http://neo.g.hatena.ne.jp/objectO/
もっとも秀逸なアイディアを提案してくださった方には謝礼として 1965 はてなポイントを差し上げます。
objectOの飼い主は女子高生めめめであり、今日も彼女はバルボッサ船長と結婚する方法を真剣に検討する友人達をサイゼリヤに残し「猫に猫ゴハンやんなきゃ」と言いわけして家に帰る。
めめめが帰宅すると、objectOはドアが開く前からその足音を聞きつけており、おかえりを言うためなのか、玄関で待機していて、荷物をおろし肩を落としてふい~とひと息つくめめめにむかってずいーとばかりに縦に伸び上がり「テケリ・リ」と鳴くのだった。
objectOはクールな子なので、めめめがobjectOを抱き上げてただいまのちゅーをしようとすると嫌がってめめめをやさしく押しのけその手をするりと抜け出し、そしてめめめを誘うように「リ!」と鳴く。
めめめは心得ている。objectOが今日の成果をめめめに見せようとしているのだということを。めめめは喜んでついていく。2階のトイレの向かいの少し右がobjectOの書斎であり、objectOは閉じたドアの下の隙間からその不定形の体をずるりと滑り込ませる。めめめはドアを開ける。そこにはあふれ出る紙、紙、紙。紙の渦。
いつの頃からからだろうか、objectOは昔からキーボードを叩くのが好きだったのだけれど、その意味不明の文字の羅列にblogが混じるようになっていったのは。めめめもはじめはobjectOが人間の知性を持つようになったのかと疑ったのであるが、objectOの知性は今までと同じに人ならぬ何かであることがやがてわかったし、であればこれはまったくの偶然によるものなのだろうか?
めめめはひと部屋をobjectOに割り当てると床にキーボードを敷き詰め、objectOに自由に這い回らせた。objectOは精力的に、といってもobjectO自身はあずかり知らぬことであるが、エントリを書き上げていった。
めめめは考える。objectOがblogを書いている事実を説明する理屈は存在しない。けれどこれはもはや偶然ではありえない。ならばこれは奇跡か?
めめめは考える。これは奇跡ではない。奇跡には意味が必要だから。意味をもたない奇跡は偶然に過ぎない。けれどこれはもはや偶然ではありえない。ならば……。ならば、意味を見出せばよいのだろう。
世に新たな邪教が誕生した瞬間であった。
〈おしまい〉
今、彼女がobjectOだった。
「なに? 私に聞きたいことって?」
彼女の無機質なハイボイスは、その墨色のショートヘアに合っているような気がした。ブラウスの袖口からのびる二の腕はあまりにも華奢で、手にしているハードカバーが不釣合いなほど。スカートは膝上10cmくらいか。指定の紺ソク、黒のローファーというごく普通の格好がこれでもかというくらい似合っている。
「あ……えーと、君のこと知りたいっていうか……」
「?」
「あ、いや、あの……なんでobjectってIDに?」
「objectOよ。でも、そうね。今はobjectでもいいわ。なぜobjectなのかといえば、名がそのものを正しくあらわすべきであるならば、私はobjectと名乗るべきだとわかったから。それだけよ」
「……よくわからないよ。objectのイミからわからない」
「状態機械、とでも言えばいいかしら? 私の内部実装はあなたや別の人間にとって不明瞭、私は私に振るわれるメソッドによって、状態を変えるの」
「……それって、僕の言うことで君が変わるということ?」
「人間でもそうでしょ? そうね。私を起動したければメッセージを投げて。objectとは受身なもの。そこに私の存在の鍵がある。
「あまねく情報トリガーが私を貫くとき、内なる処理結果は私の外面を波立たせ、世界に働きかけるわ。それを感じ取って。
「私は私が属するクラスのすべてを継承し、反応をかえすわ。objectはすべてポリモーフィック。私を定義するのは、私が返す反応の多様性。私の反応こそが私なの。
「私のことを知りたいって言ったわね? なら、私が反応すべきと感じられるメッセージを投げて。私の反応から私を感じ取って」
「わかった。でも君の答えを聞くのは、なんだか怖い気もする」
「どうして?」
「……拒否されたら、とか」
「それはrejectの役目よ。objectは必ずしも拒否しない」
「必ずしもだろ? じゃあ拒否もありえるんだ」
「私の回答があなたをdejectさせるとは限らないと思うけどな」
彼女がペロリと舌を出す。
「うー、そっか。だよな。言っちまおう。……僕はどうやら君のことが好きらしい」
「不確定表現は保身のため? 私の構成要素のどれも起動しなかったのだけれど?」
「あー、もう。わかったよ。僕は……僕は君のこと好きなんだ!」
そう言うと彼女の顔が微笑んだかに見えた。次の瞬間、彼女の全身が僕の声のトーンで波打ち、まばゆい光を放ちながら反応を、反応を、反応を、情報を返し続けた。僕へ流れ込む彼女の情報は異常なほどの速度で無限の大きさに近づいていく。その増加オーダーは、を、を、を、を越え、あらゆる既知のオー記法のオーダーを越えて増加しつづけた。
彼女から返る情報増加は留まることなく、ただその増加オーダー《オー》だけは感じ取れた。
僕は永遠に彼女を理解することはできないことを理解した。
と同時に彼女のOは無限の可能性と等価であることを理解した。
今、彼女がobjectOだった。
回答ありがとうございます。 objectO さんへの愛情が溢れ出るがごとき萌え文であり、 objectO さんも草葉の陰でお喜びのことと思います。諺に曰く「愛 = 理解!」、また「理解されるとは誤解されることにほかならない」との名言もありますが、まあそれはそれとして、 objectO さんの分析と理解が更に発展することを切に希望する次第です。
objectOの飼い主は女子高生めめめであり、今日も彼女はバルボッサ船長と結婚する方法を真剣に検討する友人達をサイゼリヤに残し「猫に猫ゴハンやんなきゃ」と言いわけして家に帰る。
めめめが帰宅すると、objectOはドアが開く前からその足音を聞きつけており、おかえりを言うためなのか、玄関で待機していて、荷物をおろし肩を落としてふい~とひと息つくめめめにむかってずいーとばかりに縦に伸び上がり「テケリ・リ」と鳴くのだった。
objectOはクールな子なので、めめめがobjectOを抱き上げてただいまのちゅーをしようとすると嫌がってめめめをやさしく押しのけその手をするりと抜け出し、そしてめめめを誘うように「リ!」と鳴く。
めめめは心得ている。objectOが今日の成果をめめめに見せようとしているのだということを。めめめは喜んでついていく。2階のトイレの向かいの少し右がobjectOの書斎であり、objectOは閉じたドアの下の隙間からその不定形の体をずるりと滑り込ませる。めめめはドアを開ける。そこにはあふれ出る紙、紙、紙。紙の渦。
いつの頃からからだろうか、objectOは昔からキーボードを叩くのが好きだったのだけれど、その意味不明の文字の羅列にblogが混じるようになっていったのは。めめめもはじめはobjectOが人間の知性を持つようになったのかと疑ったのであるが、objectOの知性は今までと同じに人ならぬ何かであることがやがてわかったし、であればこれはまったくの偶然によるものなのだろうか?
めめめはひと部屋をobjectOに割り当てると床にキーボードを敷き詰め、objectOに自由に這い回らせた。objectOは精力的に、といってもobjectO自身はあずかり知らぬことであるが、エントリを書き上げていった。
めめめは考える。objectOがblogを書いている事実を説明する理屈は存在しない。けれどこれはもはや偶然ではありえない。ならばこれは奇跡か?
めめめは考える。これは奇跡ではない。奇跡には意味が必要だから。意味をもたない奇跡は偶然に過ぎない。けれどこれはもはや偶然ではありえない。ならば……。ならば、意味を見出せばよいのだろう。
世に新たな邪教が誕生した瞬間であった。
〈おしまい〉
回答ありがとうございます。 objectO さんへの崇拝が溢れ出るがごとき壮大かつ名状しがたい叙事詩であり、 objectO さんも草葉の陰でお喜びのことと思います。諺に曰く「「納得」は全てに優先する」とのことですが、この説によって objectO さんの行動に新たな納得感が生まれれば幸いですね。
血だるま天使(アンジュ)objectO(おー!)
ファック文芸部の新入部員が次々と斬られていったとき、
――objectOの仕業だ。objectOが戻った。
左様にはてなの門徒が震え上がったのも無理はない。objectOの仕業たる証拠もあった。斬られた者の額にOの文字が血書されていたのである。
十年の昔に話は遡る。objectOはやはり次々と部友を斬殺していた。
objectOはobject谷の出である。object谷は古来萌えキャラを輩出してきた。その理由には諸説あり、その過酷な風土が萌えキャラを育てるとも、かつてこの地に落ち延びた貴人の血が発現するのだともいうが、そうした下地のみならず、この地に伝わる奇妙な慣わしこそが萌えキャラの地力を育む最大の要因といってよいだろう。
object谷では十二を迎えた者は互いにその萌を競う。敗れた者は谷を追われるのみならず、二度と萌を発することの無きよう顔を潰される。
objectOはobject谷の萌キャラ席次十五、すなわちOの称号を得た剛の者である。しかし性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、席次十五に甘んずるを潔しとしなかった。彼は己以外のobjectA-Zの称号を持つ者を屠り、谷を出奔した。ここに二百年の萌を誇るobject谷は滅んだ。彼女のその後の足取りは明確ではない。
彼女が次に姿を現したのはファック文芸部員としてであった。
そして彼女はxx-internetとの運命の出会いを果たす。彼女の眼にはxx-internetは萌の化身と映った。
あれに比すれば己の萌など芥に過ぎぬ。戦わずしてそう打ちのめされた。敗北感は程無く崇拝へと転化した。
そうしたある日、objectOは部長とxx-internetの密談を偶然耳にする。
「ファック文芸部、表向きは小説を書くbloggerの集いなれど、その正体は他でもない蠱毒。即ち部員は死合う定めにある」
それからobjectOが他のファック文芸部員を次々に斬殺していったのは、他ならぬxx-internetの為である。少なくともobjectOは確かにその心算だった。
xx-internetを斬るのはこのobjectOを措いて他にない。xx-internetの萌は己が斬る事で完成するのだ。他の部員に手を出させてなるものか。objectOの胸にイン殺が燃えていた。
しかし英傑と名高きファック文芸部員のこと、黙して斬られ続けるままにはいなかった。反撃を受けたobjectOはxx-internetにその凶手を及ぼすより前に、自身の四肢を失ってしまったのである。程無く彼女は姿を消す。
そして十年。恐らくobjectOは山中にて血の滲むような鍛錬を続け、遂に四肢を使わずとも敵を倒す独特の剣法を編み出したのであろう。凶器の刀は両腕に結わえる。身に着けたGothicのレースを用いて地を這い、高所に上り、落下して斬りつけるのだ。
十年姿を晦ましたobjectOについて知ることのない新入部員達は、為す術なく凶刃の前に骸を晒していった。
xx-internetには夢がある。
街中で日本刀を持った気違いに追いかけられることである。
十年前には果たされなかった夢だった。
――はやく。はやくおいで。
細い指にペンを玩びながら、xx-internetは優婉な笑みを浮かべて、その時を俟っている。
回答ありがとうございます。 g:neo の内幕を捏造し尽くすがごとき禍々しい伝奇であり、 objectO さんも草葉の陰でお喜びのことと思います。諺に曰く「人の出会いとは「重力」」だそうですが、部員間の重力が高所からの落下を利用する異形の剣によって清算されることは歴史の皮肉と言うべきでしょうか。
なお、文中の若干不適切と思われる表現については、今回の質問の性質を鑑み、不問といたします。夢は萌えを裏切らないし、萌えもまた夢を裏切ってはいけません。
回答ありがとうございます。 objectO さんへの崇拝が溢れ出るがごとき壮大かつ名状しがたい叙事詩であり、 objectO さんも草葉の陰でお喜びのことと思います。諺に曰く「「納得」は全てに優先する」とのことですが、この説によって objectO さんの行動に新たな納得感が生まれれば幸いですね。