かきつばた杯を開催します。
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〆切は
12/25の23:59時~ 自動終了期限前(質問者の都合により前後します)
お題:
『さ』と『ん』と『た』のつく言葉
『さんたくろおす』
『さ』
さて、冬休みがスタートしたと思えば、今日はクリスマスイブだ。
朝8時30分。
外では、朝っぱから、各店にイルミネーションや、イベントで人が混んでいる。
でも、俺は特に予定ないし。親も仕事に行っちゃったし。友達と遊ぶ約束はしてない。俺んちには今、俺一人って訳だ。
イブだしなあ、一人でなんかできんかなぁ。ゲームの充電もないし、その時に限って充電器は壊れてるし・・・。
「ハァ、TVでも見るか。暇だな・・・」 ピッ。
俺はソファーに座って、リモコンのスイッチを押した。
《・・・このデコレーションケーキが大好評です!》
なぜか、イブの割には、クリスマス感が感じられない。ケーキって言われてもなぁ・・・。
家に一人、こもってるせいだろうかねぇ。
「しっかし、暇だなぁ。面倒だけど、宿題でもやるかぁ」
俺はソファーから立ち上がった。
『ん』
「・・・ん?誰だろ」
ピンポーン。玄関で2回目のチャイムが鳴った。
1回目が鳴ったのは、俺がソファーから立ったのとほぼ同時。
誰だ、こんな朝から。
ガチャ 俺はドアを開けた。
「おー!隆史ーーッ!!」
ドアの前には、優紀が立っていた。
「優紀か。遊びにきたんか?」
「どうせ暇だしさ」
「まあ、あがれよ優紀」
「おじゃましまスリッパが履けないよ~♪」
優紀は、謎の鼻歌を歌って、俺の家に入った。何の歌なんだ、一体。
「ほんで、たかっしー」
ヒャッハーーッ!って、俺は梨の妖精じゃねぇよ。
「今日、イブだけど、今日はなんか予定ある?」
「えっ、こっちはないな」
「そっか、小学生なのに、素朴だな。たかっしー」
そ、素朴・・・。すいません・・・。あと、ふなっしーじゃないってば、俺は。
『た』
「隆史、そういや、今日の深夜に三拓郎さん来るんだなー」
「三拓郎さんて誰だ!?」
俺は思わず叫んだ。どこの誰が持つ名前なんだ、それは。
「嫌だなぁ、サンタクロースだよ。サンタクロースの和風名だよ」
「なんで、和風になる」
「気分だ」
優紀はさらりと言った。気分って・・・。サンタはその名を気に入るのか?
「で、三拓郎さんに何を願ったの?」
今日一日、拓郎さんで、突っ切る気かよ。
「うーん、俺はトモダチコレクション新生活にしようと思ってる。まだ買ってないんでさ」
「ほへー。確かに、トモコレは面白いよ。いろんな人間関係やイベントだので」
優紀は笑顔で俺に言う。なんだか、今日はいつもより明るいな。
「俺はさ、冬休みを1095日増やして欲しい!」
「・・・まあ、そりゃそだな・・・。うん」
優紀のあまりのあっさりに呆れてしまった。って、3年じゃねえか。ネタにも程があるだろ。
こいつは愉快そうでいいよな、最強だぜ。クリスマス。
『く』
「9時になった」
優紀は、時計を見てつぶやいた。
「?9時に何かあるの?」
「近くの、加藤ナノカドーが開く時間よ」
そういえば、そんな時間だ。でも、加藤ナノカドーで何する気だろう?
「隆史、暇だし、加藤ナノカドーを見てこない?」
「え、別にいいけど」
俺は首を縦に振った。
コートを着て、俺は優紀と外に出た。ー寒い…。
しかし、外はすげぇな。こんな寒いにも関わらずに混んでやがる。
家から、加藤ナノカドーまでは、わずか約10分である。
「着いたよ、たかっしー。さあ、入ってみるか」
ひゃっはーー!入るなっしいいいいいい!じゃなく、・・・俺達は店内に入った。
「あれ、まさむねがいない」
政宗って・・・。なぜに伊達なんだ。
「え、聖人と約束か何かしてたの?」
「うん、聖人と9時ごろに、ここで待ち合わせする約束だったんだけど。もう入っちゃったかな」
優紀は辺りを探して、いないと確信して俺に言った。
「まあ、いいや。とりあえず、入ろうぜ。優紀」
「そだね、そこで聖人探すか」
『ろ』
ロックが流れる店内ー。
やはり店内には、イルミネーションがたくさん飾ってあり、お客さんもたくさん来て、ワイワイしている。
「やけに人が多いなぁー。さっきの家の雰囲気とは全然違うな」
「だろ、隆史?イブだし、お客さんも来るわけよ」
「でもさ、なんで急に聖人と、ここに来る約束したの」
俺は少し気になってたことを、小さい声で呟いた。
「フフ、隆史。お前、3DS持ってんだろ?」
「持ってるけど」
「隆史もOKだな。お客さんがたくさんいるからさ、むちゃくちゃすれ違うためだよ。要するにゲーム」
「・・・へ、へぇ・・・」
俺は優紀の一言に苦笑した。
コイツのことだし、ある程度は予想してたが・・・。
少し歩けば、
店員がサンタクロースの格好をしている。
あれ、よく見たら聖人がいるではないか。
「おーい!聖人ー」
俺は聖人に声をかけた。
「おっ、隆史。それに優紀来たんだ」
「うん、それより聖人。こんなとこで何してんの」
「子供がここに注目してるんでさ。3DSですれ違えるかなと思って」
やっぱそれか・・・。
『お』
おや、優紀の姿が見えなくなった。
おかしい。さっきまではここにいたはずだが…。
「おい、聖人。優紀はどこ行った?」
「ああ、優紀なら、あの休憩したおじさんについてったよ」
聖人が指差す方向を見た。よくみれば、おじさんと優紀がいるではないか。
「とりあえず、追いかけんぞ。隆史」
聖人は、優紀に向かって、駆け出した。
「ちょい、聖人!」
「お、店員の部屋か?随分イルミネーションしてるな」
優紀とおじさんが入ったのは、イルミネーション一杯の部屋だった。
イルミネーションというか、サンタクロースが住む家のようだった。
「何か話してるぞ」
俺は窓から優紀たちの様子を見ていた。
「随分真剣に聞いてんなー。優紀」
聖人が言った。確かにそうだ。こいつ、サンタクロースに興味ありなのか?
「へー!おっさん、三拓郎さんに詳しいんだな!!」
優紀はでっかい声で言った。てか、またかよ、三拓郎って。
「隆史、格好だけの割には優紀が、むっちゃ真剣じゃねぇか?」
「そうだ、でもそれがどうしたという」
「それに、部屋よ。サンタ風で随分ド派手じゃねぇか?」
確かにそうだ。……
聖人は真剣な目つきでいう。
「隆史。あのオッサン……」
『す』
スゥー。天気がいい、翌朝・朝7時30分。
プルルルルル
すると、電話が鳴った。誰からだろう。
「もしもし?」
『あー、隆史?ねぇ、三拓郎さんからプレゼント来た?そっち』
優紀からだ。
「ああ、こっちはトモコレ新生活。届いたぜ」
そういえば、優紀に聞きたいことがあった。うーんと、何だったか。
「そういやさ、......昨日、サンタの格好したおじさんの会話で…」
『ああ、あれね。つい俺も驚いちまったよ。だって、あの人三…』
「やっぱし?」
俺は優紀の話を最後まで聞けずに返した。
昨夜。俺は目が覚めて、小便がしたくて、自分の部屋を出て、廊下の電気はつけないで、トイレに向かった。
そして、トイレのドアを開けようとした瞬間ー。
スタ、スタ、スタ……
誰かの歩く音が聞こえた。 俺はその場を振り返った。彼はサンタの格好をしてた。
その人の顔を一瞬だけみると、
「…!」 俺は一瞬言葉を失ってしまった。
俺は昨日の聖人の一言を思い出した。
『隆史、あのオッサン…本当のサンタクロースじゃねぇか?』
その通りであった。
ーあの店員は、マジで三拓郎だった。
三体問題を解きながら、三太は悩んでいた。
「このグラフの左端に、どの数値を持ってくればいいのだろう」
そこを通りかかったのは佐田。「んんん」と悩んでいる三太を見かねて、声をかけてきた。
「そいつは、この中から選ぶといいぞ。条件は3つあるから、三択だな」
佐田は、ホワイトボードに、初期値を三つ書いた。
三太はそれを見て、
「やっぱりさ、単純な方がいいよな。初期値は零で、他の値は探索だな。」
と言いながらグラフを見直した。そのグラフのとの差、単位を変更した。
「うん、まとまったよ。サンキューだ、サンキュー佐田さん」
「また論文が一本書けるな。多産だからなぁ、三太は」
「まあ、まあ。今度レンタサイクルで、どこか行きましょう」
お互いに別れて進む二人。夕日が床に長い影を作る。
三太の影には帽子が、佐田の影にはしっぽが付いていた。
「いや、驚いたねえ。ケン坊が働き出したということは噂には聞いちゃあいたけど、まさか警察とはねえ」
「それはこっちの台詞ですよ、おじさん。いい歳をしてから落語家になるって家を飛び出してから、どのくらい経ちます? それが変死体の所持品に電話をかけてくるなんて、夢にも思いませんでしたよ」
「で、どうなんだい? やっぱり殺人かい?」
「少しは神妙にしててください。おじさんだって容疑者のうちの一人なんですよ」
「ってえことは、やっぱり殺人事件ってことなんだな」
クリスマスの喧騒に包まれた街から少し離れた住宅街の外れ。
少し奥まった道路に面したマンションの辺りを巡回中していたぼくらに声をかけてきたのは、ほろ酔い加減の管理人だった。
サンタが道に倒れているとの話を半分に聞きながら向かったマンションの前で寝転がってるサンタは、いやサンタの格好をした男はもうすでに息をしていなかった。
落下による全身を強打したことが死因だということだが、後頭部に殴られたような跡があり、殺人も視野に入れて現場検証と周辺の聞き込みをやっているところに、被害者の携帯に電話をかけてきたのが、もう五年も会っていなかったおじさんだ。
どうやら被害者と飲みに行く予定だったらしい。
「どれどれ……」
山下和美(やましたかずみ)
大空知美(おおぞらともみ)
海原秀美(うなばらひでみ)
「もう、勝手に見ないで下さいよ」
「この三人があちらで雁首を並べているお姉ちゃんたちってことかい」
「ええ、まあ。被害者と面識があるみたいで。あ、ちょっと……」
「ちょっくら借りるぜ。手伝ってやるよ」
あっ、支給品の手帳……
「すみませんねえ、せっかくのクリスマスだっていうのにお引止めしてしまって」
「まだ帰してもらえないの?」
「お出かけの予定でもありましたか。そうですよねえ、クリスマスですもんね。もう少しで済みますんで」
「さっきから、もう少し、もう少しって……」
「こちらさんはお料理の途中で。そんなときにお呼び立てしてすみませんでしたね。あの、携帯をお借りしてよろしいですか?」
「さっきも渡したじゃない」
「いえ、手続きってのがいろいろありましてね」
おじさんの目がきらきらと光っている。
何かやるつもりだ。
「そう言えば死んじゃったサンタさん。どこかおかしいと思いませんでした?」
「そりゃあ、いくらクリスマスだからって、あんな恰好で……」
「いえ、そうじゃなくて、サンタとして何かおかしいところに気づきませんでした?」
「ぺらぺらのじゃ、寒そうね」
「そうそう。パーティー用の衣装じゃ、あんなもんでしょうね」
「プレゼントの袋?」
「そうなんですよ。サンタには付き物の白い袋が無いんでして」
「忘れただけじゃなくて?」
「ああ見えても、兄さんは恥ずかしがり屋でしてね。あんな恰好で表をうろつくなんて、ちょっと考えられなくて」
「兄さん?」
「いえ、こっちの話でして」
「車で近くまで来たんじゃない?」
「いえ、車の免許は持ってねえんですよ」
「……」
「ここまで来るときに着ていた服を、どこかに隠してあるはずなんですよ」
「知らないわよ、そんなこと。それより早く携帯を返してよ」
「おや、どこかに急ぎの電話でも?」
「どうでも良いでしょ、そんなこと!」
「ケン坊。大空さん家のベランダを探してみな。服が入れられた白い袋があったりするんじゃねえかなあ。それと部屋の中には……」
「ちょっと、あちらでお話を伺えますか?」
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「おじさんの言った通りでしたよ。大空知美の部屋には交際相手が隠れていました。当人は事故だと主張しているようですが」
「ま、そんなとこだろうな」
「よく分かりましたね」
「こんな日の夜に若い女がエプロンつけてりゃ、誰かさんのために料理をしてるだろうことは、想像つくだろうよ」
「でも、それだけじゃ犯人扱いはできないですよね」
「そりゃ、大空と樅(モミ)にはホシが付きものだからねえ」
(おしまい)
とりあえず、メリークリスマス。
(もし、あるなら)講評は辛口でプリーズ。
すいません。書いてたら長くなってしまいました。2937文字です。
2013/12/23 09:17:59できれば、感想&講評(甘口)を希望します