THEME:「わが家にお部屋に、ずっとありつづけるモノ」
“ディア・ライフ”=『親愛なる日々』。イエは暮らしと人生の舞台。「LIFE」という言葉に、生活と人生の2つの意味をこめて、イエと家族のストーリーを語り合いませんか? 心のページに刻まれた思い出も、現在のイエでの愛しいワンシーンも。毎回のテーマに沿って素敵なエピソードを、豊かな暮らしを創っていく〈イエはてな〉のマインドで投稿ください!
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「Welcome to イエはてな」
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テーマ詳細とアイデア例
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※ピックアップ受賞メッセージは、〈みんなの住まい〉サイトにて記事紹介させていただきます。またメッセージは表記統一や文章量の調整をさせていただくことがございます。
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※質問は10月18日(月)正午で終了させていただきます。
うわぁぁ、私にも父譲りのハンダゴテがあったんですよ。でも、ヒーター周りの金属カバー部分がボロボロに腐食してしまったので、ついにお蔵入りになってしまいました。そうかあ~。取っ手部分だけでも生かせればよかったんだなと、今改めて反省しています。
まだ、一応捨てずに保管してあります。自分で買った小型のコテは、もうそれが手に馴染んでしまっていますが、あの懐かしい木の取っ手も、今後何かに生かしていきたいと思います。ごつい取っ手ですから、少し大きな100Wくらいのコテを作ろうかなあ。
ハンダゴテは電子工作好きにとっては魂のようなモノ。私も親譲り魂を受け継ぐハンダゴテを、蘇らせてみたくなりました。
子供のころ、電子工作好きの父のハンダゴテさばきを見ているのが好きでした。私はとにかく「モノ作り」を見ているのが好きで、道路工事からお祭りの屋台の鈴カステラ作りに至るまで、とにかくモノが作られる過程を眺めては、すごいなぁ、ぼくも大人になったらあんなのを作ってみたいなぁと夢を膨らませる子供でした。そんな子供にとって、とりわけ父のハンダゴテさばきは憧れだったのです。
休日になると、父はウキウキしながらハンダゴテを温めはじめました。
「ハンダ付けするぞ、見に来るか?」
「わー、見せて見せて!」
針金のようなハンダがスーッと溶けて、金属と金属の間に染み渡っていく。そして金属と金属をがっちりと一体化させてしまう。これは本当に不思議な魔法でした。その魔法が何十回と繰り返されていくと、いつの間にか豆粒みたいなバーツが見事に組み合わされて、オーディオアンプになったり受信機になったりしていきます。
見ているだけだった私も、その魔法が使えるようになりたいと思いはじめました。父に教えてもらいながら初めて作ったのは、ラジオでもアンプでもない、パーツの切り落としの錫メッキ銅線を十文字にハンダ付けしただけの物でした。ハンダ付け個所はたったの一個所。それでも生まれて初めてのハンダ付け体験は、鮮烈な記憶として残りました。
移り気な子供はすぐにそんなことも忘れて他の遊びに熱中したりしますが、年齢が進むにつれて、再び電子工作への興味が湧き上がっていきました。そこで父に相談すると、工具一式を貸してくれたのでした。本の製作記事を参考にしながら試行錯誤の末に組み上がった第一作は、お世辞にも上手な出来とは言えませんでしたが、そこから本当に音が出た時の喜びは、今でも忘れられません。
「鳴ったよ、鳴った、大成功だよ!」
「おー、すごいな、よし、お祝いだ、そのハンダゴテお前にやる」
「ほんと?!」
「そのかわり火事だけは出さないように、気を付けて使ってくれよ」
「わかった!!」
木製の柄にニクロムヒーター、コテ先は使っているうちにどんどん減っていく銅の棒。それは古い古いハンダゴテでしたが、以来私の宝物となりました。このハンダゴテで、どれだけの工作をしたことでしょう。学校の夏休み工作にも使いました。これでかなり本格的なオーディオアンプも組み立てました。無線の免許を取ってからは無線機作りに熱中。これを使って作った無線機の電波は、世界中に飛んでいきました。
古い古いハンダゴテですから、やがてヒーターが切れて使えなくなりました。でも、長年使い慣れたハンダゴテは、いつの間にか自分の手の延長のようになっていました。使い込んだ木の柄が、一番私の手に馴染みます。これでないと、精密な作業がはかどりません。新しいコテを買うのはやめにして、サイズの合うヒーターだけを探して修理することにしました。
最近の半導体素子はとてもデリケートです。高速な動作を可能とするために、電子が通り抜ける皮膜を極限まで薄く作ります。ですから、ハンダゴテのヒーターから漏れ出す微少な電気でも壊れてしまうことがあるのです。でも今度のヒーターなら大丈夫。昭和レトロのハンダゴテが、高絶縁のセラミックヒーター搭載に生まれ変わりました。
こうして、小学生のころから使い込んでいるハンダゴテは今も現役です。いまはもう、このハンダゴテと共に過ごした年月が、人生の半分をはるかに超えています。これから先もずっと私の最高のパートナーとして、私のライフワークを支え続けてくれることでしょう。そんなハンダゴテが、私の部屋に「ずっとありつづけるモノ」です。