THEME:「お部屋の夏じたく」「五月晴れに」「初夏を味わう」
「今日をちょっと楽しく、特別にすることって何だろう? イエで過ごすいつもの時間を素敵に変える小さな魔法のサプリがあったら……」と展開してきた“リブ・ラブ・サプリ”コーナーの続編のひとつ、シーズン・バージョン。季節をさまざまに楽しむ暮らしのサプリを、テーマに沿って語らいませんか? 豊かな暮らしを創っていく〈イエはてな〉のマインドで投稿ください!
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※質問は5月17日(月)正午で終了させていただきます。
京都大学には1984年から5年がかりで調べられた、膨大な訪花昆虫資料があります。これは調査コースにおいて訪虫が観察された全ての花を調査対象としたもので、この資料を分析することによって新たな発見を目指す研究が今も続けられています。
そうした中から、たとえば同一の栄養段階に所属して共通資源を利用する複数生物種の集まりや個体群のことをギルドと言いますが、そうしたギルドとなる昆虫の分布が植物の分布と密接に関連していることや、同じマルハナバチでもある種類の花に集まる一群と別の種類の花に集まる一群では口器の長さが違っていた、なんていう色々なことが分かってきています。
自然の世界では、こんなふうに、虫と花がそれぞれにかけがえのないパートナーを持っているんですね。ある一群の花にとってはある一群の昆虫達が最良のパートナー。昆虫の側にとっても、特定の一群の花が最良の命の糧といった、オンリーワンの密接な共生関係があるわけです。
昆虫の多様性が植物の多様性を守り、植物の多様性が昆虫の多様性を守っているということ。ここがとっても大切なことなんですよね。そして、落ち葉だまりも水たまりも、全てがその地域における生態系を構成する環境の一部なんだということへの理解も、とても大切です。
そういうことに気付いていくと、たとえばある水たまりが失われれば、そこに生息するハナアブの幼虫の一群が全滅し、その一群に依存していた植物にも危機が訪れるかもしれないといった、環境の全体像しか見ていない人間には気が付かない、クラスタ単位で進行していく絶滅の実態も見えてきます。
ちょっとややこしい話になってしまいましたが、花に訪れる昆虫に目を向けるということは、そういう今まで気付かなかった世界に視界を開く、素晴らしい体験にもなっていきますよね。
私も、ぜひ多くの人に、花に集まる虫たちを訪ねるお散歩を、やってみてもらいたいと思います。これは、国際生物多様性年の今年にもふさわしいテーマのひとつですね。
花と虫はとても仲良しです。だから自然の花を訪ねて歩くと、一緒に様々な虫さんたちとも出会います。
花に集まる昆虫のことを、ちょっと難しい言葉で訪花性昆虫と言います。訪花性昆虫として私たちに身近なのは、チョウチョやハチやハナアブなどですね。チョウチョやハチは長い口を持っているので、閉じた形をしている花の蜜を吸うのが得意です。またハチの仲間は花粉も集めますから、特にマルハナバチなどは蜜を持たない花にも積極的にやってきます。
一方ハナアブは短い口なので、大きく花びらが開く花を得意としています。
ほかにもカナブンをちっちゃくしたような甲虫もよく花にやってきます。よいしょよいしょと密集した花びらをかきわけて潜り込んでいけるので、たんぽぽみたいな花が得意です。
ほかにもよーく見ていると、花には本当にたくさんの虫さんたちがやってきます。どんな虫さんと出会えるでしょう。虫の種類によって得意な花が違いますから、花の種類を変えて観察すると、また違った虫さんに出会えます。被子植物の7割以上が何らかの動物の力を借りて受粉すると言われていますから、どんな都会のど真ん中でも、種を実らせる花がある限り、7割以上の確率でその受粉を助けている虫さんがいるはずです。どこででもできる自然観察として、花にやってくる虫さんたちを探すお散歩。楽しいですよ。
虫さんたちとの出会いを楽しんだら、今度はその虫さんたちがどこで育ってきたのかなども考えてみてください。チョウチョやハチの仲間はだいたい想像が付きますね。ではハナアブはどうでしょう。ハナアブはすごく種類が多くて日本だけでも400種はいるらしいですから、種類によって幼虫の育ち方も様々ですが、なんと幼虫時代は水の中で過ごす種類もあるんです。長いしっぽのような管を持っていて、それをシュノーケルみたいにして水中で呼吸しています。食べ物は微生物の死骸など。だからすごく汚い水の中に住んでいます。でもそれは自然の掃除屋さんてことですよね。もしそれらしい生き物を見つけたら、気持ち悪がらずにご苦労様、ありがとうって言ってあげてくださいね。
カナブンをちっちゃくしたような甲虫は、幼虫時代は枯葉の下とか朽ち木の中などで育ちます。
こんなふうに、花に集まってくる虫の生態は様々です。花を見る時にそこに集まってくる虫さんたちにも注目すると、人間の生活のすぐ隣にありながら小さくてよく知らない世界にまで目が広がっていきます。
もう自然なんてなくなってしまったと思うような街にも、ちゃんと花にやってくる虫たちが育つ小さな小さな自然のカケラが残っていることがわかります。それを守りましょう。
虫なんてキライ!という人も、五月の明るい日差しの中で花と戯れているかわいい虫さんたちを見たら、きっと好きになれると思います。花の多い今の季節に最適な、花に集まる虫たちを訪ねるお散歩を、ぜひやってみてくださいね。