ある企業の貸借対照表の中で棚卸資産が3億円計上されていたとします。しかし、第三者(たとえば、その会社の業務内容を投資家の立場からリサーチしているアナリスト)から見たときに、その棚卸資産の価値は1億円しかなかったとします。このとき、棚卸資産の客観的価値を反映した「真に正しい貸借対照表」を作成するにはどのようにしたらいいのでしょうか?
私の考えでは、棚卸資産を3億円から1億円にしたうえで、資本の部の利益剰余金を2億円減らす、だと思うのですが、これでいいのでしょうか?
現行の期末棚卸資産の評価方法は、原則として原価法(原価基準)を採用しています。容認規定として低価法(低価基準)があります。原価法は棚卸資産の購入時の代価(原則として付随費用を加算)して個別法・先入先出法・後入先出法・平均法などの方法を適用して算定した取得原価をもってB/Sに表示します。低価法は時価が取得原価よりも下落した場合に時価による評価を適用するものです。
取得時に10万円だった商品が売れ残って棚卸資産として在庫を抱えていた場合、原価法では10万円として評価されます。一方、低価法を採用した場合は、時価評価しますので、たとえば時価が8万円ですと2万円は商品低価評価損として損失処理します。
もう少し細かいことでは商品が色あせたり流行遅れで通常の売価では販売できない場合は、品質低下評価損・陳腐化評価損で処理します。これは原価法や低価法の採用に係わらず基本として評価減しなければなりません。
一方、強制評価減があります。強制評価減は商品の時価が取得原価よりも著しく下落した場合に、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価まで評価減するものです。時価の著しい下落とは取得原価の50%以上の下落と解されています。また「回復する見込みがあると認められる場合を除き」とは回復出来ないケースと回復するかどうか不明のケースがありますが、後者の場合でも強制評価減を適用します。
取得原価が10万円の商品が4万円の時価しかなく、回復することは有り得ない時や回復するかどうか分からない時は、商品強制評価損として6万円の損失を計上しなければなりません。これは原価法を採用していても強制的に評価減しなければなりません。
質問に即して考えてみますと、原価法を採用していた場合に、時価評価や実情に照らした商品の評価(品質低下・陳腐化など)をすれば1億円の評価となるケースです。その場合机上では2億円の評価損を算出して棚卸資産を1億円に評価替えします。B/S上は利益剰余金の減額となります。内訳では繰越利益剰余金の減額として処理することになります。
http://www3.bus.osaka-cu.ac.jp/mslab/accstandards/acc101.htm#sec...
(資産の貸借対照表価額)
五 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。
A 商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等のたな卸資産については、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算し、これに個別法、先入先出法、後入先出法、平均原価法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。(注9) (注10) (注21)
たな卸資産の貸借対照表価額は、時価が取得原価よりも下落した場合には時価による方法を適用して算定することができる。(注10)
利益剰余金は利益処分科目であり、資本の部の増減は株主総会の決議がいるので一般の仕訳には用いません
今回のケースであれば特別損失、又はその他営業外損失を用いるのが一般的です
回答をありがとうございます。資本の部の増減に株主総会の決議がいるとのこと、勉強になりました。
特別損失/そのほか営業外損失というのは、損益計算書上の区分ですよね。私の理解がまちがっていなければ。質問したいのは、もし、ここで言っているような損失が発生した際に(もっと正確に言えば、そうした損失の発生を第三者が認識し、より事実に即した貸借対照表を非公式にであれ作成したいと考えた際に)、貸借対照表においてどのように反映させたらよいのか、ということです。
質問の意味を取り違えて申し訳ない
BS上であればtsubo1さんの考えている通り利益剰余金の繰越利益剰余金を減額すればOKです
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%B8%E5%80%9F%E5%AF%BE%E7%85%A...
2回目の回答をありがとうございました。
「貸借対照表においてどのように反映させたらよいのか」ということですが、当期利益金に反映されます。棚卸し評価損は特別損失ですので、当然 損益計算書の最後の当期利益金が減りますよね。
B/S(貸借対照表)では当期利益金が減るかマイナスになります。http://q.hatena.ne.jp/1195079109 ダミーです。
回答をありがとうございます。ちょっと混乱しているのですが、BSで当期利益金というのがよくわかりません。
当期利益金の説明です。会計は、期間計算なので当期と言うのは進行中の年度です。たとえば、会社の決算日が11月30日だとします。棚卸資産の評価損を11月30日付けで計上した場合は、資産勘定の当期利益金が減るかマイナスになります。12月1日より次年度ですので、繰越利益剰余金に変わります。直前の決算書を修正するのか、進行中の年度の試算表のB/Sで反映させるかどちらかで変わってきます。http://q.hatena.ne.jp/1195079109 ダミーです。
2回目の回答をありがとうございます。私の勉強不足と理解力不足で「当期利益金」という言葉遣いがやはりよくわかりません。Google で調べると確かにでてくるのですが、yumi1219さんから教えていただくまで、貸借対照表の項目としてみた事がなかったので。「当期未処分利益」と書かれている物と同じと考えて良いのでしょうか。もし可能であれば、コメントでもけっこうですのでおこたえいただけると助かります。
現行の期末棚卸資産の評価方法は、原則として原価法(原価基準)を採用しています。容認規定として低価法(低価基準)があります。原価法は棚卸資産の購入時の代価(原則として付随費用を加算)して個別法・先入先出法・後入先出法・平均法などの方法を適用して算定した取得原価をもってB/Sに表示します。低価法は時価が取得原価よりも下落した場合に時価による評価を適用するものです。
取得時に10万円だった商品が売れ残って棚卸資産として在庫を抱えていた場合、原価法では10万円として評価されます。一方、低価法を採用した場合は、時価評価しますので、たとえば時価が8万円ですと2万円は商品低価評価損として損失処理します。
もう少し細かいことでは商品が色あせたり流行遅れで通常の売価では販売できない場合は、品質低下評価損・陳腐化評価損で処理します。これは原価法や低価法の採用に係わらず基本として評価減しなければなりません。
一方、強制評価減があります。強制評価減は商品の時価が取得原価よりも著しく下落した場合に、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価まで評価減するものです。時価の著しい下落とは取得原価の50%以上の下落と解されています。また「回復する見込みがあると認められる場合を除き」とは回復出来ないケースと回復するかどうか不明のケースがありますが、後者の場合でも強制評価減を適用します。
取得原価が10万円の商品が4万円の時価しかなく、回復することは有り得ない時や回復するかどうか分からない時は、商品強制評価損として6万円の損失を計上しなければなりません。これは原価法を採用していても強制的に評価減しなければなりません。
質問に即して考えてみますと、原価法を採用していた場合に、時価評価や実情に照らした商品の評価(品質低下・陳腐化など)をすれば1億円の評価となるケースです。その場合机上では2億円の評価損を算出して棚卸資産を1億円に評価替えします。B/S上は利益剰余金の減額となります。内訳では繰越利益剰余金の減額として処理することになります。
http://www3.bus.osaka-cu.ac.jp/mslab/accstandards/acc101.htm#sec...
(資産の貸借対照表価額)
五 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。
A 商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等のたな卸資産については、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算し、これに個別法、先入先出法、後入先出法、平均原価法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。(注9) (注10) (注21)
たな卸資産の貸借対照表価額は、時価が取得原価よりも下落した場合には時価による方法を適用して算定することができる。(注10)
丁寧な回答をどうもありがとうございました。「棚卸資産の評価損」というケースに該当する訳ですね。なるほど、やはり利益剰余金の減額ということでいいのですか。
個人的には非常に興味深い論点なのでもう少し掘り下げて検討していましたら、以下の説明で納得して頂けると思いましたので2回目の回答を投稿しました。
まず説明の便宜上、単純化して考えてみました。
資本金3億円の会社を設立
開始B/S(仕訳のように表示されていますがB/Sとお考え下さい)
現金預金 3億円/資本金 3億円
出資金総額で商品を購入したのですが売れずに期末在庫になりました。法人住民税が発生しますが便宜上度外視しています。
期末B/S
棚卸資産 3億円/資本金 3億円
------------------------------------------------
第三者が期末在庫を分析したところ、時価評価は1億円と算定しました。
仕訳で考えてみますと次の伝票を1枚作成することになります。
商品評価損 2億円/棚卸資産 2億円
修正前P/L
税引前当期純利益 0
法人税等 0
----------------------------------
当期純利益 0
----------------------------------
----------------------------------
修正後P/L
税引前当期純損失 2億円
法人税等 0
----------------------------------
当期純損失 2億円
----------------------------------
----------------------------------
この数値は、B/Sにおいては利益剰余金の2億円のマイナスとして表示されます。それ以外に数値が変更する勘定科目は有り得ないです。法人住民税の均等割額や法人事業税の外形標準課税は納付しなければなりませんが、所得が0ですとそれ以上負担は発生しません。便宜上度外視して検討しても構わないことになります。
修正後B/S
棚卸資産 1億円/資本金 3億円
/利益剰余金 -2億円
利益剰余金の内訳は繰越利益剰余金です。
別の見方を検討したいと思います。当該企業が決算において評価損を計上した場合です。経営者が棚卸資産を時価評価しましたら1億円の価値しかないと自ら判断しました。
次の伝票を経営者が1枚作成します。
商品評価損 2億円/棚卸資産 2億円
そうしますと当期末のP/Lは次のようになります。
P/L
税引前当期純損失 2億円
法人税等 0
---------------------------
当期純損失 2億円
----------------------------------
----------------------------------
公表B/Sは次のようになります。
棚卸資産 1億円/資本金 3億円
/利益剰余金 -2億円
上記の修正後B/Sと違いはありません。結局、経営者がきちんと棚卸資産を評価換えして公表財務諸表に反映させますと問題は無かった訳です。ところが公表されている財務諸表では棚卸資産がきちんと評価されていないので第三者がB/Sを修正しますと修正後B/Sとなり、予めきちんと評価換えしていた場合のB/Sと同じ数値となるのです。したがって経営者が先に評価損を計上するか第三者が後に修正するかに帰着するだけで利益剰余金を2億円減少させることにおいて違いは生じないことになります。
再度の回答をありがとうございます。なるほど、第三者がおこなう客観的評価によるB/Sと、経営者がおこなう「正直な」評価によるB/Sは一致するのですね。私は、率直に言って、第三者側からの評価にしか興味がなかったのですが、きちんと順序をおって仕分けをしていくと両者がおなじになる、ということは興味深く思えました。
丁寧な回答をどうもありがとうございました。「棚卸資産の評価損」というケースに該当する訳ですね。なるほど、やはり利益剰余金の減額ということでいいのですか。