【イエはてな】イエコト・ミシュラン#008

アニメ「美味しんぼ」に、こんな話がありました。パリで活躍していた日本人デザイナーが帰国して、もうパリには帰りたくないと言い出すんです。彼にとって、活動の拠点であるパリを離れることは、デザイナーの世界から引退することを意味します。

それを惜しむ人が、主人公・山岡に、なんとか料理でパリが懐かしくなるようなもてなしをしてくれないかと頼みに来ます。山岡は極上の食材を揃えて最高のフレンチでそのデザイナーをもてなしますが、なんと「東京でこんなに素晴らしいフランス料理が食べられるなら、もうパリに戻る必要はありませんね」と言われてしまいます。

次は海原雄山がもてなす番です。が、出てきたのは笹にくるまれた米だけの握り飯と、樽に入ったままのキュウリの糠漬けです。呆気にとられている一同を横目に、雄山はフィンカーボウルでキュウリの糠を洗い、ナプキンで拭いて、デザイナーに渡します。

「握り飯を右手に、キュウリの糠漬けを丸ごと左手に持って、それを交互に食べるのです!!」

デザイナーは、一口握り飯を味わい、キュウリを囓ると、目の色が変わってきました。うまい、なんてうまいんだ!!　もう、子供のように握り飯にかぶりついています。

続いて雄山は、水の入ったグラスを差し出します。「丹沢山中から汲んできた岩清水です」

デザイナーはそれを旨そうに飲み、そして、

「海原先生、ありがとうございます、日本の根底を、思うさま味わわせていただきました。私は20年パリで過ごしているうち、自分の根っこが失われてきたように思えてきたんです。そのことが不安で不安で、貯まらなくなって日本に逃げ帰ってきたんです。でもこれで私の迷いは吹っ切れました。私には日本の風土という、どっしりとした根っこがあるんです。根っこさえしっかりしていれば、世界中どんな所に枝を伸ばしても、大輪の花を咲かせられます。・・・・私は、パリに戻ります!!」

「美味しんぼ」のおにぎりの話は、そんなストーリーです。これ、マンガの中の話だけじゃありませんよね。本当に旨い握り飯は、それだけで日本人にとってはご馳走です。日本の根っこが味わえるからです。

そんな握り飯、食いたいですね!!　日本の風土をぎゅっと握った、そんなおにぎりを!!