THEME:「中元・暑中見舞いに」「夏の健康づくり」「7月のわが家の風物詩」
「今日をちょっと楽しく、特別にすることって何だろう? イエで過ごすいつもの時間を素敵に変える小さな魔法のサプリがあったら……」と展開してきた“リブ・ラブ・サプリ”コーナーの続編のひとつ、シーズン・バージョン。季節をさまざまに楽しむ暮らしのサプリを、テーマに沿って語らいませんか? 豊かな暮らしを創っていく〈イエはてな〉のマインドで投稿ください!
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※質問は7月12日(月)正午で終了させていただきます。
柳陰、私も結構好きですよ。私がそういうお酒があると知ったのは、落語「青菜」が切っ掛けでした。酒は辛口が旨いという思い込みがあると、何だこりゃ、って味ですが、先入観無しに飲めば、柔らかな飲み口で、なかなかいけますよね。むしろ口当たりが良すぎて飲み過ぎてしまうくらいですw
それからキハダマグロ。築地でも季節になるとこれの近海物を出してくれるお店が現れて、マグロ好きなら騙されたと思ってでもいいから一度は食っておけ、なんて言われますよね。これもヤミツキになります。
長距離を泳ぐことで育まれた締まった身がもたらす旨味もマグロの醍醐味。これは畜養物では味わえません。10月を過ぎれば本マグロも金華山沖あたりにやってきますが、こちらはちょっと庶民には手が出ない。でも夏のキハダなら手が届きますものね。あー、刺身食べたくなってきました。というか、お酒が飲みたくなってしまいました。朝っぱらから(笑)
「柳陰」とは、味醂と焼酎をブレンドした物です。かつて味醂は高級なお酒でしたが、甘味が強すぎるので、それを焼酎で割ったんですね。味を飲みやすく整えるという意味で、江戸では「直し」「本直し」とも呼ばれていました。
落語「青菜」にも、このお酒が登場します。炎天下で働いている植木屋さんに、仕事を頼んだ家の主人が、ちょっとこっちへ来て一杯やって涼みませんかと勧めているのが「柳陰」。いかにも上方の上品な呼び方です。江戸時代には、夏に井戸水でキリッと冷やして飲む暑気払いのお酒として、なかなか人気があったようです。
市販品もありますが、飲んでも本当にうまい味醂があれば自分でブレンドすることも出来ます。いわば和風カクテルですね。もちろん市販品を混ぜ合わせるだけですから、販売しなければ酒税法には触れません。
レシピは江戸時代に喜田川守貞が著した江戸風俗事典と言うべき書物「守貞謾稿」によれば、「京坂夏月には夏銘酒柳陰と云ふを専用す。江戸は本直しと号し、味琳と焼酎を大略これを半ばに合わせ用ふ」とのこと。冷やで飲むということも書かれています。
味醂の甘さにもよりますが、1:1だとやや甘すぎるので、だいたい味醂1に対して焼酎2~3くらいがいいようです。使う味醂や焼酎によってかなり味わいが違ってきますが、興味のある方はお手持ちの物で実験してみてくださいね。
出来上がりのアルコール濃度は20数度くらいと若干強いお酒になりますが、酔うために飲むのではない暑気払いのお酒ですから、小さな器で飲んでください。適温は井戸水で冷やしたことを考えると15℃前後がいいでしょう。甘口で飲みやすく嫌味もないので、口直しのつまみは要りませんが、一緒に何かを楽しむならやはり青菜のおひたしですね。
そのほか、キハダマグロの刺身などがあると最高です。この時期、キハダは日本近海にやってきます。運が良ければ、その冷凍していないナマが手に入るんです。キハダなんて安物、本マグロの代用品と思うなかれ。キハダが安物扱いされるのはトロがないからで、逆に一ヶ所に脂が集中しない分、赤身全体に程よい脂が行き渡っているんです。ですからキハダは年間を通じてうまい魚。その冷凍していない新鮮な物のうまさといったらありません。
また、最近の本マグロは輸入物を中心に養殖物が多くなっています。しかし今の時期に出回る九州沖や四国沖で獲られたキハダは天然物。夏のマグロといったら近海物キハダで決まりです。これも私の7月の風物詩。
浴衣を着て縁台に座り、柳陰をキュッと飲りつつ日本の魚を楽しむ。ビールもいいですが、こんな日本情緒漂う暑気払いもオツなものです。梅雨が明けたら柳陰。お試しください。