【謎解きサルベージ質問】

質問者さんは「給食費未払い問題」と絡めた回答を想定していたようです。

http://q.hatena.ne.jp/1173650953#a692121

http://wami-chu1109.blog.so-net.ne.jp/2006-06-01

なので、こんな感じでしょうか。

夏を惜しむようにせみが鳴いている。

太陽は、木々の陰を縫って、校舎に照り付ける。

その校舎から、いつもと違う声が聞こえる。たくさんの、大人の女性の笑い声。

今日は、授業参観だった。

児童はいつも通りだった。

皆先生の授業を真剣に聞いているようには見えない。しかし、騒がしい訳でもない。

ある児童は机に突っ伏し、ある児童は腕をだらりと下げ、椅子にもたれかかって中空を見つめている。

まるで活気が無い。

子供達の肌は皆どす黒く、服は薄汚れ、やせ細っていて、虚ろな目をしていた。

手を上げて問題に答えるどころか、頭に止まるハエを振り払う気力すらもない。

このクラスの児童全員が、家庭でネグレクトを受けていたのだ。

夏休み中、ろくな食事も与えられず、風呂にも入れられず、家畜以下の生活を強いられてきたのだ。

子供達の家庭は決して貧乏ではなかった。しかし裕福でもなかった。

母親達は海外旅行の土産やアクセサリーを買うお金を作るため、子供に使うお金を削っていたのだ。

子供手当てを受けるために、生かさず、殺さずの状態で、子供を飼い殺していた。

殺していた。子供達の精神を、無残という言葉では足りないほどの残酷さで、殺していた。

二学期はじめの参観日は、母親達のそうした過ぎた見栄を披露するイベントに成り下がっていた。

誰も子供など見ていない。興味が無い。

自分が他の母親達より勝っているか、よりきらびやかな宝石を見せびらかすことができるか、

より珍しく高価な土産を渡せるか、そんなことしか頭に無かった。

四時間目。

給食の匂いが教室に漂ってくる。

決してご馳走ではない、しかし温かみのある食事。の香り。

死体のようだった子供達が、ぴくり、むくりと起き上がる。

木のうろのようだった瞳に、らんらんとした光が宿る。

飢えていた。子供達は皆、極限まで飢えていた。

しかし、さらに残酷な事に、母親達は給食費すら出し渋っていた。

少ない給食費では子供達全員が満たされる量の給食を作ることができない。

子供達は、思っていた。

闘わなければ、自分が死ぬ。

本当に死ぬわけではない。子供達は、子供手当ての支給が終わるまで、ぎりぎりの状態で生かされる。

しかし、子供達はその事を知らない。いつ自分が殺されるか、分からない。

飢えは、死がすぐ隣に近づいていると確信するほど、激しかった。

皆で少量の給食を分け合うだけでは、満たされないほどのひもじさだった。

さらに、家で食べさせられる「餌」は、腐ったものだったり、土が混じったりしていた。

おいしいものを食べたい、満たされるほど食べたい。

ゆらり。ゾンビのような、緩慢で、ぎこちない動きで、一人の子供が立ち上がった。

他の子供も次々とよろけながら立ち上がる。

はらへった…

たべたい…

ごはん…

タベタイ…

全身全霊の力を振り絞って、子供達は互いを殴り始める。

か細い悲鳴は、母親達の嬌声にかき消されて、校長室までは届かなかった。