ボール・グレアムのエッセイ「今年の夏にしたこと」を翻訳しました。
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20060112
英語のできる方、ことに翻訳の経験がある方、
[1] 誤訳の恐れがある箇所をお気づきになられたら、指摘していただけるとうれしいです。
[2] どうすれば読みやすい文章になるのか、アドバイスをいただけないでしょうか。
ある一文に関してでも、訳全体の癖や気になる点もでも大歓迎です。
よろしくお願いします。
なお一度、http://www.hatena.ne.jp/1137014692 で
yunoha609izumi様、Kumappus様、rawwell様、ogijun様、kokezaru753様からコメントを頂き、
それを反映させています。ありがとうございました。
Yahoo! JAPAN
秘訣としては、英語は日本語と違って最後にひっくり返ることはないので、(まずは)出て来た単語をどんどん日本語にしていくことです。
例えば、次のくだりなど。。。。
More precisely, より厳密には the hypothesis was that success in a startup起業における成功は depends mainly主として on how smart いかに賢くand またenergeticエネルギッシュであるか you are,ということで、 and much less on how old you are 年齢とかor how much business experience you have.どれだけのビジネス経験の持ち主であるかということは、それほど大きなことではないという考えだった。
こうすれば、あなたの訳文のように原文にない語を補わずにすむことのほうが多いです。
仮説をもっと正確に言うと、「ベンチャー企業の成功には、年齢やビジネスの経験よりも、賢さとエネルギーのほうがずっと重要だ」ということだった。
Bill Gates and Michael Dell were both 19 when they started the companies that made them famous.
この文章からは「のちに有名になる」のは、彼らが作った会社ではなく、彼らの名前ですね。厳密を帰すとそういうことになります。
つまり、ゲイツとデルが彼らの名前を高名なものとした会社を設立したのは、ふたりが19歳のときのことだった。
このあたり、(例えば)外交文書などだと論理的な厳密さが求められます。
どんな文章が来ようと、つねに同じ姿勢で原文に向かい、日本語に訳すことが、結果的に正確で筋の通った訳文を作ることになると考えます。
翻訳 translate という語には、実は「平行移動」という意味もあるのですね。そのあたり、通訳と翻訳は違うのですよ、意味だけ、メッセージだけを伝えるのでなく、文章にあるロジック、その文章になるに到った思考の痕跡までも伝わるような訳が、外交文書や法律関係の文書や思想書などではけっしておろそかにしてはいけないものとなります。
以上、just a glance で気づいたことを書いてみました。
もう細かいところだけみたいな気もしますが…
・あれ?「今年の夏が終わるまでに、8社のうち1社でも有望なら、私たちは幸せだ。」のところが直ってないですよ。”We would have been happy if~”は仮定法過去完了なんで、実際にはそうではなかったわけですから(4社ほど有望)。
・最初のSummer Founders Programは終了した。
自分でそう訳しといて何ですが、よく読むと「第一回」のほうがいいかな?これからも続けたいようだから。
・”The summer founders were as a rule very idealistic.” as a rule:通例、概して、おしなべて
・”They want to make something people use.”
(彼らは)何かみんなが使ってくれるようなものを作りたいんだ。
・今年の夏の起業家は、海のサメであるはずなのに、競争相手をどんなに恐れているかを知って私たちは驚いた。→sharks in this oceanなんで「この(業界の)海においては鮫であるはずなのに」ぐらいか?
http://www.trading-glossary.com/e0276.asp
Investing Glossary Exploding Term sheet venture capital
・term sheetは条件規定書。契約書の前に作成する細かい契約項目の一覧(例えば、成果物の権利についてとかソフトの納品形式はどうのとか予定開発期間を過ぎたら違約金がどうのとか…)。
なんとこういう俗語があるんですね。
(この訳のほうが難しいや)
たぶん、「提示されたタームシートが最終契約に向けた一定期間爆発する、つまり法的に無効になる(null and void)」と訳せばいいのかなあ?なんかとんでもないタームシートをもらったことはわかるんですが…。
こっちにも出てますね…うーんぴんと来ない。
”It means that the company must either accept the deal on the spot or it won’t get funded at all.”だからその場で条項を受け入れないと全く投資してくれないというようなタームシートなのかな?
・”I think they fail because they select for the wrong people.”
インキュベーターは間違った人(起業家)を選ぶから失敗すると思う。
つまり独立心がなくてなんでもおんぶにだっこしてもらうつもりだけど言うことは聞くような起業家を集めるんでしょうね。
・”I’ve been wondering about that.”
私はずっとそのことを疑問に思ってきた。
・Yコンビネーターは、ついか必ず起こる出来事を前倒ししているだけなんだ。→誤植、「いつか」ですよね(笑)。
http://blog.livedoor.jp/simoom634/archives/cat_10022910.html
simoom's nest:気になった一節
ついでに。他にもこの文章を読んで訳してる人を見つけました。
http://www2.odn.ne.jp/~beehive/sub-ggm-bn.htm
グリグリミュージック☆☆☆バックナンバー☆☆☆
さらにおまけ。
”What I Did This Summer”という歌があるみたいですね。関係ないとは思いますが。
Kumappus様、いつもコメントありがとうございます。
「8社のうち1社でも有望・・・」等、修正し忘れていました。今日もしくは明日に修正いたします。
Term sheetの件は、全然わかりませんでした。僕は経営に詳しくないので、翻訳は難しそうですね。
”What I Did This Summer”を歌のタイトルということを重視して訳すと、森高千里「私の夏」とか、考えてしまいましたがだめですか。(←ダメ)
Other investors were surprised to hear the most we gave any group was $20,000.
たとえば、このくだりなど、
他の投資家たちが耳にして驚いたことに・・・・・わたしたちが・・・・・・最高でも2万ドルだったということがある
というふうにすると、すんなりとまた次の文章に流れていきます。
これは「他の投資家たちをびっくりさせたこと」とか、あるいは「他の投資家たちに驚かれたのは、わたしたちが」と受け身の日本語にしてもいいでしょう。そのあたりは数をこなすとテクとして臨機応変に身につきます。ってわたしはべつに翻訳が専業ではないのですが・・・。
まあ、それぞれに好みとか作法があるでしょうが、
このapptite は「意欲」としたほうがいいでしょう。
わたしが考えるには・・・・
仕事に対する意欲がないというのではなく、提供された仕事がやる気を起こすものではないというケースも・・・・・
I think in some cases it’s not so much that they lack the appetite for work, but that the work they’re offered is unappetizing.
SFPの体験が示(唆)しているのは、やる気のある人間に真の仕事を与えれば、年齢にはかかわりなく、人は一生懸命働くのだということである。
but I had no idea what that meant until I did it.”とあるのを読みましたが、自分でやってみるまでまったくわかりませんでした。
I’d feel guilty うしろめたく思うでしょう
もしも自分があれほど人をこき使うボスだったとしたら、わたしはうしろめたく思ったことでしょう
秘訣として、「自分」という語は主語の重複を回避するのにたいへん重宝なことばですよネ。
Like good athletes, 優れたスポーツ選手
コーチにうるさく言われて一生懸命やるのでなく、自分たちが勝ちたいからやるのだ
We’re counting 見込んでいる
arranging a meeting 会見の手配(根回し)をするのにもっとも大変だったのは、
レンタル会社にクルマを貸してもらうことことだったという、彼はひじょうに年若い
人物だったのだ
I think the problem here is much the same as ここで問題となっているのは・・・・・とほとんど同じことだろう
the work they’re given is pointless,
彼らが与えられる仕事が的外れ
この「pointless」はけっこう重要だと思いますよ、安易に代替語にせず、きちんと「的外れ」とすべきでしょう
次の「power」も同じく重要
they’re not given any power.
彼らが何ら権限を与えられていないことから
they rise 彼らはのしてくる(台頭してくる、ってニュアンスですね
but it seems so far
しかし、ここまでのところ、
ふう、つかれた、では、このへんで
がんばって、いい仕上げをしてください
komasafarina様、ありがとうございます。とても勉強になります!!
いままでの経緯やほかの方の指摘をまったく読んでいないので、重複やひっくり返し等していたら恐縮なのですが…
とりあえずほんの少しだけ。
全員にとっての、ひとつの勝利に思える。
It seems like a win for everyone.
これはややわかりにくいですかね。上司と従業員のように対立(敵対)する関係なのではなく、win-winの関係で終わることができる、という含意であると思います。その点がもうちょっと織り込まれるといいのではないでしょうか。(日本語で上司と部下というとあまり対立という感じは受けませんが、employerとemployeeと考えれば使う側・使われる側、首を切る側・切られる側という文化的コードがやや感じ取れると思います。)
ただ一つの落とし穴は、従業員がほぼ全員が報酬を得るのに対し、起業家は、わずかに上位5~7%程度の人しか報酬をもらえない、ってことだ。
The only catch is that we get on average only about 5-7% of the upside, while an employer gets nearly all of it.
これは誤訳では。5-7%の報酬を受け取るのはグレアム&起業家(残りはグレアム以外のVCとかのinvestorの取り分)、まるごと受け取れるのはemployerすなわち(これが立ち上げ時のベンチャーではなかった場合の)社長とか経営者です。
あと私は経済英語にはまったく詳しくないのですが、upsideは株価の上昇分とかそういう意味な気がします。少なくとも上位5%とかそういう訳にはならないと思います。
まだまだあるのですがこのへんで。勘違いしていたらすみません。
UltraKitchen様、ご指摘ありがとうございます。
みなさまのコメントを反映させていただきました。
これにて終了いたします。
komasafarina様、了解です。勉強になります。ありがとうございました。