小説部門 - 400字程度。「萌理学園」が舞台です。最優秀作品には200pt進呈。
今回のお題は「学園の(七)不思議」です。不思議は七つ示さなくても、ホラーでなくても構いません。例えば、「幼女なのに教師」「異能で大破しても翌日には元に戻る校舎」「核融合に成功して周囲からドン引きされる科学部」など、自由に考えてください。
原作部門 - 200字程度。「萌理学園」の設定です。最優秀作品には100pt進呈。
人物・組織・場所・異能などの設定を募集します。
イラスト部門――「萌理学園」登場人物の顔アイコンを募集します。最優秀作品には200pt進呈。設定にある人物でも、不特定の人物でも構いません。100×100のサイズ・JPG・GIF・PNGの画像形式で、画像を貼るかリンクしてください。
投稿作については、「萌理Wiki」他、萌え理論系列サイトへの転載をご了承ください。なお「萌理学園」の設定に基づく二次創作は、誰でも自由に制作可能です。他詳細は開催元の「萌え理論Magazine」をご覧下さい。
■着せ替え幽霊の不思議
「私はただ綺麗な服を着て、皆みたいに可愛くなりたくて」
「あなたは既にLv2。『物幽霊』を使役する危険な幽霊だ。報告義務が発生する。私は嘘が嫌いです。捨て置くわけにはいきません」
唇を噛み締める少女。冷たく見据える少年。
「使命を全うできない未練は物を幽霊に変える。だから貴女は買ったばかりの服やアクセサリを狙った。物質破壊と日替わり幽霊。二つの不思議は貴女で繋がる」
「……私を消すの? 貴方にはできるんでしょう?」
震える声で、毅然と少女。
「できます。が、力はいらない……ふむ、それが元の貴女」
いつの間にか、古いセーラー服の少女。顔には黒縁眼鏡がのっている。
少女は体を抱いて俯いた。
「貴女の未練を増幅する為、奴はこう言ったのでしょう。『君はもっと美しくなれる』。聡明で強い貴女がバカな言葉に騙されましたね」
少女の腕に力がこもる。小さく小さく抱き締める。
「バカな話だ。貴女は既に、こんなにも可愛らしい」
顔をあげる少女、涼しい顔で少年。
「不思議の解体完了、危険はなし。一応、繰り返しますが、私は嘘が嫌いです」
ミス・アンド・ミスター・ミステリー
「これ、今年の一覧ね。10秒で覚えて焼却して」
「ん、ああ。ふーん……」
パチンッ
「便利な指パッチンだね」
「ありがとさん。去年も思ったけど、抽象的過ぎねえ?」
「それをどうやるかが私たちの本懐でしょう。それにその方が尾鰭付いて広まりやすいじゃない」
「分かってるけどさ、あと萌え系多いのな。『パスタまみれ』に『ブルマ増殖』に『通学路の風』」
「それを萌え系と判断するところにあなたの本質が見える」
「うっせぇよ。メンバーにお互いコミュるように言っといてくれよ。去年化学実験室と化学準備室で同時にやるから……」
「危うく六不思議になっちまうとこだった、でしょ? この1年聞き飽きたって」
「OBに問い詰められるのはオレなんだぜ、愚痴も言いたくなるさ」
「たまにはいいんじゃない? 今年の担当OBは伝説の『十不思議』の方だしね」
「何が伝説だか。ありゃ失敗だろ、そう聞いたぜ」
「そう見えるのも仕方ないかもね」
「あ? まあいいや、とにかくよろしく頼むぜ『ミステリー・ミストラルの為に』」
「ええ『ミステリー・ミストラルの為に』」
(おわり)
投稿ありがとうございます。最初から七不思議の裏幕を覗いてしまう作品。(題名からおそらく男女二人の)会話だけで構成されていますが、思わせぶりな単語の弾幕が面白いですね。それに、ちょっとスパイ的な会話になっていて、こんな学生生活も楽しいかもしれません。
原作部門
不思議委員会
生徒会長直属の委員会。
委員長 二年 ヴォジャ之井・夏目
副委員長 二年 ジェラルド・フンダバー。
主な仕事内容は不思議の認定(実力行使含む)。
誰からどう見ても不思議な事例を認定するために存在する委員会
不思議に生徒が関わっていると思われる場合、その生徒にとっては不思議ではない為、不思議発生時に近場にいる生徒を全員薙ぎ倒して生徒が発生源でないか確認する。
仕事の性格上高い戦闘能力が求められる部署である。
投稿ありがとうございます。「不思議委員会」は学園公認なんでしょうか。存在がベールに包まれた委員会というのも、秘密結社っぽくて素敵だと思います。戦闘をしてまで不思議の発生源を突き止めたいというのは、不思議を何かに利用したいという陰謀が渦巻いていたりして…?
小説部門で投稿します。
萌理学園七不思議選考委員会。
七人で構成され、一人につき七つの不思議を指定された七枚の紙へ一つずつ記入し、一枚ずつ七つの箱に投票する。
七つの箱に四十九の不思議。うち六つの箱は焼却、一つだけが開封となる。
「誰よ。紙に戸上さんの名前書いたの」
「あ、ぼくです」
「七不思議に人の名前書いてどうすったい」
「フィーリングカップル三対四かと思って」
「キミはディスコ世代か」
「あの、わたし他に好きな人がい、いるんですけど」
「フラれたわね」
「じゃあ左京先輩でいいです」
「じゃあって何よ! あたしは滑り止めなの?」
「左京、まんざらでもないみたいね」
「趣旨がずれとっと。七不思議に人間の名前ってどぎゃんね?」
「こういうのはどうですか。戸上さんという、七股をかけながら時をかける少女がいる」
「わわっわたしそんな不埒じゃないです!」
「略して股かけ」
「月火水木金土日、毎日違う男、違う時代。子供は七人、孫は四十九人。ひ孫も含めると」
「い、いやー!」
「左京先輩、明日映画見に行きましょうよ。時かけ」
「だ、誰がアンタなんかと」
結局、風紀委員会により修正される七不思議。
投稿ありがとうございます。またもやメタ不思議の作品。七人いる前提の会話が面白いですね。「フィーリングカップル三対四」と言っているので、不思議選考委員会の男女も三対四なんでしょうか。一人余りますね。あるいは一組は「股かけ」で一対二という…。
小説部門でよろしくおねがいします。
・三毛と鐘と影
(脳が)不思議(な少女)が腰に怪刀をもって街を歩くそんな時代。
「先輩、銃刀法違反」
『にゃ、教育委員会に届出は出ちてあゆかりゃ、ばっちりにゃ』
「ねこ?」
『うむ』
「自称、神社の御神体?」
『事実にゃ、他称にゃ、いなりにゃ……いたい、みみひっぱるにゃ』
「それ、ウソの耳だろ? ネコミミバンドとか」
『にゃにゃにゃ、いたいにゃもし』
ウソ泣きが上手で目から涙がでる。
「先輩の言った神社なんて無いぞ?」
わかってるわかってる。この後、古の戦火によって失われ刀と私だけ取り残されたっていうウソ歴史を延々と話すんだ。
記憶と歴史をクリエイトするセンパイ。
――ほら。
「そもそも、そんな日本刀みたことないぞ、どこの神社だよ?」
『あまりに昔なもんで、覚えないにゃ~。この国だったかもしれにゃいし、はたまた別の国だったかもしれにゃいし……』
午後4時44分。街のてっぺんにある丘の鐘が響く。この地にやってきた僕らの先祖を悼み、鳴らす。
ぽろり。目から涙をこぼす先輩。
『この鐘を聞くと感動するにゃー』
「どんな鐘の音でも泣くくせに、先生の結婚式の教会の鐘でも泣いてただろ?」
『で、チミはどうして影がないぞなもし?』
「仕様です」僕は答えた。
投稿ありがとうございます。あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代に、不思議少女出現。強引過ぎる「出ちてあゆかりゃ」の発音が萌え。(また)メタ気味な作品ですが、ラストの落ちが効いてます。冷たくて影が薄い「僕」の足場が崩れることで、事後的にそれまでの展開が変貌します。
■着せ替え幽霊の不思議
「私はただ綺麗な服を着て、皆みたいに可愛くなりたくて」
「あなたは既にLv2。『物幽霊』を使役する危険な幽霊だ。報告義務が発生する。私は嘘が嫌いです。捨て置くわけにはいきません」
唇を噛み締める少女。冷たく見据える少年。
「使命を全うできない未練は物を幽霊に変える。だから貴女は買ったばかりの服やアクセサリを狙った。物質破壊と日替わり幽霊。二つの不思議は貴女で繋がる」
「……私を消すの? 貴方にはできるんでしょう?」
震える声で、毅然と少女。
「できます。が、力はいらない……ふむ、それが元の貴女」
いつの間にか、古いセーラー服の少女。顔には黒縁眼鏡がのっている。
少女は体を抱いて俯いた。
「貴女の未練を増幅する為、奴はこう言ったのでしょう。『君はもっと美しくなれる』。聡明で強い貴女がバカな言葉に騙されましたね」
少女の腕に力がこもる。小さく小さく抱き締める。
「バカな話だ。貴女は既に、こんなにも可愛らしい」
顔をあげる少女、涼しい顔で少年。
「不思議の解体完了、危険はなし。一応、繰り返しますが、私は嘘が嫌いです」
投稿ありがとうございます。短編ですが本格的な物語がある作品。異能の設定も含めつつ、不思議=幽霊という直球で勝負しています。「物幽霊」というのは、妖怪みたいな擬人化なのか、ポルターガイストみたいな現象なのか、その辺りも興味深いです。
《飛ぶ教室》事件 調査委員会 報告会
「進展あったそうだな、報告しろ。探偵部部長」
「了解。当日、転校生1名をつれた担任教諭が入室、3秒後に教室消失。8分後再出現、42名全てが内破、死亡。完全密室と。霊能部?」
「0.2ij。通常値。霊干渉なしね」
「魔研?」
「あらゆる魔術痕跡ないですぅ。帰っていいですかぁ?」
「よって通常異能のセンは消えたが。物理部?」
「微小重力震を検知してる」
「天文部」
「同時刻、衛星軌道上に十数m四方の物体を観測。教室だな」
「さらに清掃部による床下の古代字発見・解析結果から総合して、あの教室は古代軌道エレベータと思われる」
「42名は真空に晒され死んだと? エレベータならなぜ軌道上に何もない?」
「そこまでは。ただね、報告はまだあるんだ」
「なんだ?」
「同様設備が他にもありそうなこと。《定員》に達すると起動すること。そしていまこの教室に41名の生徒がいること」
「……」
ガラッ
「すいません野球部ス。遅れましたー」
「あっ!」
投稿ありがとうございます。今までにないタイプの作品。探偵部を始め、色々な部活に関連した不思議の可能性があって賑やかです。古代の施設なら、萌理学園はいつから存在しているのかという、壮大なスケールのお話です。
潤井由華を描いてみました
潤井由華の人物設定 ↓
http://moeri.g.hatena.ne.jp/keyword/%e6%bd%a4%e4%ba%95%e7%94%b1%...
もうちょいアブなそうな目付きにするつもりだったんですが
予定よりおとなしい顔になってしまいました
投稿ありがとうございます。イラスト作品。木刀ということで黒髪のイメージだったんですが、「非戦武術」というのが古武術系とは限らないし、意外と今風の女の子かもしれませんね。嬉しそうな表情が印象的です。
『納涼祭準備会、もしくは七不思議ハンター』
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「この『空飛ぶ上履き』って解決したっけー」
「原因だった2年のチビは一昨日シメといた」
「あと6個?」
「残念だけど昨日また一つ見つかった。『まだ』7つだ」
「え」
「『図書館所蔵ライトノベル紛失』は……残念だけどこれはあたしにゃシメられない。あんたの力がいる。頼むがガツンと一発封印してくれないかね?」
「またお化け?最近多過ぎだし……」
「夏が近いと増えるのがバケモノでしょ」
日々生徒達の口に上る七不思議、その原因は単なる悪戯から異能者の能力、魑魅魍魎の類など多岐に渡る。
「納涼祭準備会」を自称する学園の非公認団体(構成員・女生徒2人)は、図書館の片隅を占領しながら活動を続けている。
その活動内容は「七不思議撲滅」。学園内の超常現象であればそれが十だろうが百だろうがお構いなしなのだが、彼女達はまだ「七不思議が一つ消えるたびに一つが補完される」ことを知らない。
投稿ありがとうございます。二人がどういうきっかけで「納涼祭準備会」を立ち上げたのか、という辺りでエピソードがありそうです。ラストは七不思議を生成するメタ不思議が出て、綺麗な締め。
『不思議委員会・実地編』
「スタン・ボム!」
「破魔弥勒陣!」
音声と共に衝撃が奔った。
理科室にいた生徒達はばたばたと気絶し、有象無象の雑霊は「おおおん」と恨めしげな呻き声を残して退散する。不思議委員会が現れたのだ。
「排除完了っと」
先導する女子生徒が男子生徒に呼びかける。
「不思議カウンターは?」
男子生徒の持つ機械が電子音を上げている。
ピ、ピ、ピピピピピピピピピ・・・・・・
「究極近いです。もう、すぐそこに・・・・・・これか!」
指さされたのは汚れた水槽だ。
「見てください、藻がマリモ状に丸まってますよ。ふしぎぃ~」
しかし、女子学生は失望も顕わに壁に寄りかかった。
「げー、小粒ねぇ。もっとでっかい不思議ってないの?宇宙が膨張する不思議とか」
「そんなメジャーな不思議は開校10年以内に出尽くしてますよー。
あ!でもあえて挙げるとすれば」
「すれば?」
「先輩の部屋があそこまで究極乱雑なのに次元の底が抜けないのが不思議」
「えい、デス・ペナルティ-」
「げふー」
かくしてまた一人の若人がその命を華と散らしたのである。まあ翌日には復活するんだけど。なんと言ってもここは萌理学園、何があっても不思議じゃないのだ!
投稿ありがとうございます。理科室と言えば水槽の藻。「ドラゴンレーダー」みたいな「不思議カウンター」が面白いです。「男子生徒」は「先輩の部屋」が「乱雑」なのを知っているようですが、どういう関係なのか不思議ですね。
月光
月明かりの廊下。
幼女の眼は薄闇の中でもはっきりと紅く、爛々と輝いていた。
対する長躯の少女は冷徹な表情で相手を見据える。
風のない静かな夜。
しかし、雲は刻々とうつろいゆき、月が陰る。
幼女が獲物に喰らいつく。美貌を、精気を、その全てを貪り蹂躙しようと信じられない力で圧し掛かる。
床に叩きつけられた長躯の少女は、すんでのところで幼女の歯牙を遮る。身体がぎしぎしと悲鳴をあげた。
再び幼女が襲いかかる――前傾になったその瞬間、二人の身体は反転。流れるような身のこなしで長躯の少女が攻めに転じる。幼女の口をこじ開け、己の口をもだらしなく開く。
つう、とたれさがり、二点を結ぶ透明な唾液。
途端、幼女が苦痛に喘ぎだす。
次第にその姿は薄れ。
やがて、跡形もなく消え失せた。
「お疲れ様です。抄夜お嬢様」
いつの間にか傍らに佇む執事が、白布を差し出した。
雲が途切れ少女の姿が浮かび上がる。制服はてらてらと輝いていた。
少女はハンカチで全身を拭い、汚れきった前掛けを外すと執事が差し出すそれを受け取った。
「あと何人残っているのかしら?」
「三人でございます」
執事は恭しくかしずいた。
投稿ありがとうございます。よだれで戦うというジャンルは初めて見ますが、「眉唾」というように、体液に神秘的な力があるという発想は、意外と伝統的です。本編だと自分がマウントポジションを取る必要があるようですが、唾を吐いて飛び道具にもなると強いですね。
げに不思議は
桜の樹の下には学園長が埋まっている。そんな噂が広まってから三ヶ月、季節は夏を迎えようとしていた。緑が生い茂る樹の下で、彼女がふと呟く。
「覚えている? 学園長の噂」
僕が頷くと、彼女は突然こう切り出した。
「ねえ、掘ってみない」
若さと時間、そして彼女への想いを持て余していた僕が断るはずもなかった。
数十分後、スコップの先端が硬いものを捉えていた。
「何か埋まってる」
慎重に掘り出したそれは銀色に輝く球体だった。
「それってタイムカプセル?」
「みたいだな」
「開けてみてよ」
おそるおそるカプセルを開くと中には人形らしきものが入っていた。いやよく見るとそれは小さな学園長だった。
「よくぞ私を見つけ…」
カプセルを閉じたのは彼女だった。彼女はしばらく沈黙した後、唐突にこう言った。
「父なの」
僕は咄嗟に何かを言おうとした。でも何も言えなかった。彼女の唇が僕の声を奪っていたのだ。そこで僕は確信する。げに不思議は乙女心なりと。
投稿ありがとうございます。ポケモンみたいなタイムカプセル。ちょっとシュールな展開で、ラストシーンは突然に。本当に乙女心は不思議ですね。というか(噂から)三ヶ月間も埋まったまま放置されている学園長が可哀想です。いなくても学園の運営に支障なし?
階上の絞殺者
「そこで止まれ!」
凛然たる号令一下、すでに十二番径の銃口定まり微動だにせず。さながら黄泉につながる九つの穴。
照星の彼方にあるは、痩身長髪の美貌の少女。
「2年×組、吊坂 結!反生徒会活動容疑で拘束する!」
腰の段平に手をかけて大音声で呼ばわるも、死地に置かれた美貌の少女、これを全く意に介さず、艶然たる笑みを見せる。
「わたしの事は『十三階段』と呼ぶように言ったはずだけど?」
「下らん言葉遊びだ」
返事を聞いた吊坂結、一体何が可笑しいか、喉の奥にて低く笑う。
「言葉遊び、そうよ。わたし達はそこから来たのだもの」
腰の後ろで組んだ手を、ゆらりと放して腕を垂らす。
「わたし達、『七不思議』は」
秒、一秒。いかなる業によるものか、黒い制服の袖口より、秋水の勢いで溢れ出す数条の麻縄、さながら昆虫の触覚が如く、ゆらりゆらりと宙を舞う。
「化物め…」
畏れる手勢を背中で制し、銀光一閃、腰の段平を抜き放つ。
八条の麻縄、まさしく蛇の如く蠢き、今や遅しと今宵の獲物を待ち受ける。
「さあ」
子を抱き留める母の如く、両手を緩く広げる結。
「あそびましょ」
投稿ありがとうございます。この賞では珍しい、やや文語調の作品。漢字や固めの単語を使うだけでなく、「一体何が可笑しいか」など判断を挟んで前景化する話者も、講釈師のようなノスタルジックな効果があります。言葉の一つ一つがかなり凝ってますね。
メテオ・グライダー
萌理学園の校庭を見渡すと、「ムー」の巻頭グラビアにでも載っていそうな光景が広がっている事がある。
曼荼羅状に等間隔で並べられた穴ぼこのミステリーサークル。
これこそ深夜の内に異星人が掘った着陸目標であろうか? あるいは人類に危機を伝える深淵なメッセージ?
否。彼女の仕業である。
2年A組渾天澄香。
謝罪部、天動説支持部所属。
彼女は華道の家元の一人娘として厳格な父の元で清廉貞淑に育てられ、その儚さ故に霞掛かった魅力を放っていた。
今日も澄香が友人たちと帰宅しようと校舎を出ると、一人の男子生徒が近寄ってきて頭を下げる。
「渾天さん! 僕と付き合ってください!」
途端、澄香の身体は硬直し、友人たちの顔色が変わる。
「ご……」
男慣れしてない澄香はどもる。
「ご、ごごごごごご」
男子は気付かない。そのごごごが大気を揺らす地響きの音と重なっていく事に。
総毛立つ澄香の全身、その振動は空気との過摩擦を発生、なんかプラズマっぽい電荷に誘因され、上空には艦隊のように隕石が召喚される。
「ごめんなそいんすうー!」
その言葉と共に、星河の瀑布は落下してくる。
投稿ありがとうございます。終盤の強引な展開を読んでから、改めて序盤の思わせぶりな長い前振りを読み返すと、ユーモラスで楽しいです。それにしても、男子生徒だけじゃなく本人や友人も、大丈夫なんでしょうか。上手く避けてメテオを落としているなら、それが一番不思議ですね。
投稿ありがとうございます。短編ですが本格的な物語がある作品。異能の設定も含めつつ、不思議=幽霊という直球で勝負しています。「物幽霊」というのは、妖怪みたいな擬人化なのか、ポルターガイストみたいな現象なのか、その辺りも興味深いです。