次の客はJ尼だった。
J尼「ハァーイB美サン、イイ天気ネ」
B美「ええ。今日と明日はずっと晴れだって」
J尼はウィンクした。
J尼「ワタシノコト、占テクダサイ。明日、学校デ、未来ノ恋人ト出会ウニハ、ドウスレバイイカ。ニッポンノオ約束ヤ文化ニシタガッタ出会イヤ祝福ヲ、ケイケンシタイデス」
B美は宣言した。
B美「今からあなたに3つの質問をいたします。その答えで未来を占い、3つのアドバイスを授けましょう」
J尼「オタノミ、イタシマス」
B美「今日、家に来るまでに、大きな駅前か繁華街を通りますか?」
J尼「ハイ」
B美「家にベランダか軒はありますか?」
J尼「マンションニ、ベランダ、アリマス」
B美「あさって、J尼さんに彼氏ができたことが、クラス中にバレてもいいですか?」
J尼「ノゾムトコロデース」
B美はうなずいた。
B美「それではアドバイスを授けましょう。今日は駅前や繁華街ではゆっくり歩きなさい。今日中にひもとマジックを買いなさい。明日は大きな傘を持っていきなさい」
J尼は笑った。
J尼「B美サンノ言ウコト、ミステリーネ!」
締切12月5日20時以降
「スミマセン。ヒモクダサイ。」
店のどこかから、声がする。文房具店に珍しいねぇ、ガイジンの声だねあれは。
で、何だって?ヒモって言ってたかね。第一、そのお客はどこなんだ。
あ?あれか?なんだか、たくさん抱えてるね。金髪だね。女の子のガイジンだね。
「アー、ハロー。」
あと、なんて言えばいいんだ?
「スミマセン。ヒモトマジック欲シイデス。」
ん?ニホンゴだなこれは。
「アー、ニホンゴハナセマスカ?」
「少シ話セマス。」
「そりゃ良かった。紐をご所望ですかな?」
「ゴショモウ?」
あ、首傾げてるよ。そうか、難しいかったか。
「紐が欲しいんですね。」
「ソウ。ヒモ、ト、マジックデス。」
おや、この制服見たことがあるな。ああ、あの高校の生徒か。
それに、何抱えてるんだ?この子。
「スミマセン、コレ置イテイイデスカ?」
「いいとも。ここにどうぞ。」
これは、ティッシュだな。駅前で配ってる。
「この沢山のティッシュは、何かに使うんですかな?」
「ワカリマセン。駅マエから商店街ユックリ歩イテタラ、皆クレマシタ。」
「ついでに聞くけど、紐とマジックは何に使うんですかな?」
「ワカリマセン。クラスメートニ教エテモライマシタ。」
「何を教えてもらったのかね。」
「未来ノ恋人ニアエル方法デス。」
ワシは言っていることが良くわからなかった。
「何の話なのかね。良かったら、聞かせてくれるかな。」
「ハイ。」
このガイジンの子から占いの話を聞いた。判じ物の様だ。たぶん、この子にはさっぱりわからんだろう。
「君、時間はあるのかね?」
「少シナラ大丈夫デス。」
「力になってあげよう。見た目はジジィだが、頭はまだまだ若いもんに負けないからな。」
「スミマセン。オ願イシマス。」
「まずは、簡単な工作だな。」
「ハイ」
「そのティッシュを使って作る。では、一緒に作ってみるか。」
その子と、店の奥の机でしばらく工作をした。
10個ほどできた。
「出来上がりだ。家に帰ったら、さっき言ったとおりにするんだよ。」
「ハイ。」
「肝心なのは、向きを間違えないことだ。」
「ハイ、気ヲツケマス。アリガトウゴザイマシタ。」
「いいって、いいって。それより、首尾を聞かせてくれよ。」
「シュビ?何デスカ?」
「結果だよ。報告。」
「ワカリマシタ。」
なんだか、若返った気分だのぅ。それにしても、変な判じ物だ。あのまじないは利くとは思えんのだがの。他にもまじないを掛けておいてみるか。あれ、あの子の名前を聞いていなかったの。まあいいか、学校はわかるからの。保険も掛けておいてやるかの。
「ただいま。」
孫のH志が、店の中を足早に通って行く。
「お帰り。」
おや、何か背中に付いてる。紙切れだの。あれ、取れて店に落ちてしまったのう。
「おい、H志。背中に紙が貼ってあったぞ。」
紙切れには、なにか記号の様なものが書いてある。
「なんだよ、それ。」
H志が慌てて戻ってくる。
「背中に紙貼られて気がつかないってのは、ワシの孫ではないのう。」
「何言ってんだよ、じいちゃん。」
H志は紙をひったくると、バタバタと家の中に消える。はて、今の紙に何が描いてあったのか。
「昨日オレの傘抜いたの、じいちゃんかよ。」
消えたはずのH志が背中から声をかけてくる。
「さあ?良く知らん。」
「あ、そう」
H志は、また消える。
「コンニチハ」
おや、この声は。
「シュビデス。」
おお、この間の金髪の子だ。そういえば、どうなったのかの。ははあ、さっきの紙はそれかな。
「やあ、うまくいったのかい。昨日は雨が降ったから、半分成功したと思ったがの。」
「ハイ、ウマク行キマシタ。タブン。」
「まあ、入り口ではなんだ。こちらへどうぞ。」
店の奥へ招き入れる。
「コレ、私ノ机ニ貼ッテアリマシタ。」
小さな紙を、彼女は持っていた。はて、どこかで見たような。
「ココニ、記号ガ書イテアリマス。」
たしかに、何か書いてあるの。眼鏡をずらして、紙を遠くに。おや、三角形と名前だな。
「ワタシJ尼とH志トアイマイカサデス。」
「そりゃ、相合傘だのう。」
「アイアイデスカ?」
「そうじゃ。狭い傘に寄り添って入る、相思相愛の二人を示すんじゃな。」
「ソーシソーアイ、デスカ」
「恋人同士ということだの。」
「オー、ワカリマシタ。ウマクイキマシタ。」
ちょっと、天井を見て呟く。
「H志は、ワシの孫じゃの。」
「ソウデシタカ、昨日コノ近クマデ来マシタ。」
「同じ傘に入ってか?」
「ソウデス。傘ナイッテ言ッテマシタ。」
ワシが抜いておいたからの。
「ナゼ、昨日雨ガフッタノデスカ?」
「そうじゃの。判じ物の種明かしじゃ。」
ワシは、引き出しから、一昨日の工作物を出した。
「これを、ベランダに吊るしたんじゃの?」
「ハイ、言ワレタ通リ、頭ヲ下ニシテ。」
「これは、テルテル坊主じゃ。」
「テルテル坊主?」
テルテル坊主を普通に持ち、ワシは続けた。
「普通は、こうして吊るす。これは、明日晴れになるように祈るものじゃ。」
「デモ、昨日ハ」
「そう、これを逆さにすると、晴れない祈りに変わる。」
ワシは、てるてる坊主を逆さに持った。
「オウ」
「逆さてるてる坊主で雨乞いをしたから、雨になった。」
「天気ヨホウハ晴レデシタ。」
「じゃから、もう一つまじないをしておいた。」
「ナンデスカ?」
「孫のカバンから、折り畳み傘を抜いておいた。」
「ナゼデスカ?」
「傘持ってると、雨が降らない。傘持ってこないと雨が降る。」
「ハアア、マーフィーノ法則デスネ。」
「そういうのか、欧米では。そうしておけば、雨は降るし、傘持ってない男子が一人。」
「ハイ、私傘持ッテマシタ。大キナ。」
「じゃろう?で、入れてあげたというわけだね。」
「ハイ。」
「それを、君の級友が見ていて、相合傘を書いたというわけだな。」
「朝、紙ガ貼ッテアリマシタ。黒板ニモ同ジアイアイカサ、大キク書イテアリマシタ。」
「それは、ある種の祝福なのじゃな。」
「ソウデスカ。祝福デスカ。」
ワシは、家の中の様子を気にしながら、聞いてみた。
「H志は、どんな感じかの。その、相合傘の相手として。」
「H志サン、楽シイ人デス。音楽モ映画モ色々知ッテイテ。」
「そうか、付き合ってみる気はあるのかね。」
「ハーイ、ぼーいふれんどカラハジメマショウ。H志サン。」
ワシの後ろに向かって手を振っている。振り返ると、傘を持ってH志が立っている。
「雨降ってきたから、送るよ。」
店の外を見ると、日が差してるのに雨が降っている。
「おや、狐の嫁入りだ。」
「キツネデスカ?」
「晴れてるのに、雨が降ることをこういうのじゃよ。」
「じいちゃん、送ってくる。」
「急いで帰ってこなくていいからな。」
着いた頃には、止んでるだろうて。いいのう、若いもんは。
・今日と明日はずっと晴れ
・明日は大きな傘を持っていきなさい
これでなんとなく答えが見えてきました。つまり、
放課後、急に雨が降ってくる⇒しかし(天気予報では)晴れなので、誰も傘を持っていない⇒
J尼の「未来ノ恋人」も傘を持っていなくて困っている⇒そこを二人で相合傘して帰る⇒
翌日、クラスメートにはやし立てられる
という流れになるのではないでしょうか。ではどうやって雨を降らすのか。
・家にベランダがある
・今日中にひもとマジックを買う
てるてる坊主を逆さにすると、雨が降るというおまじないがあります。つまり、てるてる坊主を作ってベランダに逆さにつるしておけ、ということをB美は暗に言っているのではないでしょうか。
・今日は駅前や繁華街ではゆっくり歩きなさい
これはちょっとわかりませんでした。相合傘をして一緒に帰るためには帰る方向が同じでないといけないので、前日にぶらついておいてある程度「未来ノ恋人」の目星をつけておけ、ということだと予想したんですがどうでしょうか。
id:sirasuorosi様、最初の回答にもかかわらず、ほとんど正解です。すばらしいです!!
今回は「駅前や繁華街ではゆっくり歩く」「翌日、クラスメートにはやし立てられる」は、特に難しかったと思います。
てるてる坊主と相合傘を当てただけで十分です!!
J尼が駅前の繁華街を、B美のアドバイス通り…というより、買い物や飲食など、特段の目的でもなければさっさと素通りしていたのだが、これをきっかけに、あらためて日本の繁華街というものをじっくり探検してみようと思い…、一つ一つの店構えを観察したり、携帯でムービーや写真を撮影したりしていた。
外国人の女性が、あからさまに好奇心旺盛な様子を見せていると、数人の怖いもの知らずの若い男共が、これを機会にお近づきになろうと、声をかけて来た。
男共「へい、カノジョー(K代註:古っ!)、日本に来るの、初めてかい?良かったら僕らが案内してあげるよ!」
J尼「オー、オサソイ、カンシャシマス。
シカシ、ワタシ、キョウハイソガシイノデス。マタ、コンドニシテクダサイ。」
男共「そんなつれない事言わないでさ、ほら、行こうよ。いいところに連れてってあげるからさぁ」
(K代註:書いてて恥ずかしい…)
J尼「オー、ナニヲシマスカ、ハナシテクダサイ。」
そこへ、イケメンクラスメイト(?)、L雄、登場。
L雄「その手を離せよ、嫌がってるじゃないか。」
男共「誰だてめぇ」
(中略)
男共「ちくしょぅ、覚えてろ!」
L雄「J尼さん、大丈夫ですか。」
J尼「L雄サン、アリガトーゴザイマス。」
L雄「こんなところで無防備にぶらぶらしてたら、君みたいな美人は、すぐに目を付けられる。
気をつけなよ。じゃあ、俺は先を急ぐから、また明日、学校でな。君も早く、家に帰んな。」
J尼(ワタシノコト、ビジン、ダッテ…。)
J尼は、B美に言われた通り、文房具店でマジックと紐を購入し、L雄の言う通り、すぐに帰宅した。
J尼「ソレニシテモ、コレハ、ナニニツカウノデショーカ…?」
J尼が考え込んでいると、携帯にメールが届いた。
J尼「オー、I穂サンカラメールデス。
エート、『テルテルボーズヲツクッテサカサニツルシナサイ』トカカレテマース。
ツクリカタノシャシンツキデス。I穂サン、シンセツネ。サッソクツクルデス。」
翌日の朝は天気予報通り、快晴だった。しかし、J尼は、B美に言われたとおり、大きめの傘を持って行く事にした。ちょうど、京都に旅行した時に購入した蛇の目傘があったので、持って行く事にした。
(K代註:目立ちすぎ!)
放課後、照る照る坊主の効果か、突然の土砂降り。ちょうど、玄関でL雄が雨の中へ走り出そうとしているところだった。
I穂「J尼さん、今がチャンスよ!L雄さんと一緒に傘をさして帰るのよ!」
J尼「…?イマノハダレデスカ?
ア、L雄サン、ソノスガタデカエッタラヌレマスヨ。
ドウカ、ワタシノカサニハイッテクダサーイ」
“美人留学生のJ尼とイケメン硬派のL雄が蛇の目で相合傘”
この噂はあっという間にクラス中、いや、学校中に知れ渡った。
翌日、J尼が教室に入ると、案の定、黒板には相合傘がでかでかと描かれていた。
B美「…I穂、あの黒板の相合傘、あなたが描いたんでしょう?」
「繁華街をゆっくり歩く」がわからなくて悩みましたので、とりあえず「軟派されそうになるところを助けられる」事にしてみました。
id:kuro-yo様、「てるてる坊主」「相合傘」「次の日の黒板に相合傘」まで当てたとはすごい!!
「駅前や繁華街ではゆっくり歩く」だけ、こちらの想定とは違いますが、小説としてすごく面白く読みました。
大正解です!!
いろんな意味で自信ないですが、短めに。
・
・
・
とりあえずJ尼は、言われたとおりになるべくゆっくりと岐路についた。
「どうぞ!」
「ただいまキャンペーンやってます!」
よくわからないまま、受け取ったのだが、それらは広告としてのポケットティッシュのようだ。
しばらく歩くと文房具屋があったのでJ尼は、いわれたとおりにひもとマジックを購入した。
家に帰り、、Yah00!天気情報を見ながらJ尼は悩んでいた。
「アー。B美サンノ言ウコト、ヨクワカラナイデス。ワタシノ傘ハ大キイデスガ、明日ノ天気ハ
雨フルカ、ビミョーデスネ。傘ナンテ持ッテイッタラ、目立ッテシマイソウデース」
B美の占いは信じたいが、雨でもないのに傘なんて持っていきたくないJ尼は仕方なく、
いつも利用しているYah00!知恵袋で『雨を降らす方法』について検索してみた。
「イモムシ、イモムシイモムシ、、、、、ナンカ違イマース!」
「アップサイドダウン?オー!コレナラ作レソーデスネー」
・
・
・
翌日の下校時、、
T器「わー、雨ふってんじゃん。どうやって帰ろう、、」
J尼「T器!ワタシ傘ヲ持ッテマス。大キイデス。一緒ニ帰リマスカ?」
T器「まじで!そりゃ助かる」
J尼「ドウイタシマシテデース」
二人の下校を見守る同じスクールの生徒達、ひやかすなんてとんでもない。
ひとつの傘の下でよりそう二人はあまりにもしっくりしすぎていた。
J尼の家のベランダには、ティッシュでつくられた、てるてる坊主がにっこりと微笑んでいましたとさ。
感想:なんせ変換が面倒でした。
id:grankoyama様、自身がないなんてとんでもない。
「てるてる坊主」「相合傘」だけでなく、いまのところ誰も当てていない「駅前や繁華街ではゆっくり歩く」も当てていただきました!!
すごいです。尊敬いたします。
「スミマセン。ヒモクダサイ。」
店のどこかから、声がする。文房具店に珍しいねぇ、ガイジンの声だねあれは。
で、何だって?ヒモって言ってたかね。第一、そのお客はどこなんだ。
あ?あれか?なんだか、たくさん抱えてるね。金髪だね。女の子のガイジンだね。
「アー、ハロー。」
あと、なんて言えばいいんだ?
「スミマセン。ヒモトマジック欲シイデス。」
ん?ニホンゴだなこれは。
「アー、ニホンゴハナセマスカ?」
「少シ話セマス。」
「そりゃ良かった。紐をご所望ですかな?」
「ゴショモウ?」
あ、首傾げてるよ。そうか、難しいかったか。
「紐が欲しいんですね。」
「ソウ。ヒモ、ト、マジックデス。」
おや、この制服見たことがあるな。ああ、あの高校の生徒か。
それに、何抱えてるんだ?この子。
「スミマセン、コレ置イテイイデスカ?」
「いいとも。ここにどうぞ。」
これは、ティッシュだな。駅前で配ってる。
「この沢山のティッシュは、何かに使うんですかな?」
「ワカリマセン。駅マエから商店街ユックリ歩イテタラ、皆クレマシタ。」
「ついでに聞くけど、紐とマジックは何に使うんですかな?」
「ワカリマセン。クラスメートニ教エテモライマシタ。」
「何を教えてもらったのかね。」
「未来ノ恋人ニアエル方法デス。」
ワシは言っていることが良くわからなかった。
「何の話なのかね。良かったら、聞かせてくれるかな。」
「ハイ。」
このガイジンの子から占いの話を聞いた。判じ物の様だ。たぶん、この子にはさっぱりわからんだろう。
「君、時間はあるのかね?」
「少シナラ大丈夫デス。」
「力になってあげよう。見た目はジジィだが、頭はまだまだ若いもんに負けないからな。」
「スミマセン。オ願イシマス。」
「まずは、簡単な工作だな。」
「ハイ」
「そのティッシュを使って作る。では、一緒に作ってみるか。」
その子と、店の奥の机でしばらく工作をした。
10個ほどできた。
「出来上がりだ。家に帰ったら、さっき言ったとおりにするんだよ。」
「ハイ。」
「肝心なのは、向きを間違えないことだ。」
「ハイ、気ヲツケマス。アリガトウゴザイマシタ。」
「いいって、いいって。それより、首尾を聞かせてくれよ。」
「シュビ?何デスカ?」
「結果だよ。報告。」
「ワカリマシタ。」
なんだか、若返った気分だのぅ。それにしても、変な判じ物だ。あのまじないは利くとは思えんのだがの。他にもまじないを掛けておいてみるか。あれ、あの子の名前を聞いていなかったの。まあいいか、学校はわかるからの。保険も掛けておいてやるかの。
「ただいま。」
孫のH志が、店の中を足早に通って行く。
「お帰り。」
おや、何か背中に付いてる。紙切れだの。あれ、取れて店に落ちてしまったのう。
「おい、H志。背中に紙が貼ってあったぞ。」
紙切れには、なにか記号の様なものが書いてある。
「なんだよ、それ。」
H志が慌てて戻ってくる。
「背中に紙貼られて気がつかないってのは、ワシの孫ではないのう。」
「何言ってんだよ、じいちゃん。」
H志は紙をひったくると、バタバタと家の中に消える。はて、今の紙に何が描いてあったのか。
「昨日オレの傘抜いたの、じいちゃんかよ。」
消えたはずのH志が背中から声をかけてくる。
「さあ?良く知らん。」
「あ、そう」
H志は、また消える。
「コンニチハ」
おや、この声は。
「シュビデス。」
おお、この間の金髪の子だ。そういえば、どうなったのかの。ははあ、さっきの紙はそれかな。
「やあ、うまくいったのかい。昨日は雨が降ったから、半分成功したと思ったがの。」
「ハイ、ウマク行キマシタ。タブン。」
「まあ、入り口ではなんだ。こちらへどうぞ。」
店の奥へ招き入れる。
「コレ、私ノ机ニ貼ッテアリマシタ。」
小さな紙を、彼女は持っていた。はて、どこかで見たような。
「ココニ、記号ガ書イテアリマス。」
たしかに、何か書いてあるの。眼鏡をずらして、紙を遠くに。おや、三角形と名前だな。
「ワタシJ尼とH志トアイマイカサデス。」
「そりゃ、相合傘だのう。」
「アイアイデスカ?」
「そうじゃ。狭い傘に寄り添って入る、相思相愛の二人を示すんじゃな。」
「ソーシソーアイ、デスカ」
「恋人同士ということだの。」
「オー、ワカリマシタ。ウマクイキマシタ。」
ちょっと、天井を見て呟く。
「H志は、ワシの孫じゃの。」
「ソウデシタカ、昨日コノ近クマデ来マシタ。」
「同じ傘に入ってか?」
「ソウデス。傘ナイッテ言ッテマシタ。」
ワシが抜いておいたからの。
「ナゼ、昨日雨ガフッタノデスカ?」
「そうじゃの。判じ物の種明かしじゃ。」
ワシは、引き出しから、一昨日の工作物を出した。
「これを、ベランダに吊るしたんじゃの?」
「ハイ、言ワレタ通リ、頭ヲ下ニシテ。」
「これは、テルテル坊主じゃ。」
「テルテル坊主?」
テルテル坊主を普通に持ち、ワシは続けた。
「普通は、こうして吊るす。これは、明日晴れになるように祈るものじゃ。」
「デモ、昨日ハ」
「そう、これを逆さにすると、晴れない祈りに変わる。」
ワシは、てるてる坊主を逆さに持った。
「オウ」
「逆さてるてる坊主で雨乞いをしたから、雨になった。」
「天気ヨホウハ晴レデシタ。」
「じゃから、もう一つまじないをしておいた。」
「ナンデスカ?」
「孫のカバンから、折り畳み傘を抜いておいた。」
「ナゼデスカ?」
「傘持ってると、雨が降らない。傘持ってこないと雨が降る。」
「ハアア、マーフィーノ法則デスネ。」
「そういうのか、欧米では。そうしておけば、雨は降るし、傘持ってない男子が一人。」
「ハイ、私傘持ッテマシタ。大キナ。」
「じゃろう?で、入れてあげたというわけだね。」
「ハイ。」
「それを、君の級友が見ていて、相合傘を書いたというわけだな。」
「朝、紙ガ貼ッテアリマシタ。黒板ニモ同ジアイアイカサ、大キク書イテアリマシタ。」
「それは、ある種の祝福なのじゃな。」
「ソウデスカ。祝福デスカ。」
ワシは、家の中の様子を気にしながら、聞いてみた。
「H志は、どんな感じかの。その、相合傘の相手として。」
「H志サン、楽シイ人デス。音楽モ映画モ色々知ッテイテ。」
「そうか、付き合ってみる気はあるのかね。」
「ハーイ、ぼーいふれんどカラハジメマショウ。H志サン。」
ワシの後ろに向かって手を振っている。振り返ると、傘を持ってH志が立っている。
「雨降ってきたから、送るよ。」
店の外を見ると、日が差してるのに雨が降っている。
「おや、狐の嫁入りだ。」
「キツネデスカ?」
「晴れてるのに、雨が降ることをこういうのじゃよ。」
「じいちゃん、送ってくる。」
「急いで帰ってこなくていいからな。」
着いた頃には、止んでるだろうて。いいのう、若いもんは。
id:takejin様、おるでとうございます。パーフェクトです!!
「ティッシュ」「てるてる坊主」「相合傘」「次の日の黒板に相合傘」の4つをすべて当てたのは、id:takejin様だけでした。
しかも小説としてのひねりも加えていただき、大感謝です。
今回はいるかは、id:takejin様に差し上げます。ありがとうございました。
id:takejin様、おるでとうございます。パーフェクトです!!
「ティッシュ」「てるてる坊主」「相合傘」「次の日の黒板に相合傘」の4つをすべて当てたのは、id:takejin様だけでした。
しかも小説としてのひねりも加えていただき、大感謝です。
今回はいるかは、id:takejin様に差し上げます。ありがとうございました。