概要

例えば､店頭で間違った鍵を渡され､現地で扉が開かない時､これでも私の責任ですか?

いいえ｡

また､入室したら下見時より汚破損されていて､例えば床に大きな傷があったり､動物の排泄物が何故かあったり異常の時､私は下見で写真を撮っていて異常を証明出来ますが､引渡し時に一緒に物件確認してないと､｢それは貴方が壊したり､汚したりしたんでしょ｣と仲介業者は言えてしまいます｡

いいえ｡

解説

賃貸借契約において特段の定めがない限り､引き渡し時期が明示されている場合はその時から､そうでない場合は契約期間の到来をもって､物件の引き渡しは完了していると解すべきです｡
ですので､民法の定めによりそれ以降については借主に善管注意義務が発生すると考えてよいでしょう｡ということは､借主の過失による汚損は借主の負担に､それ以外の汚損については貸主の負担に帰すべきです｡

そういったことから御質問にお答えします｡

例えば､店頭で間違った鍵を渡され､現地で扉が開かない時､これでも私の責任ですか?

間違った鍵を渡されたことに借主の過失はないと思われますので､答えは｢いいえ｣になります｡

また､入室したら下見時より汚破損されていて､例えば床に大きな傷があったり､動物の排泄物が何故かあったり異常の時､私は下見で写真を撮っていて異常を証明出来ますが､引渡し時に一緒に物件確認してないと､｢それは貴方が壊したり､汚したりしたんでしょ｣と仲介業者は言えてしまいます｡

物件の引渡を受ける前におきた汚損であれば､借主が負担すべき理由はありませんので､貸主の負担となるでしょう｡
鍵の引き渡しを受けてから玄関を空ける間､せいぜい数時間を留守にしたことにより汚損したというのであれば､借主の過失とは言い難いでしょう｡
ただし､鍵の引き渡しを受けた後､相当な期間経っても入室をしていない場合は､善管注意義務違反に当たる場合があるでしょう｡

借主が｢それは貴方が壊したり､汚したりしたんでしょ｣と主張することは可能でしょうけれど､たとえそうであっても民法によりますと､

賃貸人は､賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う｡

民法第606条 - Wikibooks

とありますので､貸主が修繕をし借主に損害賠償請求をするという形式になりますから､｢借主の過失｣について貸主が立証責任､つまり｢借主が故意･過失で壊した｣ことを証明する必要があります｡
これが入居中であれば､施錠されている部屋の内部を第三者が汚損をする蓋然性は低いですから､借主の過失だろうと推定できますが､引渡当日の話ですからこれは難しいのではないでしょうか｡

以上の理由により､答えは｢いいえ｣です｡



｢その時点で傷があったことの証明｣は簡単ですが｢その時点で傷がなかったことの証明｣は困難ですので､立会等で借主より｢入居時にこことここに傷がありました｣と申告いただき､退去立会時にそれ以外の汚損について過失があればご負担いただくのが正しいのでしょうけれど､それを省略し､入居時は借主自己申告に代える､というのは実務上よくあることです｡｢入居時状況確認書｣とかそういう書面を書いて管理会社に送ってますよね？
なんにせよ､この時期は忙しいんですよ……