パイオニア・アノマリー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC
の中で、原子力電池の熱放射や通信による放射圧によって軌道が変わっているって書いてあってこれって電磁波推進とおんなじなんじゃねーのと思ったのですが、EMドライブとこれらの違いは何なのでしょうか?
熱放射や通信の放射圧が推力に変わることは実証されているのでしょうか?
まず「電磁波推進」の定義が不明です。レーザー推進のようなビームエネルギー推進や、イオンエンジンのような電気推進のことかと勘違いしそうですが、ここでは「電磁波を放射してその反作用で推進する」という意味だと考えて答えてみます。
パイオニアの場合は熱放射だと確定しています。熱、つまり赤外線(=電磁波)放射の反作用ですね。「熱放射や通信の放射圧が推力に変わることは実証されているのでしょうか?」とのことですが、電磁波には質量がないものの運動量はあるので、自ら放射すれば反作用が生じますし、また放射を受ければその運動量をもらうこともできます。後者の代表がIKAROSのようなソーラーセイル推進ですね。
EMドライブの推力はまだ検証中なので推測になりますが、先日のニュース等を読む限りは、地磁気が作用した電磁誘導のローレンツ力ということになるのではないでしょうか。EMドライブについてはこれまで色々な仮説が提示されていましたが、今回の実験結果から考えるに「地磁気が怪しいのでは?」という段階です。研究チームはさらに外部影響を排してやっていくようで、まだ諦めていないようですが。
「EMドライブとこれらの違いは何なのでしょうか?」については、上記が答えです。なお「推進力の発生原理は同じ」というコメントがありますが、上記のように違います。別物です。「そのうち改良型の原子炉~」云々も意味不明です。
「EMドライブの真贋は研究者の間でも定まっていませんが、パイオニア・アノマリーの場合は定説となっていることが疑問」というコメントについて。パイオニアの場合は仮説の提示とその検証、そしてデータの解析を何年も重ねてきた末での結論だから定説となっています。問題が明らかになった1980年ごろから2012年まで、地道にやり続けた研究者らがいたのです。このへんの経緯について、日本語で読めるものでは『パイオニア・アノマリー 惑星探査機の謎に迫る』がよくまとまっていました(残念ながら電子書籍のみですが)。かたやEMドライブの場合はまだ検証中の段階ですので、現時点で比較すること自体がナンセンスなのです。
参考
「電磁波放射は推力になるということが分かっているのにEMドライブが画期的ともてはやされるのが疑問」について。そもそも質問者さんはEMドライブについて「電磁波を放射してその反作用で進む」というようなものだと思っていたのかもしれませんが、そうではありません。
2018/05/31 00:11:18「マイクロ波(=電磁波)を密閉容器内で反射させるとなぜかその容器がわずかに進む」という話だったのです。このときマイクロ波は容器の中で発生して外部に出ていませんので、容器が反作用を受けるも何もないのです。しかしどうやら微小な推力が出ているらしい。とすると、マイクロ波を出す電力さえあれば推進剤なしでいくらでも加速できることになります。
しかしこれは物理の基本法則である運動量保存則に反していることになるため、物理や科学に多少詳しい人からはかなり懐疑的な目で見られていました。なので、もし本当なら「画期的」だと(一部の人々から)言われていたのです。
これがもし単なる地磁気の作用だったということであれば、物理法則は破られません。そのかわり、地磁気がない(地球から離れた)宇宙空間では使えないことになります。
ちなみに電磁波(光)を外部に放射してその反作用で進む……という方法は、まさに「光子ロケット」という古くからあるアイデアがあります。近年だとその発展形として「核光子ロケット」というものも研究されています。ただしどちらも理論的には可能ですが、はたして実用レベルの物ができるかというと、現時点または近い将来では技術的に無理でしょう。このへんは興味があれば調べてみてください。
補足ありがとうございます。
2018/05/31 17:50:00なるほど合点がいきました。
正にご指摘のとおりで、EMドライブや電磁波の性質についての理解が間違っていました。
すべて納得できました。
丁寧なご回答ありがとうございます。