大きく分けると二つの系統に分けられます。
○ひとつは、国交がない国との漁業問題(資源保護や漁業海域の合意など)の
解決のために国交回復に先行して締結される民間の漁業組合・漁業団体間の協定。
一般的には、公海上で紛争が発生した場合、外交的手段で解決されますが、国交がない場合は、別の手段を取らなければなりません。そのような紛争を避けたり、また漁業資源を保護するため、全般的な国交回復に先立ち、漁業団体同士の民間協定が結ばれる場合があります。
日韓、日中協定がそうですが、国交回復とともに政府間協定に引き継がれていきました。
その理由は、「周恩来中国首相の対日貿易3原則に関する談話」で触れられているように、
「両国間のどんな協定も,政府によって締結されるべきであり,民間の協定では保障がえられない。この協定には貿易,漁業,郵便,輸送などが含まれる」という点にあります。
○二つ目は、60年代までは沖合い3海里ないし12海里が一般的な領海とみなされてきましたが、70年代以降、米ソなどが沖合い200海里を排他的経済水域と宣言し、領海内の水産・鉱物資源の領有権を主張し、やがてその主張が一般化して82年には国連海洋法条約が締結されました。こうなると200海里内の操業は、即領海侵犯になりますから(民間合意では駄目)、政府間協定が結ばれなければ操業は不可能になります。
更に、日中韓のように200海里が重なる場合は、領海をめぐる線引きと政府間の合意が不可欠になります。
この間の事情は、「漁業を巡る国際情勢」を参考になさると良いかと思います。
しかし、政府間協定で合意する内容は、領海内での操業に関する大枠(漁獲量、漁業資源の保護、操業船数など)だけで、実際上の安全操業のためには、様々な補完的取り決めが必要です。
政府間協定の概要は、「新しい日中漁業協定の発効について」を参考にするとよいかと思います。
補完の具体的内容は、例えば、
イ.海外漁場等操業秩序維持推進事業(pdf)で、
事業内容として
「(1)日韓・日中間等において民間協定を締結・改定するための交渉の実施及び相互入会操業上の諸問題等を解決するための民間間による検討会の開催
(2)日韓・日中等の漁船間の事故・紛争の解決のための折衝及び民間協定等
の内容の漁業者等への啓発・普及」を挙げています。
ロ.日中民間漁業安全操業議定書の締結について(pdf)
では、「協定の目的:両国漁船間の操業安全の確保及び秩序の維持並びに事故の処理」を挙げています。
このように、政府間協定が前提としてある場合は民間協定は政府間協定では規定されていない細目についての補完的取り決めをしています。
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