「職務中の公務員には肖像権がないという判例が最高裁で出ている」という話がありますが、この判例そのもの、またはいつ行われた何の事件に関する裁判であるかに関する情報をネット上で見つけてもらえないでしょうか。
個人や団体が書いた情報源の確としていないもの、回答者の意見や憶測は求めておりません(そのような回答に対しては0ポイントとします)。
また、回答オープンに当たっては事前に回答履歴を見た上で判断させていただきますのでご了承ください。
公務執行中の裁判例(下級審ということです)に関して、
肖像権につき一応あると読める裁判例ならありました
ネットで検索なのですが、LEX/DB(企業提供のデータベースです)
という、法曹関係者向けのサイトなので、登録していないと見れません。
全文が見たいときは図書館で検索してください。
(最高裁からは検索できませんでした)
ってことで、すいませんがダミーで
では、以下実際の裁判例です
【文献種別】 判決/熊本地方裁判所(第一審)
【判決年月日】 平成15年11月28日
【事件番号】 平成14年(行ウ)第4号
税務署の職員が税務調査をしている様子を弁理士が撮影したもので
その行為をやめるように職員が要請したものです
そのさいに
「・・・我々の肖像権を侵害しています・・・」
と税務署の職員は主張してやめるように言ったと認定されています。
そして、本件判決理由中に
ビデオカメラによる撮影の停止を要求した点については,
上記撮影は,○○らの承諾もない上,
同人らの国家公務員としての守秘義務の対象となる,
原告の取引先に関する事項や税務調査の方法が写され,
流布されることになる可能性があるものであるから,
○○らが撮影停止を求め,
停止されなかったことを調査拒否と判断したことに格別非難すべきところはない
人名に関しては○○と置き換えさせてもらっています。
○○さんが税務署の上席調査官です。
このなかで「○○らの承諾も無い上」(斜字にしたのは僕です)
とあります、先ほどの事実認定を前提に考えると、
承諾が必要であると読めます。
すでに出た、道路条例の事案で、最高裁は、肖像権をプライバシー権派生をひとつの根拠と考えており、○○らの承諾とあるのは、
○○のプライバシー権を前提にしていると解釈できます。
だとすると、公務中であっても
肖像権は存在していると、この裁判例は考えているようです。
裁判例を検索してみたのですが、公務員側の肖像権について言及しているのはこれしか見つかりませんでした。
反対に否定している裁判例は、僕の検索した限りでは見つけられませんでした。
調べてみたのですが(手元の判例集含む)どう見ても
そういった判例は、少なくとも最高裁では出ていないように思えます。
恐らく、
http://www5e.biglobe.ne.jp/~gyosei-i/page028.html#kyotogakuren
京都府学連デモ事件
判例 S44.12.24 大法廷・判決 昭和40(あ)1187 公務執行妨害、傷害
公務員「による」公務中の写真撮影が「肖像権の侵害にあたらない」とされたケースを曲解したか、もしくは
http://www5e.biglobe.ne.jp/~gyosei-i/page028.html#syouzouken
和歌山毒物カレー事件
判例 平成17年11月10日 第一小法廷判決 平成15年(受)第281号
「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法
となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の
侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」
という表現の解釈として
「公務員の公務中 = 国民の為に働いている = 国民の写真撮影も許される = 肖像権がない」
と解釈したか、のどちらかだと思います。
ありがとうございます。
「判例がない」ということを証明することは困難な中、ここまでお調べいただき感謝申し上げます。
私もしばらく調べてみたのですが、どうにも見つからないのですよね。
公務員に対する権利の制限というのはいくつかありますが、この主張についてはその根拠が今ひとつ分からなくて引っかかっていたのです。
もしかしたら「見つけた!」という方が出てくるかもしれませんので、念のためもうしばらく回答を募集させていただきたいと思います。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/93A81DCEC9E77E1049256A850030A...
この判例で、
http://www.carview.co.jp/community/bbs/bbs116.asp?bd=100&ct1...
「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。」
公務員の公務執行中は、「個人の私生活」に当たらないので、職務中の警察官には肖像権はないと言える。
しかし
「職務中の警察官には肖像権はない」とした最高裁判例はありません。
とありますが、これでしょうか?
GGGさんに関する情報が少ないので自信のない回答でごめんなさい。
ありがとうございます。
なるほど、公務執行中は「私生活」ではないため、という説のご紹介ですね。
隅をつつくようですが、この場合「私生活上の自由として『肖像権』を有する」ことについて言及されているわけで「公務執行中の『肖像権』」については言及されてない(判断がなされていない)という考え方はありうるのでしょうか。
(AならばBという命題に対してAでないならばBでない、という命題は必ずしも成り立たない気がするのですが…)
それとも、わざわざ「私生活上の」としていることから、公務執行中が『肖像権』の対象とならないということは自明である、と判断されるのでしょうか。
素人である私が考え始めるとなかなか分からないことだらけです。
公務執行中の裁判例(下級審ということです)に関して、
肖像権につき一応あると読める裁判例ならありました
ネットで検索なのですが、LEX/DB(企業提供のデータベースです)
という、法曹関係者向けのサイトなので、登録していないと見れません。
全文が見たいときは図書館で検索してください。
(最高裁からは検索できませんでした)
ってことで、すいませんがダミーで
では、以下実際の裁判例です
【文献種別】 判決/熊本地方裁判所(第一審)
【判決年月日】 平成15年11月28日
【事件番号】 平成14年(行ウ)第4号
税務署の職員が税務調査をしている様子を弁理士が撮影したもので
その行為をやめるように職員が要請したものです
そのさいに
「・・・我々の肖像権を侵害しています・・・」
と税務署の職員は主張してやめるように言ったと認定されています。
そして、本件判決理由中に
ビデオカメラによる撮影の停止を要求した点については,
上記撮影は,○○らの承諾もない上,
同人らの国家公務員としての守秘義務の対象となる,
原告の取引先に関する事項や税務調査の方法が写され,
流布されることになる可能性があるものであるから,
○○らが撮影停止を求め,
停止されなかったことを調査拒否と判断したことに格別非難すべきところはない
人名に関しては○○と置き換えさせてもらっています。
○○さんが税務署の上席調査官です。
このなかで「○○らの承諾も無い上」(斜字にしたのは僕です)
とあります、先ほどの事実認定を前提に考えると、
承諾が必要であると読めます。
すでに出た、道路条例の事案で、最高裁は、肖像権をプライバシー権派生をひとつの根拠と考えており、○○らの承諾とあるのは、
○○のプライバシー権を前提にしていると解釈できます。
だとすると、公務中であっても
肖像権は存在していると、この裁判例は考えているようです。
裁判例を検索してみたのですが、公務員側の肖像権について言及しているのはこれしか見つかりませんでした。
反対に否定している裁判例は、僕の検索した限りでは見つけられませんでした。
ありがとうございます。
これだけ質の高い回答が続くと嬉しくなってしまいますね。
さて、この裁判例ですが、2つ疑問があります。(どうして坊やみたいですいません…)
判決理由によると、「原告の取引先に関する事項」や「税務調査の方法」は税務調査官にとって秘匿すべき公務上の秘密、すなわち守秘義務にかかる事項であることから、この義務を果たせなくなる可能性が捨てきれない撮影行為をやめさせない限り職務が遂行できない、すなわち撮影行為によって税務調査という行為を妨害・拒否しているとみなせる、という判決に見受けられます。
ここで、
(1)税務調査官の守秘義務は当該調査官の承諾があればその権限において全うされるものなのか(税務調査官は守秘義務の範囲を自ら定められるのか)。
(2)裁判所が税務調査官の「肖像権」に対する要請をもって守秘義務と関連付けたのはなぜか(税務調査官の「顔」は税務調査の方法にかかる秘匿すべき事項なのか)。
がわからないのです。
もともとの本質問とは関係ない疑問ですが、謎は深まるばかりですね…
いずれにせよ、これで最高裁、下級審ともに公務員の肖像権について直接的に言及している例がなさそうだと言うことがわかりました。ありがとうございます。
質問者様のご指摘はごもっともです
というより、素人とご自分で書いておられますが、本当ですか?
(いや、疑っているわけではなく、仰る内容が、専門家のようですので)
本当はコメント欄でお答えしようと思ったのですが、
引用とか多くなったので、こちらで回答させていただきます
(飾り文字がコメントでもできるか僕には良くわからないので)
ってことでお答えの前にダミー
裁判例の読み方に関してですが、まさにご指摘のとおりです!
事例の本筋はそこにあります。
その税務調査拒否とみなせる理由付けの中で、公務上の性質のみならず、
肖像権も主張に出てきていたので(事実認定したので)
裁判所が判断を下したものだと思います。
では、まず(1)に関してですが、
この裁判例ではなく、
【文献種別】 判決/神戸地方裁判所(第一審)
【判決年月日】 平成16年 2月26日
【事件番号】 平成11年(ワ)第2274号
において(これも一般的に検索できるかはわかりません)
税務署の調査を同じく録画しているのですが
(これは、税務調査が違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求したものです)
その中では、
そもそも,ビデオカメラによる撮影は,
原則として撮影対象者の承諾を得なければならないところ,
税務調査の現場での被調査者によるビデオ撮影は,
その会話内容や撮影対象として,被調査者に関することのみでなく,
国家公務員である税務職員が負っている守秘義務の対象となる第三者(被調査者の取引先等)に関係する事項や,
税務調査の方法に関することなどが複合的に撮影されることとなる。
しかも,当該ビデオが課税当局の所有,管理するものでないことから,
守秘義務のない被調査者等によってその内容が第三者に明らかにされるおそれもあり,
撮影することを承諾した調査担当者は守秘義務違反に問われる可能性がある。
(同じく斜字、引用者)
として最後の段ですが、撮影することを承諾すれば、それは守秘義務違反になる可能性があります。
(ご指摘のとおり、自分では処分できない法益もあるということです)
これは、税務調査の場合なので、少々事例が特殊だったので、
指摘を避けたのですが、
そもそも、公務員の守秘義務と、肖像権ではその法的性質が違います、。
肖像権は、プライバシー権か財産権か争いのあるところですが、
それはともかく、個人に属する権利であるのに対して、
(ちなみに憲法の条文としては13条のプライバシー権派生もしくは、個人的な財産権と見るかで分かれます
後者は少々わかりにくいかも知れませんが、もともと肖像権は有名人のネームバリューの帰属は誰かというところから始まったので
年末のカレンダーなどで、芸能人の写真を勝手に使ったら、肖像権侵害になるとか、
そういった問題がスタートなのです)
公務員のこれら守秘義務は公益に関するものです。
ですから、裁判例の読み方としては、その両方にかかるものであり、
(少なくとも承諾も無い上、と断りを両裁判例では入れているので)
別次元の問題であり、個人的プライバシー権は放棄できますが、
たとえ、そちらが放棄されたとしても、
公務の性質上、公益的法益は保護されるべきであると考えていると思われます。
しかも、今回あげました、神戸の裁判例を前提にしますと、
公務上の性質のみでも拒絶しているとの根拠付けは十分であると思います。
この辺は、まさに税務の徴収上の問題でして、どの程度で拒絶とみなせるか等と絡んできて、
税法(国税徴収法)、行政法(公務員には基本的に執行上の裁量がありますので)分野の問題になります。
この辺の話になると、当初の公務員が公務遂行上肖像権を持っているか
という前提から離れすぎるので、混乱を招いてもと思ったのですが、
ご指摘があまりに的確にぼかした部分を突いておられたので、追加させていただきます。
ですから、(2)は関連付けたというよりは、その二つの異なる性質の法益が存在し、
それを同時に評価、つまり承諾も与えていないので、プライバシー権侵害にも該当し、
また、承諾とは別次元の問題として、
公務員の公務としての性質上許されないという二つの評価を下していると考えてはいかがでしょうか。
もともとの質問に戻りますと、公務員の肖像権が問題となるのは、そもそも、非常にレアなケースです
(某宗教団体は警察が調査に入ると録画してますが、警察もそれを公務執行妨害とはいえませんし)
訴訟に上ってこないので、あまり問題になりません。
税務事例ばっかりが挙がってくるのもそのためです
(警察官を録画して、肖像権侵害だって訴えるのってあまり考えられませんよね)
一応、かなりパターンを変えて、裁判例の全文を検索できるシステムを使って探してみましたので、
少なくとも、最高裁クラスでそういった判断をしたものは無いと思います。
すばらしいご指摘を頂いて、僕のほうこそ嬉しくなりました♪
ご興味がありましたら、肖像権一般に関して調べて見ると、
よりご理解が深まるかも知れません。
再びのご回答ありがとうございます。
ちなみに私は仕事柄法律を読まなきゃいけないときもあるのですが、基礎知識も何もない素人なのです…
今回の判例はとてもわかりやすいものでした。
あらためて最初にご紹介いただいた判決文を見ると、「○○らの承諾『も』ない上」とされており2つの理由の併記であると読み取れますね。
いずれの裁判例においても、判決理由において「撮影には承諾が必要である」という一般的な内容をわざわざ入れてあるというのは興味深いです。
(これらの判決は承諾の有無に関わらず守秘義務の一点のみの理由でも同等の判決になりそうなので。)
これであれば確かに、ご指摘のとおり最初の裁判例の「肖像権」について少なくともその存在を否定していないと言うことになりそうですね。
皆様ありがとうございました、これにて質問を〆たいと思います
ありがとうございます。
これだけ質の高い回答が続くと嬉しくなってしまいますね。
さて、この裁判例ですが、2つ疑問があります。(どうして坊やみたいですいません…)
判決理由によると、「原告の取引先に関する事項」や「税務調査の方法」は税務調査官にとって秘匿すべき公務上の秘密、すなわち守秘義務にかかる事項であることから、この義務を果たせなくなる可能性が捨てきれない撮影行為をやめさせない限り職務が遂行できない、すなわち撮影行為によって税務調査という行為を妨害・拒否しているとみなせる、という判決に見受けられます。
ここで、
(1)税務調査官の守秘義務は当該調査官の承諾があればその権限において全うされるものなのか(税務調査官は守秘義務の範囲を自ら定められるのか)。
(2)裁判所が税務調査官の「肖像権」に対する要請をもって守秘義務と関連付けたのはなぜか(税務調査官の「顔」は税務調査の方法にかかる秘匿すべき事項なのか)。
がわからないのです。
もともとの本質問とは関係ない疑問ですが、謎は深まるばかりですね…
いずれにせよ、これで最高裁、下級審ともに公務員の肖像権について直接的に言及している例がなさそうだと言うことがわかりました。ありがとうございます。