『826でのミッションが終了し空間移動での392帰還の準備として、滞在記録証拠物保管庫に行った。
対数比でいうと0.125程度と、私とさして高度が変わらない移動体Aが私へのコンタクトを試みた。
Aは旧通信プロトコルに基づき上方を1radほど傾けた。そして電磁波センサーの下にある
バルブ付きチューブで気圧を変化させ、私への通信を始めた。
私は、430THzの電磁波を反射する興奮性薬物Tを保持する物体Cの必要性を伝えた。
Aは、私が言及したTの電磁波反射は起こらないと訂正した上で、
C及びCとほぼ同物体Sを私にスキャンさせた。
C及びSは機能、容積、電磁波反射パターンがほぼ同じだったが多少形は違っていた。
位相幾何学的に、一方の物体は土星と同形であり、他方は土星の輪と同形であった。
AはCについて、コロイド提供体の廃材混入が物理的特性に影響している旨のプログラムを
私の中央処理装置兼記憶回路にインストールした。
更に、エイリアンである私の正体を見抜き、我が仲間に数多く提供した事実を伝達した。
その事実に基づき、私は10個パックを入手した。』
以下、コメント欄参照
「なんだってこんな重いものを…。」
目の前に続く長い列をチラとみると、私は恨めしそうに紙袋をにらんだ。
日本人の特性か、お土産を買わないとなにか旅行に行った気がしない―。
イギリスでの仕事を終えた私は、日本に帰る前に土産物屋に寄った。
店につくと、私よりちょっとばかり背の高い――20cmくらいの差なんてほんのちょっとだ――男がにこやかにやってきた。
これで揉み手でもしてたら漫画にでも出てきそうなくらいだが、さすがは紳士の国、そこまではしないようだ。
男はかしこまって深々とお辞儀をすると、目に微笑みを浮かべたまま親しげに「ようこそいらっしゃいました。何をお探しですか、お客様?」と私に声をかけた。
イギリスと言えば紅茶、紅茶と言えばティーカップ。
ごく単純な発想で私はこの店を訪れたのだが、はてさて、どうやら甘く見ていたようだ。
店内にはありとあらゆる種類の紅茶やそれにまつわる品々が並んでいる。
私は、どうかできるだけ手慣れているようにみえることを祈りつつ、「ティーカップを探しているんだけど」と店員に告げた。
「ティーカップですか?それでしたらこちらにございます。」
店員は店の奥に案内しながら話を続ける。
「ティーカップをお探しとは、幸運ですな。当店はティーカップにかけてはロンドンでも指折りの品揃えを誇ってましてね。きっとお気に召すものが見つかりますよ。」
うへぇ、ティーカップだけでもそんなに種類があるのか。
「紅茶と言えば、お客様はご存知でしたか?英語では紅茶はblack teaといってred teaとは言わないんですよ。」
そんな蘊蓄どうでもいい。が、正直な話、red teaだと思っていたのは黙っておこう。
「こちらにございます。」
そういって店員は棚いっぱいに並んだティーカップと皿を見せた。
皿?
イギリスと言えばティーカップとばかり思っていたが、そもそも陶磁器が有名ということらしい。
その証拠に、似たような素材、デザインのティーカップと皿がセットで並んでいる。
「こちらの商品はボーンチャイナです。ボーンチャイナというのは、その名前のとおり材料に牛の骨灰を使っていて、唇に触れた時の滑らかさはまさに逸品ですよ。」
嬉しそうに解説する店員の話をまるで最初から知っているような顔をして聞いていたが、帰ったらこの話をしてやろうと頭の中にそっと刻んでおいた。
「特にこちらの商品は日本人のお客様には人気の品で、当店でもよくお求めになる方がいらっしゃいまして。」
うー、これにはやられた。
『人気の品』とか『よく売れている』とかいう言葉に私は弱い。
セールスマンの常套句であることはわかってるくせに、ほかの人も選んでると思うとなんだか良い品物のように見えてしまう。
そんなわけで、私は10客ものティーカップが入ったそれはそれは重いティーセットを手に、こうして空港のチケット・カウンターに並んでるわけ。
それにしても、なんで日本人とわかったのだろう?
カモられないようにあれだけ手慣れた雰囲気を醸し出すようにしてたのに。
「いらっしゃいませ」
私が店に入った瞬間に店員がそのように言ったのを思い出したのは目の前の列があと11人になった時のことだ。
そう、彼は「いらっしゃいませ」と言ったのだ。流暢な日本語で。
~~~~~~~~~
【対応表】
原文 | 対応、解説 |
---|---|
826 | 国籍コードでイギリス |
392 | 国籍コードで日本 |
滞在記録証拠物 | お土産。日本人は旅行に行くと必ず人に渡すための土産物を探したくなる。 |
対数比で0.125 | 真数で1.13倍。主人公が身長170cmであれば店員は192cm、ちょっとくらい背が高いからって…、というのは日本人のコンプレックスか。 |
旧通信プロトコル | 「古式ゆかしく」と訳すとそれっぽいですが、昔の作法は知らないので… |
1rad | 1ラジアンは約57.3度。最敬礼でも45度というから、それはそれは深々とお辞儀をしたに違いない。慇懃無礼ともいう。 |
電磁波センサー | 目。電磁波は波長によっていろいろと呼び名が変わる。この場合可視光しか対応してないセンサーだけど。 |
バルブ付きチューブ | 喉。声は声帯を震わせて出している。 |
430THzの電磁波 | 可視光のうち、赤い色。RGBのうちRは約428THzだそうだ。 |
興奮性薬物T | 紅茶。Tはteaから。コーヒーやココアと同じように、紅茶も昔は薬のように扱われてたのでしょうか。 |
物体C | 紅茶を入れるもの、ということでティーカップ。Cはcupから。 |
Tの電磁波反射は起こらない | 悩んだ点その1。紅茶は英語でblack tea、ということでしょうか。 |
物体S | 悩んだ点その2。機能や色はともかく、容積が同じくらいか…?と。とりあえずカップ&ソーサーの組み合わせから皿(saucer)に。 |
位相幾何学的に土星 | 要は丸になるということ。ソーサーのほうですね。 |
位相幾何学的に土星の輪 | これが今回のなぞ解きのきっかけ。詳しくはwikipediaで位相幾何学をチェック。 |
コロイド | 牛乳。これもwikipediaで。 |
提供体 | 牛乳を出すのはもちろん牛さん。 |
廃材 | 骨灰。最初はゼラチンか何かかとも思ったんですがティーカップからボーンチャイナを思い出して芋ずる式に。 |
中央処理装置兼記憶回路 | 脳みそ。 |
エイリアン | 異邦人。英語で書くとalien。ありえん。 |
「なんだってこんな重いものを…。」
目の前に続く長い列をチラとみると、私は恨めしそうに紙袋をにらんだ。
日本人の特性か、お土産を買わないとなにか旅行に行った気がしない―。
イギリスでの仕事を終えた私は、日本に帰る前に土産物屋に寄った。
店につくと、私よりちょっとばかり背の高い――20cmくらいの差なんてほんのちょっとだ――男がにこやかにやってきた。
これで揉み手でもしてたら漫画にでも出てきそうなくらいだが、さすがは紳士の国、そこまではしないようだ。
男はかしこまって深々とお辞儀をすると、目に微笑みを浮かべたまま親しげに「ようこそいらっしゃいました。何をお探しですか、お客様?」と私に声をかけた。
イギリスと言えば紅茶、紅茶と言えばティーカップ。
ごく単純な発想で私はこの店を訪れたのだが、はてさて、どうやら甘く見ていたようだ。
店内にはありとあらゆる種類の紅茶やそれにまつわる品々が並んでいる。
私は、どうかできるだけ手慣れているようにみえることを祈りつつ、「ティーカップを探しているんだけど」と店員に告げた。
「ティーカップですか?それでしたらこちらにございます。」
店員は店の奥に案内しながら話を続ける。
「ティーカップをお探しとは、幸運ですな。当店はティーカップにかけてはロンドンでも指折りの品揃えを誇ってましてね。きっとお気に召すものが見つかりますよ。」
うへぇ、ティーカップだけでもそんなに種類があるのか。
「紅茶と言えば、お客様はご存知でしたか?英語では紅茶はblack teaといってred teaとは言わないんですよ。」
そんな蘊蓄どうでもいい。が、正直な話、red teaだと思っていたのは黙っておこう。
「こちらにございます。」
そういって店員は棚いっぱいに並んだティーカップと皿を見せた。
皿?
イギリスと言えばティーカップとばかり思っていたが、そもそも陶磁器が有名ということらしい。
その証拠に、似たような素材、デザインのティーカップと皿がセットで並んでいる。
「こちらの商品はボーンチャイナです。ボーンチャイナというのは、その名前のとおり材料に牛の骨灰を使っていて、唇に触れた時の滑らかさはまさに逸品ですよ。」
嬉しそうに解説する店員の話をまるで最初から知っているような顔をして聞いていたが、帰ったらこの話をしてやろうと頭の中にそっと刻んでおいた。
「特にこちらの商品は日本人のお客様には人気の品で、当店でもよくお求めになる方がいらっしゃいまして。」
うー、これにはやられた。
『人気の品』とか『よく売れている』とかいう言葉に私は弱い。
セールスマンの常套句であることはわかってるくせに、ほかの人も選んでると思うとなんだか良い品物のように見えてしまう。
そんなわけで、私は10客ものティーカップが入ったそれはそれは重いティーセットを手に、こうして空港のチケット・カウンターに並んでるわけ。
それにしても、なんで日本人とわかったのだろう?
カモられないようにあれだけ手慣れた雰囲気を醸し出すようにしてたのに。
「いらっしゃいませ」
私が店に入った瞬間に店員がそのように言ったのを思い出したのは目の前の列があと11人になった時のことだ。
そう、彼は「いらっしゃいませ」と言ったのだ。流暢な日本語で。
~~~~~~~~~
【対応表】
原文 | 対応、解説 |
---|---|
826 | 国籍コードでイギリス |
392 | 国籍コードで日本 |
滞在記録証拠物 | お土産。日本人は旅行に行くと必ず人に渡すための土産物を探したくなる。 |
対数比で0.125 | 真数で1.13倍。主人公が身長170cmであれば店員は192cm、ちょっとくらい背が高いからって…、というのは日本人のコンプレックスか。 |
旧通信プロトコル | 「古式ゆかしく」と訳すとそれっぽいですが、昔の作法は知らないので… |
1rad | 1ラジアンは約57.3度。最敬礼でも45度というから、それはそれは深々とお辞儀をしたに違いない。慇懃無礼ともいう。 |
電磁波センサー | 目。電磁波は波長によっていろいろと呼び名が変わる。この場合可視光しか対応してないセンサーだけど。 |
バルブ付きチューブ | 喉。声は声帯を震わせて出している。 |
430THzの電磁波 | 可視光のうち、赤い色。RGBのうちRは約428THzだそうだ。 |
興奮性薬物T | 紅茶。Tはteaから。コーヒーやココアと同じように、紅茶も昔は薬のように扱われてたのでしょうか。 |
物体C | 紅茶を入れるもの、ということでティーカップ。Cはcupから。 |
Tの電磁波反射は起こらない | 悩んだ点その1。紅茶は英語でblack tea、ということでしょうか。 |
物体S | 悩んだ点その2。機能や色はともかく、容積が同じくらいか…?と。とりあえずカップ&ソーサーの組み合わせから皿(saucer)に。 |
位相幾何学的に土星 | 要は丸になるということ。ソーサーのほうですね。 |
位相幾何学的に土星の輪 | これが今回のなぞ解きのきっかけ。詳しくはwikipediaで位相幾何学をチェック。 |
コロイド | 牛乳。これもwikipediaで。 |
提供体 | 牛乳を出すのはもちろん牛さん。 |
廃材 | 骨灰。最初はゼラチンか何かかとも思ったんですがティーカップからボーンチャイナを思い出して芋ずる式に。 |
中央処理装置兼記憶回路 | 脳みそ。 |
エイリアン | 異邦人。英語で書くとalien。ありえん。 |
hokurakuさん、面白いストーリーありがとうございます。
解釈も完璧です。
Wikipedia:位相幾何学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8D%E7%9B%B8%E5%B9%BE%E4%BD%9...
以下、解答します。
滞在記録証拠物保管庫=土産物屋
対数比でいうと0.125程度=エイリアンが10進法にこだわる理由はないので自然対数の比と観て、1.13倍の背丈
移動体A=店員、か
上方を1radほど傾けた=お辞儀をした
電磁波センサー=目
電磁波センサーの下にあるバルブ付きチューブで気圧を変化させ、私への通信を=声を出した
430THzの電磁波=可視光(赤)
430THzの電磁波を反射する興奮性薬物T=紅茶
Tを保持する物体C=ティーカップ
Tの電磁波反射は起こらない=紅茶と呼ぶが赤くはない
C及びCとほぼ同物体S=カップとソーサー
私にスキャンさせた=私に見せた
位相幾何学的に、一方の物体は土星と同形であり、他方は土星の輪と同形=位相幾何学的にはカップはトーラスと、ソーサーは球体と同一視されうる
コロイド提供体の廃材=牛の骨
コロイド提供体の廃材混入が物理的特性に影響=ボーンチャイナ
プログラムを私の中央処理装置兼記憶回路にインストール=教えてくれた
しかし、ティーカップの10個パック、というのが引っかかります。826、392も何か意味があるのでしょうか。
正解の公開、楽しみにしております。
manabuさん
解釈はほとんど正解です。
正解でないものがあるとしても、質問者の出題が悪い部分があります。
ストーリーを作って欲しかったけど、でも正解です。
ugi1010さん、楽しいクイズをありがとうございます。
回答です。
1.レポートの内容
福岡県田川での仕事を終え、長野県諏訪まで帰る前に土産物屋に行った。
私より背の高い店員が近づいてきて、深々とお辞儀をして話しかけてきた。
私が「チロルチョコ」を探しているというと、店員は「チロルチョコ」と、同じ会社の「ごえんがあるよ」という商品を見せてくれた。
どちらもチョコレート菓子で大きさなどもほぼ同じだったが、「ごえんがあるよ」の方は穴あき五円玉の形をしている。
店員が「チロルチョコ」の方は、様々なクリームやゼリーと合わせたフルーツ風味のものやお茶風味のものなど、たくさんの種類があると教えてくれた。
さらに私が出張で来ていることを察して、出張みやげには「チロルチョコ」の方が売れていますというので、「チロルチョコ」のミックス10個入りを買った。(以上)
ということで、入手したものはチロルチョコ(株)の「『チロルチョコ』ミックス10個入り」です。
パッケージは「箱」・「吊り下げ」と2種類あるようです(同社HP)が、職場への土産なら「箱」で、子供への土産は「吊り下げ」にするかなぁw。
2.蛇足・ヒントになったところ。
①冒頭の「826」「392」は郵便番号ですね。
②滞在記録証拠物保管庫 ・・・ 全国各地の土産品を取りそろえていた梅田地下街のアリバイ横町(仲間内でそう呼んでた)を思い出しましたw。
③対数比0.125 → 約13%増しの身長(160cm対180cm位)
④1rad → 約57度:深々とお辞儀。
⑤アルファベットのTとCでチロルのチョコ(田川に製造工場があるんですね)
⑥土星の輪 → 同社の「ごえんがあるよ」
⑦コロイド提供体~ → 「チロルチョコ」には多種の風味のものがあることの寓意。
⑧エイリアン : ①とあわせ考え、出張者。
以上/正解していると嬉しいのですが。
郵便番号! アリバイ横丁! 田川の工場! ごえんがあるよ!
な~る程。こういうふうに解釈をしてもストーリーが出来るんですね。
amnisさん
面白いストーリー作成ありがとうございます。
hokurakuさん、面白いストーリーありがとうございます。
解釈も完璧です。