりが浸食してゆく。

「上は任せた。谷に入るぞっ」

谷のよどんだ空気に突っ込むと、更に数を増した空気の渦が翼を引きちぎらんばかりに揺さぶってくる。

「機体制御良好。索敵モードに入る」


コンソールパネルをしまい、メインの操縦桿を両手で握る。フロントに映る映像に神経を集中する。通常の重力波感知によるものに赤外線映像のデータをマージして感度を上げてある索敵システムに、敵の機影がぼんやりと映し出される。機影は三つ、いや、四つか。最初の一撃で二機、できれば三機。ぼんやりと映る機影にミサイルの照準をロックする。

「ファイア!」

機体下部から放たれた四本の矢は、重い大気を切り裂きながら火柱をひいて敵機へと向かう。頭についてあるセンサーのうちのひとつだけ感度を少しだけ下げてあるミサイルは、密度の高い大気の抵抗を受けて不規則な螺旋を描きながら目標に向かっていく。ミサイルがまき散らす赤外線の陰に入るように機体をやや下げた位置に移動させ、第二撃の準備をとる。

高熱源を感知したらしい敵機がミサイルの迎撃行動をとり始める。こちらのものよりは何十倍かは強力なレーザーがよどんだ大気を切り裂き、機体のシールドをチリチリといたぶる。パワーがあるとは言え、はっきりとこちらの位置は分かっていないはずだ。

「まだこの距離じゃ当たらないさ」

第二撃のミサイルのうちの二発をはっきりと映っている機影に、もう二発のミサイルを谷の上部に照準をロックして発射する。レーザーの照準をゴーグルに表示し、メインの操縦桿のロックをパチンと外す。

「さあ、集中!」

先に撃った四発が次々と爆発する。多分、直撃はしていないだろう。ミサイルが放った熱線のハレーションをカットするためにパネルの表示の感度が下がる。映される映像は重力波だけのモードと変わらくなったが、ヒロトは敵の位置ははっきりと把握している。後で撃った二発が敵機を捕らえて炸裂し、敵機が炎に包まれる。爆炎のすぐ近くを下からくぐり抜けざまに残りの敵機の位置をすばやく確認する。

「残り、二機。もらったっ!」

すれ違いざまに発射されたレーザーが敵機の中央を貫く。頭上では残りの二発のミサイルが少し遅れて爆発する。降り注ぐ大小の岩が、レーザーを食らって制御を失いかけた一機に止めを刺した。

「後、一機」

熱線の嵐から自分を取り戻したモニタが頭上に最後の一機を映し出す。岩石のシャワーを巧みにかわしながら谷の開口部に向かっている。

「上に逃がした。頼む!」

谷の中から吹き上がる爆発を目印に、既に迎撃体勢にあったマーリンとバッカスは、飛び出してきた敵機の後ろをピタリととる。

「この距離なら!」

二機から放たれたレーザーは大気に力を奪われながらも敵の制御を失わせるには十分だった。推進力を失った機影はフラフラと大地に降下してゆく。

「リアルなやつは、やっぱりキツい。プレイヤー数は、ひとつだけだしなあ。とはいえ、ゲームでしか戦闘機なんて操縦したことがなかったおれがこうやって敵を撃ち落としてるんだから、実際、すごいテクノロジーなんだよな、ここのは」

「さすがね、ヒロト」
「運が良いだけさ」

自らカスタマイズした索敵システムで補っているとはいえ、今回で二度目という圧倒的に少ない実戦経験。ゲームで鍛え上げた反射神経があるにしても、ただのゲーム好きなプログラマにしては上出来すぎる成果。芸は身を助くとは、よく言ったものだ。しかし、結果の大半は この時代のテクノロジーのおかげではある。

「一機は損傷が少なそうだ。回収に行ってみるか?」

前回の出撃で敵の機体に興味を示していたのを覚えててくれたらしい。マニュアルがない敵機の残骸は、彼らにとってはゴミ以外の何物でもない。おれにもハードのことなんかはよく分からないが、あの強力なレーザーはものにできれば、かなりの戦力アップになるだろう。重力波と熱線のデータをマージした索敵システムは、まずまずの感度だし、ハレーションの制御も良い感じで対応できている。そろそろ他の機にも組み込んでみても良さそうだ。

先に着陸したアーリンとバッカスが、もう敵の機体のすぐそばまで行っている。少し遅れて着陸し、ハッチを開けたおれの目に、敵のコクピットに動く影が映る。敵兵が生きているのかもしれない。

「危ない!」

腰のハンドガンを抜くと、やや距離はあるが牽制の意味も含めてコクピットに何発かぶちこむ。

「何よ急に! 危ないじゃない!」
「危ないのはそっちだろう。まだ生きてるかも」
「ああ、ヒロトは初めてだったか。大丈夫だから、こっちに来いよ」

ハンドガンの狙いを定めたまま、警戒を解かずにコクピットをのぞきこむ。

「なんだ、機械?」
「そうだ。この辺りに攻めこんでくるのは大体こいつらだ」
「近寄っても大丈夫よ。こいつら、戦闘機を操縦する以外には何もできないから」

ロボットとも装置とも形容しがたいものが、開けられたハッチの中でうねうねと四本の機械の手を動かしている。確かに、肉弾戦が得意なようには見えない。

「どうだ、使えそうか」
「分からない。これ、ベースに持ち帰っても良いかな」
「ヒロトならマニュアルが無くてもなんとかしちまうかもな。他の者に取りに来させる。おれたちは帰ろう」

大昔の USB が下位互換で認識されるような世界だ。接続の方式に、そう何種類もあるわけはないだろうという期待はある。現在位置をベースに通知すると、各自の機体に乗り込んで帰投する。帰り道の操縦はオートパイロットに任せて、ゲームの続きだ。



(ん、やられてる?)

表示したゲームの画面では、オートバトルジョブに赤い×印が表示されていた。多少わきを固める程度のつもりで回しておいた騎馬の小隊が全滅していた。この時代の兵士たちだけだったので戦力的には補充は利くので、痛い損失ではないが、そう簡単にやられるような駒ではなかったはず。まだちょっかいを出していなかったところとは言え、マップ上 たいして重要なところとも思えないし、それほど強い敵が回されているはずはない。詳細データを表示すると、どうやら一騎は捕虜にされたらしい。


辺境地区への牽制攻撃、自動戦闘、想定外の全滅、捕虜、タイムスリップ……

「!?」

認識という名の波に脳髄が包まれる。常識的にありえないという判断基準の重さは、タイムトリップという非現実的な状況に陥っているおれにとっては、羽よりも軽い。


まさか。まさかな……

思考のみで問題解決が遠そうなときには、実行によって手掛かりを探る。今までも何度も繰り返したパターンだ。前線に置いてあった主力部隊を辺境の村の方に移動させる。異動が完了するまでに、十五ターンというところか。何日後のことかは分からないが、結果が出るなら数日のうちのことだろう。


もし想像の通りならば、この時代のことが好きになりかけている自分は、ゲームのプレイヤーとしての自分と逆の陣営にいることになるということは考えないことにして、ターン終了のボタンをタップする……



(多分、続かない)


4 ● たけじん
●20ポイント

「あ」

「セーフ。音立てちゃダメ。シーッ」

「これをここにおいて。と、ここを叩いて」
「わっ」
「うわうわ、落ちる落ちる」
「っぶね。なにこれ。音叉じゃないか。ブーンって」
「水野さん、起きてたの」
「望月君に起こされるくらいなら、寝てた方がましだ」
「え。その論理は成り立たな」
「とにかく、その音叉で起こすのは失敗だ」
「第3稿はどうなりました?」
「ここにある。っと、この本何?あ、○○の証人の小冊子」
「ふ、伏字ですか」
「面倒な団体だからな」
「人類は審判にあって、滅亡するんですって。ハルマゲドンとかなんとか」
「それ買ったの?」
「いや、置いてった。いろいろしゃべってたら、あきらめたらしい」
「その調子でしゃべってたら、そうだろうな」
「どんぶりに春巻きの卵とじが乗ってる定食だよな」
「??」
「春巻き丼。がなまって、ハルマゲドン」
「三浦春馬が出ているゲド戦記はン?と言う出来」
「アニメよりいいんじゃないの?それ」
「春の魔物は外道」
「ンはどうした」
「ン?しまったァ」
「江戸の町で張る髷という髪型が流行ったのだが、それにはある人物がかかわっていた。人はその人物をドンと呼んだ。人呼んで、張る髷ドン」
「話が進まないです」
「なんなの」
「滅亡ですって。ほらこれ」
「かきつばたね」
「このあいだの、水野さんの軌道エレベータのやつ」
「あれは、ちょっと手間だったな。望月君のツイッタの映画評論もいい感じだったな」
「既に二人とも回顧モード」
「で。滅亡って聞いたら、ハルマゲドンってこと?」
「たまたまもらったからなんだけど。いつも疑問に思う事があって」
「たぶんわかるな、それ」
「でしょう?人類滅亡っての」
「人類”だけ”滅亡ってなに?どうやるのさ」
「わかんない。地球滅亡ってのも怪しいし」
「大量絶滅って、過去に地質学的には起こってるんだけど。原因不明なのと、おぼろげなのと、犯人わかってるのと」
「有毒な酸素撒き散らして、90%以上の生物殺したやつね」
「これだって、滅亡って言わない」
「人類狙い撃ちの細菌でもばら撒く?」
「でも、全部死ぬとは限らないし。Ωマンみたいにはならないだろう?」
「自然破壊は他の生物に迷惑だし。戦争だと全滅にするのは難しい。地球を破壊するか」
「それじゃあ、地球全体が滅亡だろ。人類って限られてない」
「だいたい、どんな得があるのさ」
「侵略だと、メリットが無いのでは?ってキッチュ松尾も言ってるし」
「だから、宇宙人は来ないんだよねぇ」
「で、どうする。滅亡のお題」
「無理。でいいんじゃね」
「以上、いい訳でした」
「いいわけぇもんが、言い訳なんかするんじゃねぇよ」


たけじんさんのコメント
場繋ぎでございます。 しばしお待ちを。

5 ● miharaseihyou
●30ポイント

辰夫は神戸の高級住宅街の一角に新居を買い取った。
何度も繰り返される暴動で下町はあらかた焼き尽くされてしまったが、お屋敷街は一軒ごとの敷地が広かったことが幸いして旧時代の建物が相当数残されていた。
元の持ち主はほとんどいなくなっていたが、六甲山系の山麓に新興の富裕層の住宅街が点在しつつあった。

良子は自分一人が住むには広すぎる屋敷を宛がわれた格好だった。
必要なら女中を雇えと言われた。
お腹の子供のことには知らないふりをされた。
死ぬまで黙っているつもりだったが、子供は辰夫の種だった。
何一つ言われないのには安心したものやら腹が立つやらだったが、辰夫は優しかった。

神戸は坂の街である。
坂を上り下りする体力がなければ、その当時のお屋敷街には住めなかった。
些細な買い物だけでなく、職人を呼ぶにも出入りの商人に頼み事をするにも、細々としたこと全て歩いて用を足す必要があった。

電話は有線回線が交換手を使って主要な産業拠点を結びつつあったが、一般には高嶺の花だった。
電子回路が全滅したので旧時代の自動車は動かなかった。
内燃機関の電子制御はマニュアルに置き換えるには進化しすぎていて、エンジンそのものを作り直さなければ使えなかった。
古い車体を改造して、意外にも電気自動車が普及し始めていた。
鉛電池を積んで低速で各地を結ぶ陸上輸送が生き残った鉄道網を細々と補完していた。

電力は旧式の火力発電が生き残っていて、三交代で運転する給電施設はもっとも安定したエネルギーの供給源となっていた。
散々作られた太陽電池パネルはコンバーターが駄目になったが、集約された電力工場でマニュアル制御により一部の電力を取り出すことができた。
コンビナートの復旧は旧時代のコンマ数パーセントと言った所で、メンテの都合もあって24時間操業ではなく、ガソリンや軽油は貴重品だった。
高速道路は巨大なオブジェと化して、時々時代物のトラックが急ぎの荷物を運ぶのに使われていたが、彼方此方の崩落などあって徐々に使えなくなりつつあった。

彼方此方で寸断される道路網に代わって、物流の主役に躍り出たのが海上輸送だった。
内燃機関はマニュアル制御にしてやれば動いた。
レーダーは高価な軍用の真空管式のものがあったが、ほとんどの見張りは肉眼に頼ることになった。
瀬戸内海は天然の良港が多かったこともあって、新時代の物流の中心になり始めていて、なかでも神戸は造船所や製鉄所を抱え、活況を呈しつつあった。


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