「A債務者がB銀行のために抵当権を設定する。次に、抵当目的物をCに売却する。CはBに対して、競売差し押さえ前に限り、相当対価を払って抵当権消滅を請求することができる」。
大筋こんな流れですが、「とある書籍」によると「抵当不動産を自ら評価してその評価額を抵当権者に提供して、抵当権の消滅請求をすることができる(原文のママ)」と書いてあり、一方で、別の「とあるサイト講学」
によると、「売買契約に先立ち、Cは抵当権者と抵当権のための対価を相談します。」という旨書いてあるのです(万が一の名誉リスクのために字面は替えてあります。)。
前者説の場合、自らの評価額で打診してB銀行に断られたらどうするのだろう?というモヤモヤが頭に残ります。
後者説の方がマシな結論の感じがするのですが、それでも金額で折り合いが付かなければどうなるのだろうというモヤモヤ疑問が残ります。
代価弁済の方は元々債権者側主導のものなのでモヤモヤ要らずで理解できるのですが。
「売買契約に先立ち、Cは抵当権者と抵当権のための対価を相談します。」という旨を「抵当権消滅請求」の説明として書いてあるのですか。だとしたら、それはおかしいですよ。自分がCの立場だと思って考えてみましょう。あなたが900万円で買おうと思っている物件があるとしますよ。しかし抵当権があると判明して、AのBへの債務が500万円残っているとします。この場合は、特に「抵当権消滅請求」とか「代価弁済」とかいった制度は必要ありません。ならどうするのか。
あなたは代金900万円をAに払う代わりに、B銀行に500万円払い、残りの400万円はAに払う。
これでAのB銀行への債務は消滅したとみなし、B銀行は抵当権を消す。
このことを三者の合意(実際はB銀行の指定する司法書士の立ち合い)で行います。これは合意の上で行うのですから、法的根拠は必要ありません。それが抵当権の付いた物件を買う普通のやり方です。
「抵当権消滅請求」とか「代価弁済」とかいった制度は、こういったまともな売買でやることではなく、あなたがその物件を普通に買ってみたら実は抵当権が付いていた! と判明したときに行うことです。ついでながら、宅建業者が関わっている場合には説明しないのは宅建業法違反ですから、宅建業者の方の責任を問うという方法も考えられますが、それはここでは置いておきます。
それで、「代価弁済」はB銀行が主導で「抵当権消滅請求」はあなたが主導だという点が違いです。上の金額の例であればあなたが500万円の「利害関係者の弁済」をすればどのみちAの債務が消えて抵当権も消える(もっとも登記上は抵当権を消す手続が別個にありますが)ので別に「抵当権消滅請求」という制度は要りません。しかしAの債務が1,300万円残っている(抵当権設定時には時価より債務金額が大きいことは普通はありませんが、建物は老朽化して価値が下がりますから年月を経ればそういうことは生じ得ます。いわゆるオーバーローン)場合に、「抵当権消滅請求」という制度が効力を発揮します。あなたが900万円とAに提示したとします。それで、B銀行側が1,500万円の価値があると見積もれば、突っぱねるわけです。突っぱねた場合にどうなるのかというと、2か月以内に競売です(民法384条1号)。そうでなければ900万円を認めたことになります。
「抵当権の実行により所有権を失った場合は善意悪意を問わず、解除と損害賠償請求ができる」は消滅請求をしようとするまいと結果的に抵当権の実行により所有権を失えばできます。ただ、実際は所有権を失ってからやっても回収困難ですが。
「売買契約に先立ち、Cは抵当権者と抵当権のための対価を相談します。」という旨を「抵当権消滅請求」の説明として書いてあるのですか。だとしたら、それはおかしいですよ。自分がCの立場だと思って考えてみましょう。あなたが900万円で買おうと思っている物件があるとしますよ。しかし抵当権があると判明して、AのBへの債務が500万円残っているとします。この場合は、特に「抵当権消滅請求」とか「代価弁済」とかいった制度は必要ありません。ならどうするのか。
あなたは代金900万円をAに払う代わりに、B銀行に500万円払い、残りの400万円はAに払う。
これでAのB銀行への債務は消滅したとみなし、B銀行は抵当権を消す。
このことを三者の合意(実際はB銀行の指定する司法書士の立ち合い)で行います。これは合意の上で行うのですから、法的根拠は必要ありません。それが抵当権の付いた物件を買う普通のやり方です。
「抵当権消滅請求」とか「代価弁済」とかいった制度は、こういったまともな売買でやることではなく、あなたがその物件を普通に買ってみたら実は抵当権が付いていた! と判明したときに行うことです。ついでながら、宅建業者が関わっている場合には説明しないのは宅建業法違反ですから、宅建業者の方の責任を問うという方法も考えられますが、それはここでは置いておきます。
それで、「代価弁済」はB銀行が主導で「抵当権消滅請求」はあなたが主導だという点が違いです。上の金額の例であればあなたが500万円の「利害関係者の弁済」をすればどのみちAの債務が消えて抵当権も消える(もっとも登記上は抵当権を消す手続が別個にありますが)ので別に「抵当権消滅請求」という制度は要りません。しかしAの債務が1,300万円残っている(抵当権設定時には時価より債務金額が大きいことは普通はありませんが、建物は老朽化して価値が下がりますから年月を経ればそういうことは生じ得ます。いわゆるオーバーローン)場合に、「抵当権消滅請求」という制度が効力を発揮します。あなたが900万円とAに提示したとします。それで、B銀行側が1,500万円の価値があると見積もれば、突っぱねるわけです。突っぱねた場合にどうなるのかというと、2か月以内に競売です(民法384条1号)。そうでなければ900万円を認めたことになります。
「抵当権の実行により所有権を失った場合は善意悪意を問わず、解除と損害賠償請求ができる」は消滅請求をしようとするまいと結果的に抵当権の実行により所有権を失えばできます。ただ、実際は所有権を失ってからやっても回収困難ですが。
Bが拒絶できるのかという点については、私の先ほどの説明は早とちりでした。
474条1項の件ですが、Bが「勝手に」拒絶することはいずれにせよできません。
それには「あらかじめ」AB間で第三者弁済を禁止しておく必要があるというのが判例の立場です。
http://www.geocities.jp/twypw828/kmssH17am18s.htm
それで、あらかじめ第三者弁済を禁止しておけば第三取得者であっても弁済できないと考えられますが、今のような例で禁止するとBにとっても回収困難になるのでそういった契約はしないと考えられます。仮にしたとすれば第三者弁済でなく抵当権消滅請求ということになります。
しかし、そういうことでなくても、上で述べたオーバーローンの場合は第三者弁済で債務は完全には消えない(抵当権は残る)ので、この場合は第三者弁済でなく抵当権消滅請求による必要があります。上に述べたオーバーローンの場合の金額で、900万円が認められればBはAに対する400万円の無担保債権は残ります。しかし回収困難です。回収困難であっても900万円が相場相応であれば競売でも900万円にも満たなくなると考えられます。ここで注意しておくと競売の場合は瑕疵担保責任がない等の理由により、通常は相場よりも安くなります。ですから残りが回収困難でも諦めるということになります。
細かい訂正 Aに提示→B銀行に提示
Bが拒絶できるのかという点については、私の先ほどの説明は早とちりでした。
2017/10/04 07:37:01474条1項の件ですが、Bが「勝手に」拒絶することはいずれにせよできません。
それには「あらかじめ」AB間で第三者弁済を禁止しておく必要があるというのが判例の立場です。
http://www.geocities.jp/twypw828/kmssH17am18s.htm
それで、あらかじめ第三者弁済を禁止しておけば第三取得者であっても弁済できないと考えられますが、今のような例で禁止するとBにとっても回収困難になるのでそういった契約はしないと考えられます。仮にしたとすれば第三者弁済でなく抵当権消滅請求ということになります。
しかし、そういうことでなくても、上で述べたオーバーローンの場合は第三者弁済で債務は完全には消えない(抵当権は残る)ので、この場合は第三者弁済でなく抵当権消滅請求による必要があります。上に述べたオーバーローンの場合の金額で、900万円が認められればBはAに対する400万円の無担保債権は残ります。しかし回収困難です。回収困難であっても900万円が相場相応であれば競売でも900万円にも満たなくなると考えられます。ここで注意しておくと競売の場合は瑕疵担保責任がない等の理由により、通常は相場よりも安くなります。ですから残りが回収困難でも諦めるということになります。
細かい訂正 Aに提示→B銀行に提示
2018/07/16 18:00:52